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9話 ドS公子VSドSメイド
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※このお話にはHな挿絵が入りますのでご注意ください。
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「しらばっくれなくてもいいよ。
君がジャポネの出身で、このタイミングで面接を受けに来たとても優秀なメイドだった地点でピンと来たよ。
君、ジャポネの主でありヘリオス連合国の神使、ファルガー・ニゲルの手の者だろう?」
モニカはジェイドにベットの上に押さえつけられながら、彼がたった今発したセリフについて考えを巡らせた。
(・・・なんてこと・・・!
最初から彼には全てバレていたというのですね・・・!!
このタイミング、という言葉の意味はわかりませんが、ジャポネの主がヘリオス様の神使で世界の監視者でもあるファルガー・ニゲル様であるということは、国の代表・・・もしくはそれに近しい立場である彼に知られていてもおかしくはないことです・・・。
そして彼は、私がスパイであることを知った上で、わざと泳がしていたということになります・・・。
それは何故?
私は彼に対してどう立ち回るべき・・・?
それを間違えてしまえば、この国に・・・レオン様のお側に居られなくなるだけではなく、ファルガー様にまでご迷惑をかけてしまうことになります・・・・・。)
モニカは冷や汗を垂らし、激しい緊張から喉が渇き、ゴクッと息を呑んだ。
「ふふっ、いつも堂々と胸を張っていて隙を見せない君がこんなにも焦って・・・今の君、凄く可愛いよ・・・♥
君は何故僕が君をスパイだと知りながら泳がせていたのか、知りたいって顔をしてるね?
いいよ?
今僕はとても気分がいいから、その疑問に答えてあげる。
まず、君のその顔が見たかったんだよ。
ファルガー・ニゲルに信頼される程切れ者の君が、僕に従うことを余儀なくされて、酷く焦る顔がさ・・・♥
そして僕の罠にハマって悔しそうな君を犯して、その美しい身体に快楽を刻み込み、僕無しじゃいられない身体にしてみたかった。
その機会を得るために、君をわざと泳がせてたんだよ。
でも君はレオくんにとって特別な子だし、僕もレオくんに嫌われたくはないからさ。
君のことは諦めるしかないのかなって思ってたんだけど・・・やっぱりどうしても君を諦めきれなくてね。
でも君がこの宮廷内で僕にとって不利益な情報を仕入れて、ファルガー・ニゲルや外部の人間に情報を流されるのは困るから、君を堕とす準備が整うまで君との接触を避けて、代わりに僕の手駒達に君のことを監視させてたんだ。
君、レオくんに、町を案内してもらったり、カフェで花売りの子のためにその彼氏を説得したりしてたでしょ?
そこに途中でレオくんも参戦してさ。
そうして君に関する報告を聞くうちにわかったんだ。
君には決定的な弱点があるってね。
君、困っている善良な人を放っておけない質でしょ。
そこを突けば君が手に入るんじゃないかと思ってたところに、カタリナちゃんが僕の専属メイドを一人辞めさせちゃったから、それを利用してこのお茶会を企画し、僕と性的関係を望んでいないリディアを君に差し向けたんだよ。
そして特別製の媚薬は君を手に入れるのに必要だと思って、ダルダンテ神国に”黒蛇”とかいう裏社会で名の知れた神の領域に踏み込んだ薬を作れる薬師がいるんだけど、彼と繋がりのある知人がいるからその人経由で手に入れたんだ。
まぁそれなりの対価は要求されたけど、それは地下牢にいる連中で賄えたし、そのお蔭で君がこうして僕のベットにいるわけだから、満足だよ♥」
ジェイドはそう言い終えると舌舐めずりをし、モニカの制服のブラウスのボタンを外し始めた。
「はぁ、はぁ・・・
貴方が媚薬を使って私を犯したとレオン様に知られたなら・・・レオン様は貴方を決して許しませんわよ・・・?」
モニカはジェイドをギリッと睨みつけながらそう言った。
「ふふっ、それはどうだろう?
君がスパイで、僕が犯す前から既に処女じゃなかったんだとレオくんに教えてあげたらどうかな?」
モニカは彼のその言葉にビクッと反応して眉を寄せた。
「レオくんは処女にしか勃たないって本人から聞いてるでしょ?
レオくんはまだ童貞で純粋だから、君のその清楚な見た目だけで処女だと思ってるんだろうけど、僕にはわかるよ?
君・・・処女じゃないよね?
だって僕に脱がされてるのに、取り乱す様子も全く見せないし。」
と言いながら、、ジェイドはモニカのブラの前紐を解いた。
そして露わになった白く美しく豊かな胸と、その谷間に主張する首から下げられた白く小さな陶器の笛。
「何だこれは・・・笛・・・?」
ジェイドはファルガーがくれた笛が少し気になったようだが、それよりもモニカの美しい胸に早く触れたくて仕方が無いのか、吸い寄せられるように手を伸ばし、下から包み込むようにして揉みしだいた。
「うわぁ・・・♡
君の胸、ぷるんぷるんのふわっふわで最高の触り心地じゃないか・・・♥」
モニカは即座にその穢らわしい手を払い除けたかったが、媚薬の効果で身体に力が入らないうえ両腕を強く押さえつけられているためそれが敵わず、悔しくて堪らなかった。
しかも媚薬の効果の所為か自分の心とは裏腹に、ファルガーに同じことをされた時よりも強く激しく感じてしまうのが非常に屈辱的で不愉快で、そして何より、レオンに申し訳がなくて泣き出しそうだった。
だが相手が自分と同じドSなら、今ここで悔しそうに唇を噛んだり涙を見せたりすることは、酷く相手を喜ばせることになるだろうとモニカは理解していた。
ならばせめて、ジェイドに精神的な快楽を与えてなるものかと、モニカは必死に表情を変えずにその刺激に耐えた。
ジェイドはモニカから屈辱に歪む顔と甘い喘ぎが引き出せないことに不満を感じたようだが、このまま愛撫を続けていけば、すぐに耐えきれなくなって屈辱に耐える顔、そしてそこから快楽に屈して淫らな女の顔を徐々に晒し出し、やがては甘い嬌声を上げながら自分を求めてくるだろうから焦ることもないと、ひとまず今はモニカの胸の触り心地の良さを気の済むまで堪能することにしたようだ。
そして興奮して頬を染め鼻息を荒くしながら話を続けた。
「そしてそれをまだレオくんはまだ知らない・・・そうでしょ?
ならどうせ非処女なんだし、僕が君を犯したところで結果は変わらないよね?
あぁ・・・ホントに君の胸、今までの女の中でもダントツの触り心地だよ・・・♥
ねぇ・・・これからもレオくんの鍛錬中にでも僕に抱かれにここに来るなら、君がスパイであることも、君が処女でないこともレオくんに黙っていてあげるよ?
そうしたらまだ暫くはレオくんと一緒にいられるし、恋愛ごっこが出来るんじゃない?
そしてレオくんが成人する前いよいよ君で男の証を立てようとした時、レオくんが君が処女じゃないと知って拒絶したなら、僕の専属メイドにしてあげるから安心しなよ♡
僕は処女、非処女に関わらず、苛めて楽しくてエッチして気持ちいい子は大切にするよ?
さて・・・そろそろ下の方が疼いて堪らないだろう?」
ジェイドはペロッと唇の端を舐めてからそう言うと、今度はモニカのスカートに手をかけた。
そして徐々にモニカの美しい脚が晒されていき、ストッキングの履き口にまで辿り着いたその時である。
モニカの右の太腿には革の鞭が刺さっており、それに気がついたジェイドは驚き、モニカの両腕を押さえつけていた右手を離した。
「なっ・・・何だこの太腿に挟まっているのは・・・・・
む、鞭・・・!?」
モニカはジェイドのそのセリフで自分には鞭という頼もしい武器があったことを思い出した。
そしてそれを切っ掛けに、媚薬により入らなかった筈の力が体の底から湧いてくるのを感じた。
モニカは素早く鞭をストッキングから引き抜くと、身体を起こして表情をキリッと引き締めてから鞭をビシッと構えてみせた。
「モ、モニカ・・・。
それをしまってくれないかな・・・。
当たったらすごく痛そうだ・・・・・。
僕、痛いのは嫌いなんだよね・・・。
アンジェリカに鞭の使い方を教わっているようだとは手駒から報告を受けていたが、まさかもう実用レベルまでレッスンが進んでいたとは・・・」
「はあっ、はあっ・・・
残念ながらまだ微細なコントロールはできませんの。
ですから・・・」
モニカはわざとジェイドの座るベットのすれすれの位置に鞭を軽く”ピシャ!”と打ってみせた。
ジェイドは「ひっ!!」と小さく悲鳴を上げると、慌ててモニカから距離を取った。
「と・・・このように、私の気分次第でうっかり・・・手が滑ってしまうこともあるかも知れませんが・・・ご安心下さい・・・。
ジェイド様がこれ以上私に触れないのなら・・・はあっ・・・振るうことはもう致しませんわ・・・。」
「・・・・・・・・」
ジェイドは青ざめた顔のままで冷や汗を垂らした。
モニカはジェイドには鞭による脅しがかなり有効なことを確信し、まだ自分が意識をしっかり持てるうちに、彼からあることを聞いておこうと思った。
「・・・ジェイド様は・・・”神避け”を、ご存知ですわよね・・・?」
「・・・神避け?
なんだいそれは・・・」
ジェイドはそう言って怪訝な顔をして首を傾げたが、モニカには彼が嘘をついているようには見えなかった。
「神族の干渉を遮断する力を持つ・・神避けという装飾品がっ・・・・この宮廷内で使われている筈なんです・・・。
だから私がここへ送り込まれました・・・。
私はそれを用いているのは、貴方ではないかと思ったのですが・・・違うのですか・・・?」
「うん・・・違うね。
そんな便利なものがあるなら是非欲しいよ。
それはどうやったら手に入れられるんだい?」
モニカはジェイドのその答えを聞いて、鞭を口元に当てて思考した。
(ジェイド様が性格的にも立場的にも1番ファルガー様に隠したいことが多いように見受けられましたし、てっきりそうとばかり思っておりましたが、ジェイド様がお持ちで無いのなら、一体誰が神避けを用いているのでしょう・・・?
・・・神避け探しの件は振り出しに戻ってしまいましたが・・・でも彼にはまだ聞きたいことがあります。)
モニカは再び鞭を構えると、はぁ、はぁ、と息を乱しながらも続けて尋ねた。
「ジェイド様は・・・先程私がスパイであることを言い当てられた際に・・”このタイミングで”と言われましたわね・・・?
それは・・一体どういう意味・・・なのです・・・?」
「あぁ、今から883年前、魔界からやってきた魔王を勇者一行が倒し、魔界ゲートを閉じただろう?
そのゲートは1000年の時をかけて少しずつ開いていき、完全に開いたその時、新しい魔王が誕生するのか以前倒した魔王が復活するのかはわからないが、とにかく魔王が出現すると言われている。
後120年弱でその1000年になってしまう・・・。
近頃このアデルバートでもゲートの隙間が広がり、湧いてくる魔獣も強くなってきている。
下手したら1000年を待たずして魔王が復活するかもしれない・・・。
そうしたら当然かつての英雄ラスター・ナイトの子孫である我ナイト家も、ラスターが残した聖剣”白の剣”と共に魔王討伐に向かうよう、創造神ヘリオス様、そして世界中の人々が期待すると思う。
だが、君はもう薄々気がついているんだろう?
ナイト家当主は、何故そうなってしまったのかは知らないが、代々ラスター・ナイトの血を1滴も引いていない彼の義弟の子孫・・・つまりは”偽物”だ。
ラスター・ナイトの血を引く者が触れるとその刃が白く光ると言われる”白の剣”を僕達が手にしても当然刃が光ることもないし、その真価も発揮されない。
あの剣は、我が国の神使ルシンダ様が、ラスター・ナイトの血に合わせて作られた特別なものらしく、その血を引かぬ者が手にしても、ただの古いミスリルソードにしか過ぎないんだ・・・。
僕等直系の男は成人して騎士としてお披露目される際、白の剣を民の前で抜いて白く光らせてみせるという儀式があるのだが、その際には僕らが偽物であることがバレないよう、父様も僕もグリント兄さんも歴代の直系達は皆、白の剣を抜いて翳す瞬間に光の魔石を発動させて刃を光らせて見せることで偽装をしているんだ。
だが白の剣を抜いて魔王軍と戦うとなると当然偽装は不可能だし、そうして近い将来その事がバレてしまう前に、僕と父様は本物のラスター・ナイトの子孫を我がナイト家に取り込んで、当主にしようと考えているわけさ。
そうすれば僕たちが偽物であることが周囲にバレることもないだろう?」
ジェイドは美しい足を組み直してから更に続けた。
「言わずとも君にはわかるよね。
レオくんとアンジェリカこそが、本当のラスター・ナイトの子孫だ。
父様の話では出会ってすぐのアンジェリカ、そしてレオくんが生まれたばかりの頃に、それぞれ白の剣に触れさせてみたが、その血に反応して刃が白く光ったのだから間違いないそうだよ。
どういうわけか、ラスターの子孫は姓を変え、平民に紛れて暮らしていてね・・・。
しかも代々男児ばかりが産まれてきたそうなんだよ。
兄弟もなく子は1人のみ・・・それで細々と血を繋いできているんだ。
そんな中、女児として産まれてきたアンジェリカは本当にレアなんだよ。
だから父様は、アンジェリカがラスター・ナイトの子孫だと判明した後すぐに娶ったんだ。
まさかそのアンジェリカにあんなにも父様がのめり込んでしまうとは思わなかったけど、でもやっと僕らはレオくんという”切り札”を手に入れたわけだ。」
そう語り終えると、ジェイドはモニカの身体がまだ名残惜しいのだろう。
露出したままのモニカの胸に視線を注ぎ、ゴクッと喉を鳴らした。
モニカはその視線が不快で顔を歪め、鞭を手にしたまま開いた方の手で胸元を押さえた。
「・・・貴方は・・・はあっ・・・ご自分の地位を守るために、レオン様とアンジェリカ様を・・・殺そうと企む派閥ではないと・・仰るのですね?」
「そうだよ。
中にはレオくんとアンジェリカこそが本物だと国民達に知れ渡る前に二人を殺し、このままの地位を維持しようという考えの連中もいるようだが、そのまま奴らが推すグリント兄さんが当主になってみろ。
レオくんの子供に女の子が生まれればまだ本物の血の取り込みは間に合うかもしれないが、さっき言った理由でそれはほぼ望めないだろうし、近い将来世界中に現ナイト家の嘘がバレてしまうことになるんだよ。
そうなれば僕たち一族は皆断罪されるだろうし、保身のためにと地位を脅かすアンジェリカとレオくんを殺して英雄の血を絶やしでもすれば、それを知った創造神ヘリオス様は、偽のナイト家に対してますます怒りを覚えるんじゃないかな?
それならレオくんがいつか真実を知った時に僕等一族は制裁を受けるかもしれないが、兄であり宰相でもある僕がレオくんを間近でコントロールすればそれを最小限に留めることが出来るだろうし、本物を当主にしたほうが余程いいと思うんだよね。
だからレオくんを逃せば、もう二度とその機会は巡ってこない。
”このタイミングで”と言ったのは、そういった意味だよ。」
モニカはその長い話を聞きながら、鞭を持つことで何とか律していた精神が、時間とともに身体に深く染み込んだ媚薬により再び鈍くなり、今にも飲み込まれていきそうな感覚を覚えた。
そしてそろそろ彼との会話をやめにしないと、鞭をジェイドに奪われて再び組み敷かれてしまうだろうと感じた。
「成程・・・わかりました。
貴方の今のお話は、ファルガー様の推測とも一致・・していますし・・・真実・・なのでしょう・・・。
私の聞きたいことは、今大体お話していただけましたので・・・私はそろそろお暇させていただき・・・」
彼はモニカの身体を媚薬が蝕み、自我を保つ余裕が無くなって来ていることにとっくに気がついているのだろう。
完全にモニカが媚薬に落ちるまでは逃さないと言わんばかりに、すかさずこう被せてきた。
「逆に君に聞きたい。
君はファルガー・ニゲルの命なのか、グリント兄さんの血をコソコソ採取したりしていたようだけど、きっと父様やレオくんのものも手に入れたよね?
当然僕もその対象なのだろうけど、そうやって調べた情報をどうするつもりでいる?
その答えによっては、このまま君を生かしてここから帰せなくなるということは、賢い君にならわかるよね?」
「あら・・・はあっはあっ・・・
私が鞭を手にしただけで・・っ・・逃げ腰になってしまわれた貴方様が・・・どうやって私を・・生かしておけなくっ・・するというのです・・・?」
モニカが息を乱しながらも口角を上げて挑発的に微笑むと、ジェイドは自信たっぷりの表情でこう返してきた。
「君の言う通り、僕は確かに武器での荒事は好まないよ。
だけど母の血の影響か、魔法の才はそれなりにあってね。
他の人みたいに魔力を底上げする指輪等を身に着けなくても、得意な土魔法を発動させて君を気絶させることくらいは出来るよ?
君の美しい身体に傷をつけてしまったらこの後お愉しみどころではなくなってしまうから、出来るだけ使わずに済ませたいんだけどね・・・。
まずは僕が言うことが真実かどうか、見せてあげるよ。」
ジェイドはそう言うと、手のひらを上に向けて透明で鋭利な水晶を作り出して見せた。
そしてそれを空中で漂わせると、モニカにその尖った切っ先を向けた。
モニカは気力を奮い立たせて鞭を振りかざし、すかさずその水晶を鞭で狙い打った!
─パリーーーーン!!─
水晶は砕け散り、その破片は空中で霧散して消えて無くなった。
モニカはふらつきながらもベットから降りると、何とか両足を踏ん張って立ち鞭を構え、ジェイドを睨みつけながらこう言った。
「・・・ご安心下さい。
ファルガー様は・・貴方の地位を脅かす気も・・っ・・この国の政治に関与する気もっ・・一切御座いません・・・。
代々のっ・・ナイト家当主様が偽物で・・あっても・・・・きちんと国を治めているのならばっ・・・別に構わないと仰っていましたから・・・」
「ふーん・・・。
それじゃあ何のために君はここへ送り込まれたんだい?
さっき言ってた神避けをしている者を探すためっていうのもあるんだろうけど、その背後にもっと大きな何かがあるよね?
それを僕に教えてよ。」
とモニカに躙り寄るジェイド。
「それは・・・ファルガー様の許可なくっ・・私の口から申し上げることはっ・・・っ・・・出来ません・・・。
ですが・・・私はこう見えてっ・・ファルガー様には・・家族のように・・大切にっ・・思っていただけている身・・・ですからっ、私をこの場で処分・・・なされば、ファルガー様を・・・敵に回す・・・ことにっ、なりますよ・・・?
それに・・・ファルガー様がご心配されていることはっ・・・おそらく貴方にとっても・・阻止したい・・ことのはず・・・。
貴方の・・私に対する態度次第では・・ファルガー様を・・・味方につけることも・・可能かもしれませんよ・・・?
今私を殺すのと・・・このまま泳がせるのと・・・どっちが得なのか・・・良く考えてみて下さい・・・。
それではっ、失礼いたします・・・・・!」
そう言って踵を返すモニカを引き止めるかのようにジェイドは言った。
「待ちなよ。
ファルガー・ニゲルを味方にか・・・。
悪くないな・・・。
君の提案、良く考えさせてもらうよ。
ところで、君は僕の検体が欲しいんでしょ?
僕は痛いのは嫌いだから血を取られるのは勘弁願いたいけど、精液なら分けてあげてもいいよ?
君も媚薬がかなり効いててとっくに限界でしょ?
僕が君の疼いて堪らないところを気の済むまでガンガン突いてあげるから、その鞭を置いてこっちにおいでよ。
そしたら精液だって手に入るし、一石二鳥じゃないか。」
モニカはキッ!と眉を吊り上げてジェイドを振り返ると、強い口調でこう吐き捨てた。
「何が一石二鳥ですか・・・!
卑劣な罠に・・嵌めたくせにっ・・・!!
好きでもない殿方のものをっ・・・受け入れなければならないのならっ・・・!!
それはいただかなくても結構ですわ・・・!!
失礼致します・・・・・!!!」
モニカはジェイドの部屋から飛び出した。
モニカが廊下に出ると、部屋の前には心配そうな顔をしたリディアが立っていた。
彼女はモニカが出て来ると、すぐに駆け寄って来た。
「モニカさん!!
なかなかお部屋から出て来られないので私、心配で・・・・・
そ、その胸元はまさか・・・」
リディアはモニカの開けた胸元を見て、心配していた出来事に至ってしまったのかと思ったらしく、泣きそうな顔をして青ざめた。
「大丈夫ですリディアさん・・・。
少し脱がされはしましたけど・・・事に至る前にっ・・・隠し持っていたこれで・・脅して逃げ出してっ・来ましたから・・・」
と言ってリディアに革の鞭を見せるモニカ。
「そ、それなら良かったです・・・
すみません、私のために危険な目に遭わせてしまって・・・」
「いえ・・・
それよりリディアさん・・・お仕事の方は大丈夫なのですか・・・?」
「え、えぇ・・・私、ジェイド様のお部屋を出てからもモニカさんが心配で持ち場に戻れず、この部屋の前をうろうろしていたんてすけど、そこへ通りかかったメイド長のオリガさんに事情を説明したところ、あ・・・オリガさんにはその時間帯に数名の新人メイドが抜けるために仕事の調整をつけて貰う必要があったので、ジェイド様主催のお茶会があると事前にお話していたのですけど、私の仕事はフォローするから、モニカさんの為に行動してあげてと仰っしゃって下さって・・・。
それで私、何度かジェイド様のお部屋をノックしてみようかとも思ったのですが、仮に中に入れて下さったとしても、私一人ではモニカさんを助けることは難しいでしょうし、ジェイド様には持ち場に戻るようにと釘を差されていたのにも関わらず、お部屋の前に留まり邪魔をしようとしたとなると、ジェイド様の逆鱗に触れて即刻解雇されてしまうと思うと怖くて、何も出来なかったんです・・・。
それで他の方法を考えたんですけど、モニカさんがレオンハルト様にはジェイド様のお部屋でお茶会が開催されることは伏せておいでだと仰っしゃられていたので、そのことをレオンハルト様にお伝えすれば、モニカさんをお助けして下さると思ったんです。
レオンハルト様はジェイド様より下のお立場ではございますが、モニカさんに関わることであればこの宮廷で一番の権限をお持ちですから・・・。
それで私、オリガさんにレオンハルト様のいらっしゃいそうな場所を訊いて、5階のトレーニングルームまで伺ったのです。
ですが、本日は別のメニューをこなされているようで、トレーニングルームにはいらっしゃらなくて・・・。
それで今さっきまたここへ戻ってきたところだったんです。
良かった・・・本当にご無事で・・・!」
そう言ってリディアは涙ぐんだ。
モニカはリディアの心配してくれる気持ちがとても嬉しかった。
だが、正直媚薬の効果が高まってきている今は、とにかく早く自分の部屋に戻って、酷く昂ってしまった自分の身体を慰めたくて仕方が無かった。
「リ、リディアさん・・・
私はっ・・・もう大丈夫っ・・ですから・・・お仕事に戻ってっ・・・」
「えっ・・・ですがモニカさん、お顔が真っ赤でとても苦しそうですし・・・」
と心配して汗を飛ばすリディア。
「ジェイド様の特別な紅茶を飲んでしまいましたからね・・・。
でもこれくらい、部屋で少し休めば大丈夫ですわ・・・!」
モニカはこれ以上リディアを心配させないようにと無理に笑顔を作ってみせた。
リディアはモニカの元気そうな様子に少しは安心したのか、
「そうですか・・・わかりました。
ですがもし助けが必要なときは、私今日は遅番で20時までは宮廷にいますので、いつでもお呼びください。」
と言って頭を下げてから、持ち場に戻る為に階段を降りて行った。
ようやく自室に戻ってきたモニカは、髪を結っているキキョウの刺繍が施されたリボンを解いてから、ベットにドサッと倒れ込んだ。
そしてそのリボンを眺めながらこれを贈ってくれた主人の姿を思い浮かべ、汗ばんでしっとりと熱い胸を自らの手で激しく揉んだ。
(レオン様・・・レオン様・・・)
しかし自ら予測できるその刺激は、ジェイドの手により強引に齎されたそれと比べると全く物足りず、それと同時にジェイドに触られてしまった屈辱が蘇り、涙が溢れてきた。
(悔しい・・・!悔しい・・・!!
ファルガー様はかつての私が望んだ相手だからいい・・・。
でもレオン様より先にあんな男に触られるなんて・・・!
ごめんなさい・・・ごめんなさいレオン様・・・
でもあぁ、この手がレオン様のものだと思うとそれだけで私は・・・)
モニカは再びレオンの姿を思い浮かべながら胸を揉み、そして乳首を摘んだ。
更にはもう片方の手をショーツに差し込み、既にぬるぬるに濡れそぼった花園に指を潜らせて濡らしてから、物欲しげに尖った小さな蕾にその濡れた指先を運び、ずっと欲しくてたまらなかった刺激を与えてやった。
「ひあっ・・・♥
あっあぁん♥あっあっ♡
ふあっあっんっあっああっ♥
あぁーーーーーっ♥♡♥」
少し弄っただけなのに、ビクンビクンと全身が痙攣してあっという間に達してしまう。
それでも全然満たされることはなく、もっと体の奥深くに熱く滾る剣を沈め、何度も何度も擦らないとこの疼きは治まらないと感じた。
(ですがそれは私一人ではどうしようもないことです・・・。
レオン様がランニングから帰ってきたら、思い切って抱いてほしいとせがんでみる?
今なら破瓜の血が出ないことも、処女とは思えないくらいに酷く感じてしまうことも、全て媚薬の所為にして、処女でないことがバレずに済むかもしれない・・・。
だけど駄目・・・。
それはレオン様に対してあまりに不誠実です・・・。
それにそんな結ばれ方をすれば、私も媚薬の効果が抜けた時に激しく後悔するでしょうし、レオン様も大切な初体験をこのような形で迎えることは、きっと望まれていない筈です・・・。
やはりここはどうにか一人で慰めつつ、薬が抜けるのを待つしかないでしょう・・・)
モニカがそう思って自らの中指を熱く昂る鞘に沈めようとしたその時である。
─コンコン─
モニカの部屋をノックする音がした。
(レオン様が帰って来られた・・・!)
モニカはハッとして股間に運んでいた手を引っ込めた。
「モニカ・・・僕だ。
今戻った。
さっき階段の下で、今日のお茶会で君と一緒だったという白髪ショートヘアのフリーメイドに、君がお茶会で具合を悪くしたと訊いたが・・・大丈夫か・・・?」
扉越しに愛しい彼の声が聴こえてくる。
モニカはすぐに部屋の扉を開けて彼の胸元に飛び込み、自分から口づけをして、
「レオン様、今すぐ私を抱いて下さい・・・」
と迫ってしまいたくなった。
だが、もはやベットから起き上がれる気力はなく、同時にまだかろうじて残っている理性が、それは絶対に駄目だと警告を鳴らしている。
モニカはベットに身体を横たえたままでこう答えた。
「す、すみませんレオン様・・・
私・・・熱があるみたいで・・・
はあっ、はあっ・・・
今日は・・・レオン様のお世話を・・はあっ・・出来そうも、ありません・・・・・」
「そうか・・・熱が・・・・・。
仕事のことなら気にしなくていい。
僕がランニングに出るまでは元気そうに見えたが・・・無理をさせていたのか・・・?
気がつかなくて悪かった・・・。
モニカ・・・。
部屋に入ってもいいか・・・?
僕でも濡れタオルを変えてやるくらいは出来るから・・・。」
レオンが階段の下で会ったフリーメイドというのはおそらくリディアのことだろうが、彼女はモニカが自力でジェイドの部屋から逃げ出してきたということもあり、モニカに配慮して媚薬のことまではレオンに話さなかったのだろう。
レオンは媚薬が原因だとは知らない様子で、モニカの体調を酷く心配しているようだった。
「だ、駄目です・・・!
入って来ては・・・
そ、その・・・・移してしまうかもしれませんし・・・」
「・・・では医者を呼んでくるから待っていてくれ。」
「駄目っ!!
お、お医者様は呼ばなくて大丈夫・・・です・・・・・
こんな状態を・・・お医者様とはいえ・・男性にっ・・見られるわけには・・・
はあっ、はあっ・・・
しばらく横になっていればっ・・・治りますから・・・」
「こんな状態・・・?
・・・君が今どんな状態なのか見ていない僕にはよくわからないが・・・とても苦しそうだし放っておけないよ・・・・・。
モニカ・・・頼む。
部屋に入らせてくれないか・・・?」
という言葉の後に、扉に手をかけられた気配を感じた。
「っ・・・駄目っ・・・!!」
モニカは取り乱し、叫ぶように声を上げた。
それに対するレオンの返事は無く、少ししてからレオンの部屋の方で歩く音がし、更に数秒後にパタンと扉が閉まる音が聞こえた。
(・・・・・あぁ・・・・・
・・・怒らせて、部屋を出て行かれた・・・。
ごめんなさいレオン様・・・・・。
でも今貴方の顔を見たら、私は全力で貴方を求めるただのメスになってしまいそうだから・・・・・
あぁ・・・レオン様・・・
今から私のナカに入るモノが、貴方の剣だと思うことを、どうかお許しください・・・・)
そうしてモニカの熱くトロトロになったナカに、2本の指がクププ・・・と沈められた。
媚薬の効果でモニカの秘部はたっぷりと濡れていたので、全く抵抗無くそれを受け入れることが出来た。
モニカは唇を噛み、もう辛抱堪らないといきなり激しく抽挿した。
「あ゛っ・・・くうっ・・・ふうっ・・・ふうっ・・・」
(ああっ・・・指では全然駄目・・・!
