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旧版
冒険の書1 武姫と漆黒の風
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魔物が蔓延るこの世界では、剣や槍、弓等を用いた武技を鍛えて魔物と戦うことを生業とする冒険者という職業の者たちが数多く存在した。
ここリスべルは、そんな冒険者達の活動拠点となる町の一つであるが、この町を拠点として活動する武神に愛されし姫という意で武姫と呼ばれる彼女は、その名に似つかわしくない白くきめ細かな肌、サファイアのように美しい碧眼、薄紅色のふっくらとした艷やかな唇、金糸のように美しく長い金髪の持ち主であり、その美しい見た目にも関わらずその天才的な武における成長速度で、この国に在籍する冒険者ランキング2位の座まであっという間に上り詰めた非常に高い実力を持つ剣士だった。
だがそんな彼女の目の前には、どうしても超えられない壁・・・冒険者ランキング1位の座をここ数年の間キープし続けている、この国では珍しい漆黒の髪を持ち、その太刀筋が風のように鋭いことから漆黒の風という異名を持つ彼が、常に立ちはだかっていたのだった。
武姫はそんな漆黒の風を強くライバル視し、いつか彼を超えてランキング1位の座を奪いたいと思っていた。
そうなることで武姫の異名は全国へと轟き、自分を陥れた父と義母、義妹の耳にも届くことになるだろうから。
だが当の漆黒の風はというと─。
「なぁアリア。
俺とパーティを組まないか?
そうすればソロでは不可能だった依頼だって引き受けられるようになるし、毎日美味い食事だって作ってやるぞ?
俺はこう見えて、料理の腕には自信があるんだ。」
と呑気に女性に人気のその凛々しく整った顔を崩しては、ギルドで顔を合わせるたびにそう言って口説いてくる、武姫こと本名アリア・ラスフィールにとっては、少し鬱陶しくも憎めない存在でもあった。
アリアは朝冒険者ギルドが開くと同時にここに来て、新しい依頼書が壁に張り出されるのを椅子に座って待っていたが、少し後から来た漆黒の風が彼女と同じ目的で来た冒険者達の中から彼女の姿を見つけ出し、さも当前のように隣の席を陣取ると、いつものように勧誘をし始め、今に至るのだった。
「嫌よ。
っていうかアリアだなんて馴れ馴れしく呼ばないでくれる?
漆黒の風。」
「何故?
武姫なんて可愛げのない異名で呼ばれても嬉しくないだろう?
それに俺のことも本名で呼べと言ったはずだ。
スヴァルト・ビンド・・・ヴァルでいい。」
そう言って彼は少し癖のある艷やかな黒髪を揺らしてサックスブルーの目を細めながらアリアの顔を覗き込んだ。
「嫌よ漆黒の風。」
「・・・本当に可愛げがないな。
もう一度言う。
パーティを組まないか?アリア。」
「嫌って言ってるでしょ!
あんた、私が前にいたパーティで、どんな扱いを受けていたか知っているでしょ?
あんな思いをするくらいなら、ずっとソロでやって行くって決めたんだから・・・」
アリアは自分は武の才には恵まれたが、人との巡り合わせはとことん悪かったなと思い、今までの人生を一人振り返った。
(私は伯爵家の長女として産まれたが、10歳の頃に父の浮気相手に追い込まれた母が自殺をしてから運命の歯車が大きく狂い始めた。
母亡き後すぐ、後妻が私よりも2つ年下の義妹を連れて家に入り込んで来た。
その後も私を厄介者扱いする義母と義妹の嫌がらせに耐え続けたけど、ついには12歳の頃、義母の贅沢三昧の所為で家が傾きかけ、借金を肩代わりしてくれるという侯爵の養女として(というのは表向きで、実質はロリコンと名高い侯爵の愛妾として)家を出ることになったのだ。
だが侯爵家に向かう途中で盗賊に襲われ私一人が生き残り、盗賊に捕まって人買いの下へと運ばれている所を盗賊退治の依頼で出向いていた冒険者パーティに助けられたのだ。
その後、実家に戻ることを望まなかった私は、彼等が盗賊を退治した時には既に死んでいたとしてそのままその冒険者パーティに入れてもらい、冒険者として生きることになった。
私は戦いにおいては全くの素人だったけど、飲み込みが早く、すぐにパーティの役に立つようになったので、最初のうちはとても可愛がられ、それなりに幸せに過ごせていた。
しかし、3年して私が15歳になる頃には、私のレベルは前線で長年戦い続けてきたパーティリーダーをも超えてしまった。
その日を境に親切だったリーダーの態度が急変し、ここまで面倒を見てやった恩を返せと言われ、リーダーが勝手にエントリーした高難易度の依頼を一人でこなさせられ何度も死ぬような思いをしたのに、その報酬と冒険者のランク査定の基準となるポイントの殆どを自分以外のメンバーに割り振られ、私に与えられるのはパーティメンバーに最低限割り振られる僅かな報酬とポイントだけ・・・。
そんな半ば奴隷のような生活を1年ほど続けたある日に漆黒の風に出逢った。
確かその時は、欲を見たリーダーが今までにない最高難易度のドラゴン討伐の依頼を受け、その当時から冒険者ランキング1位の座に君臨していた漆黒の風が丁度同じ依頼にエントリーしていたのだ。
相手が強敵のドラゴンということもあり、ここは互いのパーティで報酬とポイントは山分けしようということで協力し合うことになったけど、その際に私達のパーティに同行した漆黒の風が、パーティ内での私の扱いに気がついたらしく、パーティからの脱退を勧め、ソロになる道を手助けしてくれたのだ。
リーダーはその時の漆黒の風の報告を受けた冒険者ギルドにより登録を抹消され、今は何処でどうしているのか不明だ。
同じパーティにいた他のメンバー達は登録抹消は免れたようだが、漆黒の風に睨まれている為に彼が主に拠点としているリスベルには居辛くなり、違う町へと移っていったようだ。
私は漆黒の風にとても感謝し、私に出来る謝礼をしようとしたが、漆黒の風はどんな金品もアイテムも決して受け取ろうとはせず、それならパーティを組んでくれの一点張りだったので、まだその時のお礼は出来ていない状態であり、それが彼を邪険に出来ない理由にもなっている・・・。
勿論最強の冒険者であり英雄とも謳われる彼にパーティへ誘われることが嬉しくないわけではないけれど、元パーティでのトラウマもあってか、どうしても誰かとパーティを組む気にはなれなかった。
それよりも目下の目的は、私がまだ12歳の頃に後妻に言われるがまま変態侯爵へと売り飛ばそうとした父、そして母を苦しめ自殺に追い込み、贅沢三昧で散財した挙げ句、私を変態侯爵の下へ売るようにと父を仕向けた後妻、私を虐め苦しめ続けた義理の妹の3人を、私が冒険者ランキング1位になって武姫の名と顔を轟かせることで、見返してやることだった。
なんの地位もない冒険者とはいえ、全国ランキング1位ともなれば注目され、王族からも一目置かれる存在となる。
現在の2位では1位に比べてその存在は霞み、冒険者以外から注目を集めることは殆どないのだ。
・・・そう言えば漆黒の風はここ数年常に1位の座に居続けているから、当然王族貴族からの引き抜きや爵位を賜るお声もかかっているだろうに、全くそういった話に乗る気配がないのよね。
彼には成り上がりたいという野心が無いのかしら・・・。)
とアリアが長い回想と思考を終えると、漆黒の風が先程の彼女の言葉に対してこう返事をした。
「それを言うなら俺だって、生まれつき身体能力が高すぎる所為で昔所属していたパーティではやっかみの対象だった。
そこを辞めて以来ずっと誰とも組まずにソロでやってきたが、ソロではダンジョンの下層に入ることも禁止されているし、ギルドに張り出される依頼書もパーティを組んている冒険者に限定されたものの割合が多く、ソロで活動することに限界を感じていた。
かと言って昔のような思いを繰り返してまで適当な奴らとパーティを組みたくはなかったし、何処かに俺とパーティが組めそうな強い奴はいないかと、ソロで活動しながらもずっと探していたんだ。
そんな時、あのドラゴン討伐で初めてお前の戦いっぷりを見て、やっと見つけたと思った。
本当の仲間になれる奴をな。
だがあの時のお前は昔の俺と同じような境遇に置かれていたし、まずはそこから救い出すことが先決だと思い、お前にあのパーティからの脱退を勧め、その手助けをした。
それ以来ずっとお前をパーティに誘い続けてもうじき1年になるが、そろそろ折れてみてはくれないだろうか?
