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番外編 バーガンディの日常
砂浜の定番
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休暇中だって言うのにグラナダ様はローランさんと漁場の長を訪ねて出かけてしまった。
現在カマーフィールドでは絶賛人口増加中。生活区域を広げるために、少々森林を伐採開拓するようだ。
そこで得られる材木を、造船の為に融通願いたいとフローアミから要請があったらしい。ああ、だからローランさんを連れて来たのか。丁々発止の契約の為に。
トールキンお兄様は領民思いの立派な領主だけど、商魂たくましいフローアミの偉い人にはちょっと太刀打ち出来そうにない。ローランさんなら出来るのかと言うとそれはどうだかわからないけど、グラナダ様が判断したならきと大丈夫なんだろう。僕にも最近分かって来たけど、ローランさんは多少の事じゃ動じない、丈夫な肝を持っているのだ。
「そうじゃなきゃ、あのトールキン殿をあそこまで骨抜きに出来ませんって。」
「えっ、そうなの?お兄様はそんなに骨抜きなの?」
「べた惚れですよ。と言うか、尻に敷いてる感じですね。ローランはしっかり者ですからね。」
「ああ…お兄様は頭は良いけど押しが弱いから…お父様の血を引いて…」
「はは…」「笑えない」
どうしてもやりたかった事がある。
それは…ビーチバレー。新人選手たちにはすでにルールは教授済だ。
海岸に線を引いてコートを描く。そこに漁師のおじさんから買い取った古い網を中央に張る。
対戦するのは僕とジョッシュさん対マカフィーさんとモーリスさん。
モーリスさんはトマスさんの代わりにグラナダ様のお世話をするため付いて来た執事見習いの青年だ。
第4部隊の募集でやってきたイケメンだったが、音感が…ジャ〇アン並みに酷すぎて、その上魔力は高いが腕っぷしが弱っち過ぎて、それで従者として引き受けたと言う経緯がある。
田舎男爵の5男坊で自活の道を探しているモーリスさん。上手く育ててカマーフィールドへ派遣したい。
カマーフィールドの執事ハモンさんは最近耳も遠いらしい…要介護認定が必要だ。
僕は小柄だがモーリスさんはヒョロヒョロ。勝負は互角。…いや、ビーチバレーの経験が多少ある僕の方が有利だろう。この勝負…もらった!
「かーさまがんばってー!」
「あーあー!!」
「アデルさまがんば、あっいえ、師匠がん…ううぅ…どっちを応援すれば…」
アベニアとグレンと籠に揺られるミラン君は、乳母とラフがしっかり見てる。
ちびっ子たちの声援を背に、こうして15点先取の3セットマッチが始まった。
「だー!よし上がったっ!ジョッシュさん!」
「よっしゃ!おりゃっ!」
「モーリス!なんでもいいから拾え!あとは任せろ!」
「は、はいっ!」
はぁはぁはぁ、しぶといな…さすがマカフィーさん…身体能力が半端ない。そして僕の身体能力には限界がある。正面を見ればモーリスさんは既に虫の息だ。
3セット目、勝負の一本。もはや僕とモーリスさんを置き去りに、ジョッシュさんマカフィーさんの一騎打ち状態。
一進一退を繰り返しなかなか勝負がつかないでいる。
「ほう、面白そうなことをしているではないか。足腰の鍛錬にも良さそうだ。」
「グラナダ様!おかえりなさい、お仕事終わりました?もうご一緒出来ますか?」
「ああ、もちろんだとも。アデル、お前はそこで立ちっぱなしで何をしておるのだ?」
「……ボールがまわってこないんです…」
ふと見れば…んん?
「ローランさんうずうずしてます?」
「あ、俺、参加しても良いですか?アデル様、代わりましょうか?」
「あー、僕よりモーリスさん代わってあげて。今にも死にそう。」
選手交代、改めてファイナルマッチが始まった。
ずさーー……はひっ…もうだめ…足が…
「かーさまー!まけちゃいやー!」
「アビー!ううぅ…よおし、〝ヒール”…復活!」
「アデル様、俺にも!」
「汚いぞ、ジョッシュ!」「うるせー!」
「かまいませんよ、これぐらいのハンデ。先輩!本気出していきますよ!」
あー、そうだ。ローランさんってば負けず嫌いの熱血ボーイだった。ひぃっ、目が炎になってる…
ローランさんの打ち込むボールは今にも破裂しそうな勢いで、そのボールを受けるのはかなりの腕力が必要だ。
楽しい娯楽のはずだったのに…なんでこんなことに…
ローランさんの戦力が多大な貢献をして勝利はマカフィーチームに持っていかれた。ぐっ、無念!
