愛を乞う獣【完】

雪乃

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ユラ②

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「ーー…ユラさん…っ」

「……おー、お疲れ」

「…?遅れちゃいましたか…?待たせてごめんなさい」

「んや、へーき。……かわいいなぁと思って、見惚れてた」

「っ、」


うそ、とか聞こえるけどほんとだって。

うすく化粧をして、綺麗な髪はふわふわとゆるく結われて。おなじ色のワンピース。
首まで覆ってるデザインだからかな、大人っぽく見える。


そこ・・、隠されると見たくなるな。



ルーシーはかわいい、ほんとに。
たまに、閉じ込めたくなるくらい。
誰にも、見せたくなくなるくらい。


なんだろうな、愛って、こんな感じなんかな。


俺だけのモノにしたいって、いつも思ってんだ。








「……なァいつんなったら、さん付けなくなんの?敬語と、」

「…そのうち、に、」

「ふうん。…ベッドじゃ素直なのにな」


耳もとで囁いてやれば、びくりと震えて、小さな両手が俺の服を掴む。
この仕草が俺はけっこう好きだ。
顔を真っ赤に染めながら、そのまま埋めてくる。


「…もう、…」

「…」


しかもちょっと揶揄うだけで、この反応。


……だめだ、今日は、記念日デートだ。
それはあとだ、今はだめ。だめだ俺、耐えろ。
ユラさん、…と甘ったるく聞こえる温度にぐっと言葉が詰まり、盛大に顔を顰めた。
はああ、と自分で吹っかけときながら後悔する。





「…行くか、」


こく、とうなずく。
じゅうぶん落ち着くためにけっこう長く抱きしめていたからか、ルーシーの髪は少し乱れていた。
ごめんと言いながら触れれば、くすぐったそうに目を細める。
俺の手に添いながら、しあわせそうに。



不思議な気持ちになる。



なんでこいつはこんなに俺を信じているんだろう。
なんで俺はこんなにこいつを守りたいと思うんだろう。


種の違い。弱いから。強いから。




「……やっぱり誰にも、見せたくねえな、」



自然に落ちた。



「愛してる、ルーシー」



はじめてだったのに、その言葉はすんなり落ちてきた。
俺はずっと、そう言いたかったんだと思った。











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