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番外編 バーガンディの日常Ⅱ
アデルとグラナダ 第三子との道
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フエェ…ン フェェ…ン
「よしよしミルドレッド、今日も元気な良い子だね。いっぱい泣いていっぱいミルク飲むんだよ」
ミルドレッドはアベニアやグレンと違い乳母には任せておけない繊細な子だ。
とにかく僕じゃないと泣き止まないのだ。乳母も、トマスさんも、泣かせておけばいいって言うけど、泣き叫ばれるとやっぱり気になる。
だけどこのまま僕だけにしか懐かないのも困りものだ。
カマーフィールドのお母様は言った。「アデル、貴方もその昔こうだったわ。わたくしが歌うと泣き止んだものよ」
そしてお父様は言った。「私の姿が見えないといつも泣いていたよ、愛らしい赤子だった。歌ってやるとすぐに泣き止んでおった」
トールキンお兄様も言った。「部屋に一人置き去りにされるといつも泣き叫んでいたね、だが私が歌ってやるとすぐに泣き止んだのだよ」
歌…歌か…僕は聞くほう専門だからなぁ…うん、よし!
「そういう事なので、グラナダ様歌ってください。」
「…なにがそういう事なのかわからないが…トールキン殿も言っておったな。しかし歌ならば歌劇団員を呼べばよかろう、合唱団でも良い。何故私なのだ。」
「当たり前でしょう?父親はグラナダ様だけなんだから。グラナダ様が歌わなくて誰が歌うんですか。いいからほら、ちょっと歌ってみてください」
「アデル…その良い笑顔はなんだ。鼻息も荒い!全く仕方のない奴だ。」
下心を看破されてしまった…。
だけど本当にそれだけじゃない。
ミルドレッドにはうっかりアデルを投影してしまった…。大柄で厳ついグラナダ様を見ると泣くのだ、こう、毎回…。
同じように背が高くてもひょろっとしてる上に温和なカマーフィールド勢と違ってグラナダ様は全体的にこう…瘴気も威圧も今はコントロール出来てるのにベースがすでに漢っぽいのだ。
まぁそこがいいんだけど。
鍛えぬかれた身体はムキムキまではさせてないのに逞しくて、眼光鋭いその視線はキリっとして威厳があって、尊大な態度も…だって実際偉いんだからしょうがない。
むしろあの感じが実に良い。こう周りに媚びず己を貫くその感じがたまらない。グラナダ様は尊大だからって横柄なわけじゃないし、自分自身にはすごくストイックで…はぁはぁ♡…額に汗をにじませ剣を握るその姿ときたら何年たっても超絶セクシーで…あー!最近討伐姿を見ていない!今度無理やりついて行って…あ、あれおかしいな、脱線した。
そんな訳だからミルドレッドにも一日も早く、グラナダ様がどれほど愛情深いお父さんか分かってほしいんだ。
「分かった…分かったから落ち着けアデル。何故先ほどから、そうも鼻息が荒いのだ。」
「いえちょっと、いろいろと思い出したら興奮して…ごちそうさまです」
「ごち…、なにを思い出していたかは想像がついた。まぁよい、だが私は歌など歌ったことは無いぞ」
こうしてグラナダ様の歌唱訓練が始まったのだ。
この世界にもともとある歌とは基本主となるメロディーの事を指す。
だから合唱団のきっかけともいえるルミエの誕生記念で披露した高中低の三部合唱、ハーモニーの美しさがあれほどみんなを感動させたんだ。
でも今回はグラナダ様のソロになる。ならばメロディーラインがすでに完成された美しいバラードを…。ああ、何を歌ってもらおうか…。
でもその前にウォーミングアップは必要だよね。
「えー、まずはじゃぁ…あっ、そうだ、僕が歌ったあとから真似してくださいね。」
課題曲は森のベアーさん。輪唱なら覚えるのも簡単だ。
か、かっわいい!僕の後から戸惑いながら歌うグラナダ様…ギャップ萌え…いい…
「はぁはぁ…ちょっと休憩、む、胸が…」
「大丈夫かアデルよ。無理はせずもうやめた方が」「いいえっ!」
「何言ってんですか!これはミルドレッドの為ですよ!それにしても思った通りの美声で息の根が止まりそうです…。」
「死んではならぬぞアデルよ」
「グラナダ様の美声で瞬時に復活するので大丈夫です。いやぁー、こんな形で悲願が達成出来るとは…。棚からぼたもちってこういう事を言うんですね」
「お前の話はいつも難解だ。だが幸せそうでなによりだ。」
「ゴクリ…じ、じゃぁ次はもう少し難しい曲を…」
下心を満載にして僕は…JJFの曲を…グラナダ様に伝授した。
あれから何年もたっているっていうのに覚えているもんだなぁ…。
骨格が似ていると声帯、声質も近いと聞いたことがある。普段の声も似てるんだから歌声だって…ムハー!
現代人にも難解だったあのメロディーを口伝するのは簡単じゃないけど、こうなってくるとどうしてもフルで聞きたい…。これはワガママなんかじゃないはずだ!