お前が昔のことでパーティというものを恐れ、信じられなくなっているのはわかる。
だがお互い”訳ありの常人離れした者同士”ならやっかみ合うこともないし、互いを高めあっていくことだって出来る。
パーティを組むなら唯一無二の存在だと思うんだがな?
なのに何故俺の誘いを拒む?」
「だって・・・あんたのいうパーティって、普通の冒険者仲間としてのそれだけじゃなく、なんとなく男女関係の意味合いも含まれていそうなんだもの・・・。
私だって一応女だし、男のあんたと二人でパーティを組むことには、それなりに慎重になるわ・・・。」
と頬を染めて目を逸らしながら返すアリア。
「・・・まぁ確かに、俺はお前の見た目も気に入っているからな。
正直に言うと、一年前お前がドラゴンと戦う姿を見たあの時・・・お前の強さだけでなく、粗末な装備にも関わらず美しく舞うその姿にも強く惹かれた・・・。
そんなお前が旅の途中で隙を見せれば、俺も男だから当然襲いたくなるだろうな。
だが安心しろ。
そうなったとしても、お前から同意の得られないことは決してしない。」
漆黒の風の性的な一面を含ませつつも真っ直ぐなその言葉に、アリアは羞恥して頬を真っ赤に染め、目を泳がせながら言った。
「や、やっぱり下心があるんじゃない・・・!
そっちのパートナーが欲しいのなら他を当たってよ・・・!
あんた、冒険者仲間としては誰からも相手にされなくても、その見た目なら夜の相手くらい選り取り見取りでしょう?」
「アリアに対して下心があるのは否定しないが、俺が欲しいのはあくまで対等な実力のある冒険者仲間であって、夜の相手じゃないんだがな・・・。
確かにお前の言うように、魔物から助けた礼にと行きずりの相手から誘われることはたまにあるが・・・」
「最低!
やっぱり噂に違わぬスケコマシなんじゃない!」
アリアは自分に気があると言いながらも、他の女から誘われたことを口にする彼にムッとしてしまい、冒険者ギルドや行きつけの食堂等で耳に入ってくる彼についての下賤な噂を口にしてしまった。
「俺にそのような噂があるとは初耳だが、お前に最低呼ばわりされるような覚えはないな。
アリアに出会ってからは一度もその手の誘いに応じたことはないし、今後もそのつもりだからだ。」
漆黒の風は先程自分が言ったことに対してアリアが妬いたのを見て、彼女の中に自分に対する脈がそれなりにあることを感じたのか、嬉しそうに口角を上げてそう返した。
「そ・・・そんなこと言われても困る・・・。
私に義理立てなんていらないから、あんたの好きにすればいいじゃない・・・」
と真っ赤になり困ったように眉を寄せながら彼から目を逸らすアリア。
「・・・好きにしろと言われても、好きでもない女相手にそんな気になれなくなったんだから仕方がないだろう?
それよりお前を想像の中で好きに犯して一人でするほうが余程いい・・・。
まぁ実物が抱けるならそれに越したことはないがな・・・。
そうだ。
好きにしていいというなら、アリアをベットに誘ったって構わないよな?
どうだ?今夜・・・。
別にそっちのテクに自身があるという訳では無いが、アリアが相手ならうんと優しく丁寧に快楽へ導けるよう心がけるぞ?」
そう言って色香を漂わせながら微笑む漆黒の風。
(ちょ、ちょっと待って!
今まで何度もパーティには誘われたけど、こんなよ、よ、夜の誘い・・・みたいなことは言ってこなかったのに・・・!
漆黒の風って実はそういうことを言ってのける奴だったの!?
どうしよう・・・こういうときどんな反応すればいいの!?
恋愛に縁遠かった私に恋の駆け引きみたいなことなんて出来るわけがないし・・・!!)
アリアが真っ赤な顔で困惑し目を回しそうになっているのを見た漆黒の風は、くつくつと笑ってアリアの頭をぽんぽんと叩きながらこう言った。
「・・・悪い・・・冗談が過ぎたな。
さっきも言ったが、俺はお前から同意を得られないようなことは絶対にしないから安心しろ。
お前は男から性的なアプローチをかけられることにも慣れていないようだし、その辺もお前の様子を見ながら少しずつにする。
だから気負わずに俺とパーティを組むことを真剣に考えてみてはくれないか?」
アリアはそう言って微笑む漆黒の風を見て安堵しホッと小さな溜め息をつくと、自分を優しく見つめてくるサックスブルーの瞳をじっと見つめ返しながら考えた。
(確かに・・・漆黒の風とならパワーバランス的にはパーティとして成立するのかもしれない。
それに常人外れた強さを持つ彼なら、レベルアップ速度のことでやっかみを受けることも無いだろう。
彼が言うように、ソロではエントリー出来る依頼も限られてるし、その誘いに乗ってパーティを組み、ダンジョンを下層まで探索したり、仕事の幅を広げてみたい気持ちも確かにある・・・。
だけど・・・今の彼とのこの付かず離れずの関係性がなんだかんだ言って心地いいし、下手にパーティを組んで上手くいかずに解散なんかしたら、この関係性にすら戻れなくなる・・・。
私はそれが怖い・・・・・。)
そう思ったアリアはふう・・・と大きくため息をついてから、迷いを振り切るように強めの口調でこう言った。
「・・・やっぱりあんたとパーティを組むとかあり得ないから!
