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王位交代開始編

カウントダウンフェス  ー王宮②ー 番外

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「ワイアットーーーー!」
「クリフッ‼」

考えるより先に体が動いていた。
その場にいた誰もが私の最悪を覚悟したその瞬間、

ビキィィィィ

何かの破壊音とともに私の目の前でピンクベージュの火花がはじけ飛んだ。

「これは…?」
「皆!呆けるのは後だ!」

怪我もなく支えあう私たちを瞬時に確認した反乱軍は火花の閃光に動きの鈍った聖騎士団をここぞとばかりに退けた。
そして、宰相を置き去りに近衛を引き連れ陛下は奥へと走り去る。逃げ遅れた宰相はワイアットの助けを借りて私が自ら捕縛した。


「さぁ、みんな最後の戦いだ。欠けた者はいないね。…ここまでついて来てくれたこと本当に感謝する。…あと少しだけ力を貸してほしい…」

手の中にある…胸の中央に大きな穴を開けた人形。それは役目を終えどこか満足そうに見えた。




陛下の氷結魔法で凍り付いた居室へと向かう長い廊下。最奥、ひときわ豪奢な扉の前では近衛兵が守りを固めている。兵士たちにこの場を任せ、部屋への侵入を試みる。そこへすでに潜入していたバーガンディのマーカス殿が合流した。
「陛下はいつもここぞという時、術師を供回りに置くのですよ。」

厚い氷で閉じられた扉。私の光魔法で溶かせるだろうか…
「自信をもって殿下。力を抜いて教えたとおりに。貴方なら出来る、そうでしょう?」
「ふぅ…お願いだ、支えていてくれぬかワイアット。そうだ出来る…出来るとも…」




無事魔法の発動を確認し氷の溶解した扉から部屋へと押し入った私達に憎々し気な声がかけられる。

「クリフト…まさかお前が…とんだ伏兵が居たものだ。お前のような役立たずが大それた真似をしおって!さぁ、今すぐ茶番をやめるのだ。跪き詫びて服従を誓え!さすれば命だけは助けてやろう!」
「国王陛下…いえ父上。なんと醜悪な…あなたへの憎悪が国中を覆いこの国を転覆させる前に…どうぞ退いていただきたい…」
「お前に何が出来る!何も出来ぬわ!知っておろう、お前には何の力も「出来ます!」」
「なんだって出来ますとも。大切なものが何か、私にはもうわかっている。譲れないものは…この手の中に。…ふふふ、なんだって出来るのですよ、今の私は!」

横を見上げればいつもそばにあった強く涼やかな瞳。それが私の勇気となる。

「…無能と思い侮っておったわ。お前たち何をしている!術だ!昏睡の術をかけぬか!」

マーカス殿の工作の甲斐あり術師は王に叛意をみせた。カマーフィールド卿からの解呪の札はすでに術師を開放へと導いている。




「おのれ、おのれおのれおのれ!!!くらうがよい」

王の放った冷気が部屋中を覆い足元から凍りつかせんとせり上がってくる。私は手のひらに作った小さな太陽ですべてを溶かす。

「ぐぅっ!…もうよい!道連れじゃ!皆死ぬがよい!」

最後のあがきで放たれた大きな氷塊を含んだ暴風の中、私たちは立っていることすらままならぬほど翻弄されなすすべもない。

「【氷結の暴風】は魔力消費が激しいっ、くっ、陛下の力が尽きるまで耐えきればっ」
「マーカス殿、それでは持ちませぬ!殿下、私に力を!」
「ワイアット、何をすればいい?氷塊だけなら光で溶かせる。だが暴風を抑え込む術が」
「いいえ、いっそ暴風にはさらなる暴風をぶつけるのです!私の作り出す水と殿下の光で」
「そうか、水蒸気を発生させ渦をつくるのかっ!ならば術師は私が盾となり守りましょう。思う存分おやりなさい!」

ワイアットの水魔法と私の光魔法が混ざり合う。そしてそれは大きな渦となりやがて暴力的な風となる。
だが王の【氷結の暴風】を撥ね退けるにはまだ威力が足りない!

「もっと、もっとだ!私なら出来る!」
「ダメだ!やめるんだ!これ以上は危険だ!これでは貴方が助からない!」
「約束したんだアラタと!」
すべて失ったって自分だけは失わないって
「ならば…ならば私もともに!」


ゴォゴォと吹き荒れぶつかり合う獰猛な狂風の中、ついに王の断末魔の叫びが聞こえた
力に取りつかれた絶対君主。父王の望んだ世界には一体何が残ったのだろうか。


力尽き抱き合ったまま暴風に巻き込まれかけたその時、私とワイアットの胸に下げた小さな袋から場違いなほどやわらかな光が流れ出してきた。




「ア、アラタの護符が……」
「なんと!アデルの結界は驚異的だ」

気の抜けるようなピンクベージュのカーテンの中で私とワイアットは顔を見合わせ目を丸くし、そして、心の底から笑いあった。




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