指では届かない身体のもっと奥の奥にレオン様の熱く硬い剣を誘って、レオン様の感じてくださるお顔を見ながら何度も何度もいいところに擦り付けたい・・・・・!!)
モニカがそう思いながら物足りない刺激を埋めるかのように、更にもう一本指を増やそうとしたその時である。
ガチャッとレオンの部屋の扉が開けられた音がし、2人分の足音がこちらに向かって近付いて来る音が聞こえた。
(レオン様・・・お医者様を呼んで来られたのでしょうか!?)
モニカは自分のナカに入っていた2本の指を抜くと、緊張して自分の部屋の扉を見つめながら息を呑んだ。
すると、
「モニカさん、私・・・アンジェリカよ?
レオンハルトから貴方のことを聞いて、何となく貴方の状態に察しがついたから来たの・・・。
部屋に入ってもいいかしら?
レオンハルトには自分の部屋で待機していてもらうから・・・」
(アンジェリカ様?
どうしましょう・・・。
本当は女性相手にもこんな姿を見せたくない・・・。
でも私の状態に察しがついたということは、もしかしてアンジェリカ様も媚薬を盛られた経験がおありなのかもしれない・・・。
・・・それならもしかして、この苦しみから抜けられる方法もご存知かも・・・)
モニカは意を決して頷くと、扉の向こうのアンジェリカに向けてこう答えた。
「はい・・・どうぞ・・・」
アンジェリカは、
「ありがとう、モニカさん。」
と言うと、モニカの部屋に入って来た。
モニカは荒く熱い息をつきながらも、目上の彼女に対して失礼のないようにと無理してベットから起き上がろうとした。
しかしアンジェリカがそれを制して頭を振った。
「そのままでいいわ。
とても辛いでしょう?
貴方のその様子だと、やはりお茶会で媚薬を盛られたのね・・・。
誰にやられたかわかる?」
モニカは答えた。
「ジェイド様です・・・。
ジェイド様に標的にされた・・フリーメイドの子を・・・助けたくてっ・・お茶会に参加したのですが・・・
彼女を助けたければっ・・はあっ、はあっ・・媚薬入りの紅茶を・・・飲むようにと・・ジェイド様に・・言われて・・・
鞭があった・・お蔭でっ・・・犯される前・・に・・ジェイド様の・お部屋からっ・・・逃げ出してくる・・ことは・・・出来たのですが・・・・・」
それに対してアンジェリカは返した。
「・・・まずは貴方が無事に逃げ出せて本当に良かったわ・・・。
だけど、媚薬を使ったのがジェイドというのは厄介かもしれない・・・。
メイドの誰かに盛られた媚薬なら、私の持っている薬で何とか出来ると思ったけど、ジェイドがもし昔私が使われたことのあるのと同じ黒蛇の媚薬を使ったのだとしたら、これは意味をなさないわ・・・」
と言ってポーチから取り出していた一般的な解毒薬の入った小瓶を見てため息をつくアンジェリカ。
「はあっ、はあっ・・・黒蛇・・・。
ジェイド様も・・その薬師のものだと・・・仰って・・いました・・・」
とモニカ。
「やはりそう・・・。
私は昔、ダズルに黒蛇の媚薬を使われたことがあるの。
黒蛇の薬はその持続時間も効果の出方も通常のものの比じゃないし、とてもじゃないけど貴方一人でやり過ごせるものじゃないわ。
その媚薬の症状から開放されるには、同じ黒蛇が作った解毒薬を使う、あるいは身体が求めるままの行動・・・つまりはセックスをして発散させるかのどちらかしない・・・。
私の時は解毒薬が用意されて無かったから、後者を選択するしかなかったけど・・・策略家のジェイドなら解毒薬も同時に用意しているんじゃないかしら・・・」
と、アンジェリカは一通り説明を終えてからこう言った。
「モニカさん。
レオンハルトに今の貴方のこの状態を見せてもいいかしら?
貴方はあの子の専属メイドよ。
あの子には貴方がされたことを正しく知る権利、そして貴方に対する様々なトラブルを解決する責任があるわ。
それを知った上でどうするのかは、あの子が決めること・・・。
いいかしら・・・・・?」
モニカはアンジェリカの説明で、黒蛇の薬が自分の想像よりもずっと強力であり、今の状態をレオンに見られずして解決出来るものではないこと、そしてこの場にアンジェリカがいてくれるのなら、レオンを求める言葉を自制できると思い、少し悩んでからコクンと頷いた。
アンジェリカはモニカにゆっくりと頷き返すと、
「レオンハルト。
中に入って来なさい。。」
と扉の外に向かって呼びかけた。
レオンはモニカが心配で気が気でなかったのか、モニカの部屋の扉の前でずっとウロウロしていたようで、アンジェリカの呼びかけに反応してすぐに扉が開けられ、金の髪を靡かせながら急ぎ足で中に入って来た。
レオンはベットに横たわるモニカの火照った顔、そして荒く忙しない呼吸、更には乱れて汗ばんだ栗色の髪と潤んだ瞳、そして掛け布団に隠れていて全ては見えないが、胸のボタンが外された制服のブラウス、極めつけに部屋の中に立ち込めたいつもの彼女の甘く爽やかな桃の香りの奥に加わった女特有の蜜の匂い・・・それら全ての情報と、自分を含めた男性に見られることを嫌がったモニカの様子とが繋がって、モニカの身に起こっていることに気が付いた。
「モニカ・・・・・
もしかして・・・・・媚薬を盛られたのか・・・・・!?」
アンジェリカは苦しくてすぐに返事が出来ないモニカに代わって息子の言葉に重く頷くと、モニカの状況についての説明を始めた。
「えぇ・・・。
しかも飛び切り強力なやつをね。
幸いにもモニカさんは自力でこの薬を盛った主の元から逃げ出して来たから、犯されずに済んだそうよ。」
アンジェリカのその言葉に同意してモニカがはぁ、はぁと荒い息をつきながらも頷くと、レオンは心より安堵したのか、強張っていた表情を少し緩め、ホッとため息をついた。
「だけどこの媚薬は、求められる刺激が得られない限り、なかなか身体から抜けてはくれない相当苦しいものよ・・・。
この状態を直すには、モニカさんの気の済むまで欲しい刺激を与えてあげるか、この薬を作った人の解毒薬を飲むかのどちらかしかないの・・・。
この薬を盛った彼のことだから、媚薬と合わせて解毒薬も用意しているでしょうけど・・・。」
「・・・そのモニカに媚薬を盛った奴は、一体誰なんだ・・・?」
と、レオンはモニカとアンジェリカに尋ねた。
「・・・ジェイドだそうよ。」
「あのクソ野郎!!!」
レオンは拳を握り締め、いつもは穏やかな目を鋭く尖らせると、短くそう吐き捨ててから踵を返し、モニカの部屋を出ていこうとした。
その背中に向かってアンジェリカが声をかけた。
「待ちなさいレオンハルト!
彼から解毒薬を貰うには、それなりの対価を要求されると思うわよ・・・。
悔しいけれど、貴方では交渉事において彼には勝てない・・・。
その覚悟は出来ているの?」
「・・・モニカが助けられるのならなんだって飲んでやるさ・・・。
だが、その前にあの野郎を数発殴ってやらないと気が済まない・・・!!!」
モニカはそう言って部屋を出ていくレオンの背中を、荒い息をつきながら心配そうに見送るのだった。
一方その頃、ジェイドは一人になった部屋で装飾が美しいマホガニーの椅子に腰掛けて紅茶を飲んでいた。
(あーあ・・・。
モニカちゃんに逃げられちゃったなぁ・・・。
あの美しく極上の触り心地のおっぱい・・・思い出しただけでも勃起してしまうよ・・・♡
本当はナカも味わってみたかったけど、仕方無いから今夜は他の子で発散するか・・・。
それにしてもあの媚薬、とても自力で治められるものじゃないと彼女が言っていたからね。
今頃鍛錬から戻ってきたレオくんが、モニカちゃんにせがまれるまま男の証を立てているか、もしくは僕のところまで解毒薬を貰いに来るかのそのどちらかだろう・・・。
まぁ後者の場合でも、ただで解毒薬を渡すつもりはないし、どちらにしても僕にとって悪くない結果になる・・・)
そう思いながら彼が長い脚を組み直してまた一口紅茶を口に運んだところで、乱暴にドアが開け放たれ、怒りに満ち溢れた鬼の形相のレオンが挨拶もなしにズカズカと部屋に入って来た。
そしていきなりバキッ!!と腹違いの兄である彼の左頬を殴ったのだ!
ジェイドは口の中を切り、その血が宙を舞って、先程とは反対の右側からもう一発殴って来ていたレオンの服の袖に付いた。
そしてそのまま拳は右頬に到着してめり込み、ジェイドは3m程左後ろへと飛ばされ、尻餅をついた。
「アガッ・・・!!!
・・・・・い、いきなり殴るなんて、酷いなぁレオくん・・・。
僕の美しい顔が台無しじゃないか・・・」
とジェイドは両頬を押さえながら抗議の声を上げた。
「ジェイド兄さん、あんたはそれだけのことをモニカにしただろう!?
あんたが半分でも血の繋がった兄でなければ、剣を抜いて首をはねていたところだ!
・・・クソッ・・・!
本当はもっと殴ってやりたいが、非力なジェイド兄さんにはこれでも相当訊いたようだし、これ以上殴って意識を失われては困るから、これくらいにしておいてやる・・・。
モニカの状態を解除できる解毒薬・・・持っているんだろう?
さっさとそいつを寄越せ!」
と強い口調でジェイドに迫るレオン。
「解毒薬ねぇ・・・。
まぁこんなこともあろうかと準備してはあるけどさぁ・・・レオくんも馬鹿だねぇ。
あそこまでお膳立てされたモニカちゃんが目の前にいるんだよ?
解毒薬なんていいから、素直に盛って男の証を立てちゃえばいいのにさ。
まぁレオくんが淫らなモニカちゃんを目にして、肝心なところで萎えなければの話だけど。」
「・・・それはどういう意味だ!?」
(うーん・・・
ファルガー・ニゲルと協力関係を結ぶこともあるし、モニカちゃんとはまだ良好な関係でいたいからねぇ・・・。
彼女が非処女であることは、まだ内緒にしておいてあげるかな・・・)
ジェイドは顎に手を当ててそう考えてから、ニコッと微笑みこう答えた。
「いや、レオくんって前に僕が用意したような経験豊富な女じゃなくて、初々しい反応をしてくれる処女が好きなんでしょ?
今のモニカちゃんって薬が効いちゃってるから欲望に素直だし、レオくん好みの初々しい反応は期待出来ないだろうから、レオくん萎えちゃうかなぁと思ってさ。」
「・・・モニカは僕にとって特別だ・・・。
あんたのお下がり女達と一緒にするな・・・。
それに、あんたの盛った薬の所為で狂わされている今のモニカを抱く気はない・・・。
いいから早く解毒薬を出せ・・・!」
「・・・僕がただで渡すと思うかい?」
そう言って挑発的に微笑むジェイド。
「何だと?
もう数発、その自慢の顔面に喰らわされたいのか!?」
と拳を再び握り込むレオン。
「また力で脅そうって?
やだなぁレオくん・・・。
君も言ったじゃない。
これ以上殴れば僕が意識を手放すかもしれないってさ。
いいの?
そしたら僕の意識が戻るまで、モニカちゃんはずっと苦しいままだよ?」
レオンはジェイドの言うことは最もだと、ギリッと歯を食いしばり俯いた。
「・・・交換条件を出そう。
年末に開かれる社交パーティ。
あれにレオくんが出てくれるなら、解毒薬を渡してあげるよ。」
とジェイド。
「社交パーティ?」
「そう。
宮廷にいないナイト家達や、分家の貴族達が大勢集まる1年で1番大きな集まりだよ。
レオくん、ずっとそういう機会を避けてきたよね?
だけど君も来年は成人して騎士としてお披露目されるんだし、そろそろそういう場にも出ておかないと。
レオくんと釣り合いの取れる身分の令嬢も何人か紹介するよ?」
「・・・令嬢の紹介はいらない。
だが、そのパーティに出ると約束をすれば、解毒薬をくれるんだな?」
「うん、約束するよ。」
レオンは少し考えてから、ゆっくりとその首を縦に振った。
ジェイドは満足気に微笑むと、絨毯に手をついて立ち上がり、鍵のかかった棚の鍵を開け、そこから小さな小瓶を取り出してレオンに手渡した。
「はい、解毒薬。
その代わり、パーティはよろしくね?」
「・・・わかった。」
レオンはそうしてジェイドから黒いウロボロスのラベルが付いた解毒薬を手に入れたのだった。
解毒薬を手に入れたレオンは、自室へと急いで戻り、モニカの部屋へと続く扉へ手をかけようとした。
するとその扉が開いて、アンジェリカが中から出て来た。
彼女はモニカの部屋の扉を閉めると、真剣な表情で息子に尋ねた。
「解毒薬は手に入ったの?」
「あぁ。
その代わり、年末の社交パーティに出ることになった・・・。
モニカの様子は?」
「ついには理性のタガが外れて、今はうわ言のように貴方を求めてるわ・・・。
正直に言うと、今のモニカさんは貴方には目の毒かもしれない・・・。
貴方が手に入れてきたその解毒薬も、身体を起こして本人に飲ませるのは難しいでしょうし、口移しするしかないわ・・・。
私としては、貴方達にはこんな形ではなく、お互いが納得出来るタイミングで結ばれて欲しいけれど、今のモニカさんにせがまれても、貴方は流されずに済むのかしら・・・?