・・・あんたにちょっかい出されて忘れそうだったけど、私はここに次の依頼を探しに来たのよ。
邪魔しないでよね!」
アリアはそう言うと席を立ち、壁に貼られてばかりの”ソロエントリー可”と書かれた依頼書を見ていく。
ソロのエントリーが可とされている依頼書は全体の約3割ほどで、やはりソロ冒険者は不利な現実を思い知らされる。
だがそんな中、なかなかいい条件の依頼書を見つけた。
(・・・これいい!
サリナ村付近の谷に現れるワイバーンの討伐依頼・・・。
報酬額も冒険者ランクに影響するポイントも今張り出されているソロエントリー可の依頼の中では一番高いし、ワイバーン単体なら私一人でも対応出来る。)
アリアがその依頼書を手に取ると、スッと背後から逞しい腕が伸びてきて、それを奪い取られた。
アリアが振り返るとそこには案の定意地悪に微笑む漆黒の風がいた。
「ふーん・・・ワイバーン討伐か。
それなら俺もこの依頼にエントリーしてアリアよりも先に依頼を達成するとしようかな?」
「意地が悪いわよ漆黒の風・・・」
と恨めしそうに背後に立つ彼を睨むアリア。
「誰がどの依頼にエントリーしようと自由だろう?
だが俺とパーティを組むと約束するなら、この依頼に一緒にエントリーして、アリアがメインで活躍したとギルドに報告をして報酬もポイントも多めに割り振ってやってもいい。
そしたら今の俺とお前のポイント差なら、俺を抜いて個人ランク1位になれるんじゃないのか?」
「嫌よ!あんたに手柄を譲られるのなんて!
もういい!
その依頼はあんたに譲るわよ!
私は別の依頼を探す!」
プンプンと怒ってそっぽを向くアリア。
「そうか。
それなら俺もこの依頼を受けるのはやめておこう。
ワイバーン単体なら中級程度のバランスの取れたパーティの奴らが協力し合えば倒せるだろうし、俺でなければならない理由も特にないしな。」
と言いながら先程の依頼書を元の壁に貼り直す漆黒の風。
「それで、今度はどの依頼を受けるつもりなんだ?
お前がエントリーした依頼に俺もエントリーするから。」
「・・・あんた本当に意地が悪いわ・・・」
「何とでも言え。
それが嫌なら俺とパーティを組めばいい。」
「しつこい!」
二人が依頼書が張り出された壁の前でそんなやり取りをしていると、冒険者ギルドの受付け嬢が一人こちらにやってきて声をかけてきた。
「あの・・・お話中にすみません。
漆黒の風さん、貴方にご指名の依頼が来ているのですけど、詳しくお話をしたいのでカウンターの奥に来てもらえますか?」
「俺指定の依頼?
急ぐ内容なのか?」
「いえ、とある要人警護の依頼で、その日時も少し先なので任務自体は急ぎではないのですが、お引き受けいただけるかどうかだけでもすぐに返答が欲しいとの依頼主様からのご希望でして・・・。
そこで、まずは条件等の詳細を確認をしていただきたいのですが・・・」
「・・・わかった。」
そう頷くと漆黒の風はチラッと名残惜しそうにアリアを見てから受付け嬢について行った。
(・・・やはりソロ冒険者でも個人ランキング1位ともなると、王族や貴族から指名の依頼も頻繁に入ったりするようね。
でも急ぎの任務じゃないみたいだし、依頼内容の確認が済んだらまたすぐにこっちに戻ってきて私の選んだ依頼にエントリーを被せてくるに違いないわ。
何かあいつに横取りされないような依頼があれば良いのだけど・・・)
はぁ・・・とため息をつきながら何気なく見た先にあった依頼書に目が釘付けになるアリア。
(これは・・・!
女性を含むパーティ限定の依頼で、高レベルであればソロでのエントリーも可!
内容は・・・エストゥラスビーストの討伐か・・・。
この魔獣とはまだ戦ったことがないけど、確か女性の肉を好み、女性にしか姿を見せないという変わり者の魔獣よね?
成る程・・・それで女性を含むパーティに依頼が限定されているのね。
既に近隣の村に住む女性数名に被害が出ていて、緊急性も高いからポイントもさっきのワイバーン討伐依頼と同じくらいに高い・・・。
この依頼をこなしても漆黒の風があの要人警護の依頼を受けると言った地点でかなりのポイントが入るだろうから、私が漆黒の風を抜いて個人ランク1位になることはきっとないけれど・・・それでもこの依頼が男の漆黒の風に横取りされないことは確かだわ!
これは絶対にエントリーしなくちゃ!)
アリアはその依頼書を剥がして受け付けに向かった。
「この依頼ですか?
えぇ、確かに女性冒険者のソロエントリー可の依頼ですし、レベルが大変高い武姫さんは、この依頼のエントリー条件を満たしてはいます。
ですが、この魔獣の放つ催淫毒は現段階で解毒方法がありませんので、武姫さんがお一人で挑むのは大変危険ですよ?
エストゥラスビーストの攻略法は、男女混合パーティで挑み、女性メンバーが囮になることでエストゥラスビーストをおびき出してからパーティ全員で一気に畳み込むというのが鉄則です。
それならもし女性メンバーが催淫毒にかかってしまっても、パーティメンバーにご主人や恋人の方がいらっしゃったら毒が抜けるまでの間女性が苦しまずに済みますし、これはそういったパーティの方を対象とした依頼なんです。」
と受付け嬢は説明した。
「エストゥラスビーストってそれなりに強い魔獣よね?
それを倒せてかつその条件を満たせるパーティなんてそうすぐに見つかるとも思えないんだけど。
もう既に被害者か出ているし、放っておけばまた別の女性が被害に遭うわよ?
私なら大丈夫よ。
俊敏さは冒険者中トップクラスだし、奴の毒攻撃を躱せばいいだけだから。」
「で、ですが万が一のこともありますし、どなたか一時的でもいいので信頼のできる男性冒険者の方とパーティを組まれてみては・・・?」
と汗を飛ばしながら提案する受付け嬢。
そう言われてみてアリアは漆黒の風の姿を頭に思い浮かべるが、
(いやいや、あいつに協力を仰いでどうするのよ!
