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 私は胸を叩いて宣言した後、「無茶だやめろ」「これは罠だ異人の罠だ」と制止と罵倒の渦からなんとか抜け出して、私は箒に跨った。

 全力で飛ばして、あっという間にスタンピード上空にやってきた。周囲に”障壁”を展開したままいると、飛んでくる蟲の攻撃を勝手に”障壁”が吸収して、そのまま蟲も呑み込んでいく。

 ”障壁”とはつまり魔力の塊であり、高濃度の魔力溜りはあらゆるものを吸収する。”障壁”は、防御魔法にして攻撃魔法である。と、昔読んだ魔導書に書いてあった。

 何故蟲の群れに飛び込んでまでスタンピードの中心に向かわねばならないのかと言えば、全ては爆発魔法のためだ。飛行可能な蟲を残しておけば、爆発を受けて燃え盛る蟲が飛び回って森に落下して火事になる可能性があるから残しておけない。

 紫色の外骨格に濁った赤色の眼をギョロつかせた巨大な蟲は、抵抗もできずに赤黒い障壁に吸収されていく。面白い有様だ。

「おうおう、そのまま私の糧になるが良いさ」

 一旦、空中の蟲は退治しきったものと思われるので、そろそろ本題のスタンピード討伐へ移行する。長ったらしい詠唱を繰り出す暇はない。

「”派手に爆散してくれると格好良いかな”…!」

 不安と願望の入り交じった呟きに、全て呑み込まんと拡大していく炎球をイメージを重ねて放つ。発射された赤黒い魔力弾はどんどん温度を上げ、やがてそれは白く赤く輝きを増していく。ついに膨れ上がって、破裂した。

 同時に世界は一瞬だけ、画用紙のような白に包まれる。一拍遅れて、派手な爆発音が耳をつんざいた。

 自分自身は障壁で防御しているから分からないけれど、千切れた魔獣の手が真横を飛んでいくほどだから爆風もきっと凄いのだろう。

 肌を焼くような熱の明かりが収まった後、目下にはただ焼け野原があった。パチパチと音を立てて燻っている草木と一緒に、あちらこちらに魔獣の死体が散乱している。

 延焼を防ぐために雨を降らせながら、箒で降下する。魔獣は焼け焦げた毛皮の臭いを残してボロボロと崩れて消えていく。跡には獣の核とも言われる魔石が数え切れないくらい転がっていた。

「これだけあれば、結構な金額になるんじゃないかな…?」

 独りごちて、散らかったままの魔石を集めて回る。物集めの魔法で一まとめにした魔石を袋に詰めて背負い、町へ向かう。

 無事掃討は成功したので、それを報告しに行かなければいけないからだ。顔を見るのも見せるのも御免だし、できることならこのまま逃げてしまいたい気持ちもあるが、事を行った者の義務だけは果たさなければならない。

 そして今回、少し力加減を間違えてしまったようで、焼けた範囲が思っていたよりも広かった。雨で鎮火した為に再燃の恐れはないものの、晴れた日の下で青々としていた草木は跡形も無い。

 自分ですら持て余す程大きな魔力を制御して、もっと魔法を上手く扱う為にはには何が必要なのだろうか。それはやはり、異世界人のような知識や感覚なのだろうか。と縁の焦げた原っぱを見下ろしながら考えた。
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