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決断の時編
水見の鏡 ②
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それならこの鏡の人の身体にはこちらから転位した人の魂が入り…生き返った奇跡の人みたいな扱いでも受けただろうか?クス…きっと大騒ぎになってるね…
そして、ここに飛ばされたこの魂が入り込める身体はすでに無く、この魔法の媒体だったこの聖杯に定着してしまった…と言う事か。
時々水見に訪れる人々の魔力を燃料に、ただここに居る。
「退屈じゃない?嫌にならない?」
ーーーふむ、訪れる者の願いを覗き見るのが一つの娯楽になっておるーーー
「そっか…」
精神体にだってやっぱり娯楽は必要だよね。
「…ねぇ…アデルはどんな世界を望んだんだと思う?どうしてあの世界…日本に来たのかな…?」
ーーーふむ、日本にではなく、お主のいる場所を望んだのであろうよーーー
「どういう事?僕をって、それ…?」
ーーーわからぬが、己の代わりが見つかる世界を望んだのでは無いのかーーー
「身代わりってこと?」
ーーー未練とまでは言えなくとも残されるものに嘆きを与えるのは本意でなかったのであろうーーー
それならわかる…。僕もそう思ったから…。
ーーーそして最も代わりに相応しいものがお主だったのではないかーーー
「僕が…ふさわしい…」
ーーー話は尽きぬが時間のようだ、これ以上はお主の魔力が持たぬ。また来るが良い。なかなか愉快な話であったーーー
「あっ、ちょっと、ま…ー」
気が付いたらグラナダ様の胸の中だった。
僕はあの水見の部屋で、魔力枯渇を起こしかけて倒れていたらしい…
ちょっと鏡さん、もっと早くにストップかけてよ。死ぬとこだったじゃん!
「アデルッ!気が付いたか!どうした、何があった!」
「え…あのっ、僕その…」
「なかなか戻らぬお前を迎えに行き、倒れているところを連れ帰ったが…魔力枯渇を起こしていた。」
「グラナダ様…」
「私の魔力を注いだが…大事ないか?」
いろんな感情がぐちゃぐちゃになってよみがえり僕は必死にグラナダ様にしがみついた。
「…僕…ぅ…ぅぅ…」
いつもと様子の違う僕にグラナダ様も、マカフィーさんですら何も言わなかった。
自分の感情がわからなくて、僕は子供みたいにただただ泣きじゃくるばかりだった。
「閣下、アデルの様子は?」
「カマーフィールド卿、うむ、泣き疲れ今は眠りについておる。」
「いったい何があったのでございましょう?」
「うぅむ、水見で良くない相でも出たか…。ともかく倒れた原因は魔力の枯渇だ。そうまでしても見るのをやめれなんだと言う事であろう」
「私から話を聞いてもよいものか…」「いや、おそらく何も言わぬだろう」
「アデルは下らぬことは何でも話すが…泣き言や愚痴は言わぬのだよ、決して…それは私が…一番よく知っておる…」
暗い部屋の中で目を覚ます。
隣にグラナダ様が居るのを確認してホッと胸をなでおろす。
ぐりぐりと頭をねじ込むとグラナダ様が笑いながら抱きしめてくれた。
「ねぇ、アビーは何してる?隊のみんなはどうしたの?子供たちは?」
「ふふ、矢継ぎ早に聞くのだな。アビーは乳母とラフが面倒をみて、とうに眠っておる。音楽隊は酒宴の後、屍になっておるわ。子供たちはバンが監督しておるから心配いらぬ」
「良かった…あの、今日はごめんなさい。僕、あんなことになると思わなくって…」
「心配させるなアデル。お前は私の大切な最愛で…アベニアのたった一人の母だ」
「…はい…」
そうだよ。僕にはここに家族が居る。カッコよくて頼もしい旦那様と可愛くて命より大事な一人息子…。
