218 / 247
番外編 バーガンディの日常
砂浜の定番
しおりを挟む
休暇中だって言うのにグラナダ様はローランさんと漁場の長を訪ねて出かけてしまった。
現在カマーフィールドでは絶賛人口増加中。生活区域を広げるために、少々森林を伐採開拓するようだ。
そこで得られる材木を、造船の為に融通願いたいとフローアミから要請があったらしい。ああ、だからローランさんを連れて来たのか。丁々発止の契約の為に。
トールキンお兄様は領民思いの立派な領主だけど、商魂たくましいフローアミの偉い人にはちょっと太刀打ち出来そうにない。ローランさんなら出来るのかと言うとそれはどうだかわからないけど、グラナダ様が判断したならきと大丈夫なんだろう。僕にも最近分かって来たけど、ローランさんは多少の事じゃ動じない、丈夫な肝を持っているのだ。
「そうじゃなきゃ、あのトールキン殿をあそこまで骨抜きに出来ませんって。」
「えっ、そうなの?お兄様はそんなに骨抜きなの?」
「べた惚れですよ。と言うか、尻に敷いてる感じですね。ローランはしっかり者ですからね。」
「ああ…お兄様は頭は良いけど押しが弱いから…お父様の血を引いて…」
「はは…」「笑えない」
どうしてもやりたかった事がある。
それは…ビーチバレー。新人選手たちにはすでにルールは教授済だ。
海岸に線を引いてコートを描く。そこに漁師のおじさんから買い取った古い網を中央に張る。
対戦するのは僕とジョッシュさん対マカフィーさんとモーリスさん。
モーリスさんはトマスさんの代わりにグラナダ様のお世話をするため付いて来た執事見習いの青年だ。
第4部隊の募集でやってきたイケメンだったが、音感が…ジャ〇アン並みに酷すぎて、その上魔力は高いが腕っぷしが弱っち過ぎて、それで従者として引き受けたと言う経緯がある。
田舎男爵の5男坊で自活の道を探しているモーリスさん。上手く育ててカマーフィールドへ派遣したい。
カマーフィールドの執事ハモンさんは最近耳も遠いらしい…要介護認定が必要だ。
僕は小柄だがモーリスさんはヒョロヒョロ。勝負は互角。…いや、ビーチバレーの経験が多少ある僕の方が有利だろう。この勝負…もらった!
「かーさまがんばってー!」
「あーあー!!」
「アデルさまがんば、あっいえ、師匠がん…ううぅ…どっちを応援すれば…」
アベニアとグレンと籠に揺られるミラン君は、乳母とラフがしっかり見てる。
ちびっ子たちの声援を背に、こうして15点先取の3セットマッチが始まった。
「だー!よし上がったっ!ジョッシュさん!」
「よっしゃ!おりゃっ!」
「モーリス!なんでもいいから拾え!あとは任せろ!」
「は、はいっ!」
はぁはぁはぁ、しぶといな…さすがマカフィーさん…身体能力が半端ない。そして僕の身体能力には限界がある。正面を見ればモーリスさんは既に虫の息だ。
3セット目、勝負の一本。もはや僕とモーリスさんを置き去りに、ジョッシュさんマカフィーさんの一騎打ち状態。
一進一退を繰り返しなかなか勝負がつかないでいる。
「ほう、面白そうなことをしているではないか。足腰の鍛錬にも良さそうだ。」
「グラナダ様!おかえりなさい、お仕事終わりました?もうご一緒出来ますか?」
「ああ、もちろんだとも。アデル、お前はそこで立ちっぱなしで何をしておるのだ?」
「……ボールがまわってこないんです…」
ふと見れば…んん?
「ローランさんうずうずしてます?」
「あ、俺、参加しても良いですか?アデル様、代わりましょうか?」
「あー、僕よりモーリスさん代わってあげて。今にも死にそう。」
選手交代、改めてファイナルマッチが始まった。
ずさーー……はひっ…もうだめ…足が…
「かーさまー!まけちゃいやー!」
「アビー!ううぅ…よおし、〝ヒール”…復活!」
「アデル様、俺にも!」
「汚いぞ、ジョッシュ!」「うるせー!」
「かまいませんよ、これぐらいのハンデ。先輩!本気出していきますよ!」
あー、そうだ。ローランさんってば負けず嫌いの熱血ボーイだった。ひぃっ、目が炎になってる…
ローランさんの打ち込むボールは今にも破裂しそうな勢いで、そのボールを受けるのはかなりの腕力が必要だ。
楽しい娯楽のはずだったのに…なんでこんなことに…
ローランさんの戦力が多大な貢献をして勝利はマカフィーチームに持っていかれた。ぐっ、無念!
