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決断の時編

徹底的に考える

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ふわぁー良く寝た。引きずらないのが僕の良いとこなのだ。
グラナダ様は今日もお仕事だし、昨日の分まで今日はアビーと過ごさなくちゃ。
グラナダ様は王都へ来るといつも忙しい。お父様が重要案件をグラナダ様の訪問に合わせてため込んでおくからだよ。
あの二人は意外と気が合うのか、こうして王都へ来ると良くディナーの後一緒に飲んでる。
グラナダ様はお酒が好きだし、実はお父様もいける口。

「アデル、昨日の合唱団の事だが…」
「グラナダ様、もう考えてくれてたの?」
「孤児院に子供を募るのであれば、神殿に話を通すのが早いと思うが…」
「…何か問題があるの?」
「神殿で…倒れたばかりであろう。そこへお前を連れて行くことに気が進まぬ」

「あれはっ、ちょっと止め時、間違えただけでっ……ごめんなさい。だけどもうあの部屋へは行かないから…」
「アデル…しかし…」
「せ、生誕珠だって貰いに行くって言ってたじゃない///」



絶対にグラナダ様から離れないって条件で明日行くことになった。
神官長に孤児院へのお話を持ち掛けて、それから生誕珠を賜って…僕とグラナダ様はアベニアを連れて一足先にバーガンディへ帰るんだよ。僕をすぐに連れて帰るって、グラナダ様が聞かなかったからね。

「今日はゆっくりと身体を休めるのだぞ。良いな。昼には王妃がここへ来るだろう。水入らずで過ごすとよい」
「お父様は?」「無理だ」

にべもなし……。




アベニアを膝にのせて手書きの絵本を読むうちに、アビーはいつしか夢の中。隣に座ったラフ君もいつの間にか頭がかっくんしてた。
「僕の絵本が退屈とか…」
軽くショックを受けながら本を閉じる。そうして子供の声が聞こえなくなったその部屋で、昨日あの鏡と話したことを改めて考える。

…代わりに相応しい…どういう意味だろう?アデルは残された家族に悲しい想いをさせたくなかった…だからもう一人の自分が居ればいいと思ったの?でも、結局その人も辛い想いをするんじゃんか…。アデルみたいな優しい子がそんなこと思うかな?

よくよく考えれば、そもそもあれは奇蹟のような偶然の時空間転移…。転移を願って何かを思い浮かべたりなんてしているはずがない。それなら深く考えての事じゃなく、もっとぐっとシンプルな…そう、水に沈みゆく自分自身の最後の想い…
違う人になりたい…違う、最後なんだから、〝なりたかった”…だ。この生活に順応した…う~ん…〝この暮らしを楽しめるような違う人になりたかった”………あ、なんかしっくり…


人と接するのも、寄ってこられるのも全然平気なコミュ強の僕。家族意外にはまともに顔を上げられないアデルと真逆だよ。
こんな環境でも辛い想いをしなさそうな…そう、魔法も…魔獣も怖がらない…僕みたいな…?そりゃぁ魔法にテンション上がったけど…

いやけど、ツライ想いをしなかったと言えば噓になる…けど、まぁ確かに、人より順応性は高いほうだ。おねぇちゃんに人として雑って言われるくらいには。
それにアデルはこの容姿を厄災だと思っているふしがある…それを言ったら確かに僕は、初めての美人顔にコーフンしたし、この顔を武器だと思える程度にはずぶとかったりする…。

なんか名探偵にでもなった気分。でも意外といい線いってるんじゃないかって思う。
でもまだだ。まだほかに理由があるはずだ…僕じゃなきゃダメな理由が…



その理由がわかったなら、今度こそすっきりするんじゃないかって思うんだ。






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