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王位交代開始編

応援上映 ②

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ヴィーヴルと閣下の一騎打ち。その映像は我らグリーンバルト領軍に結末を知らせることなく明けの薄闇に消えた。
皆が空を見上げ茫然自失となるなか、ひと際大きな声が静寂を突き破った。

「何をしている!この映像が本物だという証拠がどこにある!作り物に違いない!王は負けてはおらぬ!あのような化け物など存在するかも怪しいものだ!さあゆけっ、我らが王をお助けするのだ!奴らが呆気に取られている今が好機だ!」

奇襲をかけんと向かってくる王国第三騎士団とデボン侯爵軍。好戦的な侯爵軍と、有能で統制のとれた第三騎士団は寄せ集めの我らにとってかなり手ごわい相手であった。
アデルから送られた強化の護符はあれど、しょせん戦術も戦局を読むことも知らぬ義勇兵たちには宝の持ち腐れのようなものであった。だが、多少の助けにはなっているのであろう。そうでなければ当に敗走しておった。

私の読みが甘かったのだ。デボン侯爵軍は功績の多い西の穀倉を狙ってくると思っておったのだが。だからこそ、かの地にグレゴリー大隊長を配すよう辺境伯閣下に進言したというのに。
いずれ援軍は来るであろう。然らばそれまでを何とか持ちこたえるより他はない…。



あれから二日間ほどの時間が経った…
備蓄の兵站は持つのか…負傷者はどれほどに膨れ上がったのだ…残兵の疲労はいかばかりか…
己のふがいなさに腹がたつ。争いごとから逃げ続け腑抜けた私への罰であろうか…

「卿!カマーフィールド卿!加勢です。加勢が参りました。」
「何と!思ったより早いではないか。ああ、どれほど急いでくださったのか。してどこにおるのだグレゴリー殿は」
幾月も前から私の補佐を続けていてくれたローランが駆け込んでくる。

「いいえ、グレゴリー大隊長ではありません。閣下です。元帥閣下が自らお越しになられております!」
「そ、それはどういうことだ!閣下はヴィーヴルを相手取って戦っておったではないか!ましてや領を出ることはかなわぬのではなかったのか!」

「お義父上!説明は後だ!戦況はどうなっている?」

帆布の間仕切りを掻き分け、脇目も振らず真っすぐに我らに向かうやすぐさま状況把握を済ませていく。
閣下は長い間魔獣相手の討伐を続けており人間相手の交戦には慣れておらぬと思ったのだが、尋常ならざる強者には負の要因にもならぬらしい。

「よいかっ!隊列を組みなおす!私の命に従いついて参れ!」

たった一人の闘将により戦局が見る見るうちに変わっていく。辺境伯閣下による獅子奮迅の活躍で王国軍の勢いは見るも無残に削られていく。
翌日には西領からグレゴリー隊の兵が合流し、それより一両日で戦いは終わりを迎えた。

「一日も早くアデルの元に戻らねばならん!何をしておる!みな後始末は迅速に処理せよ!」




漏れ出る瘴気はもうないはずだが…それ以上に鬼気迫る閣下であった。








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