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ユラ⑥
しおりを挟むそれ、を見たとき、えも言われぬ灼熱が駆け巡った。
血が沸騰する。
全身が粟立ち、完全に獣化する一歩手前。
鼻で匂いを嗅ぎながら耳は気配を逃さないよう尖り、目は姿を見逃さないために鋭くなる。
"運命"
神経が認識するまえに、遺伝子が理解していた。
腹の奥から昂ってくるモノに歯を食い縛っていた。
『……とにかく会えばすぐわかるって。それしか考えらんなくなんだよ。
遺伝子も魂も歓喜してるみたいにな。
普段どれだけヒトぶっていたって、やっぱり違うんだって思い知ったよ。
ーーまぁ俺は独り身だったからよかったけどお前はなぁ……つらいことになんなぁ……会わないで過ごせればいちばんだけどよ。
でも断言するけど…会っちまったら抵抗なんか無駄だぞ。抗えねえ。それはお前のせいじゃねえ。
……運命じゃなかった、……それだけだ。』
いやだ。
俺はヒトだ。
ルーシー。
獣じゃない。
止めろ。
来るな。
ルーシー。
動け。
逃げろ。
いやだ。
いやだ。
ケモノじゃない。
近寄るな。
ルーシー。
ルーシー。
俺は、
髪飾りの入ったポケットを裂きそうになるほど握りしめた。
おかしくなる。狂ってしまう。
隊服が張り詰めてゆく。
今すぐ解放して、足のあいだに突き立てたくなる。
よろけながら、後退って路地に逃げ込んだ。
匂いがする。空気から漂ってくる。
そのまま路地裏深くもぐり込んでーー
ルーシー…、
そうしようとしていたはずの足が勝手に向きを変え、角から濃厚な匂いと共に現れた女に噛みついていた。
ガクガク痙攣する女を後ろから追い立てる。
両手を手綱のように引っぱりながら胎を突き破る勢いで。
女は悲鳴を上げ続け、透明な液を撒き散らす。
体力があるせいか気をやることもなく、みちみちと隙間なく埋まる男の陰茎を奥へ奥へと誘い込んだ。
ひときわ大きな打擲音に涎を垂らす女の身体の力が抜け、その重力が男に降りかかるがそれをものともせず下から上へ振り上げるような動きは、小柄な身体をいとも簡単に宙へ浮かす。
獣同士の交わり。
互いに言葉もなく、愛をささやくこともない。
強烈な匂いを放ち、唸り声のような呼吸をくり返す。
ただ純粋な本能を至上として、役に立たない理性などとうに手放した者たちの行為はいつまでも続いた。
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