どうするのかは貴方の判断に委ねるけど・・・ダズルと同じことをしてモニカさんを手に入れても、私とダズルのように貴方とモニカさんの間にも一生埋まらない溝が出来てしまうでしょう・・・。
それでもいいのか、良く考えて行動してみて・・・。」
アンジェリカはそれだけ言うと、レオンの部屋から出て行った。
レオンはモニカの部屋の扉の前で少しの間考えると、自分のベッドの方へと引き返した。
そしてベットサイドテーブルの引き出しを開けて、一つの指輪を取り出した。
それはレオンが13歳で精通してから父に渡された男の証を立てるための魔石がついた指輪であり、童貞でなくなるまでの間、女性と性行為に及ぶ可能性がある際には必ず身につけるようにと命じられているものだ。
その指輪には魔獣バイコーンから採取できる特殊な魔石がついており、今はオパールのように白く煌めいているが、身につけている者が童貞でなくなると、オニキスのように黒く染まるのだという。
(媚薬に狂わされたモニカで証を立てるつもりはない・・・。
だが、もし僕が我慢出来ずに最後までしてしまったときに、これは考えたくもないことだが・・・モニカとの次があるかはわからない・・・・・。
最悪我に返ったモニカが酷く後悔して、ジャポネに帰ると言い出すかもしれないんだ・・・。
だからこれは、念の為につけておく・・・。
だが、あくまで念の為だ・・・。
僕はモニカと、母様とあの父みたいに、一生埋まらない溝のある関係にはなりたくないからな・・・)
レオンがそう思いながら左手の薬指にその指輪をはめていると、
「レオン様・・・何処・・・?
レオン様・・・!」
とモニカの部屋から彼女が自分を呼ぶ声がした。
「モニカ・・・!
今行く!」
レオンは解毒薬の小瓶を手にしてモニカの部屋の扉を開けた。
モニカは、レオンがジェイドの部屋に向かう前よりも更に忙しなく息をついており、豊かで白く美しい胸が露わになった状態で、レオンに向かって手を伸ばしてきた。
「っ・・・!!」
レオンはずっと見てみたかったモニカの胸に、ドックン!!と血が沸騰しそうなほど強く鼓動が跳ね上がるのを感じ、目が釘付けになった。
モニカはレオンの手をギュッと掴むと、
「レオン様・・・はあっ、はあっ
・・・私の胸に・・・触って・・・」
と甘い声で誘った。
「モニカ・・・
君の胸、想像してたよりもずっと綺麗だし・・・正直言うと今すぐ触れたいよ・・・。
だけど触ってしまったら僕は止まれなくなりそうだから、やっぱり今は駄目だ・・・」
そう言ってその美しい胸から目を逸らす。
「やっ・・・触って・・・お願い・・・
上書き・・・したいんです・・・」
レオンはその言葉にハッとして険しい顔でモニカに視線を戻した。
「まさか・・・ジェイド兄さんに触られたのか!?」
モニカはポロポロと涙を零しながら頷いた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさ・・・」
モニカが最後まで言い終わらないうちにレオンはその唇を自らの唇で塞いだ。
そして、モニカの白く美しい胸に手を伸ばした。
モニカは大好きな彼に胸を触れられている・・・その事実だけで、ジェイドに触れられた時の比ではないくらいに感じて、身体中にピリピリと電撃が走ったような感覚を覚えた。
レオンはその極上の感触を両手のひらに刻みつけながら、そっと唇を離し、彼女を見つめながら囁いた。
「君が謝ることはない・・・。
いや・・・お茶会が奴の部屋で開催されることを僕に伏せていたことに関しては思うところがあるよ・・・。
それに、僕よりも先にこの胸に触れた奴には、それ相当の制裁を追加でくれてやらないと気が済まない・・・。
だが、それは全部後にする・・・。
今は君の胸の感触を堪能するほうが大事だ・・・」
「ひあぁっ♥
あっ・・・あっ・・・♥
レオン様ぁ・・・・・♡♥」
「っ・・・モニカ・・・」
レオンはガチガチに勃起した股間を掛け布団越しにモニカの太もも辺りに押し付けながら、更に胸を揉み続けた。
モニカはそれを掛け布団越しにしっかりと感じ取り、彼が自分の身体で強く反応してくれるのが嬉しくて、栗色の瞳を涙で潤ませた。
「・・・!?
す、すまない・・・。
強くし過ぎたか・・・?」
レオンはモニカの涙に潤んだ瞳に気が付き、慌てて胸から手を離した。
するとモニカが頭を振りながらその手を掴んだ。
「やっ!・・・やめないで・・・
もっとして・・・レオン様・・・」
「・・・・・わかった・・・・・」
レオンはそう言って頷くと、再びモニカの胸を揉み始めた。
「あぁ・・・僕のモニカ・・・
すべすべふわふわで気持ちいい・・・」
「あっ・・・あんっ♥・・・んっ・・・あっ♡♥」
モニカの胸の谷間に顔を埋めて頬ずりをし、乳首を摘むレオン。
「レオン様ぁ・・・ああっ♥♡♥」
「っ・・・モニカ・・・奴に触られたのは胸だけか・・・?」
「は、はい・・・」
モニカはコクンと頷いた。
「そうか・・・良かった。
もし君の特別な所も・・・なんて言われたら、半分でも血の繋がった兄を逆上して殺していたかもしれないし、上書きする為にとそこに触れたら、僕の理性なんて跡形もなく何処かへ飛んで行って、引き返せなくなっていただろうからね・・・。
まぁ、胸だけでも相当やばいけど・・・・・」
レオンはそう言って苦笑してから解毒薬の蓋を開けると、それを一気に口に含んだ。
そしてモニカに唇を重ねると、ゆっくりと口を開いていきながら口の中の液体を彼女に流し込んでいった。
コクン・・・コクン・・・とモニカが小さく喉を鳴らしながらそれを飲み込んでいく。
溢れてしまった液体がモニカの顎をツー・・・と伝って汗ばむ首筋へと消えていった。
レオンは口の中の液体を全て彼女に流し込んだ後も、彼女から唇を離すことなく、彼女の口内へ舌を割り入れてその柔らかな舌を何度も絡め取った。
そうしながらも彼女の胸を揉み続け、時折乳首も摘む。
そしてこの上ないくらいに硬く熱くなった股間のものを掛け布団越しの彼女の太ももに何度も擦りつけた。
「ふっ・・・んっ・・・♥
うっ・・・んっ・・・・・・」
モニカは唇の隙間から時々喘ぎを漏らしていたが、徐々に反応が無くなり、やがてくたっとして動かなくなった。
レオンははっとしてモニカから唇、そして胸に当てた手を離し、彼女の呼吸を確認した。
スーッ、スーッ・・・
解毒薬の効果だろうか。
モニカは軽やかな寝息を立てながら寝てしまったようだ。
レオンはホッと小さくため息を付くと、呼吸に合わせてゆっくりと動くモニカの艶かしくも美しい胸を見て頬を赤らめた後、そっとそれを隠すように掛け布団を被せてやった。
そしてギンギンに熱り勃ったままの自らの股間を恨めしそうに睨むと、
(モニカ・・・すまない。
やっぱりもう少しだけ見せてくれ・・・)
と心の中で断ってから掛け布団をそっと剥がした。
そしてボトムスをずらし、元気に主張する完全状態に勃起したきかん坊をビキニから取り出すと、モニカの美しい胸を見つめながら自らを慰め始めた。
声を出すとモニカが起きてしまうかもしれないと、出来るだけ声を殺した。
レオンはあまり昇り詰めるまで早い方ではなかったが、先程までのモニカとの行為、手と舌に残る彼女の感触、そして軽やかに寝息を立てるモニカのすぐ側で自慰行為を行うという背徳的なシチュエーションに堪らず、あっという間に快楽の頂点まで昇り詰めていった。
「っ・・・はっ・・・
くっ・・・はっあっ、はっはっはあっ・・・
モニカ・・・・・好き・・・好きだ・・・・・
・・・・・・・・・っくっ!」
レオンは肉の剣を脈打たせ、モニカの胸に白く熱い欲望の塊を沢山吐き出した。
レオンがモニカの美しい胸が彼の白濁液により穢されたところを満足気に眺めていると、モニカがピクッと動いた。
レオンはギョッ!としたが、モニカはまだ寝ているようだったのでホッとして、アンジェリカが彼女の汗を拭うために用意したのであろう濡れタオルで胸元の精液を拭き取り、ついでに自分の股間の先端についた同じ液体も拭き取った。
そしてサイドテーブルに置いてあった水の入った洗面器にそれを浸し、ボトムスを引き上げた。
そしてモニカに再び掛け布団を掛けてやると、そっと彼女の手を取り、ベットに顔を預けて目を閉じるのだった。
─リンゴーン、リンゴーン─
町の教会で鳴り響く鐘の音をうっすらと遠くに聞きながら、モニカは目を覚ました。
窓から見える景色はすっかり暗くなっており、モニカが横たわるベットの腰のあたりには、彼女の愛しの主人が頭を預けて気持ちよさそうに寝息を立てていた。
サイドテーブルには水とタオルの入った洗面器、ベットの上には殻になった解毒薬の小瓶が転がっていた。
(今の時間は・・・)
先程の鐘の回数から大体想像はついていたが、暗い部屋の中目を凝らして壁掛け時計を見ると、時刻は18時を指し示していた。
(まぁ大変!
お夕食の配膳が始まってしまいますわ!)
モニカは慌てて起き上がり、ベットから下りようとするが、身体がだるくてベットの上で上半身を起こすだけで精一杯だった。
(媚薬の効果は抜けたのか、気分も楽になり頭も普通に働きますが、媚薬の後遺症なのか、まだ身体が思うように動かないようです・・・。
でもどうしましょう。
レオン様とアンジェリカ様のお夕食・・・)
モニカは自分のベットに頭を預けて寝ている主人の肩にそっと手を置き、軽く揺さぶった。
「レオン様・・・レオン様・・・」
モニカの声と揺さぶりに反応して、レオンは薄っすらと目を開けて顔を上げた。
「モニカ・・・。
目が覚めたんだね・・・!
良かった・・・・・!
もう身体を起こしても大丈夫なのか?」
とレオン。
「えぇ、気分も楽になり、意識もはっきりしています。
ただ、まだ思うように身体に力が入らず、立ち上がるのは無理そうですが・・・。
レオン様が解毒薬を飲ませてくださったのですよね?」
脇に転がっていた殻の小瓶を手に取りそう尋ねるモニカ。
「あぁ、うん・・・・・。」
レオンはその時の光景を思い出したのか、顔を赤く染めて髪をかきあげたあと、ハッとして声を上げた。
「というかその口ぶりからして君、解毒薬を飲んだときのことを覚えていないのか!?」
「えっ、ええ・・・・・」
本当はうっすらとだが、彼に胸を揉まれながら口移しで薬を飲ませてもらい、薬を飲み込んだ後に舌を何度も絡み取られたことを覚えていた。
だがそれを伝えてしまえば、自分達の関係性において、その行為をすることが当たり前になってしまうだろう。
そうなれば、すぐにあの秘密を打ち明けなければならなくなる。
モニカはそれが怖くて、覚えていないと嘘をついたのだ。
(ジェイド様もファルガー様と協力関係を結ぶことに対して乗り気でした。
だとしたら、私が処女でないことはまだ秘密にしてくれる筈・・・)
そうとは知らないレオンは、
『クソッ!
それならもっと一杯揉んでおけば良かった!
でもあれ以上長く揉んでいたら、僕も止まらなくなっていただろうし・・・』
と小声で呟き、頭を抱えていた。
モニカにはそれら全ては聞き取れなかったが、何となく何を呟いているのかは理解できたため、
(本当に、愛らしいお方・・・!)
と思ってクスッと微笑んだ。
「それはそうとレオン様。
もう夕食の時間なのですが、私はまだお料理を出来るほどは回復してはいませんし、一階の調理場までレオン様とアンジェリカ様のお夕食を配膳しに行くのも無理そうなのです・・・。」
そこまで言って、モニカはリディアが去り際に言っていた、
「もし助けが必要なときは、私今日は遅番で20時までは宮廷にいますので、いつでもお呼びください。」
という言葉を思い出し、
(ありがとうございますリディアさん。
お言葉に甘えさせていただきますわ・・・)
と頭の中でリディアに感謝してからこう続けた。
「そこで、フリーメイドのリディアさん・・・
彼女は信頼がおけますので、彼女に今日だけ配膳をお願いしに行って貰えますか?
多分一階の調理場辺りにいらっしゃる筈なので・・・」
レオンは頷いた。
「わかった。
階段の下で会った白髪ショートヘアのあの子だな。
下に降りたついでに君の分も何か用意してもらえないか料理長に聞いてみるよ。
リゾットなら食べられそうか?」
「はい、恐れ入ります。
あ、その前にお召替えだけお願いします。
ランニングウェアのままですし、服に血がついておりますから・・・。
・・・この血は、レオン様のものでは無いですよね?」
「あぁ、これはジェイド兄さんを殴ったときについたものだな・・・。」
と嫌なものを思い出したのかのように眉を寄せて答えるレオン。
「まぁ!
ジェイド様を殴られたのですか!?」
「君に媚薬を盛って犯そうとしたんだからこれくらい当然だろう?
まぁジェイド兄さんのことだから、治癒力を高める回復ポーションくらいは持ってるだろうし、明日には元通りのキザったらしい顔に戻っていそうだけどな・・・。
それならもう二度とそんな気を起こさないように、骨の2~3本くらい折ってやれば良かったか?」
レオンはそんなことをブツブツ言いながら、忌々しげにその血痕を睨んでいる。
「ふふっ、ではそのランニングウェア、脱いだら水に浸しておいてくださいますか?
私が動けるようになりましたら、綺麗に血抜きして差し上げますから。」
とモニカ。
「いや、他にも何枚か同じようなのを持っているし、最近背が伸びて少しきつくなっていたから、もうこれは捨てるよ。
それじゃ、すぐに着替えて一階に行ってくる。
あ、ついでだからこの洗面器も片付けておくかな・・・」
そう言ってレオンは頬を染め苦笑いをすると、洗面器を持って部屋を出て行った。
(・・・?
洗面器くらい私が後で片付けますのに。
何か恥ずかしいものでも隠したいかのような態度でしたね・・・。
まぁレオン様もお年頃ですから何となく察しはつきますが、追求しないでいてあげましょうか・・・。
ですが、レオン様のランニングウェア・・・処分してもいいということでしたら、後で血痕のついた部分を切り取って、ファルガー様に提出させていただきましょう。
これで全ての検体が揃いました。
検査せずともおそらくはジェイド様のお話の通りなのでしょうが、念の為に天界のほうできちんと調べて貰ったほうが良いでしょう。
この検査の結果が、何かの役に立つかもしれませんし・・・。
それから、ファルガー様にジェイド様との協力関係のことについてもお話しておかねばなりませんね。
3日後の待ち合わせの場所も、こちらの動向をジェイド様に監視されてる可能性を踏まえた上で、検討し直したほうが良いかもしれませんし・・・。
ですがそれらは全て明日にして、レオン様が戻られるまでは休ませて貰いましょう・・・。
今日は本当に大変な目に遭いました・・・。
でも最後には、レオン様が全部幸せな気持ちへと変えてくれましたわ・・・。
あぁ、私のレオン様・・・・・)
そうしてモニカはそっと目を閉じ、願うのだった。
この幸せな彼との時間が、少しでも長く続きますようにと─。
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❖ご挨拶❖
2024年の年賀状です。
本年も『銀色狼と空駒鳥のつがい』シリーズをよろしくお願いいたします。
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「しらばっくれなくてもいいよ。
君がジャポネの出身で、このタイミングで面接を受けに来たとても優秀なメイドだった地点でピンと来たよ。
君、ジャポネの主でありヘリオス連合国の神使、ファルガー・ニゲルの手の者だろう?」
モニカはジェイドにベットの上に押さえつけられながら、彼がたった今発したセリフについて考えを巡らせた。
(・・・なんてこと・・・!
