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第九話 メモリアル・コレクション
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ジュディスの死を乗り越え、紆余曲折を経てバーガックスの捕獲という至難の任務をついに達成した私たち。しかしバーバラからの依頼は、まだ完全に遂行出来たわけではない。
「急げ急げ! もっと飛ばせ! ジュディスの運転ならもう着いてるぞ!」
超光速航行で亜空間を進むオービット号の中、ボスが血気盛んにずっと横から私を急かしてくる。
「うるっさい! これでもだいぶ無茶してるんです!」
「ヒィッ!」
気が散るので、ボスを睨んで黙らせた。免許を取るため教習所に通っていた時のことを思い出す。あの時隣に座っていた、紫色の腐った桃みたいな顔をしたババボレアンのおじいさん、ずっと野次を飛ばしてきて集中がまるで出来なかった。
結局私たちは二億光年の旅路を四時間と二十八分で走破した。マーフィー君は無言でジュディスの残骸を眺め、博士と先輩と姐さんは呑気に座席で眠っている。
「亜空間、脱出! 超光速航行モード、解除。このままエルラダに着陸します」
大気圏突入モードにシフトレバーを切り替えて、私はエルラダの管制塔に信号を送信した。
「すごい渋滞だね。バーバラが従業員口用のIDを渡しておいてくれて助かったよ」
ボスの言う通りすでに惑星エルラダの軌道には、ブラック・フリルの記念ショーを一眼見ようと、数えきれないほどの宇宙車、宇宙船、宇宙バスが大挙して土星の輪のような大渋滞を作り上げていた。帰りの車内で聴いたラジオによれば、バーバラが先刻正式に情報を公開したらしい。ゲリラ開催にも関わらず、宇宙中のファッション業界が注目しているとのことだ。
『IDシグナルを発信してください』
エルラダの管制塔から通信があった。
「BLACK FRILL社、ID 26B101-5。ゲートの解除を要請します」
私が通信しながらバーバラから渡されたカードキーをオービット号に差し込むと、従業員用のオゾン・ゲートが開いた。
私は慎重な操縦で、オービット二〇〇〇号を従業員駐車場に着陸させた。
「う~ん。着いたのね~」
姐さんたちが着陸の衝撃で目を覚ました。
「バーバラのところへ急ごう! もうショーが始まってしまう」
ボスがいつにも増して落ち着きを失い、水槽の中を慣れない水に入れられた魚のように右往左往している。私たちはオービット号を降りて、ゼンとバーガックスを積んでいるコンテナへ向かった。
度重なる超光速飛行で、ゼンとバーガックスが分子となって雲散霧消していないかが心配だった。恐る恐るコンテナのロックを解除して、ゲートを開けた。
「おう! やっと着いたか!」
ゼンはすぐに外へ飛び出してきた。
「まあ、死んでるわけないか」
私は苦笑いした。ゼンとバーガックスは全く平気そうで、伸びをしてみたり、少し走り回ってみたり、とにかく嬉しそうだ。
私たちはバーガックスを引き連れて従業員口から、バーバラの控えているランウェイの袖まで急いだ。
「ぎゃあああ」
「見た目で判断すんな!」
途中でバーガックスを一目見た従業員たちが悲鳴をあげたり、失神したりしていたが、構っている暇もない。ゼンは友達を貶された気分になったのか、いちいち歩みを止めては騒ぐ従業員たちを叱っていた。
「ここだ! メインホール」
長い廊下を走ること数分。私たちはようやくショーの開催されるホールに着いた。
重たい扉を開けた私たちは、思わずそこで立ち尽くしてしまった。
「すごい……」
グレイ先輩が慌ただしい舞台袖の現場の空気に圧倒されたのか、声を漏らした。黒いカーテンがひしめく裏には沢山の衣装がハンガーに掛けられて置かれ、無秩序に置かれたドレッサーでメイクアップアーティストとモデルたちが慌ただしくている。
「ええ!? オボンチ・リネンポポがいる……!」
さながら石像のように落ち着いて、メイクの仕上げを座して待っている人を見つけた姐さんは、目を丸くした。まん丸な頭に、宝石のように幾何学的な輝きを含んだ水晶の瞳。希少種族のミレビアンの有名モデル、オボンチが居たのだ。彼女はファッションからお菓子までありとあらゆる高級路線商品の広告を引き受けるスーパーモデル。サインが欲しい!
「バーバラ! J・Jだ。今、戻ったよ!」
ボスのスピーカーの調子はまた悪くなり、この間抜けなか細い声では本番を前にして慌ただしく走り回るスタッフやモデル達の中ではいとも容易くかき消されてしまいそうだった。
「ああ、いたいた! 無事だったのね!」
スタッフ達の人垣の中からいつもと違う、ベルベット生地のビキニを着用したバーバラが姿を見せてこちらに手を振った。出発前よりなんだか痩せたように見える。地球の歴史と共にあるブランドの一世一代の大イベントに、彼女も非常に大きなプレッシャーを抱えているのだろう。
バーバラはヒールを鳴らしてよろけながら歩いてきた。
「さっき連絡が入ったから探してたわ。ごめんなさい。ショーの準備で忙しくて、何度も通信をくれてたのに返事ができなかったの。それで、依頼の方は——」
バーバラがあまり期待していなさそうに訊くのを遮って、ボスが心から嬉しそうに調子の戻ったスピーカー越しに話し始めた。
「それがね、バーバラ。うちの新人たちのおかげで、なんと……成功してしまったんだよ!」
バーバラは私たちの背後に、少し窮屈そうに天井に目をやって頭をぶつけないか気にしているバーガックスが立っているのを見て、野太い声で絶叫した。
「きえええええええ」
ファッションショーは大盛り上がりを見せた。オボンチが新作のドレスでランウェイのヘッドライナーを務めたのを皮切りに、次々とブラック・フリルの大いなる節目を記念して、バーバラがこの日のために用意してきた珠玉のコレクションがお披露目された。バイヤーや記者達が興奮冷めやらぬ様子で何やらメモをとったり耳打ちしあったりしている間にも、次々と衝撃的なアイテムを身に纏った一流のモデル達がスポットライトの元へとやってくる。
地球に古代から伝わる童話から着想を得た、ブラックフリルのベストセラースニーカー、シンデレラ・シリーズ。今回は筋力の弱い種族、重力が比較的強い惑星でも履きこなせるように軽さとフィット感にもこだわったらしい。ガラスを想起させる透明なハイカットボディの中に、パステルカラーの靴下が歪んで映る様はまさに宝石。
次は非常にカジュアルなデザインスウェットシャツがお披露目。地球の生き物や食べ物などをあしらったプリントや刺繍はどれも私の故郷を思い出させる。ゆったりとした着用感で、シルエットも愛らしい。
「やっぱり服買いたい……! エルラダまでせっかく来たんだし、やっぱりショッピングはしてから帰りましょうよ!」
私は舞台袖で目を輝かせながら、姐さんの肩を叩いた。
「当たり前っしょ。ブラックフリルの服持ってなかったんだけど、これ見たら欲しくなっちゃうわ」
姐さんもショーを観て、購買意欲が格段に高まっている様子だった。
ショーもいよいよ大詰め。モデル達の行列が終わって、流されていた音楽が止んだ。今回のコレクションはファッション業界の人々の琴線にも触れたようで、ランウェイに誰も立っていない今も会場のどよめきは止まらない。
「——じゃあ、行くわね」
私たちと舞台袖からショーを見守っていたバーバラが、ヒールの音を気高く鳴らしながら、深呼吸をしてランウェイに上がった。
「バーバラだ!」
「ブラボー! ブラボー!」
ショーが終わったのかと思って、観客たちは喝采の拍手と滝のような称賛をバーバラに浴びせている。バーバラ本人はその中を堂々と歩いて、ついにランウェイの端で立ち止まった。
「急な予告だったにも関わらず、このよき日のために本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。いよいよショーもフィナーレです。地球が大宇宙の仲間入りをする前から、ブラック・フリルの歴史は始まりました。地球人の生活の傍には、いつもファッションがあります。長い長い歴史の中、宇宙の片隅の小さな商店から始まった物語。このブランドの原点、スパイシー・フリル初代代表のグルテンフリースカイ・セドナと、初代専属モデルであるサイコに敬意を表して、この度私は一点の衣装を制作いたしました。二千年の歴史を持つ我がブランドが、力強くこれからも宇宙のファッション界で前進していけるよう、願いを込めた作品です。ご覧ください。“暴走彗星”——」
バーバラのスピーチを会場の全員が息を呑んで聞いていた。ショーはまだ終わっていない。最後にバーバラが渾身の一作を披露すると言われ、会場はまた再び興奮に包まれる。バーバラが完全に会場の空気を支配してすぐに、スポットライトが消えた。ランウェイが光り、会場が力強い足音と共に揺れる。ピンクのボンネットに、豪奢なチュチュを纏ったバーガックスが……雄叫びをあげてランウェイを走り出した!
