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後悔
しおりを挟む『ーー…ティアリア、こんなところで何してるの?…………よ。』
夢のなかで聞こえる声は、誰の声だろう。
すべて自分が招いたこと。
短絡的で浅慮な行動が、人の人生を歪める。
どうして私は、その考えに至らなかったのか。
王太子殿下のみならず、
多くの人の想いを踏み躙る事になるかもしれないと、どうして及ばなかったのか。
そうして私はこれからを過ごすつもりでいたのだ。
何もなかったように、自分だけ。
記憶も、魔力も、失くした。
代償を払った時点で契約は完了している。反転するなど手遅れ。
死んだ者を生き返らせる事などできないのとおなじく、
無くなったものを取り戻すなど、できない。
何より私が元に戻れたとして、元に戻れるとは限らない。
それこそ誰も認めてはくれない。
こんな都合の良い話はない。
こんな馬鹿げた話はない。
床に齧りつく事はできる。這いつくばる事だってできる。
けれどとても言えない。
無責任にすべてを放りだし逃げておきながら責任を果たしにきた、など。
いっそのこと、命じてくれたらーーーー
『……さよなら、ティア』
わたしは
あの方の想いをまた、蔑ろにするというの、私は。
いつから私はこんなに狡い人間になってしまったの。
『…ティアリアさまは、つらくはないのですか…?』
つらい…?私が?
つらいのは私じゃない。わたしじゃないあなた。
私以外の、誰か。
私のせいで傷ついた、あの方。
どうしたらいいの。
何ができるの。何をすればいいの。
どうしたら、償えるの。
「…っ」
あの方は私を、ゆるしてくれるだろうか。
夢だったらいいと。
今になって後悔している事を。
すべてを捨てて手に入れた自由に浮かれて、
貴方を。
誰かを、犠牲にしていたことに今になって、気づいた私を。
ーーきっと、ゆるしてはくれない。
「……リア?まぁあなた、明かりもつけずに何を、」
「かあさま」
懐かしい呼び名で呼んでも無邪気なころには戻れない。
でも呼ばずにはいられなかった。
戻りたかった。
「…リア…?…っリア!!誰か…っ」
『…………戻りたいの?』
戻りたい。
『誰のところに戻りたいの?』
わからない。
『どこに戻りたいの、ティアリア』
わからないの。
『…しょうがないなぁ…』
おいで。
夢のなかで、手を伸ばした。
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