最初から彼には全てバレていたというのですね・・・!!
このタイミング、という言葉の意味はわかりませんが、ジャポネの主がヘリオス様の神使で世界の監視者でもあるファルガー・ニゲル様であるということは、国の代表・・・もしくはそれに近しい立場である彼に知られていてもおかしくはないことです・・・。
そして彼は、私がスパイであることを知った上で、わざと泳がしていたということになります・・・。
それは何故?
私は彼に対してどう立ち回るべき・・・?
それを間違えてしまえば、この国に・・・レオン様のお側に居られなくなるだけではなく、ファルガー様にまでご迷惑をかけてしまうことになります・・・・・。)
モニカは冷や汗を垂らし、激しい緊張から喉が渇き、ゴクッと息を呑んだ。
「ふふっ、いつも堂々と胸を張っていて隙を見せない君がこんなにも焦って・・・今の君、凄く可愛いよ・・・♥
君は何故僕が君をスパイだと知りながら泳がせていたのか、知りたいって顔をしてるね?
いいよ?
今僕はとても気分がいいから、その疑問に答えてあげる。
まず、君のその顔が見たかったんだよ。
ファルガー・ニゲルに信頼される程切れ者の君が、僕に従うことを余儀なくされて、酷く焦る顔がさ・・・♥
そして僕の罠にハマって悔しそうな君を犯して、その美しい身体に快楽を刻み込み、僕無しじゃいられない身体にしてみたかった。
その機会を得るために、君をわざと泳がせてたんだよ。
でも君はレオくんにとって特別な子だし、僕もレオくんに嫌われたくはないからさ。
君のことは諦めるしかないのかなって思ってたんだけど・・・やっぱりどうしても君を諦めきれなくてね。
でも君がこの宮廷内で僕にとって不利益な情報を仕入れて、ファルガー・ニゲルや外部の人間に情報を流されるのは困るから、君を堕とす準備が整うまで君との接触を避けて、代わりに僕の手駒達に君のことを監視させてたんだ。
君、レオくんに、町を案内してもらったり、カフェで花売りの子のためにその彼氏を説得したりしてたでしょ?
そこに途中でレオくんも参戦してさ。
そうして君に関する報告を聞くうちにわかったんだ。
君には決定的な弱点があるってね。
君、困っている善良な人を放っておけない質でしょ。
そこを突けば君が手に入るんじゃないかと思ってたところに、カタリナちゃんが僕の専属メイドを一人辞めさせちゃったから、それを利用してこのお茶会を企画し、僕と性的関係を望んでいないリディアを君に差し向けたんだよ。
そして特別製の媚薬は君を手に入れるのに必要だと思って、ダルダンテ神国に”黒蛇”とかいう裏社会で名の知れた神の領域に踏み込んだ薬を作れる薬師がいるんだけど、彼と繋がりのある知人がいるからその人経由で手に入れたんだ。
まぁそれなりの対価は要求されたけど、それは地下牢にいる連中で賄えたし、そのお蔭で君がこうして僕のベットにいるわけだから、満足だよ♥」
ジェイドはそう言い終えると舌舐めずりをし、モニカの制服のブラウスのボタンを外し始めた。
「はぁ、はぁ・・・
貴方が媚薬を使って私を犯したとレオン様に知られたなら・・・レオン様は貴方を決して許しませんわよ・・・?」
モニカはジェイドをギリッと睨みつけながらそう言った。
「ふふっ、それはどうだろう?
君がスパイで、僕が犯す前から既に処女じゃなかったんだとレオくんに教えてあげたらどうかな?」
モニカは彼のその言葉にビクッと反応して眉を寄せた。
「レオくんは処女にしか勃たないって本人から聞いてるでしょ?
レオくんはまだ童貞で純粋だから、君のその清楚な見た目だけで処女だと思ってるんだろうけど、僕にはわかるよ?
君・・・処女じゃないよね?
だって僕に脱がされてるのに、取り乱す様子も全く見せないし。」
と言いながら、、ジェイドはモニカのブラの前紐を解いた。
そして露わになった白く美しく豊かな胸と、その谷間に主張する首から下げられた白く小さな陶器の笛。
「何だこれは・・・笛・・・?」
ジェイドはファルガーがくれた笛が少し気になったようだが、それよりもモニカの美しい胸に早く触れたくて仕方が無いのか、吸い寄せられるように手を伸ばし、下から包み込むようにして揉みしだいた。
「うわぁ・・・♡
君の胸、ぷるんぷるんのふわっふわで最高の触り心地じゃないか・・・♥」
モニカは即座にその穢らわしい手を払い除けたかったが、媚薬の効果で身体に力が入らないうえ両腕を強く押さえつけられているためそれが敵わず、悔しくて堪らなかった。
しかも媚薬の効果の所為か自分の心とは裏腹に、ファルガーに同じことをされた時よりも強く激しく感じてしまうのが非常に屈辱的で不愉快で、そして何より、レオンに申し訳がなくて泣き出しそうだった。
だが相手が自分と同じドSなら、今ここで悔しそうに唇を噛んだり涙を見せたりすることは、酷く相手を喜ばせることになるだろうとモニカは理解していた。
ならばせめて、ジェイドに精神的な快楽を与えてなるものかと、モニカは必死に表情を変えずにその刺激に耐えた。
ジェイドはモニカから屈辱に歪む顔と甘い喘ぎが引き出せないことに不満を感じたようだが、このまま愛撫を続けていけば、すぐに耐えきれなくなって屈辱に耐える顔、そしてそこから快楽に屈して淫らな女の顔を徐々に晒し出し、やがては甘い嬌声を上げながら自分を求めてくるだろうから焦ることもないと、ひとまず今はモニカの胸の触り心地の良さを気の済むまで堪能することにしたようだ。
そして興奮して頬を染め鼻息を荒くしながら話を続けた。
「そしてそれをまだレオくんはまだ知らない・・・そうでしょ?
ならどうせ非処女なんだし、僕が君を犯したところで結果は変わらないよね?
あぁ・・・ホントに君の胸、今までの女の中でもダントツの触り心地だよ・・・♥
ねぇ・・・これからもレオくんの鍛錬中にでも僕に抱かれにここに来るなら、君がスパイであることも、君が処女でないこともレオくんに黙っていてあげるよ?
そうしたらまだ暫くはレオくんと一緒にいられるし、恋愛ごっこが出来るんじゃない?
そしてレオくんが成人する前いよいよ君で男の証を立てようとした時、レオくんが君が処女じゃないと知って拒絶したなら、僕の専属メイドにしてあげるから安心しなよ♡
僕は処女、非処女に関わらず、苛めて楽しくてエッチして気持ちいい子は大切にするよ?
さて・・・そろそろ下の方が疼いて堪らないだろう?」
ジェイドはペロッと唇の端を舐めてからそう言うと、今度はモニカのスカートに手をかけた。
そして徐々にモニカの美しい脚が晒されていき、ストッキングの履き口にまで辿り着いたその時である。
モニカの右の太腿には革の鞭が刺さっており、それに気がついたジェイドは驚き、モニカの両腕を押さえつけていた右手を離した。
「なっ・・・何だこの太腿に挟まっているのは・・・・・
む、鞭・・・!?」
モニカはジェイドのそのセリフで自分には鞭という頼もしい武器があったことを思い出した。
そしてそれを切っ掛けに、媚薬により入らなかった筈の力が体の底から湧いてくるのを感じた。
モニカは素早く鞭をストッキングから引き抜くと、身体を起こして表情をキリッと引き締めてから鞭をビシッと構えてみせた。
「モ、モニカ・・・。
それをしまってくれないかな・・・。
当たったらすごく痛そうだ・・・・・。
僕、痛いのは嫌いなんだよね・・・。
アンジェリカに鞭の使い方を教わっているようだとは手駒から報告を受けていたが、まさかもう実用レベルまでレッスンが進んでいたとは・・・」
「はあっ、はあっ・・・
残念ながらまだ微細なコントロールはできませんの。
ですから・・・」
モニカはわざとジェイドの座るベットのすれすれの位置に鞭を軽く”ピシャ!”と打ってみせた。
ジェイドは「ひっ!!」と小さく悲鳴を上げると、慌ててモニカから距離を取った。
「と・・・このように、私の気分次第でうっかり・・・手が滑ってしまうこともあるかも知れませんが・・・ご安心下さい・・・。
ジェイド様がこれ以上私に触れないのなら・・・はあっ・・・振るうことはもう致しませんわ・・・。」
「・・・・・・・・」
ジェイドは青ざめた顔のままで冷や汗を垂らした。
モニカはジェイドには鞭による脅しがかなり有効なことを確信し、まだ自分が意識をしっかり持てるうちに、彼からあることを聞いておこうと思った。
「・・・ジェイド様は・・・”神避け”を、ご存知ですわよね・・・?」
「・・・神避け?
なんだいそれは・・・」
ジェイドはそう言って怪訝な顔をして首を傾げたが、モニカには彼が嘘をついているようには見えなかった。
「神族の干渉を遮断する力を持つ・・神避けという装飾品がっ・・・・この宮廷内で使われている筈なんです・・・。
だから私がここへ送り込まれました・・・。
私はそれを用いているのは、貴方ではないかと思ったのですが・・・違うのですか・・・?」
「うん・・・違うね。
そんな便利なものがあるなら是非欲しいよ。
それはどうやったら手に入れられるんだい?」
モニカはジェイドのその答えを聞いて、鞭を口元に当てて思考した。
(ジェイド様が性格的にも立場的にも1番ファルガー様に隠したいことが多いように見受けられましたし、てっきりそうとばかり思っておりましたが、ジェイド様がお持ちで無いのなら、一体誰が神避けを用いているのでしょう・・・?
・・・神避け探しの件は振り出しに戻ってしまいましたが・・・でも彼にはまだ聞きたいことがあります。)
モニカは再び鞭を構えると、はぁ、はぁ、と息を乱しながらも続けて尋ねた。
「ジェイド様は・・・先程私がスパイであることを言い当てられた際に・・”このタイミングで”と言われましたわね・・・?
それは・・一体どういう意味・・・なのです・・・?」
「あぁ、今から883年前、魔界からやってきた魔王を勇者一行が倒し、魔界ゲートを閉じただろう?
そのゲートは1000年の時をかけて少しずつ開いていき、完全に開いたその時、新しい魔王が誕生するのか以前倒した魔王が復活するのかはわからないが、とにかく魔王が出現すると言われている。
後120年弱でその1000年になってしまう・・・。
近頃このアデルバートでもゲートの隙間が広がり、湧いてくる魔獣も強くなってきている。
下手したら1000年を待たずして魔王が復活するかもしれない・・・。
そうしたら当然かつての英雄ラスター・ナイトの子孫である我ナイト家も、ラスターが残した聖剣”白の剣”と共に魔王討伐に向かうよう、創造神ヘリオス様、そして世界中の人々が期待すると思う。
だが、君はもう薄々気がついているんだろう?
ナイト家当主は、何故そうなってしまったのかは知らないが、代々ラスター・ナイトの血を1滴も引いていない彼の義弟の子孫・・・つまりは”偽物”だ。
ラスター・ナイトの血を引く者が触れるとその刃が白く光ると言われる”白の剣”を僕達が手にしても当然刃が光ることもないし、その真価も発揮されない。
あの剣は、我が国の神使ルシンダ様が、ラスター・ナイトの血に合わせて作られた特別なものらしく、その血を引かぬ者が手にしても、ただの古いミスリルソードにしか過ぎないんだ・・・。
僕等直系の男は成人して騎士としてお披露目される際、白の剣を民の前で抜いて白く光らせてみせるという儀式があるのだが、その際には僕らが偽物であることがバレないよう、父様も僕もグリント兄さんも歴代の直系達は皆、白の剣を抜いて翳す瞬間に光の魔石を発動させて刃を光らせて見せることで偽装をしているんだ。
だが白の剣を抜いて魔王軍と戦うとなると当然偽装は不可能だし、そうして近い将来その事がバレてしまう前に、僕と父様は本物のラスター・ナイトの子孫を我がナイト家に取り込んで、当主にしようと考えているわけさ。
そうすれば僕たちが偽物であることが周囲にバレることもないだろう?」
ジェイドは美しい足を組み直してから更に続けた。
「言わずとも君にはわかるよね。
レオくんとアンジェリカこそが、本当のラスター・ナイトの子孫だ。
父様の話では出会ってすぐのアンジェリカ、そしてレオくんが生まれたばかりの頃に、それぞれ白の剣に触れさせてみたが、その血に反応して刃が白く光ったのだから間違いないそうだよ。
どういうわけか、ラスターの子孫は姓を変え、平民に紛れて暮らしていてね・・・。
しかも代々男児ばかりが産まれてきたそうなんだよ。
兄弟もなく子は1人のみ・・・それで細々と血を繋いできているんだ。
そんな中、女児として産まれてきたアンジェリカは本当にレアなんだよ。
だから父様は、アンジェリカがラスター・ナイトの子孫だと判明した後すぐに娶ったんだ。
まさかそのアンジェリカにあんなにも父様がのめり込んでしまうとは思わなかったけど、でもやっと僕らはレオくんという”切り札”を手に入れたわけだ。」
そう語り終えると、ジェイドはモニカの身体がまだ名残惜しいのだろう。
露出したままのモニカの胸に視線を注ぎ、ゴクッと喉を鳴らした。
モニカはその視線が不快で顔を歪め、鞭を手にしたまま開いた方の手で胸元を押さえた。
「・・・貴方は・・・はあっ・・・ご自分の地位を守るために、レオン様とアンジェリカ様を・・・殺そうと企む派閥ではないと・・仰るのですね?」
「そうだよ。
中にはレオくんとアンジェリカこそが本物だと国民達に知れ渡る前に二人を殺し、このままの地位を維持しようという考えの連中もいるようだが、そのまま奴らが推すグリント兄さんが当主になってみろ。
レオくんの子供に女の子が生まれればまだ本物の血の取り込みは間に合うかもしれないが、さっき言った理由でそれはほぼ望めないだろうし、近い将来世界中に現ナイト家の嘘がバレてしまうことになるんだよ。
そうなれば僕たち一族は皆断罪されるだろうし、保身のためにと地位を脅かすアンジェリカとレオくんを殺して英雄の血を絶やしでもすれば、それを知った創造神ヘリオス様は、偽のナイト家に対してますます怒りを覚えるんじゃないかな?