会場はすぐにパニックになって、報道陣は衝撃的なショーの最後を激写しながら、蜘蛛の子を散らすように会場から逃げ出していった。
バーガックスは服を着ているのが嬉しいようで、もう空っぽになってしまったホールの全てを壊しながら、楽しそうに暴れている。
「ど、どうしよう!? ゼン、早くあんたなんとかしなさいよ!」
ショーが取り返しのつかないことになって、私は顔を真っ青にして叫んだ。
「ど、どうしようってもう、どうにもなんないだろ! ちくしょう」
ゼンが冷や汗をかきながらバーガックスの元へと急ぐ横で、ボスが泡を噴いて今にも倒れそうになっている。
「バ、バババ。バーバラ、この件、どうお詫び、ど、どうすれば、いい。私の、命で足りるかい……」
今更何を言っても遅い。私たちが連れてきたバーガックスがお行儀よくしなかったせいで、歴史的なショーが台無しにしてしまったのだ。ゼンがバーガックスをようやく捕まえて大人しくさせたのと同時に、私たちはなんとも、筆舌に尽くし難い罪悪感を胸に、気まずそうにバーバラの顔を見た。
「何謝ってんの? これでいいのよ。ブラックフリルはこれからも、周りを蹴散らしていくのだから。無理を言って動物園の人慣れしてる個体を借りる手もあったのだけれど、できることなら暴れて欲しかったのよ。だからアンタ達にかけてみたってわけ」
バーバラはその豊満な胸の間からショーの企画書、絵コンテを出して、私たちに見せつけながら笑い声をあげた。その絵コンテには、「最後はすべて壊しておしまい」というト書きと共に、バーガックスが観客を喰らっている絵が描いてある。幸い怪我人は居なかったようだが、この絵コンテ通りになっていたら、ブラックフリルは翌日に倒産していたのではないだろうか……。唖然とする私たちをよそに、バーバラはバーガックスにも臆することなく近づいて、頭を撫で始めた。
「このバーガックスちゃんには小惑星を購入して、専属の料理人もつける。これからも専属モデルとしてアタシとタッグを組んで頑張っていくわ」
バーバラに言われ、ゼンは少し取り乱した。
「えっ!? そ、そっか。そうだよな……お前も、広い家の方がいいよな」
いつもの私なら「どうやって飼育するつもりなんだ」とゼンを咎めているだろうけれど、今日はそういう気が何故か起こらない。代わりに博士が、名残惜しそうにバーガックスを撫でるゼンにとどめを刺すように呟いた。
「世の中、金ぢゃからな。どんな生き物だろうと金をかけられて育った方がいいに決まっとる。ウチじゃ無理ぢゃ諦めい」
「博士さあ……」と姐さんが言った。
相変わらず全く他人を気遣わず、自分が感じたことを言いたい時にすぐに言うんだから……。
「とにかく、アンタ達には本当に感謝してもしきれないわ。ネット見る感じショーの反響も良さそうだし、これからもまた忙しくなりそうね。報酬はもちろん振り込んでおくし、制服の他に色々とお土産用意しておくから、それまでエルラダのショッピングを楽しんでってちょうだいね」
バーバラはそう言うと私たちにお辞儀をして、たくさんのスタッフに片付けの指示を出し始めた。
予想外の旅路を経て、エルラダで購入した服、さらにはバーバラが直々に選んでくれたジュディスとマーフィー君も含めた特務部第三課全員分のセットアップ、それから仕立ててもらったゼンと私の制服をお土産に、私たちは事務所までの道をのんびりと進んでいた。
「ふんふん」
鼻歌を歌いながら、窓に映る制服姿を見る私。黒を基調としたデザインのこの制服は、落ち着いた生地でつくられ、丈夫な縫製によりボタンも全く落ちないと評判だ。姐さんはそんな私を見てくすりと笑った。
「アンタ、本当に制服着たかったのね~」
「当たり前じゃないですか! 二千年の歴史を誇るブランドの制服……しかもトップデザイナーに仕立ててもらったんですよ!」
制服は完璧な着心地で、体の一部のようによく馴染んだ。それでも先ほどの血気迫るショーとバーバラのファッションへの姿勢や歴史を知った今、とても重たくも感じる。
「しかし、本当に成功してしまうとはね……」
ボスはバーバラから贈られたフライトキャップを気まずそうに頭に載せながら、いまだに夢見心地の顔で呟いた。
「若者の力は偉大なのぢゃ」
そう言う博士もバーバラからもらったキッチュなデザインのサングラスをすっかり気に入ったのか、ご機嫌そうに着けている。
