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決断の時編

決別の夜 ①

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全ての始まりだった離宮の僕の部屋。
天蓋に囲まれた白いベッド。
整えられた庭から差し込む月の光は柔らかく、あの頃の面影は僕が乱雑に植えたハーブの小庭くらいだ。
音楽隊の衣裳部屋があったり、隊員の撮影部屋があったり、今一番人の出入りの多いのがこの離宮。
あの頃と正反対だね。
誰も居ない部屋。一人ぼっちの寂しい部屋。精一杯楽しく過ごそうって頑張ってた思い出の僕の離宮。
だから終わりもこの部屋でって思うんだ。


部屋を閉め切り設置するのはグラナダ様が用意してくれた4つの魔石。
光の魔石にはなんとお母様が魔力を入れてくれていた。
水の魔石にはお父様とお兄様たちが。
風の魔石はマカフィーさんで、土の魔石にはジョッシュさんが。

いつの間に用意してくれたのか…。カマーフィールドにまで行ってお願いしてくれたの?
光の魔力なら自分で込められたのに…。お母様の光魔力…僕の光よりも発色が良い。嬉しい。グラナダ様の優しさが心にしみる。


今日はここで眠るって言ってある。過去視を発動するって。いろんな用事も片付けて明日は一日空けてある。

中央に用意した盃に聖女様に祈りを受けた聖水を注ぐ。
ぽちゃん…
聖珠を沈めて…4隅の魔石が光を放つ。
……
……

どうして?発動しない?何かまだ足りないの?何か間違えた?
焦るばかりで考えがまとまらない…どうして?どうして?



「そうではない。聖珠と直接つながるのだ」
「グラナダ様っ?アビーまでっ!」

いつの間にか部屋に居たグラナダ様とアベニア。

「目と目の間、もう少し上の…そうそこだ。そこは経典において第三の眼、心眼と言われる場所。その上に聖珠を置いて…つながるのだ」




言われたままベッドに横たわる僕。

「どうして知ってるの?この間まではだって何も…」
「再び神殿へ出向き…聖人様に助言を願ったのだ。」
「ええっ⁉」
「水見の鏡とは条件が違う。お前の考えるように聖珠をそのままの状態で聖魔力として使うことは出来ぬだろうと思った。」
「僕、考えが浅はかで…」
「そうではない。先だっても気付いておったのだ。だが、…失敗すればいいと思ったのだ。聖珠など失えば良いと。お前の気持ちは汲んでやりたいが、私は怖い。万に一つもお前を失う可能性があるならば、失敗すれば良いと。だが、やはり…」

グラナダ様の顔が苦痛に歪む。ああ…大切な人にこんな顔をさせてまで僕はわがままを通そうっていうのか…

「私を助けるためにすべてを投げ出そうとしたお前の…たった一つの望みすら叶えてやれぬほど狭量な男では…お前に嫌われてしまうかも知れぬからな。アベニアにも父として胸を張れぬ」

「うう…グス…大丈夫です…僕だってちゃんと…考えて…ひぐっ…ここに居たい。」
「見守って良いか?こうして側で。大丈夫だお前を信じておる。私がジジイになってもキャーキャー言ってくれるのだろう?」
「ひっく、言うに決まってる…大好きグラナダ様…」





僕の右手はグラナダ様が。僕の左手はアベニアが。親子三人で川の字になって横たわる。
眉間に乗せた聖珠。4隅の魔石は変わることなく発動を続けている。

「これをどうすれば?」
「願うのだ。お前は知っているはずだ。魔法を発動させる心象風景、強い願い、強い想い。」




「イメージ…思い描く…想い…ねが……ーー」




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