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【第一部】四章

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 寒い。

 自分を抱きしめるようにして寝返りを打つと、異様な地面の冷たさに飛び起きた。

 自分の部屋じゃない!

 「ここは・・・?」

 部屋の中心には蝋燭一本の灯りしかなく細部まではよく見えない。いくつかの通路が見える。何処かに繋がっているようだ。まるで洞窟のような場所。土の強い臭いが充満している。
 ニコラは記憶を辿った。

 チャリオと、ロロとマーリーという双子を追ってそれから・・・そうだ。爆弾。いや、あれは爆弾じゃなくて眠り薬みたいなものだったのだろうか・・・それよりもチャリオ!

 部屋を見渡す。チャリオがいない。

 「チャリオ?」

 当然呼んでも返事はない。
 ふと、一つの通路の奥からぼんやりと灯りが見える。その灯りはどんどん近づいて来ている。
 ニコラはロロとマーリーかと思って身構えた。
 しかし現れたのは灯りを手にしたチャリオだった。

 「ニコラ、目覚めたのか」

 ほっと息をついた。

 「チャリオ・・・何処に行っていたの?」
 「ここが何処なのか調べに行っていた」

 こんな薄暗闇をちっぽけな灯り一つで歩いて行って怖くなかったのだろうか。
 そう思ってチャリオの様子を窺ったが彼は平然としている。年下なのに随分肝が座っている。
 不安な気持ちでいっぱいの自分をニコラは恥じた。

 しっかりしなくちゃ。

 「何かわかった?」
 「いや、詳しくは・・・。採掘現場、か?」
 「採掘現場?」
 「ああ。最近使われた形跡のあるシャベルやトロッコが置いてあった。土も乾燥していない。掘られて間もない証拠だ。この気温に誰もいないところを見ると、今は夜なんだろう」

 チャリオは顎に手をあてて少し考えた後、言った。

 「ルブゼスタン・ヴォルシス国近辺でこのような場所と言えば、現在進めているウルクフェド国とのトンネルの工事現場か・・・?」
 「どうしてそんな所に私たちを?」
 「わからない」

 チャリオが持っていた灯りをニコラの傍に置いて隣に座った。灯りが二つになり僅かではあるが部屋の明るさが増す。けれど、それよりもチャリオがすぐ傍にいてくれる事の方がニコラは安心できた。

 「ウルクフェド国って山の向こうの?」
 「ああ」
 「トンネルを作ってるなんて、全然知らなかった」
 「ニコラはウルクフェドがどんな国か知っているか?」
 「ううん」
 「ウルクフェドは寒冷地帯で、毛の長い動物や毛の密度が高い動物、そう言った動物のハルクが多い」

 ニコラは熊や狼を想像した。

 「つまり、ふかふかってこと?」

 チャリオは、そうだ、と苦笑した。
 初めてチャリオの笑った顔を見た。嬉しいと思ったのと同時に誰かと印象が重なる。
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