「珍しくご老体がまともなこと言ったな」
グレイ先輩は何度も鏡の前で、例に漏れずバーバラに貰ったネクタイを結び直しながら、余計なことを言っていた。
「お前はもう若くないぢゃろ。加齢臭がするぞ」と博士は舌打ちして言い返した。
「んだとジジイ、もういっぺん言ってみろ。バーバラから服もらって浮かれてんじゃねぇぞコラ」
「それはお前もぢゃろ。若モン気取りの中年」
この二人は本当に仲が悪い……。姐さんが呆れたように頭を抱えている。その間、マーフィー君は一言も喋らずにジュディスのパーツを眺めていたし、ゼンはバーガックスと撮った写真を時折涙を流しながらずっと見ていた——。
ゼノ星系の首都、惑星ゼノ。連盟政府の役目を持つゼノ・ユニヴァース社は、この惑星を丸ごと本社社屋としており、今日も昼夜問わず輝いている。
巨大なビル群の中、一際大きな本社の本棟。その最上階に今、宇宙を代表するファッションブランドであるブラック・フリルの代表、グランドアルコールフリー・バーバラが、馳せ参じた。
エレベーターのドアが開く音で、窓際でカクテルの入ったグラスを持っていた二人が振り返った。
「あら、来たのね」
「バーバラ、この度は本当におめでとう」
屈強なボディガードの間を潜り抜けるバーバラを二人は笑って迎え入れ、バーバラは礼を言った。
「マーク、サーク。ありがとう」
この二人の女性こそ、ゼノ・ユニヴァース社の取締役と惑星共同体ゼノ連盟の盟主を兼任している、この宇宙の最高権力者。マークとサークである。マークの髪は金色に、サークの髪は銀色に、宇宙のすべての光を一手に引き受けるように輝いている。二人は髪の毛と瞳の色こそ違ったが、同じ宇宙の闇の色をしたドレスを着ているし、その仕草はまるで合わせ鏡のようで完璧にシンクロしている。彼女たちは滅多に人前に姿を表さない。宇宙の恒久的平和の実現を謳う二人は、圧倒的なカリスマと経営手腕、政治手腕でここまで上り詰めた鬼才だ。
「いつもバーバラにはお世話になっているものね。限定のバッグはマークと二人分注文させて貰ったわ」
サークは窓から割れたガラスに光を当てたように無秩序に輝く都市を見下ろしながら言った。
「言ってくれれば送ったのに!」
バーバラはウェイターからカクテルを受け取って会釈しながら、少し申し訳なさそうにしている。
「何言ってるのよ。あなたは私たちのデザイナーであると同時に、一人の友人なのだから」
マークはカクテルを一口飲んでから、怪しい光を孕んだ瞳でバーバラを見つめてそう言った。
「それもそうね。ところで、今回のショーでは、アンタたちの子会社の人に本当に世話になったのよ」
バーバラの切り出しに、サークとマークは顔を見合わせた。
「あら? そうなの? 事前に何か依頼があったとはどこの部門からも聞いていないけれど」
「ゼノ・エクセルキトゥス社——ゼノ連盟軍部の子達よ。そこの、なんて言ったかしら。特務部だわ! 特務部第三課の課長とアタシ、友達で。それでショーの演出について悩んでる時、そこの子達とばったり会って、藁にもすがる思いで——」
バーバラはJ・J率いる特務部第三課の活躍について、マークとサークに熱弁した。しかし、マークとサークはにわかには信じ難そうな顔をした。
「窓際部署なのに、バーバラの無理難題をこなしたっていうの?」とサークが尋ねた。
「新人たちが活躍したんだって、課長のJ・Jには報告されたわ。ガグーア人のボウヤと、それから地球人の天才少女って」
バーバラが端末を起動し、J・Jから受け取ったゼンとステラの履歴書のデータを見せた。
「——あら? この地球人の子の方、軍部に留まらず本社でスカウトしたいって人事部に言ったのに。どうしてこんな部署にいるのかしら? まさか振られちゃった?」
マークがステラの履歴書を指差して目を丸くした。バーバラはその様子を見て身を乗り出した。
「このコ、アンタたちがヘッドハンティングするような人材なの?」
「ええ、そうよ。もしゼノ社を受けないなら直々に契約を持ちかけに行きたかったくらいね。この子の頭脳は宝だわ——何にも代え難い、ね」とサークは言った。
「それにしても本社に来ないどころか窓際部署なんて——何かの間違いか、相当な変わり者なのね。この子。まあ、もう少し泳がせてみても面白いわね、サーク」
