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しおりを挟む……楽しいと思っちゃだめなのに。
ひとりの馬車でため息を吐く。
まだ壊れていない座席の馬車はそれなりに乗り心地がいい。
この座席も、入学してきた義妹に壊された。
なんでだったかしら。たしか、壊れていないから、とかなんとかの理由だった気がする。
思い直さなくてもすごい理由だ。
セナとカノン。
ふたりと過ごす時間はやっぱり楽しかったんだってことをすぐ思い出した。
「…」
でもなくなると知っているから。
なくなるから、それまで、そう思っちゃだめかな。
そう過ごしても、せめてふたりといる時間だけは、…余計、つらくなるってわかってるけど、ーー
ほんとに、どうしてだろう。
どうしてわたしは戻ってきたんだろう。
誰かが、何かしたとしか思えないんだけど。
義妹かもしれないけど、そうでない場合は誰だろう。
なんで?理由はあるんだろうか。
今世と、前世。
……もしかして、ゲームの世界、とか。
でもわたしは前世で乙女ゲーなんてやったことないからもしそうだとしてもわからない。
でもゲームだったら攻略法とかあったんだろうな。
知ってたらどうにかできただろうか。
ーーゲームだったらリセットできるから、そうなった、とか…?
わからない。…だめだなぁ…。
ふたりに会っちゃったからかな。
…なんとかできるのかなって思っちゃう自分がいやだなぁ…。
……だめだ、うん、よくわからないんだから、大人しくしてたほうがいい。
今まで通り、静かに息をひそめて過ごす。
死んだらやり直し、って。
ゲームならできるけど、選ぶのはあくまでも自分だ。
そしてわたしはそれを望まなかった。
…誰かに望まれた?なんてそんなことはあり得ない。
この世界で、わたしを望んでくれるひとなんていないもの。
「ーールコラ。」
邸でわたしの名前を呼ぶひとはいない。
「……ミドル様」
ひとりの例外を除いては。
整った顔立ち。金髪に、水色の瞳。
ミドル・キャーベリ伯爵子息。
ーー存在すら忘れかけていた、わたしの婚約者。
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