「そういえばグラナダ様、結構熱心に見てたけど…気に入りました?ビーチバレー。」
「ああ、気に入ったとも。飛び上がって玉を打つお前や滑り込んで珠を拾うお前…可愛い腹が見えておった。」
何と言う事だろう。グラナダ様は違う観賞の楽しみに目覚めていた…
想定外ではあるけれど、こうしてみんなで楽しめた一日が夕日と共に暮れていった。
現在カマーフィールドでは絶賛人口増加中。生活区域を広げるために、少々森林を伐採開拓するようだ。
そこで得られる材木を、造船の為に融通願いたいとフローアミから要請があったらしい。ああ、だからローランさんを連れて来たのか。丁々発止の契約の為に。
トールキンお兄様は領民思いの立派な領主だけど、商魂たくましいフローアミの偉い人にはちょっと太刀打ち出来そうにない。ローランさんなら出来るのかと言うとそれはどうだかわからないけど、グラナダ様が判断したならきと大丈夫なんだろう。僕にも最近分かって来たけど、ローランさんは多少の事じゃ動じない、丈夫な肝を持っているのだ。
「そうじゃなきゃ、あのトールキン殿をあそこまで骨抜きに出来ませんって。」
「えっ、そうなの?お兄様はそんなに骨抜きなの?」
「べた惚れですよ。と言うか、尻に敷いてる感じですね。ローランはしっかり者ですからね。」
「ああ…お兄様は頭は良いけど押しが弱いから…お父様の血を引いて…」
「はは…」「笑えない」
どうしてもやりたかった事がある。
それは…ビーチバレー。新人選手たちにはすでにルールは教授済だ。
海岸に線を引いてコートを描く。そこに漁師のおじさんから買い取った古い網を中央に張る。
対戦するのは僕とジョッシュさん対マカフィーさんとモーリスさん。
モーリスさんはトマスさんの代わりにグラナダ様のお世話をするため付いて来た執事見習いの青年だ。
第4部隊の募集でやってきたイケメンだったが、音感が…ジャ〇アン並みに酷すぎて、その上魔力は高いが腕っぷしが弱っち過ぎて、それで従者として引き受けたと言う経緯がある。
田舎男爵の5男坊で自活の道を探しているモーリスさん。上手く育ててカマーフィールドへ派遣したい。
カマーフィールドの執事ハモンさんは最近耳も遠いらしい…要介護認定が必要だ。
僕は小柄だがモーリスさんはヒョロヒョロ。勝負は互角。…いや、ビーチバレーの経験が多少ある僕の方が有利だろう。この勝負…もらった!
「かーさまがんばってー!」
「あーあー!!」
「アデルさまがんば、あっいえ、師匠がん…ううぅ…どっちを応援すれば…」
アベニアとグレンと籠に揺られるミラン君は、乳母とラフがしっかり見てる。
ちびっ子たちの声援を背に、こうして15点先取の3セットマッチが始まった。
「だー!よし上がったっ!ジョッシュさん!」
「よっしゃ!おりゃっ!」
「モーリス!なんでもいいから拾え!あとは任せろ!」
「は、はいっ!」
はぁはぁはぁ、しぶといな…さすがマカフィーさん…身体能力が半端ない。そして僕の身体能力には限界がある。正面を見ればモーリスさんは既に虫の息だ。
3セット目、勝負の一本。もはや僕とモーリスさんを置き去りに、ジョッシュさんマカフィーさんの一騎打ち状態。
一進一退を繰り返しなかなか勝負がつかないでいる。
「ほう、面白そうなことをしているではないか。足腰の鍛錬にも良さそうだ。」
「グラナダ様!おかえりなさい、お仕事終わりました?もうご一緒出来ますか?」
「ああ、もちろんだとも。アデル、お前はそこで立ちっぱなしで何をしておるのだ?」
「……ボールがまわってこないんです…」
ふと見れば…んん?
「ローランさんうずうずしてます?」
「あ、俺、参加しても良いですか?アデル様、代わりましょうか?」
「あー、僕よりモーリスさん代わってあげて。今にも死にそう。」
選手交代、改めてファイナルマッチが始まった。
ずさーー……はひっ…もうだめ…足が…
「かーさまー!まけちゃいやー!」
「アビー!ううぅ…よおし、〝ヒール”…復活!」
「アデル様、俺にも!」
「汚いぞ、ジョッシュ!」「うるせー!」
「かまいませんよ、これぐらいのハンデ。先輩!本気出していきますよ!」
あー、そうだ。ローランさんってば負けず嫌いの熱血ボーイだった。ひぃっ、目が炎になってる…
ローランさんの打ち込むボールは今にも破裂しそうな勢いで、そのボールを受けるのはかなりの腕力が必要だ。
楽しい娯楽のはずだったのに…なんでこんなことに…
ローランさんの戦力が多大な貢献をして勝利はマカフィーチームに持っていかれた。ぐっ、無念!
「そういえばグラナダ様、結構熱心に見てたけど…気に入りました?ビーチバレー。」
「ああ、気に入ったとも。飛び上がって玉を打つお前や滑り込んで珠を拾うお前…可愛い腹が見えておった。」
何と言う事だろう。グラナダ様は違う観賞の楽しみに目覚めていた…
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