折角あいつに邪魔されないで一人で高ポイントを狙える依頼なのに、それじゃ意味がなくなるわ!)
とその考えを振り払うかのように頭を振った。
「・・・ソロで1年もやって来た私にそんな相手がいると思う?
とにかくすぐに現地へ向かうから、エントリーを受付けておいて!
お願いね!」
そう言ってアリアは冒険者ギルドを出て行った。
それが聴こえていたランキング下位と思われる男3人の冒険者パーティが、ヒソヒソと話し始めた。
『おい、今の聞いたか?
武姫一人でエストゥラスビースト退治だってよ!』
と青髪モヒカンの細身の男が言った。
『グヘヘヘへ・・・あの清楚な武姫が催淫毒にやられたとことか想像したら堪らねぇぜ!
顔も可愛いし色白で華奢で、まるで何処かの令嬢みてぇな品もあって、目茶苦茶俺のタイプなんだよなぁ♥』
と少し太り気味の赤髪モヒカンが目をハートにした。
『お前毎晩武姫の隠し撮り写真見てうぜぇぐらいシコってるもんな(笑)』
と青モヒカン。
『仕方ねぇだろぉ?
いっつもあの漆黒の風が付き纏ってやがるから、声をかけられねぇんだしよぉ。
本当は実物とヤりてぇが、仕方なく写真で我慢してるんだよぉ!』
『くくっ!
その願望、実現できるチャンスかもしれねぇぜ?』
3人組のリーダーと思わしきスキンヘッドがそう言った。
『『そいつはどういうことだ?
リーダー!?』』
と赤と青が揃って尋ねた。
『今すぐ武姫の後をつけて行って催淫毒にやられたトコを輪姦すんだよ!
武姫は毒ブレスを躱すと言っていたが、エストゥラスビーストが死に間際に放つ毒は広範囲に及び、そう躱せるものじゃねぇらしい。
ほぼ確実に毒を食らうとみて間違いねぇぜ?
仮に毒に罹らずに済んじまってたら、お楽しみは諦めて大人しく帰ってくりゃあいいだけのことだしな。』
『でもよ、リーダー。
武姫は勘が鋭そうだし、俺等の尾行に気づかれるんじゃねーか?』
と青モヒカン。
『なぁに、心配いらねぇさ。
こんなこともあろうかと、前の任務で護衛した商人からいくつか使えそうな魔石をくすねておいたんだよ。
この目くらましの魔石と足音を消す魔石を併せて使えば尾行に気づかれっこねぇ!』
『流石元盗人なだけあるぜぇ!
リーダーイカスぅ♥』
と赤モヒカン。
『な?俺とパーティ組んで良かっただろ?
俺は処女の硬いま◯こはあんま好きじゃねーから、初物は武姫マニアのお前にくれてやるよ。
感謝しろよ?』
『うっひょ~~~~~リーダーマジ神!
今から期待しちゃって俺の息子ちゃんがもうビンビンだぜっ♥
あ、いいこと思いついた!
武姫がハメられて狂ってるところを記念撮影してよぉ、そいつをネタに脅して武姫を俺等のパーティに入れようぜ♥
そしたら好きな時にヤれるし、俺等のペットになった武姫を見て、あのスカした漆黒の風の野郎が悔しそうに指をくわえてるところだって拝めるぜ?』
とニヤニヤ笑う赤モヒカン。
『お!ナイスアイディアじゃねぇか!
だがただヤるだけじゃ勿体ねぇ!
武姫とパーティを組めば、高難易度の依頼を武姫一人にやらせて、その報酬とポイントをがっぽり俺等でいただくことだって出来るぜ!
そしたらパーティランキングの下の方を常にウロウロしてる俺等のパーティのランクもどんどん上がって色々といい思いが出来る!
よし、それじゃあ見失わないうちに急いで武姫を追いかけるぞ!』
とスキンヘッドのリーダー。
『『おうとも!』』
と赤と青のモヒカンが同時に返事をする。
そして男たちはアリアを追ってすぐにギルドを出ていった。
そんな男達の様子を目の端で捉えた漆黒の風は、彼らの話の内容までは解らなかったがどうしようもなく嫌な予感がして、自分指名の依頼の説明をする受付け嬢の話を無視してスッと立ち上がると、消えるような速さで男達を追ってギルドを出た!
しかしさっきギルドを出たばかりの筈の3人の姿は何処にもなく、険しい顔で立ち尽くす漆黒の風を、行き交う人々が不思議そうに見ていた。
漆黒の風はすぐにギルドに引き返すと、さっきまでアリアとやり取りし、彼女のエントリー手続きをせかせかと行っている受け付け嬢の所までツカツカと近付いて行くと、腰に手を当て眉間にシワを寄せながらこう尋ねた。
「アリア・・・武姫はさっき何の依頼にエントリーした?」
「えっ・・・漆黒の風さん!?
エ、エストゥラスビースト退治ですけど・・・?」
「エストゥラスビースト・・・あの淫獣退治を一人でだと!
場所は何処だ!?」
物凄い剣幕で詰め寄る漆黒の風。
「えっ・・・でもその依頼は高レベルの女性のソロ冒険者、または女性を含むパーティ限定の依頼ですから漆黒の風さんはエントリー出来ませんし、催淫毒に侵された女性を狙う悪漢が現れる可能性がありますので、エントリーされていない方には詳しい場所等の情報をお教えするわけにはいかないんです・・・!」
「そんなことはわかっている!
だがさっきアリアの後を追って良くない感じの3人組の男達が出ていくのを見た。
恐らくあんたが言ったように、催淫毒にやられたアリアを強姦する目的だろう・・・。
アリアをすぐにつければ場所が公表されずとも奴らにとっては問題無いからな。
だからさっき俺はすぐに奴らの後を追おうとしたが、奴ら・・・目くらましの魔石を持ってやがった!
このままではアリアが危険だ!
すぐに俺が追うから早く場所を教えろ!!」
「は、はい!!
トスカ村近辺の街道のこの地点です・・・!」
と受付け嬢は慌てて印の付けられた地図を見せた。
「トスカ村・・・リスベルの隣村か・・・!」
漆黒の風はすぐにアリアを追いかけようと青いマントを翻した。
「あ、あの!
