上 下
28 / 46
二章 私の大事なモノとの出会い

あの頃の話 その三

しおりを挟む
「そのあとローズくんとレイガくんが会ったんだけど、ローズくん直ぐにレイガくんになついちゃったんだ」

イズミは少し眠そうだ。

「最後にもう一つの出会いの話をするね?子守唄の代わりに聞いてね」



いつも通り泉の所で歌を唄ったらレイガくんが来たので、レイガくんと少し話した帰りに裏庭で女の子が隠れる様に座っていた。

「レイガ様を守りたいけれどご迷惑はかけたくない。どうしたら、、、人には話せないわ」
「どうかしたの?お姉さん」
「あっ!」

女の子は泣いていた。

「ごめんね?こんな所見られて嫌だったでしょ?」
「私が勝手にここで泣いていただけで貴方は悪くないわ」
「お姉さん良い人だね。普通は見られたら何でこんな所に居るのかって怒るよ?」
「私が勝手に泣いていただけで貴方はこの通り道を通っただけよ。怒る理由がないわ。というより、私の方こそ泣き顔なんてものを見せてしまってごめんなさいね」
「?、、、お姉さんの泣いてる顔は綺麗だったよ?お姉さんの心が綺麗な証拠だね。けど、私はお姉さんが笑ってる顔の方を見たいけどね」
「き、綺麗?、、、ふふっ、ありがとう。少し元気が出たわ」
「やっぱり、お姉さん笑ってると可愛いね。可愛いお姉さんの顔を見られて私も嬉しいよ。じゃあね、お姉さん」

私はその場所から去ろうとした。
(お姉さんはもう大丈夫みたいだし、知らない人があまり居ても気まずいよね?)

「待って、その、もう少しお話を聞いてくれるかしら?」
「お姉さんが良いなら良いよ?」
「お願い。その、私が泣いていた理由はレイガ様の事なの」
「レイガくんの?」
「貴方!レイガ様と知り合いなの?」
「うん、友達だよ」 
「レイガ様のお友達、、、。レイガ様のお友達に言う事ではないのだけど、、、。私、レイガ様のファンなの!」
「レイガくんにファンがいっぱい居るのは知ってるよ?」
「私はレイガ様に恋愛感情を持っていないの。私が持っているのは尊敬と神様を崇める様な信仰心なの」
「そうなんだ。けど、お姉さんは何に悩んでいるの?」

お姉さんは少しためらってから話し始めた。

「私はレイガ様がとてもお強いのを知っているの。けれど、私、その、、、私がレイガ様をお守りしたいの!」
「私ならお姉さんみたいに綺麗な人に守られるのは嬉しいけど、レイガくんは男の子だもんね」
「綺麗?嬉しい?、、、そうなの、レイガ様にご迷惑はおかけしたくないの」

お姉さんは何故か顔を赤くしたあとそう言った。
(レイガくんに迷惑かけない様な守り方か、、、、!)

「お姉さん」
「何かしら?」
「最初はファンからレイガくんを守れば?」
「ファンから?何故?」
「ファンの中には過激な人がいるんだ。それにレイガくんは他人にベタベタ触られるの嫌いでしょ?だから、最初はそういう人達からレイガくんを守れば良いよ」
「そうなの!分かったわ。けれど、さっきから言っている最初っていうのは?」
「レイガくんに私は守りたいだけで貴方を不快になる事はしたくありませんっていうのを分かってもらえれば、レイガくんお姉さんの事を信頼して守らせてくれるよ」
「ありがとう!頑張ってみるわ」
「うん、頑張ってね」

そう言って別れようとした時、お姉さんが引き留めた。

「ごめんなさい!私まだ名前も言ってなかったわ。私は二年魔法剣科のランジェよ」
「私は一年吟遊科のセイカだよ。よろしくね、ランジェさん」
「こちらこそ、よろしくお願いするわ。セイカさん」

ランジェさんが自己紹介してくれたので私も自己紹介した。
(今日は綺麗なお姉さんのランジェさんと知り合いになれた。良い日だな)



ランジェ視点


私はレイガ様をお守りしたい!けれどそんな事をレイガ様は望んではいないでしょう。
レイガ様のご迷惑にもなりたくない。
けれど、レイガ様をお守り出来ない事が悔しく涙が出た。

その時、一人の女の子が私に声をかけてきた。
振り返ると布を被った吟遊科の女の子が居た。

その子は私が泣いていたのを見て謝ってきた。
泣いている所を見られて私が嫌な気持ちになっただろうからって言っていたけど、私が勝手に泣いていただけなのでその子が謝る事はない。
むしろ逆に泣いている顔なんて見せてその子が嫌な気持ちになったでしょうに。
なので、私はそう言って謝るとその子は私の涙は綺麗だった、心が綺麗な証拠だと言った。
しかもその子は私の笑った顔が見たいと言った。
私は綺麗と言われて少し動揺したけど、その子が心から言っている事は伝わったので少し元気が出て笑ってしまった。
その子は私の笑った顔が可愛いと言ったあと立ち去ろうとしたので私はとっさに引き留めてしまった。

その子は私が良いなら良いよと言ってくれた。
私はさっき会ったばかりのその子に泣いていた理由を話した。
驚く事にその子はレイガ様のお友達だった。
(レイガ様をくん付けで呼んでいる方を初めて見ましたわ!本当にお友達なのね)

私はこの子なら大丈夫だと思って話を進めた。
私はレイガ様のファンだけどレイガ様に恋愛感情は一切なく、あるのは尊敬と神様を崇めるような信仰心なのだと説明した。
その子は私が何に悩んでいるのかを聞いた。
私は少しためらってからレイガ様がお強いのは知っているけれど、私がレイガ様をお守りしたいと打ち明けた。
その子は自分なら私みたいな綺麗な人に守られたら嬉しいけどレイガ様は男の子だもんねと言った。
(この子は一切意識して口説いてないでしょけど、心から言っている事がなんとなく分かるのでトキメキそうになるわ)

顔が赤くなったけど、話を進めた。
レイガ様のプライドを傷つけたり不快な思いをしてもらいたくなかった。
すると、その子は最初はファンからレイガ様をお守りすれば良いと言った。
説明を聞いてみると、なるほどと思った。
レイガ様に少しずつ信頼してもらえれば良いと分かった。
悩みの解決方法を教えてもらったのでお礼を言った。
その子は頑張ってねと言って立ち去ろうとしたのでまた引き留めて今度は自己紹介をした。

その子はセイカさんという名前だと分かった。
後に、セイカはかなり(特に女の子に)人気になってしまった。
あの性格なら仕方ないと納得してしまったけれど。
セイカさんと知り合って少したった時にレイガ様がセイカさんに恋をしている事がわかり“天女様と神様を応援する隊”を作った。

セイカさんには感謝しているし、レイガ様の次に守りたい子でもある。
私はセイカさんが幸せになるのを見守っていきたいと思っている。

あの時、あの場所で泣いていて今は良かったと思っている。
あの優しい雰囲気と何を話しても大丈夫だと思わせる不思議な魅力を持ったセイカさんの友達になれたのだから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...