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新たな家族編

助っ人隊員のつぶやき

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俺のトールキン様はとっても可愛いお方だ。
俺より年上で大きくてしっかり者の真面目な人。可愛いなんていったらいけないんだろうけど…なんか可愛い。

いつも領地の事、領民の事を考えている。いつも家族の事を思いやっている。俺の事もいつもすごく心配してくれる。なのに自分の事にだけはいつだって無頓着だ。

諜報任務の最中も、俺に危険が無いようにっていつも気遣ってくれた。アデル様にいただいたインビジブルがあるって言ってるのに俺に水の結界を張ろうとして聞かなかった。見つかっちゃうってば、もう。

バーガンディから食料や物資の支援を受けて生活が向上し始めた時も伯爵夫人には立場にあった暮らしをと言いながら、自分は質素な暮らしをやめなかった。
余裕が出来たら全部領民の生活向上に回してしまう。自分は着古した服着てるくせに。気に入ってるから捨てられないって…それ俺のお袋も言ってたよ。何度も繕った上っ張りなんかに。

それなのに、俺にはせっかく来たんだからってカマーフィールドの名物料理いっぱいごちそうしてくれた。もう腹いっぱいだって言っても、若者は美味しそうに食べるのが一番だって笑って。トールキン様だってそんなおっさんって歳でもないのに。

治水の視察に同行した時も、「母上には秘密だよ。さすがに叱られてしまう」農家で貰ったリンゴ、一緒にかじりながら食べた。
トールキン様は手で割ろうとしたが無理だった。俺だって出来ないよそんなの。閣下か隊長ぐらいしか出来ないって。
ウォーターカッター使えばいいのにって思ったけど…ムキになってるトールキン様が可愛かったので言わないでおいた。最後まで割れなくて少しすねてたトールキン様もやっぱり可愛かった。



俺が何か一つ仕事手伝うたびに大げさなくらい褒めてくれるトールキン様。

「ローランは本当にすごい。なんでも出来るのだね。ご両親が良く育ててくれたのか…辺境で鍛えられたのか…。ワイアットも居ない今、私はローランが居なければ途方に暮れていたところだよ。感謝の言葉もない。頼りの無い領主代理だが、これからも私を助けてくれるかい?」

平民出の俺なんかに当たり前みたいな顔してそんな言葉をかけてくれる。



そんな実直なお人柄が俺は大好きだ。そんな心優しいトールキン様が…俺は、俺は大好きなんだ。
平民の俺が次期伯爵様とどうこうなんて考えたこともないけど、こうして側に居られるだけで十分だ。



こうしてずっと、この人の力になれたら俺はそれで満足なんだ。





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