漆黒の風さんご指名の要人警護のご依頼はどうされるのです!?」
と漆黒の風が3人組を追ってギルドを出ていくまでその依頼の説明を担当していた受付け嬢が、慌てて彼を呼び止めた。
「こちらの事情もお構いなしですぐに返事を寄越せと上から目線で言ってくる依頼主などこちらから願い下げだ。
他を当たれと言ってやれ!」
漆黒の風はそう乱暴に言い残し、またギルドの出口に向かった。
すると、
「少々お待ちください、漆黒の風さん。」
とニヤニヤと口角を上げてゴマ擦りをする少女がいた。
「お前は確か・・・」
ここリスべルは、そんな冒険者達の活動拠点となる町の一つであるが、この町を拠点として活動する武神に愛されし姫という意で武姫と呼ばれる彼女は、その名に似つかわしくない白くきめ細かな肌、サファイアのように美しい碧眼、薄紅色のふっくらとした艷やかな唇、金糸のように美しく長い金髪の持ち主であり、その美しい見た目にも関わらずその天才的な武における成長速度で、この国に在籍する冒険者ランキング2位の座まであっという間に上り詰めた非常に高い実力を持つ剣士だった。
だがそんな彼女の目の前には、どうしても超えられない壁・・・冒険者ランキング1位の座をここ数年の間キープし続けている、この国では珍しい漆黒の髪を持ち、その太刀筋が風のように鋭いことから漆黒の風という異名を持つ彼が、常に立ちはだかっていたのだった。
武姫はそんな漆黒の風を強くライバル視し、いつか彼を超えてランキング1位の座を奪いたいと思っていた。
そうなることで武姫の異名は全国へと轟き、自分を陥れた父と義母、義妹の耳にも届くことになるだろうから。
だが当の漆黒の風はというと─。
「なぁアリア。
俺とパーティを組まないか?
そうすればソロでは不可能だった依頼だって引き受けられるようになるし、毎日美味い食事だって作ってやるぞ?
俺はこう見えて、料理の腕には自信があるんだ。」
と呑気に女性に人気のその凛々しく整った顔を崩しては、ギルドで顔を合わせるたびにそう言って口説いてくる、武姫こと本名アリア・ラスフィールにとっては、少し鬱陶しくも憎めない存在でもあった。
アリアは朝冒険者ギルドが開くと同時にここに来て、新しい依頼書が壁に張り出されるのを椅子に座って待っていたが、少し後から来た漆黒の風が彼女と同じ目的で来た冒険者達の中から彼女の姿を見つけ出し、さも当前のように隣の席を陣取ると、いつものように勧誘をし始め、今に至るのだった。
「嫌よ。
っていうかアリアだなんて馴れ馴れしく呼ばないでくれる?
漆黒の風。」
「何故?
武姫なんて可愛げのない異名で呼ばれても嬉しくないだろう?
それに俺のことも本名で呼べと言ったはずだ。
スヴァルト・ビンド・・・ヴァルでいい。」
そう言って彼は少し癖のある艷やかな黒髪を揺らしてサックスブルーの目を細めながらアリアの顔を覗き込んだ。
「嫌よ漆黒の風。」
「・・・本当に可愛げがないな。
もう一度言う。
パーティを組まないか?アリア。」
「嫌って言ってるでしょ!
あんた、私が前にいたパーティで、どんな扱いを受けていたか知っているでしょ?
あんな思いをするくらいなら、ずっとソロでやって行くって決めたんだから・・・」
アリアは自分は武の才には恵まれたが、人との巡り合わせはとことん悪かったなと思い、今までの人生を一人振り返った。
(私は伯爵家の長女として産まれたが、10歳の頃に父の浮気相手に追い込まれた母が自殺をしてから運命の歯車が大きく狂い始めた。
母亡き後すぐ、後妻が私よりも2つ年下の義妹を連れて家に入り込んで来た。
その後も私を厄介者扱いする義母と義妹の嫌がらせに耐え続けたけど、ついには12歳の頃、義母の贅沢三昧の所為で家が傾きかけ、借金を肩代わりしてくれるという侯爵の養女として(というのは表向きで、実質はロリコンと名高い侯爵の愛妾として)家を出ることになったのだ。
だが侯爵家に向かう途中で盗賊に襲われ私一人が生き残り、盗賊に捕まって人買いの下へと運ばれている所を盗賊退治の依頼で出向いていた冒険者パーティに助けられたのだ。
その後、実家に戻ることを望まなかった私は、彼等が盗賊を退治した時には既に死んでいたとしてそのままその冒険者パーティに入れてもらい、冒険者として生きることになった。
私は戦いにおいては全くの素人だったけど、飲み込みが早く、すぐにパーティの役に立つようになったので、最初のうちはとても可愛がられ、それなりに幸せに過ごせていた。
しかし、3年して私が15歳になる頃には、私のレベルは前線で長年戦い続けてきたパーティリーダーをも超えてしまった。
その日を境に親切だったリーダーの態度が急変し、ここまで面倒を見てやった恩を返せと言われ、リーダーが勝手にエントリーした高難易度の依頼を一人でこなさせられ何度も死ぬような思いをしたのに、その報酬と冒険者のランク査定の基準となるポイントの殆どを自分以外のメンバーに割り振られ、私に与えられるのはパーティメンバーに最低限割り振られる僅かな報酬とポイントだけ・・・。
そんな半ば奴隷のような生活を1年ほど続けたある日に漆黒の風に出逢った。
確かその時は、欲を見たリーダーが今までにない最高難易度のドラゴン討伐の依頼を受け、その当時から冒険者ランキング1位の座に君臨していた漆黒の風が丁度同じ依頼にエントリーしていたのだ。
相手が強敵のドラゴンということもあり、ここは互いのパーティで報酬とポイントは山分けしようということで協力し合うことになったけど、その際に私達のパーティに同行した漆黒の風が、パーティ内での私の扱いに気がついたらしく、パーティからの脱退を勧め、ソロになる道を手助けしてくれたのだ。
リーダーはその時の漆黒の風の報告を受けた冒険者ギルドにより登録を抹消され、今は何処でどうしているのか不明だ。
同じパーティにいた他のメンバー達は登録抹消は免れたようだが、漆黒の風に睨まれている為に彼が主に拠点としているリスベルには居辛くなり、違う町へと移っていったようだ。
私は漆黒の風にとても感謝し、私に出来る謝礼をしようとしたが、漆黒の風はどんな金品もアイテムも決して受け取ろうとはせず、それならパーティを組んでくれの一点張りだったので、まだその時のお礼は出来ていない状態であり、それが彼を邪険に出来ない理由にもなっている・・・。
勿論最強の冒険者であり英雄とも謳われる彼にパーティへ誘われることが嬉しくないわけではないけれど、元パーティでのトラウマもあってか、どうしても誰かとパーティを組む気にはなれなかった。
それよりも目下の目的は、私がまだ12歳の頃に後妻に言われるがまま変態侯爵へと売り飛ばそうとした父、そして母を苦しめ自殺に追い込み、贅沢三昧で散財した挙げ句、私を変態侯爵の下へ売るようにと父を仕向けた後妻、私を虐め苦しめ続けた義理の妹の3人を、私が冒険者ランキング1位になって武姫の名と顔を轟かせることで、見返してやることだった。
なんの地位もない冒険者とはいえ、全国ランキング1位ともなれば注目され、王族からも一目置かれる存在となる。
現在の2位では1位に比べてその存在は霞み、冒険者以外から注目を集めることは殆どないのだ。
・・・そう言えば漆黒の風はここ数年常に1位の座に居続けているから、当然王族貴族からの引き抜きや爵位を賜るお声もかかっているだろうに、全くそういった話に乗る気配がないのよね。
彼には成り上がりたいという野心が無いのかしら・・・。)
とアリアが長い回想と思考を終えると、漆黒の風が先程の彼女の言葉に対してこう返事をした。
「それを言うなら俺だって、生まれつき身体能力が高すぎる所為で昔所属していたパーティではやっかみの対象だった。
そこを辞めて以来ずっと誰とも組まずにソロでやってきたが、ソロではダンジョンの下層に入ることも禁止されているし、ギルドに張り出される依頼書もパーティを組んている冒険者に限定されたものの割合が多く、ソロで活動することに限界を感じていた。
かと言って昔のような思いを繰り返してまで適当な奴らとパーティを組みたくはなかったし、何処かに俺とパーティが組めそうな強い奴はいないかと、ソロで活動しながらもずっと探していたんだ。
そんな時、あのドラゴン討伐で初めてお前の戦いっぷりを見て、やっと見つけたと思った。
本当の仲間になれる奴をな。
だがあの時のお前は昔の俺と同じような境遇に置かれていたし、まずはそこから救い出すことが先決だと思い、お前にあのパーティからの脱退を勧め、その手助けをした。
それ以来ずっとお前をパーティに誘い続けてもうじき1年になるが、そろそろ折れてみてはくれないだろうか?
