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番外編 騒動のその後色々
酔いどれ天使と酔わない悪魔
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「ようセオドア!ナイジェルは一緒じゃないのか。どう飲んでる?」
馴れ馴れしく声をかけて来たのはアデル様の護衛従者、ジョッシュだ。
ジョッシュはもと第二部隊の尖兵役だった男、俺の元相棒だ。
一見軽薄そうに見える男だがこれが意外と腕が立つ。
アデル様に気に入られ護衛の任に就いた時には密かに残念だと思ったものだ。
「なあセオドア、お前あれなんとかしろよ。すぐ俺に張り合ってきて、鬱陶しいことこの上ねぇよ」
「あー、張り合うって?お前に?お前ナイジェルに何かしたのか?」
「してねぇよ」
「ほっとけ、害はない。それよりお前、組んでた時のことなんて話した?やたらと絡んできて…どうせ碌な事言ってないんだろ」
「言うか!むしろ俺はお前の事ほめちぎってやったんだぜ」
「はあ?」
「ナイジェルの奴がお前の事、良い恰好しいだの、猫かぶりだの言うから、俺と組んでた時、セオドアは最高の相棒だったって言ってやったさ。動きも早いし、勘もいい。目と目が合うだけでお互いの考えが通じる奴なんてセオドアくらいのものだったってそう話したら、まぁ怒る怒る。なんだありゃ」
「そうか、ハハッ、まあ気にするな、俺からちゃんと言っとくから」
ジョッシュが俺を最高の相棒と思ってくれていたことは素直に光栄だと思ったが、さっきからずっとこちらを見ているナイジェルと…マカフィーの奴が気になって…合流すると今度は飲み比べが始まった。まったくバーガンディの奴らはどいつもこいつも、すぐに酒で勝負をつけたがる。
マカフィーはこのバーガンディに来た当初から、その恐れ知らずな性格でいつしか閣下に気に入られ専属護衛に指名を受けた。ジョッシュの友とは思えない。
ジョッシュとは学生時代の知り合いらしいが、この俺に酒で挑むとは馬鹿なやつだ。俺がザルだと知らないのか。
軽く奴をつぶしたところで周りを見渡せば…はぁ…ナイジェルお前もか…
足元のおぼつかないナイジェルの腕を、肩にまわして人気のない場所へと連れていく。
「ほらナイジェル、飲みすぎだ。水飲め水。いくら無礼講だからって酔いすぎだろうがっ」
「……言っとくが今回の売り上げは俺の方が上だったんだからな!」
「はぁ?馬鹿言うな!どう考えたって競馬場の方が上だったろ。見ただろ?あの外野席。やっぱり作って正解だったじゃないか。ほら良いから水を飲むんだ。それとも解毒のポーションにするか?」
こんなに酔っぱらいながらもこいつはいまだ勝負の結果を有耶無耶にする気はないらしい。
なんでもいいから水を飲めよ!酔いつぶれられたら困るんだよ!
「うるさい!お前はいつもそうやって自分だけ良い子ぶって。お前は俺の保護者かなんかか!」
「何言ってんだ!それに良い子ぶるとはなんだ。俺は普通だ。お前が一人で悪酔いしてるから介抱してやってんだろうが!」
「あそことカフェじゃ面積が違う!平方辺りで言ったら俺の方が勝ってた!」
「お、お前は…あーいえばこういいう…いい加減にしろっ」
「いいから俺の言う事聞くって言え!なんでも付き合うって言っただろ!」
「演習な…はいはい、わかったわかった付き合いますよ。何ムキになってんのお前。」
「俺だって、お前の考えてることくらいわかるっ!」
「あー…」
「…ジョッシュなんか…あんなのちょっと顔が良いだけで…いや、顔だって俺の方が勝ってるだろ!」
「そうだな。まぁ俺の方が上だけど。」
「何!」
酒の力で素直になった普段は絶対見れないナイジェル。
こうしてしなだれかかるのも酔ってる間の特典みたいなもの。
しおらしく体重をあずけるナイジェルはまるで羽でもあるように軽い。
「小柄な訳じゃないのにな…薄いんだよ…」
さぁ、誰にも見られないよう部屋へ連れこんで…今日はどう料理してやろうか。
競馬場の褒賞代わりとアデル様に頼んで作ってもらった遮音の護符。
思う存分嬌声をあげさせてみたかった。いやぁ良いモノを頂いたもんだ。
めくるめくバーガンディの夜。
