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【第一部】七章

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 今が祝賀会の真っ最中なら彼の仕事は多そうだ。ユリシーズ殿下の傍を離れて大丈夫なのだろうか………あ、大丈夫じゃないから今去って行ったのか。

 ニコラはとりあえず受け取った箱を開けた。すると入っていたのは見覚えのある生地だった。見覚えがあるなんてものじゃない。つい最近まで、ずっと見て、触れていた生地。
 すぐに取り出して広げると生地だけじゃなくデザインも見覚えのあるドレスだった。

 「嘘、まさか、どうして……?」

 生地はユリシーズ殿下の祝賀会の衣装と同じもの。
 そしてデザインは衣装合わせをしているときにニコラが描いたものだった。
 思い返すと、テーブルにまとめて置いたデザイン画を片付けた時、最後に描いたドレスのデザイン画だけ無かったような気がする。その時は気にも留めなかった。
 こんな事を思いついて実行するのはただ一人しかいない。

 「ユリシーズ殿下だ……」

 まさか持って行っていたとは。

 ドレスに着替えたニコラは衣装合わせの時に使った全身鏡を引っぱり出して自分の姿を見た。
 嫌な予感、的中。

 ウエストやヒップのサイズは問題なかった。問題があったのはバストと丈だった。このドレスはシンシア・グローリーに似合うようにイメージしてデザインしたのだ。ニコラの体型に合わなくて当然だった。鏡に写ったニコラはドレスの裾を引き摺りすぎていて、いつもは目立たないように隠している身長にわりに育ちの良いバストが強調されていた。

 これで人前に出るのはすごく恥ずかしい…!

 長すぎる裾と強調されたバストを見比べて、ニコラは思いつくとすぐに鋏でドレスの裾を切り裂いた。作ってくれた人には悪いけど時間がない。祝賀会と言ってもそこまで長い時間はやらないだろう。祝賀会の間だけ持てば良い。
 ニコラは裾の始末を簡単に終えて、切った裾は首に巻いて胸元に垂らした。もう一度鏡を見る。ドレスの丈はちょうど良くなり、おまけにドレスに合ったストールが完成した。胸元に垂らした事でバストも目立たなくなった。

 「とりあえず良し、かな」

 ニコラはドレスと一緒に渡された靴を履いて言われた通り隣の部屋へ向かった。

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