お前が昔のことでパーティというものを恐れ、信じられなくなっているのはわかる。
だがお互い”訳ありの常人離れした者同士”ならやっかみ合うこともないし、互いを高めあっていくことだって出来る。
パーティを組むなら唯一無二の存在だと思うんだがな?
なのに何故俺の誘いを拒む?」
「だって・・・あんたのいうパーティって、普通の冒険者仲間としてのそれだけじゃなく、なんとなく男女関係の意味合いも含まれていそうなんだもの・・・。
私だって一応女だし、男のあんたと二人でパーティを組むことには、それなりに慎重になるわ・・・。」
と頬を染めて目を逸らしながら返すアリア。
「・・・まぁ確かに、俺はお前の見た目も気に入っているからな。
正直に言うと、一年前お前がドラゴンと戦う姿を見たあの時・・・お前の強さだけでなく、粗末な装備にも関わらず美しく舞うその姿にも強く惹かれた・・・。
そんなお前が旅の途中で隙を見せれば、俺も男だから当然襲いたくなるだろうな。
だが安心しろ。
そうなったとしても、お前から同意の得られないことは決してしない。」
漆黒の風の性的な一面を含ませつつも真っ直ぐなその言葉に、アリアは羞恥して頬を真っ赤に染め、目を泳がせながら言った。
「や、やっぱり下心があるんじゃない・・・!
そっちのパートナーが欲しいのなら他を当たってよ・・・!
あんた、冒険者仲間としては誰からも相手にされなくても、その見た目なら夜の相手くらい選り取り見取りでしょう?」
「アリアに対して下心があるのは否定しないが、俺が欲しいのはあくまで対等な実力のある冒険者仲間であって、夜の相手じゃないんだがな・・・。
確かにお前の言うように、魔物から助けた礼にと行きずりの相手から誘われることはたまにあるが・・・」
「最低!
やっぱり噂に違わぬスケコマシなんじゃない!」
アリアは自分に気があると言いながらも、他の女から誘われたことを口にする彼にムッとしてしまい、冒険者ギルドや行きつけの食堂等で耳に入ってくる彼についての下賤な噂を口にしてしまった。
「俺にそのような噂があるとは初耳だが、お前に最低呼ばわりされるような覚えはないな。
アリアに出会ってからは一度もその手の誘いに応じたことはないし、今後もそのつもりだからだ。」
漆黒の風は先程自分が言ったことに対してアリアが妬いたのを見て、彼女の中に自分に対する脈がそれなりにあることを感じたのか、嬉しそうに口角を上げてそう返した。
「そ・・・そんなこと言われても困る・・・。
私に義理立てなんていらないから、あんたの好きにすればいいじゃない・・・」
と真っ赤になり困ったように眉を寄せながら彼から目を逸らすアリア。
「・・・好きにしろと言われても、好きでもない女相手にそんな気になれなくなったんだから仕方がないだろう?
それよりお前を想像の中で好きに犯して一人でするほうが余程いい・・・。
まぁ実物が抱けるならそれに越したことはないがな・・・。
そうだ。
好きにしていいというなら、アリアをベットに誘ったって構わないよな?
どうだ?今夜・・・。
別にそっちのテクに自身があるという訳では無いが、アリアが相手ならうんと優しく丁寧に快楽へ導けるよう心がけるぞ?」
そう言って色香を漂わせながら微笑む漆黒の風。
(ちょ、ちょっと待って!
今まで何度もパーティには誘われたけど、こんなよ、よ、夜の誘い・・・みたいなことは言ってこなかったのに・・・!
漆黒の風って実はそういうことを言ってのける奴だったの!?
どうしよう・・・こういうときどんな反応すればいいの!?
恋愛に縁遠かった私に恋の駆け引きみたいなことなんて出来るわけがないし・・・!!)
アリアが真っ赤な顔で困惑し目を回しそうになっているのを見た漆黒の風は、くつくつと笑ってアリアの頭をぽんぽんと叩きながらこう言った。
「・・・悪い・・・冗談が過ぎたな。
さっきも言ったが、俺はお前から同意を得られないようなことは絶対にしないから安心しろ。
お前は男から性的なアプローチをかけられることにも慣れていないようだし、その辺もお前の様子を見ながら少しずつにする。
だから気負わずに俺とパーティを組むことを真剣に考えてみてはくれないか?」
アリアはそう言って微笑む漆黒の風を見て安堵しホッと小さな溜め息をつくと、自分を優しく見つめてくるサックスブルーの瞳をじっと見つめ返しながら考えた。
(確かに・・・漆黒の風とならパワーバランス的にはパーティとして成立するのかもしれない。
それに常人外れた強さを持つ彼なら、レベルアップ速度のことでやっかみを受けることも無いだろう。
彼が言うように、ソロではエントリー出来る依頼も限られてるし、その誘いに乗ってパーティを組み、ダンジョンを下層まで探索したり、仕事の幅を広げてみたい気持ちも確かにある・・・。
だけど・・・今の彼とのこの付かず離れずの関係性がなんだかんだ言って心地いいし、下手にパーティを組んで上手くいかずに解散なんかしたら、この関係性にすら戻れなくなる・・・。
私はそれが怖い・・・・・。)
そう思ったアリアはふう・・・と大きくため息をついてから、迷いを振り切るように強めの口調でこう言った。
「・・・やっぱりあんたとパーティを組むとかあり得ないから!