だけどいつでも胸の奥にあったこの気持ち…さようならもありがとうも言えなかった僕の心残り。
…どうしよう…帰れる方法が分かっちゃった…
そして、ここに飛ばされたこの魂が入り込める身体はすでに無く、この魔法の媒体だったこの聖杯に定着してしまった…と言う事か。
時々水見に訪れる人々の魔力を燃料に、ただここに居る。
「退屈じゃない?嫌にならない?」
ーーーふむ、訪れる者の願いを覗き見るのが一つの娯楽になっておるーーー
「そっか…」
精神体にだってやっぱり娯楽は必要だよね。
「…ねぇ…アデルはどんな世界を望んだんだと思う?どうしてあの世界…日本に来たのかな…?」
ーーーふむ、日本にではなく、お主のいる場所を望んだのであろうよーーー
「どういう事?僕をって、それ…?」
ーーーわからぬが、己の代わりが見つかる世界を望んだのでは無いのかーーー
「身代わりってこと?」
ーーー未練とまでは言えなくとも残されるものに嘆きを与えるのは本意でなかったのであろうーーー
それならわかる…。僕もそう思ったから…。
ーーーそして最も代わりに相応しいものがお主だったのではないかーーー
「僕が…ふさわしい…」
ーーー話は尽きぬが時間のようだ、これ以上はお主の魔力が持たぬ。また来るが良い。なかなか愉快な話であったーーー
「あっ、ちょっと、ま…ー」
気が付いたらグラナダ様の胸の中だった。
僕はあの水見の部屋で、魔力枯渇を起こしかけて倒れていたらしい…
ちょっと鏡さん、もっと早くにストップかけてよ。死ぬとこだったじゃん!
「アデルッ!気が付いたか!どうした、何があった!」
「え…あのっ、僕その…」
「なかなか戻らぬお前を迎えに行き、倒れているところを連れ帰ったが…魔力枯渇を起こしていた。」
「グラナダ様…」
「私の魔力を注いだが…大事ないか?」
いろんな感情がぐちゃぐちゃになってよみがえり僕は必死にグラナダ様にしがみついた。
「…僕…ぅ…ぅぅ…」
いつもと様子の違う僕にグラナダ様も、マカフィーさんですら何も言わなかった。
自分の感情がわからなくて、僕は子供みたいにただただ泣きじゃくるばかりだった。
「閣下、アデルの様子は?」
「カマーフィールド卿、うむ、泣き疲れ今は眠りについておる。」
「いったい何があったのでございましょう?」
「うぅむ、水見で良くない相でも出たか…。ともかく倒れた原因は魔力の枯渇だ。そうまでしても見るのをやめれなんだと言う事であろう」
「私から話を聞いてもよいものか…」「いや、おそらく何も言わぬだろう」
「アデルは下らぬことは何でも話すが…泣き言や愚痴は言わぬのだよ、決して…それは私が…一番よく知っておる…」
暗い部屋の中で目を覚ます。
隣にグラナダ様が居るのを確認してホッと胸をなでおろす。
ぐりぐりと頭をねじ込むとグラナダ様が笑いながら抱きしめてくれた。
「ねぇ、アビーは何してる?隊のみんなはどうしたの?子供たちは?」
「ふふ、矢継ぎ早に聞くのだな。アビーは乳母とラフが面倒をみて、とうに眠っておる。音楽隊は酒宴の後、屍になっておるわ。子供たちはバンが監督しておるから心配いらぬ」
「良かった…あの、今日はごめんなさい。僕、あんなことになると思わなくって…」
「心配させるなアデル。お前は私の大切な最愛で…アベニアのたった一人の母だ」
「…はい…」
そうだよ。僕にはここに家族が居る。カッコよくて頼もしい旦那様と可愛くて命より大事な一人息子…。
だけどいつでも胸の奥にあったこの気持ち…さようならもありがとうも言えなかった僕の心残り。
…どうしよう…帰れる方法が分かっちゃった…
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