それならレオくんがいつか真実を知った時に僕等一族は制裁を受けるかもしれないが、兄であり宰相でもある僕がレオくんを間近でコントロールすればそれを最小限に留めることが出来るだろうし、本物を当主にしたほうが余程いいと思うんだよね。
だからレオくんを逃せば、もう二度とその機会は巡ってこない。
”このタイミングで”と言ったのは、そういった意味だよ。」
モニカはその長い話を聞きながら、鞭を持つことで何とか律していた精神が、時間とともに身体に深く染み込んだ媚薬により再び鈍くなり、今にも飲み込まれていきそうな感覚を覚えた。
そしてそろそろ彼との会話をやめにしないと、鞭をジェイドに奪われて再び組み敷かれてしまうだろうと感じた。
「成程・・・わかりました。
貴方の今のお話は、ファルガー様の推測とも一致・・していますし・・・真実・・なのでしょう・・・。
私の聞きたいことは、今大体お話していただけましたので・・・私はそろそろお暇させていただき・・・」
彼はモニカの身体を媚薬が蝕み、自我を保つ余裕が無くなって来ていることにとっくに気がついているのだろう。
完全にモニカが媚薬に落ちるまでは逃さないと言わんばかりに、すかさずこう被せてきた。
「逆に君に聞きたい。
君はファルガー・ニゲルの命なのか、グリント兄さんの血をコソコソ採取したりしていたようだけど、きっと父様やレオくんのものも手に入れたよね?
当然僕もその対象なのだろうけど、そうやって調べた情報をどうするつもりでいる?
その答えによっては、このまま君を生かしてここから帰せなくなるということは、賢い君にならわかるよね?」
「あら・・・はあっはあっ・・・
私が鞭を手にしただけで・・っ・・逃げ腰になってしまわれた貴方様が・・・どうやって私を・・生かしておけなくっ・・するというのです・・・?」
モニカが息を乱しながらも口角を上げて挑発的に微笑むと、ジェイドは自信たっぷりの表情でこう返してきた。
「君の言う通り、僕は確かに武器での荒事は好まないよ。
だけど母の血の影響か、魔法の才はそれなりにあってね。
他の人みたいに魔力を底上げする指輪等を身に着けなくても、得意な土魔法を発動させて君を気絶させることくらいは出来るよ?
君の美しい身体に傷をつけてしまったらこの後お愉しみどころではなくなってしまうから、出来るだけ使わずに済ませたいんだけどね・・・。
まずは僕が言うことが真実かどうか、見せてあげるよ。」
ジェイドはそう言うと、手のひらを上に向けて透明で鋭利な水晶を作り出して見せた。
そしてそれを空中で漂わせると、モニカにその尖った切っ先を向けた。
モニカは気力を奮い立たせて鞭を振りかざし、すかさずその水晶を鞭で狙い打った!
─パリーーーーン!!─
水晶は砕け散り、その破片は空中で霧散して消えて無くなった。
モニカはふらつきながらもベットから降りると、何とか両足を踏ん張って立ち鞭を構え、ジェイドを睨みつけながらこう言った。
「・・・ご安心下さい。
ファルガー様は・・貴方の地位を脅かす気も・・っ・・この国の政治に関与する気もっ・・一切御座いません・・・。
代々のっ・・ナイト家当主様が偽物で・・あっても・・・・きちんと国を治めているのならばっ・・・別に構わないと仰っていましたから・・・」
「ふーん・・・。
それじゃあ何のために君はここへ送り込まれたんだい?
さっき言ってた神避けをしている者を探すためっていうのもあるんだろうけど、その背後にもっと大きな何かがあるよね?
それを僕に教えてよ。」
とモニカに躙り寄るジェイド。
「それは・・・ファルガー様の許可なくっ・・私の口から申し上げることはっ・・・っ・・・出来ません・・・。
ですが・・・私はこう見えてっ・・ファルガー様には・・家族のように・・大切にっ・・思っていただけている身・・・ですからっ、私をこの場で処分・・・なされば、ファルガー様を・・・敵に回す・・・ことにっ、なりますよ・・・?
それに・・・ファルガー様がご心配されていることはっ・・・おそらく貴方にとっても・・阻止したい・・ことのはず・・・。
貴方の・・私に対する態度次第では・・ファルガー様を・・・味方につけることも・・可能かもしれませんよ・・・?
今私を殺すのと・・・このまま泳がせるのと・・・どっちが得なのか・・・良く考えてみて下さい・・・。
それではっ、失礼いたします・・・・・!」
そう言って踵を返すモニカを引き止めるかのようにジェイドは言った。
「待ちなよ。
ファルガー・ニゲルを味方にか・・・。
悪くないな・・・。
君の提案、良く考えさせてもらうよ。
ところで、君は僕の検体が欲しいんでしょ?
僕は痛いのは嫌いだから血を取られるのは勘弁願いたいけど、精液なら分けてあげてもいいよ?
君も媚薬がかなり効いててとっくに限界でしょ?
僕が君の疼いて堪らないところを気の済むまでガンガン突いてあげるから、その鞭を置いてこっちにおいでよ。
そしたら精液だって手に入るし、一石二鳥じゃないか。」
モニカはキッ!と眉を吊り上げてジェイドを振り返ると、強い口調でこう吐き捨てた。
「何が一石二鳥ですか・・・!
卑劣な罠に・・嵌めたくせにっ・・・!!
好きでもない殿方のものをっ・・・受け入れなければならないのならっ・・・!!
それはいただかなくても結構ですわ・・・!!
失礼致します・・・・・!!!」
モニカはジェイドの部屋から飛び出した。
モニカが廊下に出ると、部屋の前には心配そうな顔をしたリディアが立っていた。
彼女はモニカが出て来ると、すぐに駆け寄って来た。
「モニカさん!!
なかなかお部屋から出て来られないので私、心配で・・・・・
そ、その胸元はまさか・・・」
リディアはモニカの開けた胸元を見て、心配していた出来事に至ってしまったのかと思ったらしく、泣きそうな顔をして青ざめた。
「大丈夫ですリディアさん・・・。
少し脱がされはしましたけど・・・事に至る前にっ・・・隠し持っていたこれで・・脅して逃げ出してっ・来ましたから・・・」
と言ってリディアに革の鞭を見せるモニカ。
「そ、それなら良かったです・・・
すみません、私のために危険な目に遭わせてしまって・・・」
「いえ・・・
それよりリディアさん・・・お仕事の方は大丈夫なのですか・・・?」
「え、えぇ・・・私、ジェイド様のお部屋を出てからもモニカさんが心配で持ち場に戻れず、この部屋の前をうろうろしていたんてすけど、そこへ通りかかったメイド長のオリガさんに事情を説明したところ、あ・・・オリガさんにはその時間帯に数名の新人メイドが抜けるために仕事の調整をつけて貰う必要があったので、ジェイド様主催のお茶会があると事前にお話していたのですけど、私の仕事はフォローするから、モニカさんの為に行動してあげてと仰っしゃって下さって・・・。
それで私、何度かジェイド様のお部屋をノックしてみようかとも思ったのですが、仮に中に入れて下さったとしても、私一人ではモニカさんを助けることは難しいでしょうし、ジェイド様には持ち場に戻るようにと釘を差されていたのにも関わらず、お部屋の前に留まり邪魔をしようとしたとなると、ジェイド様の逆鱗に触れて即刻解雇されてしまうと思うと怖くて、何も出来なかったんです・・・。
それで他の方法を考えたんですけど、モニカさんがレオンハルト様にはジェイド様のお部屋でお茶会が開催されることは伏せておいでだと仰っしゃられていたので、そのことをレオンハルト様にお伝えすれば、モニカさんをお助けして下さると思ったんです。
レオンハルト様はジェイド様より下のお立場ではございますが、モニカさんに関わることであればこの宮廷で一番の権限をお持ちですから・・・。
それで私、オリガさんにレオンハルト様のいらっしゃいそうな場所を訊いて、5階のトレーニングルームまで伺ったのです。
ですが、本日は別のメニューをこなされているようで、トレーニングルームにはいらっしゃらなくて・・・。
それで今さっきまたここへ戻ってきたところだったんです。
良かった・・・本当にご無事で・・・!」
そう言ってリディアは涙ぐんだ。
モニカはリディアの心配してくれる気持ちがとても嬉しかった。
だが、正直媚薬の効果が高まってきている今は、とにかく早く自分の部屋に戻って、酷く昂ってしまった自分の身体を慰めたくて仕方が無かった。
「リ、リディアさん・・・
私はっ・・・もう大丈夫っ・・ですから・・・お仕事に戻ってっ・・・」
「えっ・・・ですがモニカさん、お顔が真っ赤でとても苦しそうですし・・・」
と心配して汗を飛ばすリディア。
「ジェイド様の特別な紅茶を飲んでしまいましたからね・・・。
でもこれくらい、部屋で少し休めば大丈夫ですわ・・・!」
モニカはこれ以上リディアを心配させないようにと無理に笑顔を作ってみせた。
リディアはモニカの元気そうな様子に少しは安心したのか、
「そうですか・・・わかりました。
ですがもし助けが必要なときは、私今日は遅番で20時までは宮廷にいますので、いつでもお呼びください。」
と言って頭を下げてから、持ち場に戻る為に階段を降りて行った。
ようやく自室に戻ってきたモニカは、髪を結っているキキョウの刺繍が施されたリボンを解いてから、ベットにドサッと倒れ込んだ。
そしてそのリボンを眺めながらこれを贈ってくれた主人の姿を思い浮かべ、汗ばんでしっとりと熱い胸を自らの手で激しく揉んだ。
(レオン様・・・レオン様・・・)
しかし自ら予測できるその刺激は、ジェイドの手により強引に齎されたそれと比べると全く物足りず、それと同時にジェイドに触られてしまった屈辱が蘇り、涙が溢れてきた。
(悔しい・・・!悔しい・・・!!
ファルガー様はかつての私が望んだ相手だからいい・・・。
でもレオン様より先にあんな男に触られるなんて・・・!
ごめんなさい・・・ごめんなさいレオン様・・・
でもあぁ、この手がレオン様のものだと思うとそれだけで私は・・・)
モニカは再びレオンの姿を思い浮かべながら胸を揉み、そして乳首を摘んだ。
更にはもう片方の手をショーツに差し込み、既にぬるぬるに濡れそぼった花園に指を潜らせて濡らしてから、物欲しげに尖った小さな蕾にその濡れた指先を運び、ずっと欲しくてたまらなかった刺激を与えてやった。
「ひあっ・・・♥
あっあぁん♥あっあっ♡
ふあっあっんっあっああっ♥
あぁーーーーーっ♥♡♥」
少し弄っただけなのに、ビクンビクンと全身が痙攣してあっという間に達してしまう。
それでも全然満たされることはなく、もっと体の奥深くに熱く滾る剣を沈め、何度も何度も擦らないとこの疼きは治まらないと感じた。
(ですがそれは私一人ではどうしようもないことです・・・。
レオン様がランニングから帰ってきたら、思い切って抱いてほしいとせがんでみる?
今なら破瓜の血が出ないことも、処女とは思えないくらいに酷く感じてしまうことも、全て媚薬の所為にして、処女でないことがバレずに済むかもしれない・・・。
だけど駄目・・・。
それはレオン様に対してあまりに不誠実です・・・。
それにそんな結ばれ方をすれば、私も媚薬の効果が抜けた時に激しく後悔するでしょうし、レオン様も大切な初体験をこのような形で迎えることは、きっと望まれていない筈です・・・。
やはりここはどうにか一人で慰めつつ、薬が抜けるのを待つしかないでしょう・・・)
モニカがそう思って自らの中指を熱く昂る鞘に沈めようとしたその時である。
─コンコン─
モニカの部屋をノックする音がした。
(レオン様が帰って来られた・・・!)
モニカはハッとして股間に運んでいた手を引っ込めた。
「モニカ・・・僕だ。
今戻った。
さっき階段の下で、今日のお茶会で君と一緒だったという白髪ショートヘアのフリーメイドに、君がお茶会で具合を悪くしたと訊いたが・・・大丈夫か・・・?」
扉越しに愛しい彼の声が聴こえてくる。
モニカはすぐに部屋の扉を開けて彼の胸元に飛び込み、自分から口づけをして、
「レオン様、今すぐ私を抱いて下さい・・・」
と迫ってしまいたくなった。
だが、もはやベットから起き上がれる気力はなく、同時にまだかろうじて残っている理性が、それは絶対に駄目だと警告を鳴らしている。
モニカはベットに身体を横たえたままでこう答えた。
「す、すみませんレオン様・・・
私・・・熱があるみたいで・・・
はあっ、はあっ・・・
今日は・・・レオン様のお世話を・・はあっ・・出来そうも、ありません・・・・・」
「そうか・・・熱が・・・・・。
仕事のことなら気にしなくていい。
僕がランニングに出るまでは元気そうに見えたが・・・無理をさせていたのか・・・?
気がつかなくて悪かった・・・。
モニカ・・・。
部屋に入ってもいいか・・・?
僕でも濡れタオルを変えてやるくらいは出来るから・・・。」
レオンが階段の下で会ったフリーメイドというのはおそらくリディアのことだろうが、彼女はモニカが自力でジェイドの部屋から逃げ出してきたということもあり、モニカに配慮して媚薬のことまではレオンに話さなかったのだろう。
レオンは媚薬が原因だとは知らない様子で、モニカの体調を酷く心配しているようだった。
「だ、駄目です・・・!
入って来ては・・・
そ、その・・・・移してしまうかもしれませんし・・・」
「・・・では医者を呼んでくるから待っていてくれ。」
「駄目っ!!
お、お医者様は呼ばなくて大丈夫・・・です・・・・・
こんな状態を・・・お医者様とはいえ・・男性にっ・・見られるわけには・・・
はあっ、はあっ・・・
しばらく横になっていればっ・・・治りますから・・・」
「こんな状態・・・?
・・・君が今どんな状態なのか見ていない僕にはよくわからないが・・・とても苦しそうだし放っておけないよ・・・・・。
モニカ・・・頼む。
部屋に入らせてくれないか・・・?」
という言葉の後に、扉に手をかけられた気配を感じた。
「っ・・・駄目っ・・・!!」
モニカは取り乱し、叫ぶように声を上げた。
それに対するレオンの返事は無く、少ししてからレオンの部屋の方で歩く音がし、更に数秒後にパタンと扉が閉まる音が聞こえた。
(・・・・・あぁ・・・・・
・・・怒らせて、部屋を出て行かれた・・・。
ごめんなさいレオン様・・・・・。
でも今貴方の顔を見たら、私は全力で貴方を求めるただのメスになってしまいそうだから・・・・・
あぁ・・・レオン様・・・
今から私のナカに入るモノが、貴方の剣だと思うことを、どうかお許しください・・・・)
そうしてモニカの熱くトロトロになったナカに、2本の指がクププ・・・と沈められた。
媚薬の効果でモニカの秘部はたっぷりと濡れていたので、全く抵抗無くそれを受け入れることが出来た。
モニカは唇を噛み、もう辛抱堪らないといきなり激しく抽挿した。
「あ゛っ・・・くうっ・・・ふうっ・・・ふうっ・・・」
(ああっ・・・指では全然駄目・・・!