・・・あんたにちょっかい出されて忘れそうだったけど、私はここに次の依頼を探しに来たのよ。
邪魔しないでよね!」
アリアはそう言うと席を立ち、壁に貼られてばかりの”ソロエントリー可”と書かれた依頼書を見ていく。
ソロのエントリーが可とされている依頼書は全体の約3割ほどで、やはりソロ冒険者は不利な現実を思い知らされる。
だがそんな中、なかなかいい条件の依頼書を見つけた。
(・・・これいい!
サリナ村付近の谷に現れるワイバーンの討伐依頼・・・。
報酬額も冒険者ランクに影響するポイントも今張り出されているソロエントリー可の依頼の中では一番高いし、ワイバーン単体なら私一人でも対応出来る。)
アリアがその依頼書を手に取ると、スッと背後から逞しい腕が伸びてきて、それを奪い取られた。
アリアが振り返るとそこには案の定意地悪に微笑む漆黒の風がいた。
「ふーん・・・ワイバーン討伐か。
それなら俺もこの依頼にエントリーしてアリアよりも先に依頼を達成するとしようかな?」
「意地が悪いわよ漆黒の風・・・」
と恨めしそうに背後に立つ彼を睨むアリア。
「誰がどの依頼にエントリーしようと自由だろう?
だが俺とパーティを組むと約束するなら、この依頼に一緒にエントリーして、アリアがメインで活躍したとギルドに報告をして報酬もポイントも多めに割り振ってやってもいい。
そしたら今の俺とお前のポイント差なら、俺を抜いて個人ランク1位になれるんじゃないのか?」
「嫌よ!あんたに手柄を譲られるのなんて!
もういい!
その依頼はあんたに譲るわよ!
私は別の依頼を探す!」
プンプンと怒ってそっぽを向くアリア。
「そうか。
それなら俺もこの依頼を受けるのはやめておこう。
ワイバーン単体なら中級程度のバランスの取れたパーティの奴らが協力し合えば倒せるだろうし、俺でなければならない理由も特にないしな。」
と言いながら先程の依頼書を元の壁に貼り直す漆黒の風。
「それで、今度はどの依頼を受けるつもりなんだ?
お前がエントリーした依頼に俺もエントリーするから。」
「・・・あんた本当に意地が悪いわ・・・」
「何とでも言え。
それが嫌なら俺とパーティを組めばいい。」
「しつこい!」
二人が依頼書が張り出された壁の前でそんなやり取りをしていると、冒険者ギルドの受付け嬢が一人こちらにやってきて声をかけてきた。
「あの・・・お話中にすみません。
漆黒の風さん、貴方にご指名の依頼が来ているのですけど、詳しくお話をしたいのでカウンターの奥に来てもらえますか?」
「俺指定の依頼?
急ぐ内容なのか?」
「いえ、とある要人警護の依頼で、その日時も少し先なので任務自体は急ぎではないのですが、お引き受けいただけるかどうかだけでもすぐに返答が欲しいとの依頼主様からのご希望でして・・・。
そこで、まずは条件等の詳細を確認をしていただきたいのですが・・・」
「・・・わかった。」
そう頷くと漆黒の風はチラッと名残惜しそうにアリアを見てから受付け嬢について行った。
(・・・やはりソロ冒険者でも個人ランキング1位ともなると、王族や貴族から指名の依頼も頻繁に入ったりするようね。
でも急ぎの任務じゃないみたいだし、依頼内容の確認が済んだらまたすぐにこっちに戻ってきて私の選んだ依頼にエントリーを被せてくるに違いないわ。
何かあいつに横取りされないような依頼があれば良いのだけど・・・)
はぁ・・・とため息をつきながら何気なく見た先にあった依頼書に目が釘付けになるアリア。
(これは・・・!
女性を含むパーティ限定の依頼で、高レベルであればソロでのエントリーも可!
内容は・・・エストゥラスビーストの討伐か・・・。
この魔獣とはまだ戦ったことがないけど、確か女性の肉を好み、女性にしか姿を見せないという変わり者の魔獣よね?
成る程・・・それで女性を含むパーティに依頼が限定されているのね。
既に近隣の村に住む女性数名に被害が出ていて、緊急性も高いからポイントもさっきのワイバーン討伐依頼と同じくらいに高い・・・。
この依頼をこなしても漆黒の風があの要人警護の依頼を受けると言った地点でかなりのポイントが入るだろうから、私が漆黒の風を抜いて個人ランク1位になることはきっとないけれど・・・それでもこの依頼が男の漆黒の風に横取りされないことは確かだわ!
これは絶対にエントリーしなくちゃ!)
アリアはその依頼書を剥がして受け付けに向かった。
「この依頼ですか?
えぇ、確かに女性冒険者のソロエントリー可の依頼ですし、レベルが大変高い武姫さんは、この依頼のエントリー条件を満たしてはいます。
ですが、この魔獣の放つ催淫毒は現段階で解毒方法がありませんので、武姫さんがお一人で挑むのは大変危険ですよ?
エストゥラスビーストの攻略法は、男女混合パーティで挑み、女性メンバーが囮になることでエストゥラスビーストをおびき出してからパーティ全員で一気に畳み込むというのが鉄則です。
それならもし女性メンバーが催淫毒にかかってしまっても、パーティメンバーにご主人や恋人の方がいらっしゃったら毒が抜けるまでの間女性が苦しまずに済みますし、これはそういったパーティの方を対象とした依頼なんです。」
と受付け嬢は説明した。
「エストゥラスビーストってそれなりに強い魔獣よね?
それを倒せてかつその条件を満たせるパーティなんてそうすぐに見つかるとも思えないんだけど。
もう既に被害者か出ているし、放っておけばまた別の女性が被害に遭うわよ?
私なら大丈夫よ。
俊敏さは冒険者中トップクラスだし、奴の毒攻撃を躱せばいいだけだから。」
「で、ですが万が一のこともありますし、どなたか一時的でもいいので信頼のできる男性冒険者の方とパーティを組まれてみては・・・?」
と汗を飛ばしながら提案する受付け嬢。
そう言われてみてアリアは漆黒の風の姿を頭に思い浮かべるが、
(いやいや、あいつに協力を仰いでどうするのよ!
折角あいつに邪魔されないで一人で高ポイントを狙える依頼なのに、それじゃ意味がなくなるわ!)
