12 / 42
2-3:
しおりを挟む
ギルドへの道は、昨日行ったから覚えている。私はそれを辿りながら、串肉を頬張る。
マイマイ肉も普通の獣肉も、塩が効いてて美味しい。柔らかい肉に絡みつく肉汁の中に鉱石のような岩塩が混ざりこんで、度々舌に当たると塩味が染みてくる。
美味しい食べ物は幸せの権化であり、幸せは時の流れを速く感じさせる。気がつけば、私は再びギルトの前に立っていた。
串焼きの串を袋にしまって、近くのクズ筺に捨てる。一応浄化魔法を使って、強いガーリック臭を取り去ったら準備は万端。扉を押して、ギルド内に足を踏み入れた。
「招集かけられました、マシューという者です」
「ギルド支店長に取り次ぎ致しますので、しばらくお待ちください」
カウンターに到着を伝える時、昨日と打って変わって丁寧なお姉さん方の対応に苦笑いした。言われたままに、エントランスの椅子に腰かけて待つ事にして鞄から本を取りだす。
魔法鞄は楽だ。人の顔よりも大きい魔導書でも、簡単に収納できてしまう。それに本というのは、高いだけあって人の心を踊らせる。それだけの価値がある。
【炎系魔法の火力調節のコツ】、【神聖魔法とはなにか】、【史上最強魔導師の魔法図鑑】などなど……。
鞄の中にしまっていた本をあれやこれや取り出してみるも、どれもこれも最近読んだものばかりで面白くない。史上最強魔導師の解説シリーズに関しては、著者が異世界人なので全く参考にならなかったのを覚えている。誰も彼もが貴様みたいな基盤を持っていると思う勿れ。
世界を渡る際に魔力への適応処置としてあらゆる能力が底上げされる異世界人と違って、私たちは生まれながらにこの世界に住んでいるのだから。そもそもスタート地点が違うのだ。
「おい!」
背中を殴られて初めて、背もたれの後ろに人が立っていることに気がついた。
見れば、女受けの良さそうな美男の冒険者が怒髪天で立っている。やたらお高そうな装備が照明でテカテカと輝いて、成金臭い。
「異人ごときが俺を無視するとは何事だ!?」
「あぁ、すみません。読書に集中していて気づきませんでした。何か御用ですか」
人を小馬鹿にした態度が鼻につく。
「お前、昨日の魔法使いだな?人類の劣等種、異人たるお前を俺のパーティーに入れてやる。勧誘だ」
マイマイ肉も普通の獣肉も、塩が効いてて美味しい。柔らかい肉に絡みつく肉汁の中に鉱石のような岩塩が混ざりこんで、度々舌に当たると塩味が染みてくる。
美味しい食べ物は幸せの権化であり、幸せは時の流れを速く感じさせる。気がつけば、私は再びギルトの前に立っていた。
串焼きの串を袋にしまって、近くのクズ筺に捨てる。一応浄化魔法を使って、強いガーリック臭を取り去ったら準備は万端。扉を押して、ギルド内に足を踏み入れた。
「招集かけられました、マシューという者です」
「ギルド支店長に取り次ぎ致しますので、しばらくお待ちください」
カウンターに到着を伝える時、昨日と打って変わって丁寧なお姉さん方の対応に苦笑いした。言われたままに、エントランスの椅子に腰かけて待つ事にして鞄から本を取りだす。
魔法鞄は楽だ。人の顔よりも大きい魔導書でも、簡単に収納できてしまう。それに本というのは、高いだけあって人の心を踊らせる。それだけの価値がある。
【炎系魔法の火力調節のコツ】、【神聖魔法とはなにか】、【史上最強魔導師の魔法図鑑】などなど……。
鞄の中にしまっていた本をあれやこれや取り出してみるも、どれもこれも最近読んだものばかりで面白くない。史上最強魔導師の解説シリーズに関しては、著者が異世界人なので全く参考にならなかったのを覚えている。誰も彼もが貴様みたいな基盤を持っていると思う勿れ。
世界を渡る際に魔力への適応処置としてあらゆる能力が底上げされる異世界人と違って、私たちは生まれながらにこの世界に住んでいるのだから。そもそもスタート地点が違うのだ。
「おい!」
背中を殴られて初めて、背もたれの後ろに人が立っていることに気がついた。
見れば、女受けの良さそうな美男の冒険者が怒髪天で立っている。やたらお高そうな装備が照明でテカテカと輝いて、成金臭い。
「異人ごときが俺を無視するとは何事だ!?」
「あぁ、すみません。読書に集中していて気づきませんでした。何か御用ですか」
人を小馬鹿にした態度が鼻につく。
「お前、昨日の魔法使いだな?人類の劣等種、異人たるお前を俺のパーティーに入れてやる。勧誘だ」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる