金獅子とドSメイド物語

彩田和花

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20話 金獅子と本当の仲間

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リディアと別れたモニカは、宮廷の裏山へと走った。
宮廷を出た地点で21時半を過ぎていたため辺りは当然暗かったが、今夜は満月でそこそこ明るかったので、ランタンが無くとも何とかレオンとの初めてのデートの日の締めくくりに彼が教えてくれた、あの秘密の場所へと続く道なき道の目印を見つけることが出来た。
(今夜が満月で助かりましたわ。
旅行カバンの中に照明魔石を用いた小型ランタンが入ってはいますが、捜索隊に目印を与えてしまうことになりますから、使わないほうが良いでしょうしね・・・。)
とモニカ。
そして、その道なき道には数時間前に誰かが通った形跡があった。
(やはり、レオン様はあの場所にいるので間違いありませんわ・・・。)
そして目的の場所が近付き、徐々に開けていく視界─。
そこには案の定満月を背に佇むレオンがいた。
「・・・誰だ・・・!?」
彼は自分の元へと次第に近づいて来る足音を事前に察知してか警戒し、剣の柄に手を添えて身構えこちらを見ていた。
だが、目の前に現れたフリーメイドの制服を着た薄灰色のロングヘアのメイドが、よく目を凝らして見ればモニカだとわかると、
「モニカ・・・!!」
と自分の名を呼び、泣きそうな顔をしてモニカの下へと駆け寄ると、その腕を掴んで胸元へと引き寄せぎゅっと強く抱き締めたのだった。
「モニカ・・・
もう二度と君に会えないかと思った・・・!
モニカ・・・・・」
「レオン様・・・・・!
本当に・・・ご無事で良かった・・・!」
「うん・・・。
追放の馬車に乗せられたけど、ヴィクトルとレフとライが助けてくれたんだ・・・。」
「ヴィクトルさんとレフさんにライさん・・・。
確か、ロジウムの戦いでレオン様と同じ班だった方々ですわね?」
とモニカはロジウムから帰ってからすぐのまだレオンがそこまでやさぐれていない頃、嬉しそうに話してくれた彼らのことを思い出した。
「うん・・・。
そのことは長くなりそうだから後で話すが・・・君の方こそ何だよその格好・・・。
一瞬誰かと思ったじゃないか・・・」
「実は、リディアさんが料理長のドミトリーさんとマルファさんと一緒に牢の見張り番の食事に睡眠薬を混ぜて、私を逃がしてくれたのです。
このフリーメイドの制服は、その際リディアさんが用意してくれたものでして、ウイッグはジェイド様の置き土産ですわ。」
「ジェイド兄さんの置き土産?
それは一体どういう・・・」 
と亡命計画のことを知らないレオンは首を傾げた。
「後で全てお話します。
とにかく薄灰色のロングヘアのフリーメイドのフリをしたおかげで、どなたにも疑われることなくここに来れたのです。」
そう言ってモニカはウイッグを外し微笑んだ。
「そうだったのか・・・。
リディアって、媚薬騒動のときに君が助けたあの大人しそうな白髪ショートヘアのフリーメイドだろう?
彼女が君のためにそんなことまで・・・。」
レオンがそう言いかけたところで、モニカと再会して安心したからなのだろう。
彼の腹の虫が盛大にぐーーーっと鳴り響いた。
「あら!
レオン様も朝食以降何も食べてらっしゃらないでしょうし、お腹が空かれていますよね?
ドミトリーさんとマルファさんが作ってくださったピロシキとスープがこちらにありますので、一緒に食べながら話をしましょうか。」
そう言ってモニカはリディアが持たせてくれたバスケットを開けるのだった。

2人は草の上に座り、ピロシキを食べながら話を始めた。
「それで・・・私がお披露目会場で当主様に殴られ意識を手放した後のレオン様のことを、詳しくお聞かせ願えますか?」
「あぁ・・・。
あの後母様と僕を捕らえようとゼニスの奴らが刃を向けてきたから、僕は君を抱えて母様と一緒に逃げようと、白の剣を構えて突破口を作ろうとしたんだ。
そうしたらあの女・・・エカテリーナが指に沢山指輪をはめていて・・・多分あれらは全て魔石付きのものなのだろうが、そのうちの一つを作動させたらしく、その直後僕と母様は猛烈な眠気に襲われ、目が覚めた時には僕は追放のため国外に向う馬車の中だったんだ・・・。
僕は手首を後ろに回されて縄で縛られた状態で、鎧は会場で外す余裕が無かったのかそのままだったけど、白の剣は奪われていたんだ・・・」
と眉を寄せるレオン。
「そうだったのですね・・・。
それから?」
と小首を傾げ、続きを促すモニカ。
そんな彼女の肩を抱き、優しく微笑んでからレオンは続けた。
「馬車の中は暗く、僕が目覚めたことに誰も気がついていなかったようだから、僕は再び目を閉じて眠ったふりをし、情報収集をすることにしたんだ。
どうやら馬車には監視役としてオリーブ騎士1名とゼニス騎士2名、そしてその馬車を動かす馭者が1名いるようだった。
奴らは僕が目覚めているとも知らず、こんな話をしていた・・・」
とレオンはその時の様子を鮮明に頭に思い浮かべながら、モニカに続きを語った。

「ワディム隊長、本当にこいつ、途中で目覚めたりしないですか?」
とチャラい雰囲気のオリーブ騎士が、レオンの足を軽く蹴った。
「エカテリーナ様がお持ちの魔石の力で眠らされたんだ。
本物の英雄の子孫ならこの類の魔法は効いてもすぐに解かれるかもしれないが、偽物のこいつなら目的地のダルダンテとの国境の砂漠につくまでぐっすりおねんねだろうさ。
それに、仮に目覚めても手首を縄でガチガチに縛られていては何も出来まい。
それよりお前らも3日以内にこの仕事を終えてあのスパイの姉ちゃんを味わいたいのだろう?
だったら無駄口を叩いてないで仕事に集中しろ。」
とワディムと呼ばれたこの3人の隊長らしき年長者のゼニス騎士がそう返した。
彼はレオンがロジウムで世話になったヴィクトルと同じくらいの年齢だった。
「俺等が駄弁だべった所で馬車の速さは変わらないわけですし、暇なんだから別に話をするくらいいいじゃないですが、隊長。
それより、ロジウムの戦いで多くのゼニス騎士が殉職されましたから、隊長って今ゼニスの中でもかなり上位でしょ?
だったらまだあの姉ちゃんが綺麗なうちにヤれるからいいじゃないですか。
俺なんかオリーブですよ?
俺等に回ってくる頃にはあの綺麗な姉ちゃんも、すっかりきたねぇ肉便器になってますよ・・・。
俺は少しくらいブスでも良いから、ザーメンで汚れてねぇ女の方が良いから、パスするつもりなんです。
リューリクさんはどうなんです?」
レオンはそのリューリクという名に聞き覚えがあったため、薄目を開けて彼の顔を確認した。
すると、やはりレオンの知っているリューリクで間違いなかった。
そのリューリクと呼ばれたレオンと同年代の若いゼニス騎士は、顔を上げてこう答えた。
「あぁ、僕に敬語は結構ですよ、イシドル先輩。
僕は生まれついた家の関係でゼニス騎士ですが、まだこの春で騎士になってばかりの新人ですから。」
「そうか?
なら有り難くそうさせてもらうが・・・。
で、リューリクはどうなんだ?
あの女とヤるの?」
とイシドルと呼ばれたオリーブ騎士は再度リューリクに尋ねた。
「えぇ、そのつもりですよ。
僕はレオンハルトとは同期でして、見習い生の時に顔を合わせる機会が結構ありましてね。
その際レオンハルトに自慢気に専属メイドだって紹介されて、清楚そうでいて自信に満ちたその佇まいが凄くいいなと思っていたんですよ。
だから例えドロドロのガバガバになっててもおこぼれに預かりたいです。
だって、練習試合で一度も勝てなかったあのレオンハルトのお気に入りですよ?
そいつを一時でも組み敷くだけで、優越感を味わえるじゃないですか。
そして、僕のチン◯のほうが気持ちいいって言わせてやりますよ。
先輩方が残した汚れなら、頭から小便ぶっかけて流せばいいだけですしね。
まぁ緩みきった股のほうはどうしようもないですけど・・・!」
リューリクは腹に手を当ててケラケラと笑った。
レオンはモニカを嘲るようなリューリクの発言にギリッと歯を食いしばった。
「リューリク、お前純粋そうな顔して結構エゲツない性格してんのな・・・。」
とイシドルは冷や汗を垂らした。
「そうですか?
僕なんか怨恨がない分まだ良いですよ。
僕の同期には最近レオンハルトに狙ってた女を寝取られたって奴もいましてね。
そいつなんかレオンハルトへの恨みをあの女へとぶつけて相当酷い目に遭わせる気じゃないですかね?
全員が終わる頃、五体満足で済むといいけど!」
(誰のことを言っている!?
ジョレス・・・それともセルゲイか!?
僕は友人・知人の女は、当然処女でないだろうし面倒事は回避したかったから手を出してない筈だ・・・!
だが片想いの相手までは流石に知るものか・・・!
くそっ・・・!
このままでは僕の大切なモニカが・・・!!)
レオンは焦りのあまり声を上げそうになるが、今自分は手を縛られて何も武器を持たないことを思い出し、今ここで目覚めたことを知られれば、返って後に訪れるかもしれない逃亡のチャンスを逃すことになるだろうと思い、更に歯を食いしばる力を込めつつ何とか堪えた。
「まぁ3日以内にあの女の主が現れれば、折角のその機会も無いわけですけどね・・・。
来ると思います?イシドル先輩。
世界の監視者。」
リューリクに話題を振られたイシドルは答えた。
「どうかねぇ?
監視者っていったら創造神ヘリオス様の神使だろ?
スパイ女1人の為に、創造神様に迷惑かけてまで公の場に姿を現すことは無いんじゃねぇの?
ねぇ、ワディム隊長。」
イシドルに同意を求められたワディムはお喋りを好まないのだろう。
少々うざったそうに眉をうねらせつつもこう返した。
「だから無駄口を叩くなとさっきから言っている・・・。
まぁ十中八九来ないだろう。
私ならそんな女の1人くらい、どうなろうと放っておくからな。
美人で有能な女くらい、、他に探せばそれなりにいるものだ。」
「そういうものですか!
やっぱワディム隊長みたいなゼニスの方々になると、俺みたいなオリーブとは出会う女の格も違うんですねー。
いやぁ~羨ましいですよ!」
とイシドル。
レオンは思った。
(いや・・・奴は必ず来る。
例え奴にとって不利な条件を飲まされることになっても、モニカをこいつらの好きにされる前に必ず助けに現れる・・・。
悔しいが、そこだけは奴を信じられる・・・。
そしてもはや父とも呼びたくないあの男が、モニカを奴との交渉手段として使うつもりでいる以上、モニカは3日間は手を付けられることはないだろう・・・。
だから落ち着け・・・奴らの言うことに煽られるな・・・。
今優先すべきはモニカの救出ではない・・・。
母様とアレクセイさんを助けることを考えろ・・・。
きっと2人は重罪人が投獄される地下深くの厳重な鍵がついた牢獄へ、明日の処刑の時刻まで投獄される・・・。
僕がもしこの馬車からの逃亡に成功し、宮廷内に突入出来たとしても、誰かに見つかればエカテリーナを呼ばれてしまい、あの女が特別な魔石の指輪を持っている以上、また眠らされるなりして今度はもっと厳重に見張りをつけられた上で追放されるのだろうし、通常の牢獄に投獄されているであろうモニカならともかく、母様とアレクセイさんの2人を助け出すことは僕にはとても出来ないだろう・・・。
2人を助け出すなら明日の処刑の場・・・それしかない・・・。
だから僕はこのまま追放されるわけにはいかないんだ・・・!
何とかしてこの馬車から逃げ出さないと・・・・・)
レオンが必死にどうやってこの馬車から逃げ出そうかと考えていると、自分達の乗った馬車が走る音とはまた別の、後ろから馬が数頭迫り来る音が聴こえた。
(馬2頭・・・?
いや・・・3頭だ。
この馬車にいる隊に、何か急ぎの伝令だろうか?
それなら一人で済む筈だが・・・)
レオンがそう思っていると、馬車の外で声がした。
「おい馭者!
その馬車、追放者を乗せている馬車で間違いないな?
隊長殿に急ぎの伝令があるため、一旦停止しろ!」
「え、ええっ!?
で、ですが私ははただの雇われの身でして、そのような判断を下す権限は持ち合わせていないのですが・・・」
と馭者が戸惑っていると、キャビンのドアを少し開けてワディムが顔を出し、
「何事だ!」
と外にいる馬に乗る者に尋ねた。
「貴殿はワディム3番隊長だな!
私は現2番隊長のヴィクトルだ!
当主様より急ぎの伝令があるため、追いかけてきた!
至急、馬車を止めていただきたい!」
(ヴィクトル・・・!
確かにこの声は、ロジウムの戦いを共に生き抜いたあのヴィクトルで間違いない・・・!)
レオンはヴィクトルの良く通る彼の誠実さを現したかのような声に懐かしさを感じ、胸が熱くなった。
(ヴィクトルはどんなときでも周りに流されることなく、まっすぐに自分の信念を貫く人だった。
今の僕には眩しすぎるくらいに奥さんに一途で、家族や仲間を大切にしていた・・・。
彼なら僕が不義の子ではないと信じ、逃亡に協力してくれるか・・・!?
いや・・・彼は騎士の仕事でここまで来たんだ・・・。
彼には守るべき家庭があるのだし、僕の逃亡に手を貸したりしたら、彼は罪に問われ家族も露頭に迷うことになる・・・。
だから僕は彼にそれを望むことは出来ない・・・)
レオンはそう思い、ぐっと助けを請い叫びたい気持ちを堪えた。
「ヴィクトル?
たかが伝令に1小隊を率いて直接来るなど、余程のことなのか・・・?
わかった。
馭者、馬車を止めろ。」
ワディムに命じられた馭者は、「は、はい!」と返事をして馬車を止めた。
そこはミスティルの町外れの森の中のようで、馬の嘶く声に驚いた鳥がバサバサバサ・・・と飛び立ち、木の枝が風で揺れる音が聴こえた。
「それで・・・急ぎの伝令とは何だ?」
そう言って馬車から降りてきたワディムに向けて、ヴィクトルはスッと剣を向けるとこう言った。
「すまない・・・伝令と言うのは嘘なのだ。
ワディム、この任務を仰せつかった貴殿には悪いが、私はレオンハルト様に多大な恩があってな・・・。
どうしてもこのまま追放を許すわけにはいかないのだ!
2人共、私がワディムを引き付けるから早く!」
ヴィクトルは一緒に来た騎士2人にそう声をかけた。
すると2人の騎士は、
「了解!」
「はいっす!」
とそれぞれの懐かしい返事を返しながら馬から降り、オリーブ騎士のほうは馭者を追っ払いに馭者席のほうへ、もう1人の若きゼニス騎士のほうはキャビンに乗り込んできた!
「ヴィクトル貴様、気でも触れたのか!
レオンハルトの逃亡に手を貸せば、貴様ら全員只では済まされぬのだぞ!!」
とワディムは応戦しながら声を上げた。
「わかっている!
だが当主様が何を言おうとも、ロジウムでレオンハルト様の戦いを傍で見てきた我々だけは、レオンハルト様が真の英雄の子孫であり、ブルードラゴンの脅威から我々を守ってくださった英雄であると信じている!
そんな国の英雄を追放し、その母君をあのような信憑性の低い証拠のみで処刑しようなど、馬鹿げている!!」
ヴィクトルとワディムの剣がぶつかり合う音が聞こえる中、キャビンに飛び込んできたゼニス騎士を見たレオンはハッとして声を上げた。
「お前・・・レフか!」
「レオンハルト!
お前目が覚めたのか・・・!」
とレフより先にその声に反応したリューリクが声を上げた。
「第4公妃のかけた睡眠魔法をこんなに早く解くとは・・・流石レオンハルト様です!
今こいつらをどうにかしますので、待っててくださいね・・・!」
レフはチャラいオリーブ騎士イシドルと剣を交えながら、レオンにそう声をかけた。
そこにリューリクが参戦したためレフは不利になり、一気に壁際に追い込まれたが、そこで御者を追い払い終えたライがキャビンに入ってきてレフに加勢したためにレフは何とか危機を脱し、リューリクの剣を弾き飛ばすことに成功した!
その隙にライがレオンの元へとやって来て、剣の切っ先を引っ掛けてレオンの縄を解いてくれた!
すかさずリューリクがレオンに殴りかかってくるが、レオンはリューリクの拳を小手で受け流すとその腕を掴み、ドアを開けて馬車の外へと蹴り飛ばした!
「流石レオンハルト様!
剣が無くても強いっすね!」
とライ。
「剣なしでは戦えないようでは困るから、素手でもある程度は戦えるようにと母様に仕込まれていたのが役に立ったよ。
最も僕はあまり格闘は得意じゃ無いが、それでも剣しかやってこなかったリューリクよりはマジだったみたいだ。」
とレオンは苦笑した。
キャビン内に1人残されたワディム小隊のオリーブ騎士イシドルは怯み、馬車の外へと慌てて逃げ出した。
それを追うようにレオンとレフとライの3人がキャビンの外に出ると、さっきレオンに馬車から蹴り出されたリューリクとたった今逃げ出したイシドルの2人が、まだヴィクトルと打ち合いを続けているワディムを残してレフとライが乗ってきた馬にそれぞれ跨り、その場から走り去って行くのが見えた。
「あいつら俺等の馬を!」
とライ。
「多分奴等、このことを知らせに宮廷に戻るつもりだ・・・。
大丈夫。
残ってるヴィクトルさんの馬に俺等全員は乗れないが、馬車の2頭を切り離して乗ればいい。」
とレフ。
「あ、そっか!
戦いに巻き込まないようにって俺が追っ払ったあの雇われ馭者には帰る足を奪ってしまうことになるから悪いっすけど、利口な馬なら用が済んで開放すりゃあ勝手に主人の家へと帰るだろーし、きっと大きな損害にはならないっすよね。」
とライ。
レオンはそんな2人のやり取りを懐かしく感じながら、ヴィクトルとワディムの勝負の行く方を見守った。
2人は世代も近いことから実力はほぼ互角だと噂されていたが、極貧差ではあるもののヴィクトルの実力のほうがワディ厶のそれを上回っており、やがてヴィクトルはワディムの隙をついてその剣を弾き飛ばすことに成功した!
そして、ヴィクトルはすかさずワディ厶の鳩尾に拳を沈めた。
ワディムは「ぐふっ!」と呻くと意識を手放し、その場に崩れ落ちた。
「お見事!
流石ヴィクトルだ!」
とレオンは微笑み彼の元へと駆け寄った。
「はぁ、はぁ、レオンハルト様!
勿体ないお言葉です・・・!」

ヴィクトルは息を整えると、レオンにことのあらましを説明した。
「私達はロジウムの戦いの英雄である貴方と同じ班だったことを誇りに思い、貴方のお披露目式を心より楽しみにしておりました。
しかしそれがまさか、あのようなことになろうとは・・・。
私には当主様の言うことがまるで信じられませんでした・・・。」
「俺等もっすよ!
なんせ見ましたからね!
レオンハルト様が白の剣を光らせる所を・・・」
とライが言うと、レフも同意して頷いた。
「あぁ、確かに。
ロジウムで拝見したレオンハルト様の実力は素晴らしかった。
それで・・・きっとあの時白の剣が光らなかったのは、何か仕掛けがあると思ったんです。」
ヴィクトルはレフに同意し頷きこう言った。
「ロジウムでレオンハルト様が白の剣を抜かれたブルードラゴン戦の時、私は火傷を負い意識がなかったのですが、後でレフとライからその話を聞いて、やはり貴方は英雄の血を引くお方なのだと・・・貴方の群を抜いたお強さにも納得がいきました。
それに、アンジェリカ公妃の不貞も私共にはとても信じられませんでした・・・。
あの方は時々我らにも剣術を指導して下さいましたが、真っ直ぐで淀みなき剣筋をされておりました・・・。
あの方が当主様以外のお子を黙って貴族として産み育てる筈などなく、貴方とアンジェリカ様は、エカテリーナ様に罠にはめられたのだとすぐにわかりました・・・。
私達は貴方達が謂れなき罪で裁かれようとするのを、黙って見過ごすことなど出来ませんでした・・・。
例え地位と職を失なうことになるのだとしても・・・。」
「ヴィクトル、レフ、ライ・・・。
僕と母様を信じてくれてありがとう・・・。
だけど僕を助けてしまったら君達は・・・」
「お気になさらないで下さい。
私がもし貴方がた親子の無実を知りながら、地位のために当主様に従ったとなれば、私の妻は私に愛想を尽かし、下手したら離縁されていたかもしれません・・・。
私の妻は、そのような女なのです。」
とヴィクトル。
「俺は独り身ですし、ゼニスっていっても父親はとうの昔に戦死していて、母親の実家があるブロンジオ村から上京してますからね。
俺が何かやらかしたところで、ミスティルから離れたブロンジオの母親の実家にまでは影響は及ばないでしょう。
まぁこっちにセフレはいましたが、あっちも別に相手が俺だけってわけじゃなかったですし、俺がレオンハルト様の逃亡に手を貸したと判れば自分の保身の為に上手く立ち回るでしょう。
身軽なもんですよ。」
と言うレフに続けてライが言った。
「俺もレフさんと同じく上京組っすし、好きだった娘には貢ぐだけ貢いで結局振られちゃいましたから、全然身軽っす!」
そんなレフとライの肩に手を置き、ヴィクトルが言った。
「先程逃げた2人により、間もなくこのことは当主様のお耳に入るでしょう。
そうなればミスティルの門は封鎖され、私達も指名手配されるでしょうが、私はレフとライと家族を連れて、ミスティルの封鎖が解けるまで妻の実家で匿って貰います。
私の妻の実家は平民街で不動産業を営んでいましてね。
大通りのラスター様の像のある広場近くにある赤い屋根の店なのですが、お義父とうさんなら私達の数日の潜伏先くらい都合をつけてくれる筈です。
町の封鎖が解けたらそこを出て行って、皆で新たな人生を歩もうかと思います。」
「まぁ俺等は実行犯ですから、アデルバート神国内に逃げても見つかれば牢獄行きですし、いっそのことヘリオス連合の何処かに逃げ込もうかと。
そこでヴィクトルさんとライとでパーティを組んで冒険者でもやりますよ。」 
「そうか・・・・・。
ありがとうヴィクトル、レフ、ライ・・・。」
レオンは涙を流しながら両手を広げ、3人をぎゅっと強く抱き締めた。
ヴィクトルとレフとライの3人も涙を流しながらレオンを抱きしめ返してくれた。
レオンは彼らを抱き締めたまま、涙ながらに告げた。
「・・・僕は明日の処刑まで潜伏し、母様とアレクセイさんを助けようと思う・・・。」
それにヴィクトルが頷いた。
「レオンハルト様ならそう仰ると思っておりました。
ならば我々もアンジェリカ様とアレクセイ殿の救出にお供を・・・。」
レオンは優しく微笑むと頭を振った。
「ありがとう。
でも僕をこうして逃がしてくれただけで充分だ。
ヴィクトルの家族は戦う術を持たないのだし、早く合流して追手から守ってあげて欲しい。
処刑場への突入は僕だけで行う。」
「そんな・・・!
いくら貴方でもたった1人では・・・。
わかりました。
今夜改めて作戦会議を行いましょう。
家族の安全は勿論重視しますが、その上で我々に出来ることを手伝わせてください。
まずは騎士達に見つからないように、私の妻の実家へ参りましょうか。」
「いや・・・僕にはまず行きたい場所があるんだ。
そこは僕とモニカだけが知っている秘密の場所なんだ。
そこでモニカと合流出来るかもしれない。」
「モニカさんと?
多分モニカさんは今頃地下牢の中っすよ?」
とライ。
「うん・・・。
モニカの背後にはファルガー・ニゲルがいる。
奴が大切にしているモニカをあのまま放置し見捨てる筈がない。
だからモニカは放っておいても大丈夫だが、あのモニカが何もせずに地下牢でじっと奴の助けを待つとは思えない。
きっと母様とアレクセイさんを助けるために、どうにか脱獄出来ないかと考えるだろう・・・。
モニカが僕の逃亡を知れば、きっとあの場所に向かうはずだ。
そこでモニカと合流出来たなら・・・モニカと一緒なら、僕はどんな無茶だって成し遂げられる気がするんだ・・・。
だから僕はあの場所でモニカを待ってみたい・・・。」
 「わかりました。
レオンハルト様にはモニカさんが必要不可欠なのですね。」
「うん・・・。
僕は向いていない次期当主になるためには甘い考えを捨てて変わらなければならないと、モニカを裏切り傷付けた・・・。
それでもあいつは今日まで僕の傍にいてくれた・・・。
僕のほうも、他の娘と一緒にいても、やっぱりモニカのことばかり考えてしまっていた・・・。
僕とあいつを繋ぐ赤い糸は所々で複雑に絡まっているのかもしれないが、確かにしっかりと繋がっているんだと思う・・・。
今日一日はあの場所でモニカを待ってみて、モニカが来ても来なくても、必ず皆の所に行くよ。
ラスター像のある広場近くの赤い屋根の不動産店だな?」
「はい。
もし義父の店にまで捜索がかかりそうならすぐにそこから移動しますが、貴方が訪ねてくるかもしれないことを義父に伝えておきますので、その時は彼に訊けばきっと行き先を教えてくれるでしょう。」
「わかった。」
「レオンハルト様はこいつに乗って下さい!
俺とライはこっちの馬に乗りますから!」
そう言ってレフが馬車に繋がれた馬2頭をキャビンから切り離した。
「この先丸腰ではやり辛いっしょ?
若いゼニスが馬車の中に置き去りにしていったこの剣、貰っちゃうといいっすよ。
うわ、新人の癖に良い剣を使ってやがる・・・」
そう言ってライがキャビンの壁に刺さっていた鋼の剣を引き抜いてレオンに手渡した。
レオンはそれを受け取り腰ベルトに着けると馬にまたがり、
「ありがとう!
それじゃまた後で会おう!」
と手を振ってから馬を走らせ、来た道を引き返して行くのだった。