「そうね、マーク。この部署にも油を差してやりましょう」
マークとサークは顔を見合わせて笑った。
「アンタ達……またロクでもないこと考えてるのね」とバーバラが言った。
「失礼ね。私たちの仕事は宇宙を維持することよ」
マークとサークがバーバラに口を揃えてそう言った時、二人の背後の大窓を巨大な宇宙船の影が掠めた。暗くなった室内の中で、マークとサークの瞳は互いの運命を預け合うが如く怪しく輝いていた——。
「急げ急げ! もっと飛ばせ! ジュディスの運転ならもう着いてるぞ!」
超光速航行で亜空間を進むオービット号の中、ボスが血気盛んにずっと横から私を急かしてくる。
「うるっさい! これでもだいぶ無茶してるんです!」
「ヒィッ!」
気が散るので、ボスを睨んで黙らせた。免許を取るため教習所に通っていた時のことを思い出す。あの時隣に座っていた、紫色の腐った桃みたいな顔をしたババボレアンのおじいさん、ずっと野次を飛ばしてきて集中がまるで出来なかった。
結局私たちは二億光年の旅路を四時間と二十八分で走破した。マーフィー君は無言でジュディスの残骸を眺め、博士と先輩と姐さんは呑気に座席で眠っている。
「亜空間、脱出! 超光速航行モード、解除。このままエルラダに着陸します」
大気圏突入モードにシフトレバーを切り替えて、私はエルラダの管制塔に信号を送信した。
「すごい渋滞だね。バーバラが従業員口用のIDを渡しておいてくれて助かったよ」
ボスの言う通りすでに惑星エルラダの軌道には、ブラック・フリルの記念ショーを一眼見ようと、数えきれないほどの宇宙車、宇宙船、宇宙バスが大挙して土星の輪のような大渋滞を作り上げていた。帰りの車内で聴いたラジオによれば、バーバラが先刻正式に情報を公開したらしい。ゲリラ開催にも関わらず、宇宙中のファッション業界が注目しているとのことだ。
『IDシグナルを発信してください』
エルラダの管制塔から通信があった。
「BLACK FRILL社、ID 26B101-5。ゲートの解除を要請します」
私が通信しながらバーバラから渡されたカードキーをオービット号に差し込むと、従業員用のオゾン・ゲートが開いた。
私は慎重な操縦で、オービット二〇〇〇号を従業員駐車場に着陸させた。
「う~ん。着いたのね~」
姐さんたちが着陸の衝撃で目を覚ました。
「バーバラのところへ急ごう! もうショーが始まってしまう」
ボスがいつにも増して落ち着きを失い、水槽の中を慣れない水に入れられた魚のように右往左往している。私たちはオービット号を降りて、ゼンとバーガックスを積んでいるコンテナへ向かった。
度重なる超光速飛行で、ゼンとバーガックスが分子となって雲散霧消していないかが心配だった。恐る恐るコンテナのロックを解除して、ゲートを開けた。
「おう! やっと着いたか!」
ゼンはすぐに外へ飛び出してきた。
「まあ、死んでるわけないか」
私は苦笑いした。ゼンとバーガックスは全く平気そうで、伸びをしてみたり、少し走り回ってみたり、とにかく嬉しそうだ。
私たちはバーガックスを引き連れて従業員口から、バーバラの控えているランウェイの袖まで急いだ。
「ぎゃあああ」
「見た目で判断すんな!」
途中でバーガックスを一目見た従業員たちが悲鳴をあげたり、失神したりしていたが、構っている暇もない。ゼンは友達を貶された気分になったのか、いちいち歩みを止めては騒ぐ従業員たちを叱っていた。
「ここだ! メインホール」
長い廊下を走ること数分。私たちはようやくショーの開催されるホールに着いた。
重たい扉を開けた私たちは、思わずそこで立ち尽くしてしまった。
「すごい……」
グレイ先輩が慌ただしい舞台袖の現場の空気に圧倒されたのか、声を漏らした。黒いカーテンがひしめく裏には沢山の衣装がハンガーに掛けられて置かれ、無秩序に置かれたドレッサーでメイクアップアーティストとモデルたちが慌ただしくている。
「ええ!? オボンチ・リネンポポがいる……!」
さながら石像のように落ち着いて、メイクの仕上げを座して待っている人を見つけた姐さんは、目を丸くした。まん丸な頭に、宝石のように幾何学的な輝きを含んだ水晶の瞳。希少種族のミレビアンの有名モデル、オボンチが居たのだ。彼女はファッションからお菓子までありとあらゆる高級路線商品の広告を引き受けるスーパーモデル。サインが欲しい!