とその考えを振り払うかのように頭を振った。
「・・・ソロで1年もやって来た私にそんな相手がいると思う?
とにかくすぐに現地へ向かうから、エントリーを受付けておいて!
お願いね!」
そう言ってアリアは冒険者ギルドを出て行った。
それが聴こえていたランキング下位と思われる男3人の冒険者パーティが、ヒソヒソと話し始めた。
『おい、今の聞いたか?
武姫一人でエストゥラスビースト退治だってよ!』
と青髪モヒカンの細身の男が言った。
『グヘヘヘへ・・・あの清楚な武姫が催淫毒にやられたとことか想像したら堪らねぇぜ!
顔も可愛いし色白で華奢で、まるで何処かの令嬢みてぇな品もあって、目茶苦茶俺のタイプなんだよなぁ♥』
と少し太り気味の赤髪モヒカンが目をハートにした。
『お前毎晩武姫の隠し撮り写真見てうぜぇぐらいシコってるもんな(笑)』
と青モヒカン。
『仕方ねぇだろぉ?
いっつもあの漆黒の風が付き纏ってやがるから、声をかけられねぇんだしよぉ。
本当は実物とヤりてぇが、仕方なく写真で我慢してるんだよぉ!』
『くくっ!
その願望、実現できるチャンスかもしれねぇぜ?』
3人組のリーダーと思わしきスキンヘッドがそう言った。
『『そいつはどういうことだ?
リーダー!?』』
と赤と青が揃って尋ねた。
『今すぐ武姫の後をつけて行って催淫毒にやられたトコを輪姦すんだよ!
武姫は毒ブレスを躱すと言っていたが、エストゥラスビーストが死に間際に放つ毒は広範囲に及び、そう躱せるものじゃねぇらしい。
ほぼ確実に毒を食らうとみて間違いねぇぜ?
仮に毒に罹らずに済んじまってたら、お楽しみは諦めて大人しく帰ってくりゃあいいだけのことだしな。』
『でもよ、リーダー。
武姫は勘が鋭そうだし、俺等の尾行に気づかれるんじゃねーか?』
と青モヒカン。
『なぁに、心配いらねぇさ。
こんなこともあろうかと、前の任務で護衛した商人からいくつか使えそうな魔石をくすねておいたんだよ。
この目くらましの魔石と足音を消す魔石を併せて使えば尾行に気づかれっこねぇ!』
『流石元盗人なだけあるぜぇ!
リーダーイカスぅ♥』
と赤モヒカン。
『な?俺とパーティ組んで良かっただろ?
俺は処女の硬いま◯こはあんま好きじゃねーから、初物は武姫マニアのお前にくれてやるよ。
感謝しろよ?』
『うっひょ~~~~~リーダーマジ神!
今から期待しちゃって俺の息子ちゃんがもうビンビンだぜっ♥
あ、いいこと思いついた!
武姫がハメられて狂ってるところを記念撮影してよぉ、そいつをネタに脅して武姫を俺等のパーティに入れようぜ♥
そしたら好きな時にヤれるし、俺等のペットになった武姫を見て、あのスカした漆黒の風の野郎が悔しそうに指をくわえてるところだって拝めるぜ?』
とニヤニヤ笑う赤モヒカン。
『お!ナイスアイディアじゃねぇか!
だがただヤるだけじゃ勿体ねぇ!
武姫とパーティを組めば、高難易度の依頼を武姫一人にやらせて、その報酬とポイントをがっぽり俺等でいただくことだって出来るぜ!
そしたらパーティランキングの下の方を常にウロウロしてる俺等のパーティのランクもどんどん上がって色々といい思いが出来る!
よし、それじゃあ見失わないうちに急いで武姫を追いかけるぞ!』
とスキンヘッドのリーダー。
『『おうとも!』』
と赤と青のモヒカンが同時に返事をする。
そして男たちはアリアを追ってすぐにギルドを出ていった。
そんな男達の様子を目の端で捉えた漆黒の風は、彼らの話の内容までは解らなかったがどうしようもなく嫌な予感がして、自分指名の依頼の説明をする受付け嬢の話を無視してスッと立ち上がると、消えるような速さで男達を追ってギルドを出た!
しかしさっきギルドを出たばかりの筈の3人の姿は何処にもなく、険しい顔で立ち尽くす漆黒の風を、行き交う人々が不思議そうに見ていた。
漆黒の風はすぐにギルドに引き返すと、さっきまでアリアとやり取りし、彼女のエントリー手続きをせかせかと行っている受け付け嬢の所までツカツカと近付いて行くと、腰に手を当て眉間にシワを寄せながらこう尋ねた。
「アリア・・・武姫はさっき何の依頼にエントリーした?」
「えっ・・・漆黒の風さん!?
エ、エストゥラスビースト退治ですけど・・・?」
「エストゥラスビースト・・・あの淫獣退治を一人でだと!
場所は何処だ!?」
物凄い剣幕で詰め寄る漆黒の風。
「えっ・・・でもその依頼は高レベルの女性のソロ冒険者、または女性を含むパーティ限定の依頼ですから漆黒の風さんはエントリー出来ませんし、催淫毒に侵された女性を狙う悪漢が現れる可能性がありますので、エントリーされていない方には詳しい場所等の情報をお教えするわけにはいかないんです・・・!」
「そんなことはわかっている!
だがさっきアリアの後を追って良くない感じの3人組の男達が出ていくのを見た。
恐らくあんたが言ったように、催淫毒にやられたアリアを強姦する目的だろう・・・。
アリアをすぐにつければ場所が公表されずとも奴らにとっては問題無いからな。
だからさっき俺はすぐに奴らの後を追おうとしたが、奴ら・・・目くらましの魔石を持ってやがった!
このままではアリアが危険だ!
すぐに俺が追うから早く場所を教えろ!!」
「は、はい!!
トスカ村近辺の街道のこの地点です・・・!」
と受付け嬢は慌てて印の付けられた地図を見せた。
「トスカ村・・・リスベルの隣村か・・・!」
漆黒の風はすぐにアリアを追いかけようと青いマントを翻した。
「あ、あの!
漆黒の風さんご指名の要人警護のご依頼はどうされるのです!?」
と漆黒の風が3人組を追ってギルドを出ていくまでその依頼の説明を担当していた受付け嬢が、慌てて彼を呼び止めた。
「こちらの事情もお構いなしですぐに返事を寄越せと上から目線で言ってくる依頼主などこちらから願い下げだ。
他を当たれと言ってやれ!」
漆黒の風はそう乱暴に言い残し、またギルドの出口に向かった。
すると、
「少々お待ちください、漆黒の風さん。」
とニヤニヤと口角を上げてゴマ擦りをする少女がいた。
「お前は確か・・・」
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