目が覚めたとたん目を吊り上げて怒鳴り散らすだろう姿まで可愛いと思ってしまう俺はもうどうかしてるに違いない。
馴れ馴れしく声をかけて来たのはアデル様の護衛従者、ジョッシュだ。
ジョッシュはもと第二部隊の尖兵役だった男、俺の元相棒だ。
一見軽薄そうに見える男だがこれが意外と腕が立つ。
アデル様に気に入られ護衛の任に就いた時には密かに残念だと思ったものだ。
「なあセオドア、お前あれなんとかしろよ。すぐ俺に張り合ってきて、鬱陶しいことこの上ねぇよ」
「あー、張り合うって?お前に?お前ナイジェルに何かしたのか?」
「してねぇよ」
「ほっとけ、害はない。それよりお前、組んでた時のことなんて話した?やたらと絡んできて…どうせ碌な事言ってないんだろ」
「言うか!むしろ俺はお前の事ほめちぎってやったんだぜ」
「はあ?」
「ナイジェルの奴がお前の事、良い恰好しいだの、猫かぶりだの言うから、俺と組んでた時、セオドアは最高の相棒だったって言ってやったさ。動きも早いし、勘もいい。目と目が合うだけでお互いの考えが通じる奴なんてセオドアくらいのものだったってそう話したら、まぁ怒る怒る。なんだありゃ」
「そうか、ハハッ、まあ気にするな、俺からちゃんと言っとくから」
ジョッシュが俺を最高の相棒と思ってくれていたことは素直に光栄だと思ったが、さっきからずっとこちらを見ているナイジェルと…マカフィーの奴が気になって…合流すると今度は飲み比べが始まった。まったくバーガンディの奴らはどいつもこいつも、すぐに酒で勝負をつけたがる。
マカフィーはこのバーガンディに来た当初から、その恐れ知らずな性格でいつしか閣下に気に入られ専属護衛に指名を受けた。ジョッシュの友とは思えない。
ジョッシュとは学生時代の知り合いらしいが、この俺に酒で挑むとは馬鹿なやつだ。俺がザルだと知らないのか。
軽く奴をつぶしたところで周りを見渡せば…はぁ…ナイジェルお前もか…
足元のおぼつかないナイジェルの腕を、肩にまわして人気のない場所へと連れていく。
「ほらナイジェル、飲みすぎだ。水飲め水。いくら無礼講だからって酔いすぎだろうがっ」
「……言っとくが今回の売り上げは俺の方が上だったんだからな!」
「はぁ?馬鹿言うな!どう考えたって競馬場の方が上だったろ。見ただろ?あの外野席。やっぱり作って正解だったじゃないか。ほら良いから水を飲むんだ。それとも解毒のポーションにするか?」
こんなに酔っぱらいながらもこいつはいまだ勝負の結果を有耶無耶にする気はないらしい。
なんでもいいから水を飲めよ!酔いつぶれられたら困るんだよ!
「うるさい!お前はいつもそうやって自分だけ良い子ぶって。お前は俺の保護者かなんかか!」
「何言ってんだ!それに良い子ぶるとはなんだ。俺は普通だ。お前が一人で悪酔いしてるから介抱してやってんだろうが!」
「あそことカフェじゃ面積が違う!平方辺りで言ったら俺の方が勝ってた!」
「お、お前は…あーいえばこういいう…いい加減にしろっ」
「いいから俺の言う事聞くって言え!なんでも付き合うって言っただろ!」
「演習な…はいはい、わかったわかった付き合いますよ。何ムキになってんのお前。」
「俺だって、お前の考えてることくらいわかるっ!」
「あー…」
「…ジョッシュなんか…あんなのちょっと顔が良いだけで…いや、顔だって俺の方が勝ってるだろ!」
「そうだな。まぁ俺の方が上だけど。」
「何!」
酒の力で素直になった普段は絶対見れないナイジェル。
こうしてしなだれかかるのも酔ってる間の特典みたいなもの。
しおらしく体重をあずけるナイジェルはまるで羽でもあるように軽い。
「小柄な訳じゃないのにな…薄いんだよ…」
さぁ、誰にも見られないよう部屋へ連れこんで…今日はどう料理してやろうか。
競馬場の褒賞代わりとアデル様に頼んで作ってもらった遮音の護符。
思う存分嬌声をあげさせてみたかった。いやぁ良いモノを頂いたもんだ。
めくるめくバーガンディの夜。
目が覚めたとたん目を吊り上げて怒鳴り散らすだろう姿まで可愛いと思ってしまう俺はもうどうかしてるに違いない。
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