指では届かない身体のもっと奥の奥にレオン様の熱く硬い剣を誘って、レオン様の感じてくださるお顔を見ながら何度も何度もいいところに擦り付けたい・・・・・!!)
モニカがそう思いながら物足りない刺激を埋めるかのように、更にもう一本指を増やそうとしたその時である。
ガチャッとレオンの部屋の扉が開けられた音がし、2人分の足音がこちらに向かって近付いて来る音が聞こえた。
(レオン様・・・お医者様を呼んで来られたのでしょうか!?)
モニカは自分のナカに入っていた2本の指を抜くと、緊張して自分の部屋の扉を見つめながら息を呑んだ。
すると、
「モニカさん、私・・・アンジェリカよ?
レオンハルトから貴方のことを聞いて、何となく貴方の状態に察しがついたから来たの・・・。
部屋に入ってもいいかしら?
レオンハルトには自分の部屋で待機していてもらうから・・・」
(アンジェリカ様?
どうしましょう・・・。
本当は女性相手にもこんな姿を見せたくない・・・。
でも私の状態に察しがついたということは、もしかしてアンジェリカ様も媚薬を盛られた経験がおありなのかもしれない・・・。
・・・それならもしかして、この苦しみから抜けられる方法もご存知かも・・・)
モニカは意を決して頷くと、扉の向こうのアンジェリカに向けてこう答えた。
「はい・・・どうぞ・・・」
アンジェリカは、
「ありがとう、モニカさん。」
と言うと、モニカの部屋に入って来た。
モニカは荒く熱い息をつきながらも、目上の彼女に対して失礼のないようにと無理してベットから起き上がろうとした。
しかしアンジェリカがそれを制して頭を振った。
「そのままでいいわ。
とても辛いでしょう?
貴方のその様子だと、やはりお茶会で媚薬を盛られたのね・・・。
誰にやられたかわかる?」
モニカは答えた。
「ジェイド様です・・・。
ジェイド様に標的にされた・・フリーメイドの子を・・・助けたくてっ・・お茶会に参加したのですが・・・
彼女を助けたければっ・・はあっ、はあっ・・媚薬入りの紅茶を・・・飲むようにと・・ジェイド様に・・言われて・・・
鞭があった・・お蔭でっ・・・犯される前・・に・・ジェイド様の・お部屋からっ・・・逃げ出してくる・・ことは・・・出来たのですが・・・・・」
それに対してアンジェリカは返した。
「・・・まずは貴方が無事に逃げ出せて本当に良かったわ・・・。
だけど、媚薬を使ったのがジェイドというのは厄介かもしれない・・・。
メイドの誰かに盛られた媚薬なら、私の持っている薬で何とか出来ると思ったけど、ジェイドがもし昔私が使われたことのあるのと同じ黒蛇の媚薬を使ったのだとしたら、これは意味をなさないわ・・・」
と言ってポーチから取り出していた一般的な解毒薬の入った小瓶を見てため息をつくアンジェリカ。
「はあっ、はあっ・・・黒蛇・・・。
ジェイド様も・・その薬師のものだと・・・仰って・・いました・・・」
とモニカ。
「やはりそう・・・。
私は昔、ダズルに黒蛇の媚薬を使われたことがあるの。
黒蛇の薬はその持続時間も効果の出方も通常のものの比じゃないし、とてもじゃないけど貴方一人でやり過ごせるものじゃないわ。
その媚薬の症状から開放されるには、同じ黒蛇が作った解毒薬を使う、あるいは身体が求めるままの行動・・・つまりはセックスをして発散させるかのどちらかしない・・・。
私の時は解毒薬が用意されて無かったから、後者を選択するしかなかったけど・・・策略家のジェイドなら解毒薬も同時に用意しているんじゃないかしら・・・」
と、アンジェリカは一通り説明を終えてからこう言った。
「モニカさん。
レオンハルトに今の貴方のこの状態を見せてもいいかしら?
貴方はあの子の専属メイドよ。
あの子には貴方がされたことを正しく知る権利、そして貴方に対する様々なトラブルを解決する責任があるわ。
それを知った上でどうするのかは、あの子が決めること・・・。
いいかしら・・・・・?」
モニカはアンジェリカの説明で、黒蛇の薬が自分の想像よりもずっと強力であり、今の状態をレオンに見られずして解決出来るものではないこと、そしてこの場にアンジェリカがいてくれるのなら、レオンを求める言葉を自制できると思い、少し悩んでからコクンと頷いた。
アンジェリカはモニカにゆっくりと頷き返すと、
「レオンハルト。
中に入って来なさい。。」
と扉の外に向かって呼びかけた。
レオンはモニカが心配で気が気でなかったのか、モニカの部屋の扉の前でずっとウロウロしていたようで、アンジェリカの呼びかけに反応してすぐに扉が開けられ、金の髪を靡かせながら急ぎ足で中に入って来た。
レオンはベットに横たわるモニカの火照った顔、そして荒く忙しない呼吸、更には乱れて汗ばんだ栗色の髪と潤んだ瞳、そして掛け布団に隠れていて全ては見えないが、胸のボタンが外された制服のブラウス、極めつけに部屋の中に立ち込めたいつもの彼女の甘く爽やかな桃の香りの奥に加わった女特有の蜜の匂い・・・それら全ての情報と、自分を含めた男性に見られることを嫌がったモニカの様子とが繋がって、モニカの身に起こっていることに気が付いた。
「モニカ・・・・・
もしかして・・・・・媚薬を盛られたのか・・・・・!?」
アンジェリカは苦しくてすぐに返事が出来ないモニカに代わって息子の言葉に重く頷くと、モニカの状況についての説明を始めた。
「えぇ・・・。
しかも飛び切り強力なやつをね。
幸いにもモニカさんは自力でこの薬を盛った主の元から逃げ出して来たから、犯されずに済んだそうよ。」
アンジェリカのその言葉に同意してモニカがはぁ、はぁと荒い息をつきながらも頷くと、レオンは心より安堵したのか、強張っていた表情を少し緩め、ホッとため息をついた。
「だけどこの媚薬は、求められる刺激が得られない限り、なかなか身体から抜けてはくれない相当苦しいものよ・・・。
この状態を直すには、モニカさんの気の済むまで欲しい刺激を与えてあげるか、この薬を作った人の解毒薬を飲むかのどちらかしかないの・・・。
この薬を盛った彼のことだから、媚薬と合わせて解毒薬も用意しているでしょうけど・・・。」
「・・・そのモニカに媚薬を盛った奴は、一体誰なんだ・・・?」
と、レオンはモニカとアンジェリカに尋ねた。
「・・・ジェイドだそうよ。」
「あのクソ野郎!!!」
レオンは拳を握り締め、いつもは穏やかな目を鋭く尖らせると、短くそう吐き捨ててから踵を返し、モニカの部屋を出ていこうとした。
その背中に向かってアンジェリカが声をかけた。
「待ちなさいレオンハルト!
彼から解毒薬を貰うには、それなりの対価を要求されると思うわよ・・・。
悔しいけれど、貴方では交渉事において彼には勝てない・・・。
その覚悟は出来ているの?」
「・・・モニカが助けられるのならなんだって飲んでやるさ・・・。
だが、その前にあの野郎を数発殴ってやらないと気が済まない・・・!!!」
モニカはそう言って部屋を出ていくレオンの背中を、荒い息をつきながら心配そうに見送るのだった。
一方その頃、ジェイドは一人になった部屋で装飾が美しいマホガニーの椅子に腰掛けて紅茶を飲んでいた。
(あーあ・・・。
モニカちゃんに逃げられちゃったなぁ・・・。
あの美しく極上の触り心地のおっぱい・・・思い出しただけでも勃起してしまうよ・・・♡
本当はナカも味わってみたかったけど、仕方無いから今夜は他の子で発散するか・・・。
それにしてもあの媚薬、とても自力で治められるものじゃないと彼女が言っていたからね。
今頃鍛錬から戻ってきたレオくんが、モニカちゃんにせがまれるまま男の証を立てているか、もしくは僕のところまで解毒薬を貰いに来るかのそのどちらかだろう・・・。
まぁ後者の場合でも、ただで解毒薬を渡すつもりはないし、どちらにしても僕にとって悪くない結果になる・・・)
そう思いながら彼が長い脚を組み直してまた一口紅茶を口に運んだところで、乱暴にドアが開け放たれ、怒りに満ち溢れた鬼の形相のレオンが挨拶もなしにズカズカと部屋に入って来た。
そしていきなりバキッ!!と腹違いの兄である彼の左頬を殴ったのだ!
ジェイドは口の中を切り、その血が宙を舞って、先程とは反対の右側からもう一発殴って来ていたレオンの服の袖に付いた。
そしてそのまま拳は右頬に到着してめり込み、ジェイドは3m程左後ろへと飛ばされ、尻餅をついた。
「アガッ・・・!!!
・・・・・い、いきなり殴るなんて、酷いなぁレオくん・・・。
僕の美しい顔が台無しじゃないか・・・」
とジェイドは両頬を押さえながら抗議の声を上げた。
「ジェイド兄さん、あんたはそれだけのことをモニカにしただろう!?
あんたが半分でも血の繋がった兄でなければ、剣を抜いて首をはねていたところだ!
・・・クソッ・・・!
本当はもっと殴ってやりたいが、非力なジェイド兄さんにはこれでも相当訊いたようだし、これ以上殴って意識を失われては困るから、これくらいにしておいてやる・・・。
モニカの状態を解除できる解毒薬・・・持っているんだろう?
さっさとそいつを寄越せ!」
と強い口調でジェイドに迫るレオン。
「解毒薬ねぇ・・・。
まぁこんなこともあろうかと準備してはあるけどさぁ・・・レオくんも馬鹿だねぇ。
あそこまでお膳立てされたモニカちゃんが目の前にいるんだよ?
解毒薬なんていいから、素直に盛って男の証を立てちゃえばいいのにさ。
まぁレオくんが淫らなモニカちゃんを目にして、肝心なところで萎えなければの話だけど。」
「・・・それはどういう意味だ!?」
(うーん・・・
ファルガー・ニゲルと協力関係を結ぶこともあるし、モニカちゃんとはまだ良好な関係でいたいからねぇ・・・。
彼女が非処女であることは、まだ内緒にしておいてあげるかな・・・)
ジェイドは顎に手を当ててそう考えてから、ニコッと微笑みこう答えた。
「いや、レオくんって前に僕が用意したような経験豊富な女じゃなくて、初々しい反応をしてくれる処女が好きなんでしょ?
今のモニカちゃんって薬が効いちゃってるから欲望に素直だし、レオくん好みの初々しい反応は期待出来ないだろうから、レオくん萎えちゃうかなぁと思ってさ。」
「・・・モニカは僕にとって特別だ・・・。
あんたのお下がり女達と一緒にするな・・・。
それに、あんたの盛った薬の所為で狂わされている今のモニカを抱く気はない・・・。
いいから早く解毒薬を出せ・・・!」
「・・・僕がただで渡すと思うかい?」
そう言って挑発的に微笑むジェイド。
「何だと?
もう数発、その自慢の顔面に喰らわされたいのか!?」
と拳を再び握り込むレオン。
「また力で脅そうって?
やだなぁレオくん・・・。
君も言ったじゃない。
これ以上殴れば僕が意識を手放すかもしれないってさ。
いいの?
そしたら僕の意識が戻るまで、モニカちゃんはずっと苦しいままだよ?」
レオンはジェイドの言うことは最もだと、ギリッと歯を食いしばり俯いた。
「・・・交換条件を出そう。
年末に開かれる社交パーティ。
あれにレオくんが出てくれるなら、解毒薬を渡してあげるよ。」
とジェイド。
「社交パーティ?」
「そう。
宮廷にいないナイト家達や、分家の貴族達が大勢集まる1年で1番大きな集まりだよ。
レオくん、ずっとそういう機会を避けてきたよね?
だけど君も来年は成人して騎士としてお披露目されるんだし、そろそろそういう場にも出ておかないと。
レオくんと釣り合いの取れる身分の令嬢も何人か紹介するよ?」
「・・・令嬢の紹介はいらない。
だが、そのパーティに出ると約束をすれば、解毒薬をくれるんだな?」
「うん、約束するよ。」
レオンは少し考えてから、ゆっくりとその首を縦に振った。
ジェイドは満足気に微笑むと、絨毯に手をついて立ち上がり、鍵のかかった棚の鍵を開け、そこから小さな小瓶を取り出してレオンに手渡した。
「はい、解毒薬。
その代わり、パーティはよろしくね?」
「・・・わかった。」
レオンはそうしてジェイドから黒いウロボロスのラベルが付いた解毒薬を手に入れたのだった。
解毒薬を手に入れたレオンは、自室へと急いで戻り、モニカの部屋へと続く扉へ手をかけようとした。
するとその扉が開いて、アンジェリカが中から出て来た。
彼女はモニカの部屋の扉を閉めると、真剣な表情で息子に尋ねた。
「解毒薬は手に入ったの?」
「あぁ。
その代わり、年末の社交パーティに出ることになった・・・。
モニカの様子は?」
「ついには理性のタガが外れて、今はうわ言のように貴方を求めてるわ・・・。
正直に言うと、今のモニカさんは貴方には目の毒かもしれない・・・。
貴方が手に入れてきたその解毒薬も、身体を起こして本人に飲ませるのは難しいでしょうし、口移しするしかないわ・・・。
私としては、貴方達にはこんな形ではなく、お互いが納得出来るタイミングで結ばれて欲しいけれど、今のモニカさんにせがまれても、貴方は流されずに済むのかしら・・・?
どうするのかは貴方の判断に委ねるけど・・・ダズルと同じことをしてモニカさんを手に入れても、私とダズルのように貴方とモニカさんの間にも一生埋まらない溝が出来てしまうでしょう・・・。
それでもいいのか、良く考えて行動してみて・・・。」
アンジェリカはそれだけ言うと、レオンの部屋から出て行った。
レオンはモニカの部屋の扉の前で少しの間考えると、自分のベッドの方へと引き返した。
そしてベットサイドテーブルの引き出しを開けて、一つの指輪を取り出した。
それはレオンが13歳で精通してから父に渡された男の証を立てるための魔石がついた指輪であり、童貞でなくなるまでの間、女性と性行為に及ぶ可能性がある際には必ず身につけるようにと命じられているものだ。
その指輪には魔獣バイコーンから採取できる特殊な魔石がついており、今はオパールのように白く煌めいているが、身につけている者が童貞でなくなると、オニキスのように黒く染まるのだという。
(媚薬に狂わされたモニカで証を立てるつもりはない・・・。
だが、もし僕が我慢出来ずに最後までしてしまったときに、これは考えたくもないことだが・・・モニカとの次があるかはわからない・・・・・。
最悪我に返ったモニカが酷く後悔して、ジャポネに帰ると言い出すかもしれないんだ・・・。
だからこれは、念の為につけておく・・・。
だが、あくまで念の為だ・・・。
僕はモニカと、母様とあの父みたいに、一生埋まらない溝のある関係にはなりたくないからな・・・)
レオンがそう思いながら左手の薬指にその指輪をはめていると、
「レオン様・・・何処・・・?
レオン様・・・!」
とモニカの部屋から彼女が自分を呼ぶ声がした。
「モニカ・・・!
今行く!」
レオンは解毒薬の小瓶を手にしてモニカの部屋の扉を開けた。
モニカは、レオンがジェイドの部屋に向かう前よりも更に忙しなく息をついており、豊かで白く美しい胸が露わになった状態で、レオンに向かって手を伸ばしてきた。
「っ・・・!!」
レオンはずっと見てみたかったモニカの胸に、ドックン!!と血が沸騰しそうなほど強く鼓動が跳ね上がるのを感じ、目が釘付けになった。
モニカはレオンの手をギュッと掴むと、
「レオン様・・・はあっ、はあっ
・・・私の胸に・・・触って・・・」
と甘い声で誘った。
「モニカ・・・
君の胸、想像してたよりもずっと綺麗だし・・・正直言うと今すぐ触れたいよ・・・。
だけど触ってしまったら僕は止まれなくなりそうだから、やっぱり今は駄目だ・・・」
そう言ってその美しい胸から目を逸らす。
「やっ・・・触って・・・お願い・・・
上書き・・・したいんです・・・」
レオンはその言葉にハッとして険しい顔でモニカに視線を戻した。
「まさか・・・ジェイド兄さんに触られたのか!?」
モニカはポロポロと涙を零しながら頷いた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさ・・・」
モニカが最後まで言い終わらないうちにレオンはその唇を自らの唇で塞いだ。
そして、モニカの白く美しい胸に手を伸ばした。
モニカは大好きな彼に胸を触れられている・・・その事実だけで、ジェイドに触れられた時の比ではないくらいに感じて、身体中にピリピリと電撃が走ったような感覚を覚えた。
レオンはその極上の感触を両手のひらに刻みつけながら、そっと唇を離し、彼女を見つめながら囁いた。
「君が謝ることはない・・・。
いや・・・お茶会が奴の部屋で開催されることを僕に伏せていたことに関しては思うところがあるよ・・・。
それに、僕よりも先にこの胸に触れた奴には、それ相当の制裁を追加でくれてやらないと気が済まない・・・。
だが、それは全部後にする・・・。
今は君の胸の感触を堪能するほうが大事だ・・・」
「ひあぁっ♥
あっ・・・あっ・・・♥
レオン様ぁ・・・・・♡♥」
「っ・・・モニカ・・・」
レオンはガチガチに勃起した股間を掛け布団越しにモニカの太もも辺りに押し付けながら、更に胸を揉み続けた。
モニカはそれを掛け布団越しにしっかりと感じ取り、彼が自分の身体で強く反応してくれるのが嬉しくて、栗色の瞳を涙で潤ませた。
「・・・!?
す、すまない・・・。
強くし過ぎたか・・・?」
レオンはモニカの涙に潤んだ瞳に気が付き、慌てて胸から手を離した。
するとモニカが頭を振りながらその手を掴んだ。
「やっ!・・・やめないで・・・
もっとして・・・レオン様・・・」
「・・・・・わかった・・・・・」
レオンはそう言って頷くと、再びモニカの胸を揉み始めた。
「あぁ・・・僕のモニカ・・・
すべすべふわふわで気持ちいい・・・」
「あっ・・・あんっ♥・・・んっ・・・あっ♡♥」
モニカの胸の谷間に顔を埋めて頬ずりをし、乳首を摘むレオン。
「レオン様ぁ・・・ああっ♥♡♥」
「っ・・・モニカ・・・奴に触られたのは胸だけか・・・?」
「は、はい・・・」
モニカはコクンと頷いた。
「そうか・・・良かった。
もし君の特別な所も・・・なんて言われたら、半分でも血の繋がった兄を逆上して殺していたかもしれないし、上書きする為にとそこに触れたら、僕の理性なんて跡形もなく何処かへ飛んで行って、引き返せなくなっていただろうからね・・・。
まぁ、胸だけでも相当やばいけど・・・・・」
レオンはそう言って苦笑してから解毒薬の蓋を開けると、それを一気に口に含んだ。
そしてモニカに唇を重ねると、ゆっくりと口を開いていきながら口の中の液体を彼女に流し込んでいった。
コクン・・・コクン・・・とモニカが小さく喉を鳴らしながらそれを飲み込んでいく。
溢れてしまった液体がモニカの顎をツー・・・と伝って汗ばむ首筋へと消えていった。
レオンは口の中の液体を全て彼女に流し込んだ後も、彼女から唇を離すことなく、彼女の口内へ舌を割り入れてその柔らかな舌を何度も絡め取った。
そうしながらも彼女の胸を揉み続け、時折乳首も摘む。
そしてこの上ないくらいに硬く熱くなった股間のものを掛け布団越しの彼女の太ももに何度も擦りつけた。
「ふっ・・・んっ・・・♥
うっ・・・んっ・・・・・・」
モニカは唇の隙間から時々喘ぎを漏らしていたが、徐々に反応が無くなり、やがてくたっとして動かなくなった。
レオンははっとしてモニカから唇、そして胸に当てた手を離し、彼女の呼吸を確認した。
スーッ、スーッ・・・
解毒薬の効果だろうか。
モニカは軽やかな寝息を立てながら寝てしまったようだ。
レオンはホッと小さくため息を付くと、呼吸に合わせてゆっくりと動くモニカの艶かしくも美しい胸を見て頬を赤らめた後、そっとそれを隠すように掛け布団を被せてやった。
そしてギンギンに熱り勃ったままの自らの股間を恨めしそうに睨むと、
(モニカ・・・すまない。
やっぱりもう少しだけ見せてくれ・・・)
と心の中で断ってから掛け布団をそっと剥がした。
そしてボトムスをずらし、元気に主張する完全状態に勃起したきかん坊をビキニから取り出すと、モニカの美しい胸を見つめながら自らを慰め始めた。
声を出すとモニカが起きてしまうかもしれないと、出来るだけ声を殺した。
レオンはあまり昇り詰めるまで早い方ではなかったが、先程までのモニカとの行為、手と舌に残る彼女の感触、そして軽やかに寝息を立てるモニカのすぐ側で自慰行為を行うという背徳的なシチュエーションに堪らず、あっという間に快楽の頂点まで昇り詰めていった。
「っ・・・はっ・・・
くっ・・・はっあっ、はっはっはあっ・・・
モニカ・・・・・好き・・・好きだ・・・・・
・・・・・・・・・っくっ!」
レオンは肉の剣を脈打たせ、モニカの胸に白く熱い欲望の塊を沢山吐き出した。
レオンがモニカの美しい胸が彼の白濁液により穢されたところを満足気に眺めていると、モニカがピクッと動いた。
レオンはギョッ!としたが、モニカはまだ寝ているようだったのでホッとして、アンジェリカが彼女の汗を拭うために用意したのであろう濡れタオルで胸元の精液を拭き取り、ついでに自分の股間の先端についた同じ液体も拭き取った。
そしてサイドテーブルに置いてあった水の入った洗面器にそれを浸し、ボトムスを引き上げた。
そしてモニカに再び掛け布団を掛けてやると、そっと彼女の手を取り、ベットに顔を預けて目を閉じるのだった。
─リンゴーン、リンゴーン─
町の教会で鳴り響く鐘の音をうっすらと遠くに聞きながら、モニカは目を覚ました。
窓から見える景色はすっかり暗くなっており、モニカが横たわるベットの腰のあたりには、彼女の愛しの主人が頭を預けて気持ちよさそうに寝息を立てていた。
サイドテーブルには水とタオルの入った洗面器、ベットの上には殻になった解毒薬の小瓶が転がっていた。
(今の時間は・・・)
先程の鐘の回数から大体想像はついていたが、暗い部屋の中目を凝らして壁掛け時計を見ると、時刻は18時を指し示していた。
(まぁ大変!
お夕食の配膳が始まってしまいますわ!)
モニカは慌てて起き上がり、ベットから下りようとするが、身体がだるくてベットの上で上半身を起こすだけで精一杯だった。
(媚薬の効果は抜けたのか、気分も楽になり頭も普通に働きますが、媚薬の後遺症なのか、まだ身体が思うように動かないようです・・・。
でもどうしましょう。
レオン様とアンジェリカ様のお夕食・・・)
モニカは自分のベットに頭を預けて寝ている主人の肩にそっと手を置き、軽く揺さぶった。
「レオン様・・・レオン様・・・」
モニカの声と揺さぶりに反応して、レオンは薄っすらと目を開けて顔を上げた。
「モニカ・・・。
目が覚めたんだね・・・!
良かった・・・・・!
もう身体を起こしても大丈夫なのか?」
とレオン。
「えぇ、気分も楽になり、意識もはっきりしています。
ただ、まだ思うように身体に力が入らず、立ち上がるのは無理そうですが・・・。
レオン様が解毒薬を飲ませてくださったのですよね?」
脇に転がっていた殻の小瓶を手に取りそう尋ねるモニカ。
「あぁ、うん・・・・・。」
レオンはその時の光景を思い出したのか、顔を赤く染めて髪をかきあげたあと、ハッとして声を上げた。
「というかその口ぶりからして君、解毒薬を飲んだときのことを覚えていないのか!?」
「えっ、ええ・・・・・」
本当はうっすらとだが、彼に胸を揉まれながら口移しで薬を飲ませてもらい、薬を飲み込んだ後に舌を何度も絡み取られたことを覚えていた。
だがそれを伝えてしまえば、自分達の関係性において、その行為をすることが当たり前になってしまうだろう。
そうなれば、すぐにあの秘密を打ち明けなければならなくなる。
モニカはそれが怖くて、覚えていないと嘘をついたのだ。
(ジェイド様もファルガー様と協力関係を結ぶことに対して乗り気でした。
だとしたら、私が処女でないことはまだ秘密にしてくれる筈・・・)
そうとは知らないレオンは、
『クソッ!
それならもっと一杯揉んでおけば良かった!
でもあれ以上長く揉んでいたら、僕も止まらなくなっていただろうし・・・』
と小声で呟き、頭を抱えていた。
モニカにはそれら全ては聞き取れなかったが、何となく何を呟いているのかは理解できたため、
(本当に、愛らしいお方・・・!)
と思ってクスッと微笑んだ。
「それはそうとレオン様。
もう夕食の時間なのですが、私はまだお料理を出来るほどは回復してはいませんし、一階の調理場までレオン様とアンジェリカ様のお夕食を配膳しに行くのも無理そうなのです・・・。」
そこまで言って、モニカはリディアが去り際に言っていた、
「もし助けが必要なときは、私今日は遅番で20時までは宮廷にいますので、いつでもお呼びください。」
という言葉を思い出し、
(ありがとうございますリディアさん。
お言葉に甘えさせていただきますわ・・・)
と頭の中でリディアに感謝してからこう続けた。
「そこで、フリーメイドのリディアさん・・・
彼女は信頼がおけますので、彼女に今日だけ配膳をお願いしに行って貰えますか?
多分一階の調理場辺りにいらっしゃる筈なので・・・」
レオンは頷いた。
「わかった。
階段の下で会った白髪ショートヘアのあの子だな。
下に降りたついでに君の分も何か用意してもらえないか料理長に聞いてみるよ。
リゾットなら食べられそうか?」
「はい、恐れ入ります。
あ、その前にお召替えだけお願いします。
ランニングウェアのままですし、服に血がついておりますから・・・。
・・・この血は、レオン様のものでは無いですよね?」
「あぁ、これはジェイド兄さんを殴ったときについたものだな・・・。」
と嫌なものを思い出したのかのように眉を寄せて答えるレオン。
「まぁ!
ジェイド様を殴られたのですか!?」
「君に媚薬を盛って犯そうとしたんだからこれくらい当然だろう?
まぁジェイド兄さんのことだから、治癒力を高める回復ポーションくらいは持ってるだろうし、明日には元通りのキザったらしい顔に戻っていそうだけどな・・・。
それならもう二度とそんな気を起こさないように、骨の2~3本くらい折ってやれば良かったか?」
レオンはそんなことをブツブツ言いながら、忌々しげにその血痕を睨んでいる。
「ふふっ、ではそのランニングウェア、脱いだら水に浸しておいてくださいますか?
私が動けるようになりましたら、綺麗に血抜きして差し上げますから。」
とモニカ。
「いや、他にも何枚か同じようなのを持っているし、最近背が伸びて少しきつくなっていたから、もうこれは捨てるよ。
それじゃ、すぐに着替えて一階に行ってくる。
あ、ついでだからこの洗面器も片付けておくかな・・・」
そう言ってレオンは頬を染め苦笑いをすると、洗面器を持って部屋を出て行った。
(・・・?
洗面器くらい私が後で片付けますのに。
何か恥ずかしいものでも隠したいかのような態度でしたね・・・。
まぁレオン様もお年頃ですから何となく察しはつきますが、追求しないでいてあげましょうか・・・。
ですが、レオン様のランニングウェア・・・処分してもいいということでしたら、後で血痕のついた部分を切り取って、ファルガー様に提出させていただきましょう。
これで全ての検体が揃いました。
検査せずともおそらくはジェイド様のお話の通りなのでしょうが、念の為に天界のほうできちんと調べて貰ったほうが良いでしょう。
この検査の結果が、何かの役に立つかもしれませんし・・・。
それから、ファルガー様にジェイド様との協力関係のことについてもお話しておかねばなりませんね。
3日後の待ち合わせの場所も、こちらの動向をジェイド様に監視されてる可能性を踏まえた上で、検討し直したほうが良いかもしれませんし・・・。
ですがそれらは全て明日にして、レオン様が戻られるまでは休ませて貰いましょう・・・。
今日は本当に大変な目に遭いました・・・。
でも最後には、レオン様が全部幸せな気持ちへと変えてくれましたわ・・・。
あぁ、私のレオン様・・・・・)
そうしてモニカはそっと目を閉じ、願うのだった。
この幸せな彼との時間が、少しでも長く続きますようにと─。
-------------------------------------------------------------------------------------
❖ご挨拶❖
2024年の年賀状です。
本年も『銀色狼と空駒鳥のつがい』シリーズをよろしくお願いいたします。
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