一通り自分がここにいる経緯を話し終えたレオンは、
「・・・それで僕はここで君を待ってたんだ。
そしてやっぱり君は来た。」
と言ってモニカを見つめ、柔らかく微笑んだ。
モニカはその美しい笑顔に見惚れて頬を染めながらも、いつもの調子でこう返した。
「いえ・・・
先程お話した通り、私がここに来れたのはリディアさんとドミトリーさんとマルファさん、それからジェイド様のお蔭ですわ。
私一人で脱獄するのでしたら、まず隙だらけでした見張り番のオリーブ騎士に色仕掛けをして鍵を奪い、立ちはだかる騎士を鞭でしばきながら突破する・・・などという荒っぽい手段しかなかったでしょうが、ゼニス騎士に立ちはだかれればまず敵わなかったでしょうし、果たして無事逃げ出せていたかどうかわかりません・・・。
牢屋にいる時にレオン様が追放の馬車から逃走され、町からは出ていないはずなのに見つからないと言う話を見張り番から聞きましたので、きっとこの場所にいるのだと思い、脱獄後すぐにここを目指したのです。」
レオンは、
「そうか・・・。
君が誰かに色仕掛けをするだなんて想像しただけでムカつくから、その機会がリディア達のお蔭で巡って来なくて良かったよ・・・。」
と複雑そうに顔を歪めて微笑んでから、こう尋ねた。
「ところで・・・さっきのウィッグがジェイド兄さんの置き土産だと言ったな?
それはどういう意味だ?
ジェイド兄さんは君の協力者ではあったが、君が僕と母様を助けるためにお披露目の場でスパイであることを公表した地点で、宰相に戻るものだとばかり思っていたが・・・」
それに対してモニカは頷きこう答えた。
「ジェイド様は、この国で宰相としてエカテリーナに飼い殺しにされる窮屈な未来より、自由に生きられそうなジャポネでの未来を選ばれたのですわ。
あのウィッグは私を置いて先にこの国から逃げることにしたジェイド様が、私の特徴的な髪の色を隠すためにとリディアさんに託して下さったものです。」
「ジャポネでの未来だって?
一体どういうことだ・・・?」
モニカはそう言って怪訝そうな顔をするレオンに、レオンにだけ内緒で亡命計画が進んでいたこと、そして既にジェイドやライオネルやタマラ、オリガやサーシャ、そして貧民街の学校の亡命希望者とその家族など、大半が桜雅と梅次の手引で亡命を果たしたことを伝えた。
「そうだったのか・・・!
ジェイド兄さん、じいちゃんばあちゃん、オリガにサーシャ、そして貧民街の亡命を望む人達が皆オーガとウェッグの手引きの元、ジャポネへと逃れられたことには安堵した・・・。
だが亡命計画だなんて・・・そんな重要なことを何故僕に話してくれなかったんだ!?モニカ!」 
とレオンは取り乱し、モニカの細い肩に手を置いて身体を揺さぶった。
「あの時のレオン様にそれを打ち明ければ、
「僕が次期当主になるのだからそんなのは必要ない!
ファルガー・ニゲルの助けなど借りてたまるものか!」
と反発され当主様にそれを話してしまい、全てが台無しにされてしまうと思ったからですわ。
ですがその計画をしていたことは、不幸中の幸いでした。
まさか私達がこの国を裏切り逃げ出すよりも先に、あのような嘘っぱちの証拠でアンジェリカ様とアレクセイさんが罪人にされるとは思いませんでしたが、あの計画があったお蔭でアンジェリカ様に近しい方達や貧民街の学校がなくなると困る人達を救うことが出来たのです。
もしあの計画が無かったら、例えファルガー様が万が一のためにと本日天界ゲートの使用許可を創造神様からいただいていたとしても、あの混乱の最中、顔もわからない、事情も知らない方達を父様と梅次とで助け出すだなんて不可能でした。
それに・・・レオン様を助けて下さったヴィクトルさんとヴィクトルさんのご家族、レフさん、ライさんこのことも心配です・・・。
彼ら全員が町の封鎖が解かれるまでずっと見つからずに潜伏するなんて・・・騎士であるヴィクトルさんとレフさんライさんだけならともかく、ヴィクトルさんの奥さんや小さいお子さんもおられることも考えれば不可能ですわ・・・。
ですがもし彼らの同意が得られたのなら、私からファルガー様に事情をお話すれば、追加で亡命させることが可能だと思うのです。
ジャポネであれば、住む所もすぐに用意出来ますし、当面の生活費も支援されます。
お仕事も騎士様であれば侍や用心棒や町奉行所のお役人など、色々とご紹介出来ると思いますわ。」
「そうか・・・。
確かにヴィクトル達には良い待遇だと思う・・・。
だがやはり僕は・・・」
とレオンはモニカの提案に渋い顔をして俯いた。
「・・・レオン様がファルガー様をお嫌いで、お力を借りたくないお気持ちはお察しします。
ですがジャポネに亡命するという道があることを、彼等にもきちんとお伝えするべきですわ。
何も彼等のためにファルガー様に頭を下げてお願いしろだなんて申しておりません。
ただ・・・貴方が大切に想うお仲間のために、その刃をひととき収めることは出来ませんか?
彼らだけではありません。
ファルガー様はアンジェリカ様とアレクセイさんを処刑される前に助け出し、亡命させるおつもりです。
同じ目的のためにそれぞれが別に動くよりは、お互いに協力関係を結ばれたほうが、その成功率は格段に上がるはずです。」
モニカにそう諭されたレオンは俯き、暫く黙り込んでからこう呟いた。
「・・・・・・
わかった・・・・・。
ヴィクトル達・・・そして母様とアレクセイさんの為だ・・・・・。
今回限り、奴と手を結ぶことにする・・・。」
「レオン様・・・!
ご英断をありがとうございます・・・!」
とモニカは嬉しそうに表情を綻ばせ、彼の手を握った。
だがレオンは即座に顔を上げて眉を釣り上げると、キッパリとした口調でこう言った。
「僕は明日、君や母様達と共にジャポネに亡命する。
だが永住する気はないぞ?
君が生まれ育ったジャポネという国には興味があるし、僕の大切な人達がその国でどのように暮らしていくのか・・・それを見ておきたいから、皆の生活基盤がある程度整うまではジャポネにいる。
だが、ファルガー・ニゲルの庭て飼われ、君をいつ奪われるかわからない生活を死ぬまで続けるのは絶対にゴメンだ!
だから僕はある程度皆の生活基盤が整ったらジャポネを出る。
そしていつか・・・心から幸せに暮らせる場所を見つけ出し、そこで生涯を終えたい・・・。
君は・・・ついてきてくれるだろうか・・・?」
レオンは最後は不安気に俯き、モニカをチラッと見ながらそう尋ねてきた。
モニカはそんな彼が愛らしすぎてキュン♥と胸が疼き、彼の頭を胸元にぎゅっと抱き寄せてからこう返した。
「・・・いいですよ?
年に一度くらいジャポネに里帰りする許可がいただけるのであれば、どこまでもお供致します・・・。」
「本当か・・・!
良かった・・・!」
とレオンはモニカの胸元に顔を埋めたままで、嬉しそうに輝かせた顔を上げた。
だがすぐに不安要素を思い浮かべたのだろう。
複雑そうに顔を歪めて俯き、こう言った。
「だが里帰りの際には必ず僕も付いていくぞ?
君一人で里帰りなんかさせたら、奴に寝取られそうで気が気でないからな・・・。」
モニカはクスッと微笑むと、彼の頭を優しく撫でながらこう返した。
「ファルガー様は貴方が私を悲しませるようなことをせず、一途に愛して下さるのであれば、そのようなことは致しませんわ。」
「・・・本当にそうだろうか?」
と少々疑わし気に眉を寄せて首を傾げるレオン。
「えぇ、保証致します。」
とモニカは頷いた。
「・・・奴に言われずとも・・・僕はもう次期当主にならなくても良くなったんだ・・・。
だからプライドを満たすための行為は必要ないし、これからは君としかするつもりはないよ・・・。
・・・・・モニカ・・・・」
レオンは切なそうな表情でそう囁きながら顔を上げ、モニカにそっと唇を寄せて来た。
モニカは頬を染めると長いまつ毛を揺らしながら目を閉じ、口づけに応じた。
そしてその行為は徐々に深くなる。
モニカが欲しくて堪らなくなったレオンは、荒い吐息をつきながら唇を離し、潤んだ瞳でモニカを見つめて掠れた声でこう囁いた。
「モニカ・・・・・シたい・・・・・」
モニカは真っ赤に頬を染めて彼を見つめ返すと、そっと頭を振った。
「今はいけませんわ、レオン様・・・」
「何故・・・?」
と不安気に眉を寄せるレオン。
「私とてレオン様とまたこうして一緒にいられて嬉しいですし、もっとレオン様を感じたいです・・・。
ですがアンジェリカ様とアレクセイさんの今の状況を思いますとやはり・・・。
ですので愛し合うのはお2人を処刑台から救出し、皆でジャポネに亡命してからにしましょう。
それに今は早急にヴィクトルさん達に亡命の意思を確認しないとなりません。
ファルガー様が創造神様からミスティル教会の天界ゲート使用許可を得られたのは、本日のみです。
創造神様は天界ゲートをそう安々と民に利用させられないというお考えのようですから、1日の許可を得られただけでも万々歳だとファルガー様は仰っていました。
もうじき22時・・・あまり時間がありませんわ。」
とモニカは真剣な表情でそう言った。
レオンはモニカの言ったことに驚き声を荒げた。
「なんだって!?
それなら明日まで手出しできない母様とアレクセイさん、そして明日2人を救出させる君と僕は、どうやってジャポネまで行くんだ!?
僕たちは皆この国では罪人とされているし、当然馬車にもジャポネ行きの船にも乗れないんだぞ!?」
モニカは冷静なままで答えた。
「その点はご心配なく。
ファルガー様が創造神様より授かりし御力みちから”超高速”に加えて風魔法による補助を行えば、大人2人くらいは運べるでしょうし、海だって渡れます。
ですのでファルガー様は、アンジェリカ様とアレクセイさん、レオン様と私とで2往復なさるおつもりでしょう。
ファルガー様のお力であれば、アデルバートからジャポネまで5分とかかりません。
その間、私達2人は誰にも見つからないこの場所で、迎えが来るのを待っていれば良いのです。」
「そうか・・・わかった。
全く、神使というのはチートだな・・・。
僕なんて敵わないはずだよ・・・」
とレオンはため息を混じりに呟いた。
「そんなことはありませんわ。
私からすればレオン様だって充分過ぎる程チートなのですから。
それはともかくとして、ファルガー様のお力で亡命するとなると、一つ問題が生じます。
それは、明日のアンジェリカ様とアレクセイさんの救出作戦中に、ファルガー様の”荒業”が使えなくなってしまうことです・・・。」
「”荒業”?」
と初めて聴くワードにレオンは首を傾げた。
「・・・時間がありませんから、山を下りながら話しましょうか。」

レオンとレオンの逃走に手を貸したヴィクトル達、そして脱獄したことがバレていればモニカもその対象に入っているのだろうが、既にこの裏山にも捜索隊が入っているようで、遠くの方でランタンの灯がチカチカと見え隠れしていた。
「いたか!?」
「いや、こっちにはいない!」
等の声が遠くで聴こえる。
どうやら彼らは訓練などで行き来することのある踏み固められた道を探しているようで、その道から大きく外れた道なき道を灯もなしに下る2人が、互いがギリギリで聴き取れる程度のボリュームの話し声と茂みをかき分ける音であれば、届く心配はなさそうだった。
モニカはレオンと一緒に山を下りながら、ファルガーの荒業について、そしてそれを説明するのに必要と思われる神避けについても一通り説明したのだった。
「成程・・・。
ではエカテリーナが仕掛けた神避けがあったためにファルガー・ニゲルは宮廷内の調査が行えず、君をスパイとして送り込んだのだな?」
とモニカの話を振り返るレオン。
「はい。
ジェイド様の協力のお蔭で、神避けの在り方は・・・当主と呼ぶのも最早腹立たしいのでダズル・ナイトと呼びますが、彼の部屋にある大きな花瓶の下にあるとわかりました。」
レオンはダズルの部屋に入った時に見た花瓶を頭に思い浮かべた。
「あぁ・・・花瓶か!
そうか、あの下に神避けが・・・。
それを君はファルガー・ニゲルの命で、敢えてそのままにしていたのだな?」
「えぇ。
もしその神避けをその場で回収なり破壊なりしても、エカテリーナはまた違う神避けを用意するでしょう。
そうしましたら今度はもっと難解な場所に神避けを隠されるでしょうから、それなら神避けに手を付けずにそのままにしておいて、ここぞという時にファルガー様が先程説明しました”荒業”を用いて神避けエリア内へと侵入し、目的のついでに神避けを処理なさるおつもりのようでした。」
とレオンに付いて茂みを進みながらモニカは返した。
「だが、その荒業を使えば奴は1ヶ月もの間行動不能になるのだろう?
僕らの亡命には奴の力が必要だから、荒業は使えない。
であれば、君と僕だけで母様とアレクセイさんを助けるしかないだろう?」
と言うレオンに対し、モニカは慌てて頭を振った。
「いいえ・・・!
確かにレオン様はとてもお強いです。
ですが私は多少鞭が扱えはしますが、ゼニス騎士に通用する程ではありません・・・!
それに相手は圧倒的に数が多いうえ、エカテリーナは色々な能力を持つ指輪を持っています。
ルーカスが持ち主に選ばれたというあのダインスレイブという剣も底が知れませんし・・・。
それらを考えれば、ファルガー様のお力無しでアンジェリカ様とアレクセイさんを助け出すのは無理だと思いますわ・・・。」
「じゃあどうするんだよ・・・。」
とレオンは再び眉を寄せた。
「これはあくまで私の考えに過ぎませんが、処刑が始まる前に私とレオン様とで宮廷に侵入し、神避けをどうにかするしかないのではと思います。
それからこのファルガー様の神力が込められた笛でファルガー様を呼ぶのです。」
そう言ってモニカは首から下げた白い陶器の笛がついた小さなペンダントを取り出すと、レオンに見せた。
「・・・それは君が母様の形見だと言って常に身に着けていた・・・。
まさか・・・それも奴からの贈り物だったのか!?」
と、嘘をつかれていたショックからか眉を釣り上げるレオン。
「すみません・・・。
本当のことを言えばレオン様に壊されてしまうと思ったので、母様の形見だと申しておりました・・・。
これは私が本当にどうしようもない時にファルガー様をお呼びする為のもので、一度吹けば壊れてしまいます。
レオン様のように秀でた戦闘力があるわけでもなく、ジェイド様のように優れた魔法使いでもない凡人の私は、いざというときに自分を守る為にこれが必要でしたから、そう嘘をついたのです・・・。
幸いにも今までこの笛を使う機会はありませんでしたが、この笛の音はすぐにファルガー様に届きます。
ファルガー様の足であれば、瞬く間に駆け付けてくださいますわ。
最も神避けが私達だけでどうにかできる代物なのかもわかりませんし、ファルガー様に他にお考えがあるかもしれませんから、まず今最優先すべきはヴィクトルさん達のことですが、彼等を無事亡命させる事が出来ましたら、ファルガー様と明日の作戦会議をしましょう。」 
そう言ってモニカは真剣な表情でレオンを見つめた。
するとレオンは足を止め、
「わかった・・・。
ファルガー・ニゲルと顔を合わせて話をするなど、殺意を抑えるのに大層苦労しそうだが、母様とアレクセイさんの為だ。
我慢する・・・。」
と少し不貞腐れ気味ではあったが、モニカの顔を見てそう答えた。
モニカは柔らかく微笑むと、背伸びをして彼の頭に手を伸ばし、その金の柔らかな髪を撫でた。
「本当に身も心も成長なされましたね、レオン様・・・!
全てが終わりましたら、ドSメイドからうんとご褒美を差し上げます・・・!
だから共に頑張りましょう・・・!」
レオンはモニカをぎゅっと抱き締めると彼女に頬擦りをし、こう言った。
「あぁ・・・!
ドSメイドらしいとびきり刺激的なご褒美を期待している・・・。」



裏山を下りた2人は、そのまま人目を避けながら町へと下り、ヴィクトル達がいるであろう大通りのラスター・ナイト像広場近くの赤い屋根の不動産店を目指すことにした。
しかし町では裏山の比でない数の捜索隊が出ており、多くのオリーブやゼニス騎士が各通りを彷徨いていた。
灰色のウィッグを被りフリーメイドの格好をしたモニカはともかく、お披露目式のときのままの全身鎧に白いマントを纏ったレオンは通りへ出れば非常に目立つため、2人は建物の影に身を潜め、そこからなかなか出られずにいた。
『クソッ・・・!
こんなときアイテムボックスがあれば、その辺をうろついている騎士を襲い、今着てる装備をアイテムボックスに入れてそいつの服に着替えることも出来たのにな・・・。
だがこの鎧は母様が僕の為に用意してくれた大切なものだし、その辺に脱ぎ捨てるわけにはいかない・・・』
とレオンが冷や汗を垂らしながら小声で呟いた。
『そうですわね・・・。
でしたら先にミスティル教会へ行きましょう。
教会にはファルガー様が待機されている筈ですし、そこでなら鎧を預けて目立たない服装をお借り出来ると思います。
そして急いでヴィクトルさんの義実家のお店へ向かいましょう。』
とモニカが提案した。
『わかった。
だがきっと教会通りにも騎士はいるぞ?
途中で見つかってしまう。』
とレオン。
『大丈夫ですわ。
教会周辺にはファルガー様が亡命者の安全確保のために目眩ましの結界を貼られていると思います。
亡命者リストにある私達なら、その結界内に入ればファルガー様の魔法が発動し、追手から守ってくれる筈です。
さぁ、行きましょう!』

「いたぞーーー!
レオンハルトだ!」
「灰色の髪のフリーメイドも一緒だ!
脱獄した例のスパイの変装かもしれん!
捕まえて確認をするんだ!」
教会へ向う途中どうしても通りを横切る必要が為、そこで2人は呆気なく騎士達に見つかってしまった。
騎士達に追いかけられながらも教会を目指して全速力で走る2人。
すると教会通りのある地点を通過した所で、追ってきた騎士達が急に足を止めたのだった。
「何だ・・・!?
急に消えた・・・?」
「さっきまで逃げる奴らの姿が見えていたというのに・・・」
戸惑う騎士たちを見て2人は頷き合うと、間もなく見えてきた教会の門を潜り、扉を開けた。

