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方法
しおりを挟む邸に戻り仕事をして気を紛らせ、夕食を断ったあとはずっと自室に籠っていた。
夜は深くなり、空は溜め込んだ雨を容赦なく地上へと叩きつけている。
湯浴みを済ませ、葡萄酒を瓶半分減らしたところでやっと少し気分も落ち着いてきた。
ランプの灯りが揺れるのを映しながらまたグラスを空ける。
まず何をするべきだろうか。
次リリーに会う公式な予定は二週間後の茶会だ。
その間少しでも頭を冷やさなければ。
何の手札もなく会うことなどできない。
何をするか。
探すしかない。
できるだけ情報と証拠を集めたい。
確実な証拠が欲しい。
誰がどう見ても明らかな証拠が。
……できれば証言も欲しいが、王宮のなかでは期待できないだろう。
きっとリリーに寄り添う真実しか与えられない。
自分の証言だけでは、勘違いだと一蹴され終わる可能性もある。
揃って否定されてしまえば、無かったことにされるかもしれない。
ーーそんなこと。
グラスを掴む手に力が入る。
それだけは、許されないだろう、リリー。
積み重ねてきた時間が嘘で塗り固められていたとしても。
まやかしだったとしても。
俺はほんとうのことが知りたいんだ。
たとえそれが、どんなに耐え難いことであっても。
ーー現在高等学院に在籍している王族はリリーひとり。
自分はもう卒業している。いくら婚約者がいるからといって、自由に出入りするのは難しい。
弟が一学年下にいるため家の者を使うことは不可能ではないが校舎はべつ、そしてやはり婚約者の身内だとしても頻繁に彷徨かせることは危険だし当然不審を招くだろう。
特技を持つ者たちもいるがそれらを使うには当主である父の許可が必要だ。
弟もだが、家族に話すのはある程度証拠を手に入れてからにしたい。
巻き込むのはまだ早すぎる。
否応なしにそうしてしまうことになるのだからそれまではーー。
方法は、手段は。
目まぐるしく巡らせてもまだ代替わりもしていない自分の力などほぼないに等しく、手数も乏しい。
情けないが事実。
それに今まで噂すら聞いたことがなかったのだ。
だから疑いもしなかった。
政略だとして腹の探り合いなど不必要だと思っていた。その点未熟者だと、見抜けなかった自分にも非はあるだろう。
ひとこと言ってくれたら。話してくれたら。
それがリリーのしあわせだというのなら、きっと身を引いただろう。
協力することはできない。応援することも難しい。
でもいつか時間が経てば、祝福することがきっとできただろう。
愛したひとの不幸など、願うわけがないのに。
恋というものは恐ろしい。
知らなければよかった。
こんなことなら恋など知らずに、一生を終えたかった。
こんな思いをせずに済んだのに。
未だに、
すべて知りたいと望みながら、夢であってほしいと、どこかで望んでいる。
そんな思いを知らずに済んだのに。
矛盾している。
早く忘れたい。
いちばん知りたいのはその方法だが、それはどんなことより難題なのだろう、と。
ジルベストは机の引き出しから便箋を取り出すと、ペンを動かしながら考えていた。
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