「バーバラ! J・Jだ。今、戻ったよ!」
ボスのスピーカーの調子はまた悪くなり、この間抜けなか細い声では本番を前にして慌ただしく走り回るスタッフやモデル達の中ではいとも容易くかき消されてしまいそうだった。
「ああ、いたいた! 無事だったのね!」
スタッフ達の人垣の中からいつもと違う、ベルベット生地のビキニを着用したバーバラが姿を見せてこちらに手を振った。出発前よりなんだか痩せたように見える。地球の歴史と共にあるブランドの一世一代の大イベントに、彼女も非常に大きなプレッシャーを抱えているのだろう。
バーバラはヒールを鳴らしてよろけながら歩いてきた。
「さっき連絡が入ったから探してたわ。ごめんなさい。ショーの準備で忙しくて、何度も通信をくれてたのに返事ができなかったの。それで、依頼の方は——」
バーバラがあまり期待していなさそうに訊くのを遮って、ボスが心から嬉しそうに調子の戻ったスピーカー越しに話し始めた。
「それがね、バーバラ。うちの新人たちのおかげで、なんと……成功してしまったんだよ!」
バーバラは私たちの背後に、少し窮屈そうに天井に目をやって頭をぶつけないか気にしているバーガックスが立っているのを見て、野太い声で絶叫した。
「きえええええええ」
ファッションショーは大盛り上がりを見せた。オボンチが新作のドレスでランウェイのヘッドライナーを務めたのを皮切りに、次々とブラック・フリルの大いなる節目を記念して、バーバラがこの日のために用意してきた珠玉のコレクションがお披露目された。バイヤーや記者達が興奮冷めやらぬ様子で何やらメモをとったり耳打ちしあったりしている間にも、次々と衝撃的なアイテムを身に纏った一流のモデル達がスポットライトの元へとやってくる。
地球に古代から伝わる童話から着想を得た、ブラックフリルのベストセラースニーカー、シンデレラ・シリーズ。今回は筋力の弱い種族、重力が比較的強い惑星でも履きこなせるように軽さとフィット感にもこだわったらしい。ガラスを想起させる透明なハイカットボディの中に、パステルカラーの靴下が歪んで映る様はまさに宝石。
次は非常にカジュアルなデザインスウェットシャツがお披露目。地球の生き物や食べ物などをあしらったプリントや刺繍はどれも私の故郷を思い出させる。ゆったりとした着用感で、シルエットも愛らしい。
「やっぱり服買いたい……! エルラダまでせっかく来たんだし、やっぱりショッピングはしてから帰りましょうよ!」
私は舞台袖で目を輝かせながら、姐さんの肩を叩いた。
「当たり前っしょ。ブラックフリルの服持ってなかったんだけど、これ見たら欲しくなっちゃうわ」
姐さんもショーを観て、購買意欲が格段に高まっている様子だった。
ショーもいよいよ大詰め。モデル達の行列が終わって、流されていた音楽が止んだ。今回のコレクションはファッション業界の人々の琴線にも触れたようで、ランウェイに誰も立っていない今も会場のどよめきは止まらない。
「——じゃあ、行くわね」
私たちと舞台袖からショーを見守っていたバーバラが、ヒールの音を気高く鳴らしながら、深呼吸をしてランウェイに上がった。
「バーバラだ!」
「ブラボー! ブラボー!」
ショーが終わったのかと思って、観客たちは喝采の拍手と滝のような称賛をバーバラに浴びせている。バーバラ本人はその中を堂々と歩いて、ついにランウェイの端で立ち止まった。
「急な予告だったにも関わらず、このよき日のために本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。いよいよショーもフィナーレです。地球が大宇宙の仲間入りをする前から、ブラック・フリルの歴史は始まりました。地球人の生活の傍には、いつもファッションがあります。長い長い歴史の中、宇宙の片隅の小さな商店から始まった物語。このブランドの原点、スパイシー・フリル初代代表のグルテンフリースカイ・セドナと、初代専属モデルであるサイコに敬意を表して、この度私は一点の衣装を制作いたしました。二千年の歴史を持つ我がブランドが、力強くこれからも宇宙のファッション界で前進していけるよう、願いを込めた作品です。ご覧ください。“暴走彗星”——」
バーバラのスピーチを会場の全員が息を呑んで聞いていた。ショーはまだ終わっていない。最後にバーバラが渾身の一作を披露すると言われ、会場はまた再び興奮に包まれる。バーバラが完全に会場の空気を支配してすぐに、スポットライトが消えた。ランウェイが光り、会場が力強い足音と共に揺れる。ピンクのボンネットに、豪奢なチュチュを纏ったバーガックスが……雄叫びをあげてランウェイを走り出した!
