イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

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番外編 第二世代の恋模様

グレンの初恋は…⑥

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「ううぅ…モデーロ…死なないでよぉ…やだぁ…」

必死になってモデーロの上に被さる砂利を石をどかすけど、大きな岩は僕の力じゃどかせなくて…
それに呻いている傭兵たちもいつその岩石の山から抜け出すか分からない…。刺されて力尽きたあの頭首も生死の確認はしていない…。
怖いし悲しいし辛いし、もうどうしていいか分からないけどここから離れることは出来なくて、ただただ泣きじゃくってその岩の小さな塊をどかし続ける。そうしたらようやくたくさんの車輪の音と父様母様の僕を呼ぶ声がした。

「グレン!グレーン‼ここに居るの⁉」
「グレン!父を呼ぶのだ!グレン!」

「うう…とうさまー!かあさまー!ここぉー!ここだよぉー!」

「グレン!」

いくつもの分岐から僕の声を頼りに姿を見つけるや否や短距離転移で母様が飛んでくる。母様が来てくれた!良かった!母様ならきっとモデーロを助けてくれる。だってたくさんの兵を、父様を、王妃様を、その光で救ったと聞いた。

「かあさまっ、うぅ…、モデーロが死んじゃう、モデーロを助けて、僕のモデーロを助けてよぉ…」
「大丈夫!グレンを助けてくれた恩人だもんね。心配しなくていいからね。母様がちゃんと助けてあげる。グラナダ様!この大きな岩どかしてください!」

「うむ。どうだアデルよ。息はあるな?」
「うん、これなら助けられる。〝超回復ハイヒール”」

母様の光を浴びてその身体の傷が見る見るうちに治っていく。すごい…これが母様のハイヒール…。

「ついでにこっちは〝わずかに回復”」
「治すの?あいつら悪者なのに!」
「担いでくのも面倒だし、足だけ治したの。自力で歩かせようと思って。領都はずれの収監場まで歩きでほんの10時間ぐらいだし。多少腕や肋骨や頭蓋骨折れてたって歩けるでしょ、それくらい。馬車で連れてくなんて馬が可哀そうだよ。リスボンだってきっと嫌がる、って言うか、グラナダ様、まだ焼いちゃダメ。取り調べが終わるまでは。その後なら煮ようが焼こうが、魔獣の森の深淵に放り込もうが…!」
「そうか…調書を取った後なら何をしてもいいのだな!アデルの許可も得た事だ。私の愛息グレンに手を出して楽に死ねるとは思わぬ事だ!連れていけ!」

「怒りが収まらない…。その時は僕も参加する…、お母様のあの時の技で…。それにしても…ねぇグラナダ様、この場所もう封印しましょうよ。立ち入り禁止程度じゃ役に立たない。親子そろって攫われた場所がここなんて何かに祟られてるとしか思えないよ!」
「まったくだ…奴の呪いか…。魔術師団長に申し付けておく。これよりここは封印する!禁忌の洞窟とする!」

「え?何?昔何があったの?」
「えっと、後で教えてあげる」
「よせアデル。グレンは知らずともよい事だ」


意味ありげに母様が苦笑する。父様は苦々し気に吐き捨てる。
ぐったりしたモデーロは父様に抱えられているけど、その頬には赤みがさして、もう大丈夫だって伝わってくる。
母様と手をつないで洞窟から出ると、そこにもたくさんの傭兵たちが倒れていた。

「ぐ、グレンー!大丈夫?ケガはない?心配した!心配したよっ!ごめんね、僕がついてたのに!もっと早く駆け付けたかった!こいつらが邪魔して!」
「兄さまのせいじゃないよ…。それにモデーロは僕を最後まで守ってくれた…それよりこの人たちも悪人の仲間?」

「そう、見張りだよ。物理と幻影魔術、両方でグレンたちを隠そうとしてた。僕とグラナダ様に隠せるわけないのに。そしたら父様とアベニアがマジ切れしてあっという間に全部倒しちゃったよ。あ、少し焦げてる方が父様ね。父様は強すぎて人間相手だと過剰戦力だから…むしろ死なさないよう抑えるのが大変で、ほらあれ見てよ。一人目うっかり消し炭になっちゃった。」
「父様と兄さま…すごい…」
「ルミエも参戦したがってたけど、さすがに王子様を参加させるわけには…ねぇ?」「ふふっ」

こうして僕の身に起きたその事件は一応の幕を閉じた。

その後奴らがドリフト共和国のとても大きな犯罪組織の中の一部隊で、このリーガル王国に悪の販路を広げようとしていたことが分かった。そして僕の時魔法を手に入れて組織内での地位向上を計ったのだということも。
奴らの証言で、少なくともこのリーガル王国に関わる部分はかなり明かされ、寸でのところで奴らの進出を阻めたらしい。
あのときルミエが兄さまに相談があると言ったのはまさにこのことで…、神官様が亡くなった謎の病気、ドリフト共和国内で発見された薬物汚染による症状とよく似ているって。確証はないけど大叔父上に話すべきだろうかってそう兄さまに相談したんだって。

普段あんなにおかしいのに、ルミエはやっぱり王子なんだ。すごく頭が良いっていう話は本当だったんだ。ごめんねルミエ。誤解してた。

そして神官様は…
たまたまこのリーガル王国への進出の足掛かりに娯楽の街、眠らない街グランベガスに白羽の矢を立てた奴らが偶然耳にした些細な噂。
神殿に出入りする雑役婦が口にした「領主さまのご子息は水晶が今まで一度も見たことも無い不思議な色に輝いていた」己の住まう地の領主を自慢げに語る悪意の無い噂話。
それに何かを感じ取ったあの男は神官様を脅し、それが時属性だとしったらしい。そして口封じに病死に見せかけ…。
モデーロの言った通りだ。ここにだって悪人は入り込む。



奴らはその後父様の手によって…どうなったかは想像できる。ご愁傷様。悪は蔓延っちゃダメなんだよ。とくにこのバーガンディではね。

バーガンディはみんなで楽しく笑いあう町なんだから!







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