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おわりのはじまり⑨
しおりを挟む「抱いてるとき以外初めてエル様って言った」
「…っ!?、そ、れ以外でも呼んでますっ」
「…だっけ?」揶揄うように言いながら抱き寄せて、両手をわたしの腰で組み、覗きこむ。
「っ、ちょ、っと、!みて、」
「もういないよ」
「!?」
早業侍女たちはいつのまにやら部屋から消えていた。
いい?と言ってるみたいな瞳が近づいて、くちびるが重なる。
ふれるだけ、何度も。
やっぱり、へん。
胸がいたい。
もうずっと、いたくて。
理由を探していた。
だってこんな、予定じゃなかった。
「…もうあんま、…抵抗しなくなったね、クリス」
「っ、…し、して、「……目ぇ閉じてんのに?」
「…っ、」
ばちりと開いた目のまえに、どんなものより綺麗な宝石が
わたしだけに、輝いている。
「…クリス?」
胸がいたくて、くるしい。
「言いたくない…」
「え、?」
顔が勝手に、熱を持ってく。
「…知りたくない…」
このきもちの正体を、わたしは。
胸に添えている手に、顔をうずめる。
「……もう少し、……まって……」
つよく、抱きすくめられる。
きこえる鼓動が速い。
このひともおなじように胸がいたんだり、
こころを、揺さぶられたりするんだと思うとなんだか、泣きたくなってくる。
とっくに気づいていたとしても勇気がいる。
言葉にするには、覚悟がいる。
でもそこまでの核心は、わたしにはまだない。
だけどあふれて、
あふれて、止まらなくなったら。
他に何も考えられずにただひとことを、口にしてしまうかもしれない。
口にしてしまえば、言いわけなんかできなくなる。
「…………だからそれまで、」
待っていて。
「閨事はお断りいたします」
「ーーーーーーは?」
わたしも命がけなんだから、道連れですよ。
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