会場はすぐにパニックになって、報道陣は衝撃的なショーの最後を激写しながら、蜘蛛の子を散らすように会場から逃げ出していった。
バーガックスは服を着ているのが嬉しいようで、もう空っぽになってしまったホールの全てを壊しながら、楽しそうに暴れている。
「ど、どうしよう!? ゼン、早くあんたなんとかしなさいよ!」
ショーが取り返しのつかないことになって、私は顔を真っ青にして叫んだ。
「ど、どうしようってもう、どうにもなんないだろ! ちくしょう」
ゼンが冷や汗をかきながらバーガックスの元へと急ぐ横で、ボスが泡を噴いて今にも倒れそうになっている。
「バ、バババ。バーバラ、この件、どうお詫び、ど、どうすれば、いい。私の、命で足りるかい……」
今更何を言っても遅い。私たちが連れてきたバーガックスがお行儀よくしなかったせいで、歴史的なショーが台無しにしてしまったのだ。ゼンがバーガックスをようやく捕まえて大人しくさせたのと同時に、私たちはなんとも、筆舌に尽くし難い罪悪感を胸に、気まずそうにバーバラの顔を見た。
「何謝ってんの? これでいいのよ。ブラックフリルはこれからも、周りを蹴散らしていくのだから。無理を言って動物園の人慣れしてる個体を借りる手もあったのだけれど、できることなら暴れて欲しかったのよ。だからアンタ達にかけてみたってわけ」
バーバラはその豊満な胸の間からショーの企画書、絵コンテを出して、私たちに見せつけながら笑い声をあげた。その絵コンテには、「最後はすべて壊しておしまい」というト書きと共に、バーガックスが観客を喰らっている絵が描いてある。幸い怪我人は居なかったようだが、この絵コンテ通りになっていたら、ブラックフリルは翌日に倒産していたのではないだろうか……。唖然とする私たちをよそに、バーバラはバーガックスにも臆することなく近づいて、頭を撫で始めた。
「このバーガックスちゃんには小惑星を購入して、専属の料理人もつける。これからも専属モデルとしてアタシとタッグを組んで頑張っていくわ」
バーバラに言われ、ゼンは少し取り乱した。
「えっ!? そ、そっか。そうだよな……お前も、広い家の方がいいよな」
いつもの私なら「どうやって飼育するつもりなんだ」とゼンを咎めているだろうけれど、今日はそういう気が何故か起こらない。代わりに博士が、名残惜しそうにバーガックスを撫でるゼンにとどめを刺すように呟いた。
「世の中、金ぢゃからな。どんな生き物だろうと金をかけられて育った方がいいに決まっとる。ウチじゃ無理ぢゃ諦めい」
「博士さあ……」と姐さんが言った。
相変わらず全く他人を気遣わず、自分が感じたことを言いたい時にすぐに言うんだから……。
「とにかく、アンタ達には本当に感謝してもしきれないわ。ネット見る感じショーの反響も良さそうだし、これからもまた忙しくなりそうね。報酬はもちろん振り込んでおくし、制服の他に色々とお土産用意しておくから、それまでエルラダのショッピングを楽しんでってちょうだいね」
バーバラはそう言うと私たちにお辞儀をして、たくさんのスタッフに片付けの指示を出し始めた。
予想外の旅路を経て、エルラダで購入した服、さらにはバーバラが直々に選んでくれたジュディスとマーフィー君も含めた特務部第三課全員分のセットアップ、それから仕立ててもらったゼンと私の制服をお土産に、私たちは事務所までの道をのんびりと進んでいた。
「ふんふん」
鼻歌を歌いながら、窓に映る制服姿を見る私。黒を基調としたデザインのこの制服は、落ち着いた生地でつくられ、丈夫な縫製によりボタンも全く落ちないと評判だ。姐さんはそんな私を見てくすりと笑った。
「アンタ、本当に制服着たかったのね~」
「当たり前じゃないですか! 二千年の歴史を誇るブランドの制服……しかもトップデザイナーに仕立ててもらったんですよ!」
制服は完璧な着心地で、体の一部のようによく馴染んだ。それでも先ほどの血気迫るショーとバーバラのファッションへの姿勢や歴史を知った今、とても重たくも感じる。
「しかし、本当に成功してしまうとはね……」
ボスはバーバラから贈られたフライトキャップを気まずそうに頭に載せながら、いまだに夢見心地の顔で呟いた。
「若者の力は偉大なのぢゃ」
そう言う博士もバーバラからもらったキッチュなデザインのサングラスをすっかり気に入ったのか、ご機嫌そうに着けている。
「珍しくご老体がまともなこと言ったな」
グレイ先輩は何度も鏡の前で、例に漏れずバーバラに貰ったネクタイを結び直しながら、余計なことを言っていた。
「お前はもう若くないぢゃろ。加齢臭がするぞ」と博士は舌打ちして言い返した。