扉を開けると神父、そして3人の神官が入り口近くで待機していた。
その中の一人は、よく見ると神官服を着て髪色を天界道具にて濃灰色に変えたファルガー・ニゲルであり、彼はモニカが変装しているのにもかかわらずすぐに彼女だとわかったようで、
「あぁ・・・僕の大切な娘!
心配していた・・・!」
と言いながら真っ先に彼女の元へと駆け寄り、モニカを抱き締めようとした。
しかしレオンがそうはさせまいと、モニカの腕を引き自分の胸元へと引き寄せた。
「・・・僕の前で再会のハグなんかさせないぞ?
ファルガー・ニゲル。」
レオンはそう言って鋭い視線をファルガーに投げかけた。
「やれやれ・・・。
父子の再会のハグも許してくれないなんて、随分と懐が狭いんだね、レオンハルトくんは。」
とファルガーは手のひらを上に向けて両肩をすくめ、苦笑した。
「あんたがモニカに向ける感情が父親のものだって?
胸に手を当てて今までの言動を良く振り返ってみてから言えよ・・・」
とレオンは彼を睨んだままで返した。
「僕は仮にも神族なのだが、随分な物言いだね。
まぁ剣を抜かずに口で敵意を示すだけで留めている辺り、君なりに少しは成長したようだね?」
ファルガーはそう言ってクツクツと笑うと、今度はモニカに視線を向けてこう続けた。
「アンジェリカ公妃とアレクセイ氏を救出したら君を迎えに行くつもりだったが、自力で脱獄してくるとはさすがだね。」
「いえ、私はフリーメイドのリディアさんと料理長のドミトリーさんとマルファさんに助けていただいたお蔭で今ここにおりますから。」
とモニカは説明した。
「いや、彼らをそのように動かしたのは、君の今までの行ないの結果だよ。
レオンハルト君も無事追放を免れたようでよかったね。」
と後半はレオンに微笑みを向けるファルガー。
それに対してレオンは、
「フン・・・」 
とそっぽを向いてしまったので、モニカが代わりにこう返した。
「ファルガー様はレオン様が追放される途中で逃走されたことをご存知だったのですね?」
「あぁ、外を彷徨いている騎士達が、逃走した君たちを匿っていないかとここへ探りを入れに来たからね。
彼らの話によると、レオンハルトくんの逃走に手を貸した騎士達がいるようだが、彼等は一緒では無いのか?」
とファルガー。
「はい、そのことなのですが・・・」
モニカはレオンから聞いたヴィクトル達による救出劇と、彼らの今後についての自分の提案を、ファルガーに話すのだった。

「ふむ・・・。
それで君は、彼らがジャポネへの亡命を希望するようならば追加したいと言うんだね?
ヴィクトルさんのご家族含めて6名か。
こんなこともあろうかとジャポネの受け入れ側にも多少余裕を持たせてあったから、それくらいの追加なら全然構わないよ。
ただ創造神様から天界ゲートの使用許可が下りているのは本日のみだから、あと1時間程しかない。
急いで迎えに行かないと、間に合わなくなる。」
とファルガー。
「えぇ。
ですが外には沢山の騎士達がうろついていて、レオン様の格好は目立ちますし、私の変装もレオン様と一緒にいる所を見られていますから、このまま彼らの元へと向かうのは無理です。
そこでこちらで何か変装出来そうな服をお貸しいただけないかと思いまして・・・」
とモニカ。
それに対してファルガーはこう答えた。
「それなら光魔法”インビジブル”をかければいい。
自分の他、対象となる者を選んで透明化させることの出来るそれなりに高度な魔法だが、レオンハルトくんはロジウムでドラゴンを倒した経験値でかなりレベルアップしただろうし、もう使えるようになっている筈だ。
魔法なら変装と違って着替える時間もかからないし、簡単に解除も出来る。
ヴィクトルさん達全員にかければ、ここまで連れてくることも容易い。」
レオンは悔しそうに顔を歪めると、ファルガーのその提案に頭を振った。
「いや・・・。
確かにあの戦いの後、ジェイド兄さんの鑑定魔石で自分のステータスを確認したら、その魔法を使えるようになっていた。
だが僕は魔力を増幅させるマジックペンダントがないと、魔法は・・・」
レオンが最後まで言い終わる前に、ファルガーが指輪型アイテムボックスを起動させてジャラ・・・と赤い魔石のついたマジックペンダントを亜空間から取り出し、
「これだろう?
そのマジックペンダントというのは。」
と言ってレオンに見せた。
「どうしてあんたがそれを・・・!」
と驚き目を見開くレオン。
「君のお兄さんから君へ渡してくれと託されたんだよ。
それだけじゃないよ?
やはり君にはこれがないとね・・・。」
そう言って彼は続けて”白の剣”を亜空間より取り出し、レオンに手渡した。
「白の剣まで・・・!
ジェイド兄さんが宮廷から脱出する前にマジックペンダントと一緒に持ち出したのか!」
「うん。
白の剣はやはり本物の英雄の末裔である君が持つべきだから、秘密裏に作っておいた白の剣そっくりのレプリカとすり替えてきたと言っていたよ。
まぁ未だダズル・ナイトに光らなくされたままのようだが、却って目立たなくて良いし、剣の威力は何ら変わらない筈だ。
他にもジェイド殿から託されたものが色々あるが、それはヴィクトルさん達を無事に亡命させてから渡そう。
さぁ、彼らの元へと急ぐといい。」
レオンはモニカと顔を見合わせて頷き、白の剣を腰に差してマジックペンダントを首から下げると、目を閉じて意識を集中させた。

─インビジブル!─

レオンとモニカの姿がその場にいる神父と神官2人には見えなくなったのか、彼らは驚き目を見開いて、
「おおっ!
お2人のお姿が消えました!」
「これが光魔法インビジブルですか・・・!
素晴らしい!」
等と口にしていた。
だが魔法がかかっている者同士には互いの姿の向こうに教会の壁が透けて見えてはいたが、視認は出来るようだ。
レオンに魔力で勝るファルガーにも同じ様に見えているようで、こちらを見て満足気に頷いた。
「上出来だな。
まぁ君と魔力が同等かそれ以上の者にこの魔法は通用しないが、その辺を彷徨うろついている騎士に見破れる者はいないだろう。
ただし持続時間はレオンハルトくんの魔力に依存するから、それ程は長くはないぞ。
行きは2人だけだからいいが、帰りにはかける人数が増えるからきっと魔力切れを起こす。
目眩がしてきたら魔力切れの兆候だから、その時にはこのマジックポーションを飲むといい。
これも君のお兄さんからの置き土産だよ。
彼、本当に良く気が回るね。
彼を味方に引き入れられて良かったよ。」
ファルガーはそう言いながら小さな小瓶を一つアイテムボックスから取り出し、レオンに手渡した。
レオンは複雑そうに顔を歪めたまま少し照れくさそうに頬を染めると、
「あんたから施しを受けるのは御免だが、ジェイド兄さんからだと言うなら受け取ろう・・・」
と言ってそれを素直に受け取り、懐に仕舞った。
モニカはそれを見て、いつだったかレオンにナイト家の兄弟ついて訊いたとき、
「同じ腹違いの兄弟の中では、ジェイド兄さんが一番僕に構ってくれるかな。
まぁジェイド兄さんは腹の底が読めないし、貴族ならああしろこうしろと煩わしいことも言われるから正直苦手ではあるが、そうして干渉してくれることに救われてる部分もあるんだ・・・。」
と言っていたことを思い出し、彼等の兄弟関係はモニカの知るそれとは違って多少歪であっても、ジェイドはレオンにとっては失いたくないかけがえの無い人の一人だったのではないかと思い、彼と敵対せずに済んだことに改めて感謝し、柔らかく微笑むのだった。

インビジブルの魔法で姿を消したレオンとモニカは、教会を出て真っ直ぐにラスター・ナイト像のある大通りの噴水広場へと向かった。
大通りには教会通りの比でない数の騎士達が彷徨うろついており、周囲の建物を一軒一軒尋ねては、脱走者を匿っていないか確認をしている騎士達の姿も見られた。
『マズいぞモニカ・・・。
このぶんではヴィクトルの義父の家にも捜索の手が回っているかもしれない。
しかもこれだけ騎士達が彷徨うろついている中では、ヴィクトル達が場所を移すことも難しいだろう・・・。』
とレオンが声を潜めてモニカに言った。
『えぇ・・・。
ですがここに来るまでに通りすがった騎士達の話を聞く限り、ヴィクトルさん達が捕まった様子はありません。
だとしたらまだお義父とう様のお店にいて見つかっていないか、もしくは既にお義父とう様のお店から移動されているかのどちらかですわ。』
とモニカ。
『そうだな。
取り敢えず店を訪ねてみよう。』
そして2人は広場から見える赤い屋根の不動産店へと走った。

