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番外編 バーガンディの日常Ⅱ
アデルとグラナダ 第三子への道⑤
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「あれ?コラート君来てたの?久しぶり。ああ、そういえば運営の手伝いしてるんだっけ?」
「ええ、家計の足しに…って、そうじゃなくて大変なんですっ!」
生まれたばかりの赤ちゃんを宿舎に預けて先月からコラート君は手伝いに来てる。
どうせ来るなら歌えばいいのに彼の夫は嫉妬深い。舞台には立たせたくないと言われてしまった…。
いくら自分がそうだったからと言って、ファンを目の敵にするのは違うでしょうが!まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。
バタバタと楽屋へ行けばガトゥ君が呻いていた。
「えぇ!どど、どうしたのガトゥ君!大丈夫?」
「うぅ…」
「それが…のど飴と間違えて小さな魔石を飲みこんでしまったみたいで…」
「えぇー!なんでそんな間違い…って言ってる場合じゃない!」
「アデル様のヒールでどうか…」
「ヒール…ヒール⁉」
ヒールは怪我や不調を治すもの。魔石を飲み込んだ…この場合は…どうなのよ?これって怪我でも無ければ病気でもない。
大急ぎで探査をかける。ううん…これは…魔石の魔力が魔力回路を持たないガトゥ君の中で暴れている。
「だめ。ヒールでは何ともならない。魔石自体を身体から出さないと。ちょうどいいことに御典医様が邸に居るから通信送るね。大丈夫。短距離転移の護符を使って直ぐに来てもらうから。ガトゥ君頑張って!」
「アデル様…舞台…どうしましょう?今は教会の場面ですけど次は墓場の…」
「う…いや、この後はクライマックス、胸を剣で突くシーンだよね。こ、こ、こ、コラート君…歌…覚えてるよね?」チラッ
「歌…もちろん覚えてますけど、ダメです。僕…マックスと約束してて…絶対舞台には上がらないって…」
うぅぅ…マックスめ。嫉妬深い男は嫌われるぞ!いやでも、こんなことで人んちの家庭不和を引き起こすわけにはいかない。どうする…
「アデル様が出てはいかがです?」
「へっ?ナイジェルさん何言って…いやいやいや、僕歌えないから」
「コラート、歌は歌えるんだろう?陰に隠れて歌え。アデル様はそれに合わせて演じて下さい。こんなところで終わらせたら観客から苦情が出ます。」
「はっ?そんなの…え、ちょ、あ”ーーー!」
ナイジェルさんめ…やっぱり鬼プロデューサーだった。
無理やり予備の衣裳を着せられステージへと上がる。幸か不幸かジュリエットの衣装は妊夫仕様だ。参ったなぁ。演技なんて幼稚園以来だ。でもまぁ、鼓笛隊に居たから度胸だけはある。緊張はしない。
ああ…コラート君。相変わらず良い声だなぁ。観客として聴きたかった。そろそろかな?ここで剣を両手で掲げて胸に…
ズクン
んん?何か嫌な痛みが……。いや気のせい気のせい、剣を胸に刺して…っと。
ズクンズクン
あー、これって…だめだこりゃ…
とりあえずロミオに被さって息絶えてみる。周りでは残された両家が後悔と反省をして…る…
コソッ「アデル様大丈夫ですか?すごい汗ですけど…」
コソッ「う…生まれる…」
コソッ「えっ…ちょ、いいんですか?こんな…」
コソッ「あと少しで幕だ…か…ラ…」
コソッ「痛って…ぐぅ…アデル様…腕掴む力…弱めて下さい…」
コソッ「ム…ムリ…」
大歓声と共に幕が下りる。僕のブレスレットはとっくの昔にエマジェンシーを送ってる。僕の守護神グラナダ様に。
「アデル様、だ、大丈夫ですか?プッぐふっ、ふっ…」
「本当にもう、あなたって人は…。くくっ」
う、うるさい!マカフィーさんが余計なフラグを立てるから…くそぅ…
とりあえず支配人室に運び込まれる。どこかで大きな声がする。きっとグラナダ様だ。
「あ、アデル!大丈夫か!」
「ご、ご典医様は…」
「ガトゥの処置をしておる!安心せよ、直ぐにここへ来る!」
「うぅ…よか、良かったガトゥく…んあ…ダメ…も、だめ!グラナダ様早く取り上げて!!」
「なっ!またか!」「早くっ!も、出てるっ!」
んあー、んあー
ご典医様は間に合わなかった。だけど駆け付けるや否や呆然とするグラナダ様に代わって後の処置をしてくれた。
「いつになったら私めに取り上げさせてくれるのですかな?」
「あ、ほら…アベニアは無事に…ねぇ?」
力尽きたと思ったグラナダ様はキレイにくるまれた生まれたばかりの我が子を抱いて、主役の不在にざわつく観客に向かって舞台中央に進み叫んだらしい。
「皆これを見よ!我が第三子!ミルドレッドである!ああ…なんという生命の神秘…今ここに居る全ての者よ!祝福を分かち合おうぞ!」
ベイビーハイとでも言うんだろうか…お産婆ハイとでも言うんだろうか…
とりあえず歌劇場は宴会会場へと変貌し、近隣の店からあらゆる食べ物飲み物が運ばれ、観客の皆様全員がこのまま祝福の宴への招待客となったとか。めでたいめでたい。