それにしても。
魂に刻まれた名曲の数々はけっして色あせることは無いんだなってしみじみと実感したのだ…。
「よしよしミルドレッド、今日も元気な良い子だね。いっぱい泣いていっぱいミルク飲むんだよ」
ミルドレッドはアベニアやグレンと違い乳母には任せておけない繊細な子だ。
とにかく僕じゃないと泣き止まないのだ。乳母も、トマスさんも、泣かせておけばいいって言うけど、泣き叫ばれるとやっぱり気になる。
だけどこのまま僕だけにしか懐かないのも困りものだ。
カマーフィールドのお母様は言った。「アデル、貴方もその昔こうだったわ。わたくしが歌うと泣き止んだものよ」
そしてお父様は言った。「私の姿が見えないといつも泣いていたよ、愛らしい赤子だった。歌ってやるとすぐに泣き止んでおった」
トールキンお兄様も言った。「部屋に一人置き去りにされるといつも泣き叫んでいたね、だが私が歌ってやるとすぐに泣き止んだのだよ」
歌…歌か…僕は聞くほう専門だからなぁ…うん、よし!
「そういう事なので、グラナダ様歌ってください。」
「…なにがそういう事なのかわからないが…トールキン殿も言っておったな。しかし歌ならば歌劇団員を呼べばよかろう、合唱団でも良い。何故私なのだ。」
「当たり前でしょう?父親はグラナダ様だけなんだから。グラナダ様が歌わなくて誰が歌うんですか。いいからほら、ちょっと歌ってみてください」
「アデル…その良い笑顔はなんだ。鼻息も荒い!全く仕方のない奴だ。」
下心を看破されてしまった…。
だけど本当にそれだけじゃない。
ミルドレッドにはうっかりアデルを投影してしまった…。大柄で厳ついグラナダ様を見ると泣くのだ、こう、毎回…。
同じように背が高くてもひょろっとしてる上に温和なカマーフィールド勢と違ってグラナダ様は全体的にこう…瘴気も威圧も今はコントロール出来てるのにベースがすでに漢っぽいのだ。
まぁそこがいいんだけど。
鍛えぬかれた身体はムキムキまではさせてないのに逞しくて、眼光鋭いその視線はキリっとして威厳があって、尊大な態度も…だって実際偉いんだからしょうがない。
むしろあの感じが実に良い。こう周りに媚びず己を貫くその感じがたまらない。グラナダ様は尊大だからって横柄なわけじゃないし、自分自身にはすごくストイックで…はぁはぁ♡…額に汗をにじませ剣を握るその姿ときたら何年たっても超絶セクシーで…あー!最近討伐姿を見ていない!今度無理やりついて行って…あ、あれおかしいな、脱線した。
そんな訳だからミルドレッドにも一日も早く、グラナダ様がどれほど愛情深いお父さんか分かってほしいんだ。
「分かった…分かったから落ち着けアデル。何故先ほどから、そうも鼻息が荒いのだ。」
「いえちょっと、いろいろと思い出したら興奮して…ごちそうさまです」
「ごち…、なにを思い出していたかは想像がついた。まぁよい、だが私は歌など歌ったことは無いぞ」
こうしてグラナダ様の歌唱訓練が始まったのだ。
この世界にもともとある歌とは基本主となるメロディーの事を指す。
だから合唱団のきっかけともいえるルミエの誕生記念で披露した高中低の三部合唱、ハーモニーの美しさがあれほどみんなを感動させたんだ。
でも今回はグラナダ様のソロになる。ならばメロディーラインがすでに完成された美しいバラードを…。ああ、何を歌ってもらおうか…。
でもその前にウォーミングアップは必要だよね。
「えー、まずはじゃぁ…あっ、そうだ、僕が歌ったあとから真似してくださいね。」
課題曲は森のベアーさん。輪唱なら覚えるのも簡単だ。
か、かっわいい!僕の後から戸惑いながら歌うグラナダ様…ギャップ萌え…いい…
「はぁはぁ…ちょっと休憩、む、胸が…」
「大丈夫かアデルよ。無理はせずもうやめた方が」「いいえっ!」
「何言ってんですか!これはミルドレッドの為ですよ!それにしても思った通りの美声で息の根が止まりそうです…。」
「死んではならぬぞアデルよ」
「グラナダ様の美声で瞬時に復活するので大丈夫です。いやぁー、こんな形で悲願が達成出来るとは…。棚からぼたもちってこういう事を言うんですね」
「お前の話はいつも難解だ。だが幸せそうでなによりだ。」
「ゴクリ…じ、じゃぁ次はもう少し難しい曲を…」
下心を満載にして僕は…JJFの曲を…グラナダ様に伝授した。
あれから何年もたっているっていうのに覚えているもんだなぁ…。
骨格が似ていると声帯、声質も近いと聞いたことがある。普段の声も似てるんだから歌声だって…ムハー!
現代人にも難解だったあのメロディーを口伝するのは簡単じゃないけど、こうなってくるとどうしてもフルで聞きたい…。これはワガママなんかじゃないはずだ!
それにしても。
魂に刻まれた名曲の数々はけっして色あせることは無いんだなってしみじみと実感したのだ…。
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