愛を乞う獣【完】

雪乃

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ユラ③

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ルーシーはちっさいから、俺の手とか身体に、ぜんぶ収まる。はじめからルーシーの居場所だったみたいに。


どこもかしこもちいさくて、狭い。



 
初めてのときは大変だった。
案の定俺のは半分も挿入らず、時間をかけてはいたけどルーシーはずっと泣いていて。
それに俺は興奮するしで、まぁ、色々と。



……よくはいったな、と今も不思議ではある。



「…ぁ、ぁ、…っ」



こんなちいさな身体で、俺をのみこんでる。そう思うとたまらなくなる。

それを何度も感じたくて、ずろろろ、と変な音が出そうになるほど出し入れをくり返す。
焼き付けるように殊更ゆっくり、肉の締め付けを感じてれば、耐えきれなくなったルーシーがかわいく泣き出す。


動いて、と。


先端から、ぐっと膨らんでゆく。




どこもかしこも、甘い。




「、!ぁ、ぁ、ゆら、さ…っ」



本能が、首をもたげる。


孕ませたい。

この女を。

奥の奥まで注いで、連れ去って、巣穴にこもる。

そうして孕ませる。

何度も何度も、その胎のなかが真っ白に染まっても、まだ。



あー喉が、渇く。



「…」



発情期じゃないのは運がいい。

もしそうだったら、こんなものでは済まない。


突き出た犬歯を舌でなぞりながら、見下ろす。


投げ出された腕を拾い、足を拾う。
腕は頭上へ、足は大きく開いたまま、見えるように。
グロテスクな凶器が、自分の肉をかき分けるのを見せつけてその感覚をすり込む。

気持ちがいいことなんだと、教え込む。


「見ろよ、ルーシー」


ばちゅ、ばちゅ、と響く合間に聞こえる俺の声は愉しげで、ルーシーのか細い嬌声にますます誇張してゆく。



コレ、が。

俺以外のモノである必要なんてない。



「愛してる、ルーシー」



でも俺はケモノじゃない、ルーシー。


傷つけないでキスする方法だって、俺は知ってる。









ユラの父親は狼獣人だった。
真っ当に生きていた男だったが、ある日運命の番に出会った。
ヒト族の女性。
ユラの父は独り身であったが、その女性には夫がいた。

だがそんなことは関係ないとばかりに女性を攫い、その胎内に証を残した。

父だった男は捕縛され国外追放。番感知不可魔法を刻まれ、その後は行方知らず。
母だった女性は教会に保護されユラを産み落としたあと、亡くなった。
女性の夫は復縁を望んでいたが、最後までうなずくことはなかったそうだ。

すべて教会や孤児院のシスターに聞いた話。

ユラ、という名も母だった女性が名付けてくれたということも。


ユラは恐ろしかった。
本能というモノは、そこまでヒトをおかしくさせるのか、と。
ユラは、自分をヒトだと思っている。獣じゃない。

だが感情が昂るとあらわれる耳、尻尾、鋭い爪、牙。唸り声。

獣じゃないのにあらわれるそれが、恐ろしかった。


父だったヒトの苦しみ。
母だったヒトの苦しみ。
母の夫だったヒトの、苦しみ。


傷つけたくない。

ひとりで生きていくつもりだけどもし、出会ってしまったら。

運命の番。恋人。好きなひと。


どうかお願いしますと。


子どもだった狼獣人の少年は、ずっと祈っていた。



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