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番外編 バーガンディの日常
例の果実
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アデルの選んだいつもより少々気安い衣装を着てこうして二人海岸を歩く。
なんという至福の時間。
ああこれは、初めてアデルと王都の街を散策した、あの時と同じ…
いいや、あの時とは違う。私たちには今やアベニアもグレンも居る。
家族の情など知ることもなかったリーガル神王国での王家の在り方。
親は子を駒としか思わぬし、その子もまたそう育つ。そして兄弟はいつでも争うのが道理。それが当たり前だと思っていたが…それは全くの間違いだったらしい。
「ふふ、アデルよ、クラーケンは美味かったか?」
「え~、グラナダ様食べてないんですか?とっても美味しかったのに。ああ、でも塩が効いてたからのど乾いちゃった。あの屋台で何か…」
屋台で買ったココナツみたいな木の実のジュース。おじさんがなんか言ってたけどなまりが酷くてよく分からない。
多分こぼさないよう気を付けてとかなんとか、そんなところだろう。
「はいグラナダ様も一緒に飲んで。葦のストローちゃんと2本さしてくれたよ。」
「う、うむ。これで飲むのか…」「こうするの」
穴の開いた木の実にはちゃんと2本のストローが。向こうでだってやったことないカップルストロー。こうしてグラナダ様とするなんて。
「うひ。んふふ。ね、今日はこうして手をつないで歩こう?」
「ああ、そうだな。っふ、ストローか…良いものだな。」
フローアミの記念にこのストローとやらを買い込んでいくことを心に決め、アデルと手を繋ぎ海岸線をどこまでも歩く。
サクサクとした砂の感触はバーガンディのどことも違う。
気持ちの良いものだな、砂浜とは。
しかしどうした事だろう…先ほどから妙にアデルを見ると…つまり昂る。まったく新婚でもあるまいに。そうか、初めての遊山に私も少々浮足立っているのだな。
ふと見れば、私を見るアデルの目もなにやら妖しく揺らめいている。
………どこか、人目を避けられる場所は………
なんだろう。
さっきからなにかがおかしい。胸はドキドキするし身体は熱い。グラナダ様を見るだけでそういう気分になってくる。
いやいや、ないない。だめだってそれは。
グラナダ様だってそんなこと…うっ!熱を帯びた目でこっちを見ている…そ、そうなの?
……どこか、姿を隠せる場所は……
周りをぐるりと見渡せば、少し先に岩場があるではないか。
何も言わず足早に向かえばアデルも同じく気が急いているようだ。
気持ちは一つと言う事か。おしどり夫婦になったものだ。
グラナダ様が足早に向かう先には岩場がある。
あの大きな岩の向こうならきっとここからは何も見えない。
以心伝心…やだなぁもう。期待に胸がふくらんでくる…
「どこ行ってたんですかお二人で。おそいからアベニアさまがお待ちですよ。」
「あ、あ~、ちょっとね。」
「ごほん、よしよしアベニア肩車でもしてやろう。」
「あ、アデルさま、せなかのとこ汚れてますよ?どうしたんですか?」
「え?あ、うん。別になんにも。」
ラフの汚れなき瞳が真っすぐに見られない…すみません、汚れているのは別の所です。
「ん?アデル様この木の実…どうされました?これ…」
「海岸の屋台で買ったんだよ。マカフィーさん知ってるの?微妙な甘さでいまいちだったけど、糖度は自力で上げたから。」
「いやこれ…あー…」
「む、何だ話してみよ。」
「これ…例の…ソイルド商会の屋敷の果樹園に植えてあった…愉快な気分になる果実じゃ…」
これかーーー!!!
おかしいと思ったんだよ!なんか妙にムラムラして!なんてもん売ってんのさ、あの屋台!
と、思ってグラナダ様を見れば…何?その良い事思いつきました。みたいな顔。
「あー…、閣下、着替えか湯あみ…用意します?」
「ふむ、そうだな。大分水しぶきを浴びた。湯あみにしよう。」
「アデル様…その…着替え…」
「あ…お構いなく…」
ばれてる…うぅぅ…ま、まぁでも、グラナダ様に良い夏の日の思い出が出来たと思えば…
いや、そんなわけあるか!