2人が不動産店の目の前まで来ると、丁度2人組のオリーブ騎士が店主(恐らくヴィクトルの義父であろう)を正面玄関へと呼び出し、話をしている所だった。
「ご近所さんの話ではあんた、レオンハルト・ナイトの逃走に手を貸した元2番隊隊長ヴィクトル・ナイトの親類だそうだな?」
「確かに私の娘はヴィクトル・ナイトに嫁いでおりますが、ここに彼等は来ておりませんよ?」
と答える初老の店主。
「身内を庇って嘘をついているのではないか?
中を調べさせてもらうぞ!」
そう言ってオリーブ騎士2人はズカズカと店内へと上がり込んだ。
『大変だモニカ!
もしまだヴィクトル達がここにいたら、見つかってしまう・・・!』
『落ち着いて下さいレオン様。
彼等がまだここにいるとするならば、お義父とう様が騎士達を引き付けている間に勝手口から逃げるでしょうから、まずそちらに回ってみましょう。』
2人は頷き合うと、不動産店の勝手口に繋がっていると思われる細い裏路地に入ってみた。
すると丁度店の勝手口らしき扉が開き、そこからライが恐る恐る顔を出して、キョロキョロ辺りを見渡してからこう言った。
『良かった!
勝手口のほうは大丈夫っす!
みんな、今のうちに外へ・・・!』
その声に反応して出てきたのは4~5歳と思われる元気な男の子で、彼に続いて10歳前後の女の子が出てきて、続けてヴィクトルの奥さんと思われる夫人、そしてヴィクトルとレフが最後に出てきて勝手口の扉を閉めた。
ヴィクトルは家族を大通りから見えにくい物陰へ隠すと、大通りの様子を裏路地からこっそりと顔を出し伺っているレフとライに話しかけた。
『どうだ?
出られる隙はありそうか?』
『いえ・・・凄い騎士密度ですし、ここから店主さんが用意してくれた次の潜伏先に向かうのはとても無理ですよ・・・。
この裏路地の奥から何処か別の通りに抜けられたりはしないんですか?』
とヴィクトルに尋ねるレフ。
『残念ながらこの奥は行き止まりだ・・・。
大丈夫。
私が囮となり皆を逃がす。
レフとライは私の妻と子供を連れて先に行っていてくれ。』
とヴィクトルがレフとライに向けて言ったその時である。
「その必要はないぞ、ヴィクトル。」 
とインビジブルの魔法を解いたレオンが姿を現し、背後からヴィクトルに声をかけた。
「!!??」
ビックリしたヴィクトルは目を丸く大きく見開き、突然現れた(かのように彼には見えたのだろう)レオンとモニカを凝視し言葉を失っていた。
「「レオンハルト様とモニカさん!?」」
レフとライが少し遅れてレオンとモニカの登場に驚いて、状況も構わず思わず大声で反応してしまった。
「今裏の方からレオンハルトとか聞こえなかったか!?」
彼等の声が聞こえていたのか、不動産店から調査を終えて出てきたオリーブ騎士2人がこちらに近づいて来た。
『皆さん、大丈夫ですから落ち着いて、一箇所に集まってください。
そして、レオン様がいいと言うまでは声を上げては駄目ですよ?
出来ますね?』
とモニカはその場にいる全員にそう言い、最後はヴィクトルの子供達2人に向けて優しく微笑みかけた。
子供達は互いに顔を見合わせてからこくんと頷いた。
レオンはヴィクトルとレフとライを連れて彼らの元へと駆け寄ると、意識を集中させて魔法を唱えた。

─インビジブル!─

その場にいる全員の姿が瞬く間に透明になった。
その直後、オリーブ騎士2人が裏路地に様子を見に現れた。
「ん・・・?
別に誰もいないじゃないか。」
「本当だ。
すまん、気の所為だったようだ。」
オリーブ騎士2人は、そう言いながら大通りへと戻って行った。
「・・・もう話してもいいぞ。
ただし出来るだけ小さな声でな。」
とレオンは全員に向けて言った。
「わかりました。
レオンハルト様、この状態は一体・・・?」
自らの透き通って地面が見えている手を不思議そうに眺めながらヴィクトルが尋ねた。
「これはインビジブルという透明になれる光魔法だよ。
この魔法がかかっている者同士は、こうして相手の姿が透けてはいても視認は出来るが、周りにいる騎士達には僕らの姿は完全に見えないようだ。
だがただ姿が消えているだけだから、当然触れればわかるし、声や足音は聴こえるからそこは気をつけて欲しい。」 
「わ、わかったっす・・・。
それにしても透明人間とかすげーわ・・・。
マジチートっすね、レオンハルト様・・・」
と感心するライ。
「あぁ、俺も驚いたよ。
でもレオンハルト様、魔法を使うのにはマジックペンダントが必要なのでは?」
と首を傾げるレフ。
「うん、それはな・・・」

レオンはジェイドがアデルバートを見限ってジャポネに亡命したこと、そして自分のために白の剣とマジックペンダントを武器庫から持ち出し、ファルガーに託していたこと。
そしてモニカからは、本日のレオンのお披露目の日に、本来は自分とレオンが結ばれることで犠牲になりそうな人達を救うために彼らを連れてジャポネへ亡命する計画が準備されており、それがエカテリーナの罠によりアンジェリカが罪人とされたため、本来の動機とは違うこととなったが彼らに危険が及ぶことには変わらないため予定通り実行されたこと、また本日中であれば教会にある天界ゲートを使ってジャポネへ亡命することが可能である事、そしてジャポネでは既に亡命者の受け入れ準備が整っていることなどを全て、その場で説明したのだった。
それを聞いたヴィクトルはこう言った。
「そうですか・・・。
ジェイド様もそのようなご決断を・・・。
確かにルーカス様が次期当主では、この国の行く末は明るくはないでしょう・・・。
彼はハーレムで暮らされていた頃はうちの娘と同じ町の貴族学校に通っておいででしたが、非常に嗜虐性が高く、学校で飼育しているうさぎや鶏で狩りごっこをしたり、何人かの生徒が怪我を負わされたりと問題行動が多く、非常に評判の悪い子供でした・・・。
教師がエカテリーナ様に相談しても取り合ってもらえなかったとか・・・。
真に英雄の子孫である貴方様を陥れ、そのような人格に問題のある子供を国の代表にしようなど、当主様はどうかしているとしか思えません・・・!
私は剣を捧げるべき相手を間違えずに済み、良かったと心より思っております。
ただこの国から逃げるとはいっても、正直行く宛もありませんでした。
そこを子供達もろともジャポネで受け入れてくれるとのことで、非常に有り難い申し出です。
私個人としては、その好意に甘えさせていただきたく存じます。
お前達はどうだ?」
ヴィクトルはレフとライ、そして妻と子供に意思を確認した。
「えぇ、私もそう思うわヴィクトル。
貴方はいつだって自分が正しいと思う道を選び、貫いてきた。
私はそんな貴方を誇りに思うし、子供達だってそれは同じよ。
貴方が正しいと信じた道を家族皆で歩みましょう。」
2人の子供達も、
「「うん!」」と深く頷いた。
「ヴィクトルさん達が行くなら俺も当然ジャポネに行くっすよ!
ねぇ、レフさん!
そして皆でサムライにでも転職しましょうよ!」
とライが明るい調子で言った。
「ふふっ、サムライか。
それもいいが、折角鍛えた武の道を活かしつつ、少し違う仕事をしてみるのも悪くないと思うがな。」
とレフが返した。
「でしたら町奉行所のお役人などいかがでしょう?
町の治安を守る大切なお仕事ですわ。」
と笑顔で提案するモニカ。
「おお!
それはやりがいがありそうだ!」
とレフ。
「暴漢から助けた女の子といい感じになって、そのまま嫁にもらうとか・・・そんなロマンスはありえますかね!?
モニカさん!」
とモニカに尋ねるライ。
そんなライに対してモニカはクスクスと笑いながらこう答えた。
「うふふっ、保証はできませんが、騎士様が出てくるロマンス小説はジャポネでも大層人気ですから、元アデルバートの騎士様ともあれば、女の子におモテになることは間違いないですわよ?」
「マジっすか!」
「本当か!」
お調子者のライだけでなく、真面目なレフまでもが食いついたので、皆は可笑しくなって笑った。
「皆、可笑しいのはわかるが、大通りにいる騎士達に聞こえてしまうぞ?」
と腹を抱えながら言うレオン。
「そうですね・・・!
まぁこの場にいる者皆ジャポネ行きに異論はないということで、教会へと急ぎましょうか。
あまり時間がありません。」
とヴィクトルが懐中時計を取り出して見ながらそう言った。
だが、ヴィクトルの奥さんがヴィクトルの手を取りこう言った。
「貴方、時間が無い所悪いけれど、少しだけ待って?
お父さんのくれた次の潜伏先の鍵を返しておかないと。
それに、心配させないようジャポネに渡ることも伝えておきたいわ。
お父さんに伝えておけば、アイア村にお住まいの貴方のお母様にも伝えてくれるわ。」
それに対してヴィクトルは、
「あぁ、そうだな。」
と頷くと、レオンに断りを入れた。
「すみません、レオンハルト様。
少しだけお時間を頂けますか?」
「あぁ、構わないよ。
暫く会えなくなるんだ。
悔いのないようにして欲しい。」 
ヴィクトル一家はレオンに頭を下げると、勝手口から再度不動産店へと入って行った。
レオンは彼らのインビジブルを一時的に解き、レフとライとモニカと共に勝手口の前で彼らが戻ってくるのを待った。
待っている間にレオンは魔力切れの兆候のめまいがしてきたので、ジェイドの置き土産のマジックポーションを煽った。
その空き瓶を懐にしまったところでヴィクトル達は戻ってきた。
「お待たせしましたレオンハルト様・・・!
さぁ、教会に参りましょう!」