「んだとジジイ、もういっぺん言ってみろ。バーバラから服もらって浮かれてんじゃねぇぞコラ」
「それはお前もぢゃろ。若モン気取りの中年」
この二人は本当に仲が悪い……。姐さんが呆れたように頭を抱えている。その間、マーフィー君は一言も喋らずにジュディスのパーツを眺めていたし、ゼンはバーガックスと撮った写真を時折涙を流しながらずっと見ていた——。
ゼノ星系の首都、惑星ゼノ。連盟政府の役目を持つゼノ・ユニヴァース社は、この惑星を丸ごと本社社屋としており、今日も昼夜問わず輝いている。
巨大なビル群の中、一際大きな本社の本棟。その最上階に今、宇宙を代表するファッションブランドであるブラック・フリルの代表、グランドアルコールフリー・バーバラが、馳せ参じた。
エレベーターのドアが開く音で、窓際でカクテルの入ったグラスを持っていた二人が振り返った。
「あら、来たのね」
「バーバラ、この度は本当におめでとう」
屈強なボディガードの間を潜り抜けるバーバラを二人は笑って迎え入れ、バーバラは礼を言った。
「マーク、サーク。ありがとう」
この二人の女性こそ、ゼノ・ユニヴァース社の取締役と惑星共同体ゼノ連盟の盟主を兼任している、この宇宙の最高権力者。マークとサークである。マークの髪は金色に、サークの髪は銀色に、宇宙のすべての光を一手に引き受けるように輝いている。二人は髪の毛と瞳の色こそ違ったが、同じ宇宙の闇の色をしたドレスを着ているし、その仕草はまるで合わせ鏡のようで完璧にシンクロしている。彼女たちは滅多に人前に姿を表さない。宇宙の恒久的平和の実現を謳う二人は、圧倒的なカリスマと経営手腕、政治手腕でここまで上り詰めた鬼才だ。
「いつもバーバラにはお世話になっているものね。限定のバッグはマークと二人分注文させて貰ったわ」
サークは窓から割れたガラスに光を当てたように無秩序に輝く都市を見下ろしながら言った。
「言ってくれれば送ったのに!」
バーバラはウェイターからカクテルを受け取って会釈しながら、少し申し訳なさそうにしている。
「何言ってるのよ。あなたは私たちのデザイナーであると同時に、一人の友人なのだから」
マークはカクテルを一口飲んでから、怪しい光を孕んだ瞳でバーバラを見つめてそう言った。
「それもそうね。ところで、今回のショーでは、アンタたちの子会社の人に本当に世話になったのよ」
バーバラの切り出しに、サークとマークは顔を見合わせた。
「あら? そうなの? 事前に何か依頼があったとはどこの部門からも聞いていないけれど」
「ゼノ・エクセルキトゥス社——ゼノ連盟軍部の子達よ。そこの、なんて言ったかしら。特務部だわ! 特務部第三課の課長とアタシ、友達で。それでショーの演出について悩んでる時、そこの子達とばったり会って、藁にもすがる思いで——」
バーバラはJ・J率いる特務部第三課の活躍について、マークとサークに熱弁した。しかし、マークとサークはにわかには信じ難そうな顔をした。
「窓際部署なのに、バーバラの無理難題をこなしたっていうの?」とサークが尋ねた。
「新人たちが活躍したんだって、課長のJ・Jには報告されたわ。ガグーア人のボウヤと、それから地球人の天才少女って」
バーバラが端末を起動し、J・Jから受け取ったゼンとステラの履歴書のデータを見せた。
「——あら? この地球人の子の方、軍部に留まらず本社でスカウトしたいって人事部に言ったのに。どうしてこんな部署にいるのかしら? まさか振られちゃった?」
マークがステラの履歴書を指差して目を丸くした。バーバラはその様子を見て身を乗り出した。
「このコ、アンタたちがヘッドハンティングするような人材なの?」
「ええ、そうよ。もしゼノ社を受けないなら直々に契約を持ちかけに行きたかったくらいね。この子の頭脳は宝だわ——何にも代え難い、ね」とサークは言った。
「それにしても本社に来ないどころか窓際部署なんて——何かの間違いか、相当な変わり者なのね。この子。まあ、もう少し泳がせてみても面白いわね、サーク」
「そうね、マーク。この部署にも油を差してやりましょう」
マークとサークは顔を見合わせて笑った。
「アンタ達……またロクでもないこと考えてるのね」とバーバラが言った。
「失礼ね。私たちの仕事は宇宙を維持することよ」
マークとサークがバーバラに口を揃えてそう言った時、二人の背後の大窓を巨大な宇宙船の影が掠めた。暗くなった室内の中で、マークとサークの瞳は互いの運命を預け合うが如く怪しく輝いていた——。
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