そうか、あの自制の効かぬ愛欲はアデルと飲んだ果実のせいであったか。
…私とアデルの閨にはそういった薬湯などの必要は全くないが…だがしかし…
なかなかに良い感覚であった。アデルも良さそうにしておったし…時折なら趣向を凝らす意味で良いのかもしれない。
バーガンディに新たな果樹園が増えそうである。
なんという至福の時間。
ああこれは、初めてアデルと王都の街を散策した、あの時と同じ…
いいや、あの時とは違う。私たちには今やアベニアもグレンも居る。
家族の情など知ることもなかったリーガル神王国での王家の在り方。
親は子を駒としか思わぬし、その子もまたそう育つ。そして兄弟はいつでも争うのが道理。それが当たり前だと思っていたが…それは全くの間違いだったらしい。
「ふふ、アデルよ、クラーケンは美味かったか?」
「え~、グラナダ様食べてないんですか?とっても美味しかったのに。ああ、でも塩が効いてたからのど乾いちゃった。あの屋台で何か…」
屋台で買ったココナツみたいな木の実のジュース。おじさんがなんか言ってたけどなまりが酷くてよく分からない。
多分こぼさないよう気を付けてとかなんとか、そんなところだろう。
「はいグラナダ様も一緒に飲んで。葦のストローちゃんと2本さしてくれたよ。」
「う、うむ。これで飲むのか…」「こうするの」
穴の開いた木の実にはちゃんと2本のストローが。向こうでだってやったことないカップルストロー。こうしてグラナダ様とするなんて。
「うひ。んふふ。ね、今日はこうして手をつないで歩こう?」
「ああ、そうだな。っふ、ストローか…良いものだな。」
フローアミの記念にこのストローとやらを買い込んでいくことを心に決め、アデルと手を繋ぎ海岸線をどこまでも歩く。
サクサクとした砂の感触はバーガンディのどことも違う。
気持ちの良いものだな、砂浜とは。
しかしどうした事だろう…先ほどから妙にアデルを見ると…つまり昂る。まったく新婚でもあるまいに。そうか、初めての遊山に私も少々浮足立っているのだな。
ふと見れば、私を見るアデルの目もなにやら妖しく揺らめいている。
………どこか、人目を避けられる場所は………
なんだろう。
さっきからなにかがおかしい。胸はドキドキするし身体は熱い。グラナダ様を見るだけでそういう気分になってくる。
いやいや、ないない。だめだってそれは。
グラナダ様だってそんなこと…うっ!熱を帯びた目でこっちを見ている…そ、そうなの?
……どこか、姿を隠せる場所は……
周りをぐるりと見渡せば、少し先に岩場があるではないか。
何も言わず足早に向かえばアデルも同じく気が急いているようだ。
気持ちは一つと言う事か。おしどり夫婦になったものだ。
グラナダ様が足早に向かう先には岩場がある。
あの大きな岩の向こうならきっとここからは何も見えない。
以心伝心…やだなぁもう。期待に胸がふくらんでくる…
「どこ行ってたんですかお二人で。おそいからアベニアさまがお待ちですよ。」
「あ、あ~、ちょっとね。」
「ごほん、よしよしアベニア肩車でもしてやろう。」
「あ、アデルさま、せなかのとこ汚れてますよ?どうしたんですか?」
「え?あ、うん。別になんにも。」
ラフの汚れなき瞳が真っすぐに見られない…すみません、汚れているのは別の所です。
「ん?アデル様この木の実…どうされました?これ…」
「海岸の屋台で買ったんだよ。マカフィーさん知ってるの?微妙な甘さでいまいちだったけど、糖度は自力で上げたから。」
「いやこれ…あー…」
「む、何だ話してみよ。」
「これ…例の…ソイルド商会の屋敷の果樹園に植えてあった…愉快な気分になる果実じゃ…」
これかーーー!!!
おかしいと思ったんだよ!なんか妙にムラムラして!なんてもん売ってんのさ、あの屋台!
と、思ってグラナダ様を見れば…何?その良い事思いつきました。みたいな顔。
「あー…、閣下、着替えか湯あみ…用意します?」
「ふむ、そうだな。大分水しぶきを浴びた。湯あみにしよう。」
「アデル様…その…着替え…」
「あ…お構いなく…」
ばれてる…うぅぅ…ま、まぁでも、グラナダ様に良い夏の日の思い出が出来たと思えば…
いや、そんなわけあるか!
そうか、あの自制の効かぬ愛欲はアデルと飲んだ果実のせいであったか。
…私とアデルの閨にはそういった薬湯などの必要は全くないが…だがしかし…
なかなかに良い感覚であった。アデルも良さそうにしておったし…時折なら趣向を凝らす意味で良いのかもしれない。
バーガンディに新たな果樹園が増えそうである。
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