だけど舞台に上がったことは…後からしっかり叱られた…。
「ええ、家計の足しに…って、そうじゃなくて大変なんですっ!」
生まれたばかりの赤ちゃんを宿舎に預けて先月からコラート君は手伝いに来てる。
どうせ来るなら歌えばいいのに彼の夫は嫉妬深い。舞台には立たせたくないと言われてしまった…。
いくら自分がそうだったからと言って、ファンを目の敵にするのは違うでしょうが!まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。
バタバタと楽屋へ行けばガトゥ君が呻いていた。
「えぇ!どど、どうしたのガトゥ君!大丈夫?」
「うぅ…」
「それが…のど飴と間違えて小さな魔石を飲みこんでしまったみたいで…」
「えぇー!なんでそんな間違い…って言ってる場合じゃない!」
「アデル様のヒールでどうか…」
「ヒール…ヒール⁉」
ヒールは怪我や不調を治すもの。魔石を飲み込んだ…この場合は…どうなのよ?これって怪我でも無ければ病気でもない。
大急ぎで探査をかける。ううん…これは…魔石の魔力が魔力回路を持たないガトゥ君の中で暴れている。
「だめ。ヒールでは何ともならない。魔石自体を身体から出さないと。ちょうどいいことに御典医様が邸に居るから通信送るね。大丈夫。短距離転移の護符を使って直ぐに来てもらうから。ガトゥ君頑張って!」
「アデル様…舞台…どうしましょう?今は教会の場面ですけど次は墓場の…」
「う…いや、この後はクライマックス、胸を剣で突くシーンだよね。こ、こ、こ、コラート君…歌…覚えてるよね?」チラッ
「歌…もちろん覚えてますけど、ダメです。僕…マックスと約束してて…絶対舞台には上がらないって…」
うぅぅ…マックスめ。嫉妬深い男は嫌われるぞ!いやでも、こんなことで人んちの家庭不和を引き起こすわけにはいかない。どうする…
「アデル様が出てはいかがです?」
「へっ?ナイジェルさん何言って…いやいやいや、僕歌えないから」
「コラート、歌は歌えるんだろう?陰に隠れて歌え。アデル様はそれに合わせて演じて下さい。こんなところで終わらせたら観客から苦情が出ます。」
「はっ?そんなの…え、ちょ、あ”ーーー!」
ナイジェルさんめ…やっぱり鬼プロデューサーだった。
無理やり予備の衣裳を着せられステージへと上がる。幸か不幸かジュリエットの衣装は妊夫仕様だ。参ったなぁ。演技なんて幼稚園以来だ。でもまぁ、鼓笛隊に居たから度胸だけはある。緊張はしない。
ああ…コラート君。相変わらず良い声だなぁ。観客として聴きたかった。そろそろかな?ここで剣を両手で掲げて胸に…
ズクン
んん?何か嫌な痛みが……。いや気のせい気のせい、剣を胸に刺して…っと。
ズクンズクン
あー、これって…だめだこりゃ…
とりあえずロミオに被さって息絶えてみる。周りでは残された両家が後悔と反省をして…る…
コソッ「アデル様大丈夫ですか?すごい汗ですけど…」
コソッ「う…生まれる…」
コソッ「えっ…ちょ、いいんですか?こんな…」
コソッ「あと少しで幕だ…か…ラ…」
コソッ「痛って…ぐぅ…アデル様…腕掴む力…弱めて下さい…」
コソッ「ム…ムリ…」
大歓声と共に幕が下りる。僕のブレスレットはとっくの昔にエマジェンシーを送ってる。僕の守護神グラナダ様に。
「アデル様、だ、大丈夫ですか?プッぐふっ、ふっ…」
「本当にもう、あなたって人は…。くくっ」
う、うるさい!マカフィーさんが余計なフラグを立てるから…くそぅ…
とりあえず支配人室に運び込まれる。どこかで大きな声がする。きっとグラナダ様だ。
「あ、アデル!大丈夫か!」
「ご、ご典医様は…」
「ガトゥの処置をしておる!安心せよ、直ぐにここへ来る!」
「うぅ…よか、良かったガトゥく…んあ…ダメ…も、だめ!グラナダ様早く取り上げて!!」
「なっ!またか!」「早くっ!も、出てるっ!」
んあー、んあー
ご典医様は間に合わなかった。だけど駆け付けるや否や呆然とするグラナダ様に代わって後の処置をしてくれた。
「いつになったら私めに取り上げさせてくれるのですかな?」
「あ、ほら…アベニアは無事に…ねぇ?」
力尽きたと思ったグラナダ様はキレイにくるまれた生まれたばかりの我が子を抱いて、主役の不在にざわつく観客に向かって舞台中央に進み叫んだらしい。
「皆これを見よ!我が第三子!ミルドレッドである!ああ…なんという生命の神秘…今ここに居る全ての者よ!祝福を分かち合おうぞ!」
ベイビーハイとでも言うんだろうか…お産婆ハイとでも言うんだろうか…
とりあえず歌劇場は宴会会場へと変貌し、近隣の店からあらゆる食べ物飲み物が運ばれ、観客の皆様全員がこのまま祝福の宴への招待客となったとか。めでたいめでたい。
だけど舞台に上がったことは…後からしっかり叱られた…。
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