23時半を超えた頃。
レオンとモニカはヴィクトル達を連れて無事ミスティル教会へと辿り着いた。
レオンが全員にかけていたインビジブルの魔法は、教会の扉を開けると同時に魔力切れを起こて切れてしまったが、お蔭で騎士達に見つからずに済んだ。
教会入ると、神官服に身を包んだままで髪と眼の色を本来の色に戻したファルガー・ニゲルが一歩前に出て来て、彼らににこやかな笑みを向けながらこう言った。
「ヴィクトルさん、レフさん、ライくん、お久しぶりですね。
ヴィクトルさんの奥方様とお子さん達は始めまして。
ロジウムの戦いではダニイルという名前でヴィクトルさんの班に加えていただきましたが、僕は本当はファルガー・ニゲルと言いまして、創造神ヘリオス様の神使として世界の監視者というお役目をつかさっております。
皆さんが本日中に無事こちらに来られて良かったです。」
ヴィクトルはファルガーの挨拶を受けて慌ててその場に膝をつくと、騎士らしく美しい所作で頭を下げた。
「やはり貴方がファルガー・ニゲル様でしたか・・・!
神族の方にこうして直接お目にかかれるとは、至極光栄でございます・・・!
それにこの度は貴方様のご厚意でジャポネに亡命させていただくことになり、とても感謝しております・・・!」
レフとライ、そしてヴィクトルの奥さんもそれに続いて膝をついて頭を下げた。
「いやいやそんな、どうか頭を上げて下さい・・・!
僕はあまりそんなふうに敬われるのは得意じゃなくてね・・・。」
ファルガーはそう言って苦笑しながら髪を掻き毟った。
それに対してモニカがクスクスと微笑みながらこう返した。
「ファルガー様が敬語を使われているから、皆さんもそれ以上の敬いを見せなければならなくなるのですわ。」
「それもそうか。
ダニイルだった時の名残でついね・・・。
まずは僕からいつもの口調で話すことにしよう。
だから君達も楽な言葉でいいよ?
かといってレオンハルトくんみたいにタメ口を叩くのもどうかと思うけどね・・・」
ファルガーはそう言ってレオンに視線を移し苦笑した。
「えっ、レオンハルト様、神使様相手にタメ口は流石に良くないんじゃないっすか!?」
とライが汗を飛ばした。
「ふん・・・!
神使だろうとなんだろうと、恋敵相手にヘコヘコするなんて僕は絶対にゴメンだ・・・!」
と悪態をつくレオン。
「 ・・・ハハッ、このとおり酷い口の叩かれようでね。
次期当主のプレッシャーから開放された今の君から彼女を取り上げる気なんて無いと言うのにね?」
とファルガーは飄々とした口調で返した。
「・・・信用できるか・・・。
少なくともあんたが僕の一番欲しかった特別なモニカを奪ったのは事実なんだ・・・。
しかもそれに優越感を感じているんだろ?あんた・・・。
今は母様とアレクセイさんを助けるために一時的に協力関係を結んではいるが、僕はそれを一生許す気なんてないからな・・・。」
ファルガーはそんなレオンの発言を受けてヤレヤレと肩を竦めた。
レオンはそんなファルガーの態度が気に入らなかったのか、チッ!と舌打ちをした。
2人の間に険悪な空気が流れる。
そこでモニカがニコッと微笑み、割って入った。
「ファルガー様、レオン様。
今はまずヴィクトルさん達を天界ゲートでジャポネに送らなければなりませんでしょう?」
「・・・そうだな。
すまなかった。
すぐに天界ゲートを開こう。」
ファルガーはモニカにそう返すと、気持ちを切り替えてステンドグラスを背に立つアデルバート神像の方へと歩いて行った。
そして像の胸に手を当て、魔法を唱える時のように目を閉じて呟いた。

─これより創造神ヘリオスの第5の使いファルガー・ニゲルの権限にて、アデルバート・ミスティルより6名の民をジャポネ・エド・1番ゲートへと転送する─

するとアデルバート神像の真ん前の床に、直径3メートル程の白い光の円が描かれ、そこから天井に向けて光が立ち昇り、光の柱となった。
「これでゲートは開かれたよ。
後は全員がこの白く光った部分に足を踏み入れれば、ジャポネへと自動的に転送される。
実は君達が来るのを待っている間にゲートを使って一旦ジャポネに戻り、桜雅に君達6名が新たに亡命することを伝えておいたんだ。
君達が転送された先で彼が待機しているだろうから、後は全て彼に任せるといい。
既に君達の寝床は用意してあるだろうから、まずはゆっくり眠るといいよ。
子供達は特に、夜遅くまで起きていて疲れただろう?」
とファルガーは皆に説明しつつ、最後は子供達に優しく笑いかけた。
ヴィクトルの子供2人は眠たそうに目をこすりながらも、えへへっと微笑み返した。
「ファルガー様、お心遣いを誠に感謝致します。
このお礼はまた改めて。」
とヴィクトルが頭を下げた。
「本当に礼儀正しい人だね、ヴィクトルさんは。
君みたいな真面目で清く強い人がジャポネに来てくれるのだから、僕からお礼をしたいくらいだよ。
まぁ全てが終わったら、アデルバートから亡命されてきた皆さんの歓迎会を開かせてもらうよ。
その時にまた改めて。」
ファルガーがそう言って手を差し出すと、ヴィクトルは微笑み、握手を返した。
彼らの握手が終わると、今度はレオンがヴィクトルの傍にやって来て話しかけた。
「ヴィクトル。
明日必ず母様とアレクセイさんを助けて、僕とモニカもそっちに行く。
それまでジャポネで待っていてくれ。」
「はい・・・。
出来れば私もアンジェリカ様の救出作戦に参加したかった・・・。」
とヴィクトルは眉を寄せた。
それにレフも同意した。
「俺もです・・・。」
「でも、俺等では足手まといだってこともわかってるっすからね・・・。」
とライ。
レオンは首を左右に振ってこう返した。
「足手まといになんてそんなことない!
君達がいなければ僕はまだ国外へ向かう馬車の中で、明日母様達を助けに行くことも出来なかった・・・。
君達にとても感謝しているよ・・・。
そして僕は君達のことを、本当の仲間だと思っている・・・・・。
だが・・・だからこそ、君達とここでお別れしなければならない・・・。
明日になればこのゲートは使えなくなるし、命の保証だってない・・・。
ヴィクトル、君は君の家族にとって必要不可欠な人だし、レフもライも、きっといつか誰かにとって必要不可欠な存在になる・・・。
そんな君達を、万が一にも僕たち親子のために、失うわけにはいかない・・・。
そして何より・・・僕が君達という仲間を、僕の無事を祈って待ってくれている人を、失いたくないんだ・・・。
だから、君達は先にジャポネに行って待っていて欲しい・・・」
それに対してヴィクトルが優しく微笑み、頷いた。
「・・・わかりました、レオンハルト様・・・。
我々は先にジャポネに行き、貴方の帰りをお待ちしております。
貴方は我々にとって大切な騎士仲間であり、誰が何と言おうと、英雄です。
貴方とロジウムで一緒の班だったことは、我々にとって永遠の誇りです・・・!
どうか、ご武運を・・・!」
「ヴィクトルさん、何も今生の別れじゃないんですから!」
と笑いながらヴィクトルの肩を叩くレフ。
「そうっすよ!
何で泣きそうになってるんすか!」
とライもヴィクトルを茶化す。
ヴィクトルは瞳に浮かんだ涙を手で拭いながら、
「っ・・・そうだな。
何故か今、レオンハルト様に対して言い残すようなことがあってはいけない気がしたんだ・・・。
皆、時間を取ってしまってすまない。
レオンハルト様、明日お待ちしております!」
ヴィクトルはそう言うと、家族が待っている光の柱の中に足を踏み入れ、レオンに向かってピシッと敬礼をした。
「また明日!」
「また明日っす!」
とレフとライも続いて光の柱に入り、敬礼した。
「うん、また明日、ジャポネで会おう!!」
レオンがそう言って敬礼を返したところで、ヴィクトル達の姿がより強い光に包まれて見えなくなった。
そしてその光が少しずつ薄くなり、完全に消えた頃には、さっきまでそこにいた6人の姿は消えてなくなっていた。
「・・・無事に行ったようだな・・・」
レオンは彼らを無事送り出せた安堵と、仲間が去ってしまった寂しさとで複雑な気持ちに見舞われながらも、フラフラとその場にへたり込んでしまった。
「レオン様!!」
モニカは慌ててレオンの元へと駆け寄った。
「魔力切れでフラフラなのに、彼らの手前虚勢を張って平気なフリをしていたのだろう。 
神官さん、彼にココアを淹れてやってくれないか?
あれには魔力切れ症状を和らげる効果があるから。」
とファルガーが言い、神官に向けて指示を出した。
そこでモニカが手を挙げて、
「それでしたら私がお淹れしますわ。
神官さん、お台所をお借りできますか?」
と申し出るのだった。
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