「そういえばグラナダ様、結構熱心に見てたけど…気に入りました?ビーチバレー。」
「ああ、気に入ったとも。飛び上がって玉を打つお前や滑り込んで珠を拾うお前…可愛い腹が見えておった。」
何と言う事だろう。グラナダ様は違う観賞の楽しみに目覚めていた…
想定外ではあるけれど、こうしてみんなで楽しめた一日が夕日と共に暮れていった。
現在カマーフィールドでは絶賛人口増加中。生活区域を広げるために、少々森林を伐採開拓するようだ。
そこで得られる材木を、造船の為に融通願いたいとフローアミから要請があったらしい。ああ、だからローランさんを連れて来たのか。丁々発止の契約の為に。
トールキンお兄様は領民思いの立派な領主だけど、商魂たくましいフローアミの偉い人にはちょっと太刀打ち出来そうにない。ローランさんなら出来るのかと言うとそれはどうだかわからないけど、グラナダ様が判断したならきと大丈夫なんだろう。僕にも最近分かって来たけど、ローランさんは多少の事じゃ動じない、丈夫な肝を持っているのだ。
「そうじゃなきゃ、あのトールキン殿をあそこまで骨抜きに出来ませんって。」
「えっ、そうなの?お兄様はそんなに骨抜きなの?」
「べた惚れですよ。と言うか、尻に敷いてる感じですね。ローランはしっかり者ですからね。」
「ああ…お兄様は頭は良いけど押しが弱いから…お父様の血を引いて…」
「はは…」「笑えない」
どうしてもやりたかった事がある。
それは…ビーチバレー。新人選手たちにはすでにルールは教授済だ。
海岸に線を引いてコートを描く。そこに漁師のおじさんから買い取った古い網を中央に張る。
対戦するのは僕とジョッシュさん対マカフィーさんとモーリスさん。
モーリスさんはトマスさんの代わりにグラナダ様のお世話をするため付いて来た執事見習いの青年だ。
第4部隊の募集でやってきたイケメンだったが、音感が…ジャ〇アン並みに酷すぎて、その上魔力は高いが腕っぷしが弱っち過ぎて、それで従者として引き受けたと言う経緯がある。
田舎男爵の5男坊で自活の道を探しているモーリスさん。上手く育ててカマーフィールドへ派遣したい。
カマーフィールドの執事ハモンさんは最近耳も遠いらしい…要介護認定が必要だ。
僕は小柄だがモーリスさんはヒョロヒョロ。勝負は互角。…いや、ビーチバレーの経験が多少ある僕の方が有利だろう。この勝負…もらった!
「かーさまがんばってー!」
「あーあー!!」
「アデルさまがんば、あっいえ、師匠がん…ううぅ…どっちを応援すれば…」
アベニアとグレンと籠に揺られるミラン君は、乳母とラフがしっかり見てる。
ちびっ子たちの声援を背に、こうして15点先取の3セットマッチが始まった。
「だー!よし上がったっ!ジョッシュさん!」
「よっしゃ!おりゃっ!」
「モーリス!なんでもいいから拾え!あとは任せろ!」
「は、はいっ!」
はぁはぁはぁ、しぶといな…さすがマカフィーさん…身体能力が半端ない。そして僕の身体能力には限界がある。正面を見ればモーリスさんは既に虫の息だ。
3セット目、勝負の一本。もはや僕とモーリスさんを置き去りに、ジョッシュさんマカフィーさんの一騎打ち状態。
一進一退を繰り返しなかなか勝負がつかないでいる。
「ほう、面白そうなことをしているではないか。足腰の鍛錬にも良さそうだ。」
「グラナダ様!おかえりなさい、お仕事終わりました?もうご一緒出来ますか?」
「ああ、もちろんだとも。アデル、お前はそこで立ちっぱなしで何をしておるのだ?」
「……ボールがまわってこないんです…」
ふと見れば…んん?
「ローランさんうずうずしてます?」
「あ、俺、参加しても良いですか?アデル様、代わりましょうか?」
「あー、僕よりモーリスさん代わってあげて。今にも死にそう。」
選手交代、改めてファイナルマッチが始まった。
ずさーー……はひっ…もうだめ…足が…
「かーさまー!まけちゃいやー!」
「アビー!ううぅ…よおし、〝ヒール”…復活!」
「アデル様、俺にも!」
「汚いぞ、ジョッシュ!」「うるせー!」
「かまいませんよ、これぐらいのハンデ。先輩!本気出していきますよ!」
あー、そうだ。ローランさんってば負けず嫌いの熱血ボーイだった。ひぃっ、目が炎になってる…
ローランさんの打ち込むボールは今にも破裂しそうな勢いで、そのボールを受けるのはかなりの腕力が必要だ。
楽しい娯楽のはずだったのに…なんでこんなことに…
ローランさんの戦力が多大な貢献をして勝利はマカフィーチームに持っていかれた。ぐっ、無念!
「そういえばグラナダ様、結構熱心に見てたけど…気に入りました?ビーチバレー。」
「ああ、気に入ったとも。飛び上がって玉を打つお前や滑り込んで珠を拾うお前…可愛い腹が見えておった。」
何と言う事だろう。グラナダ様は違う観賞の楽しみに目覚めていた…
想定外ではあるけれど、こうしてみんなで楽しめた一日が夕日と共に暮れていった。
217
お気に入りに追加
3,333
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる