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王位交代開始編
父子の対面 ②
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どうしようどうしようどうしよう。こっちのお父様のことなんてわかんないよ。ばれないかな?僕が本物のアデルじゃないってばれないかな?
心の中で半パニック起こしながらもトマスさんに続いて歩く。アデルの脳内記憶で顔や出来事なら多少はわかる。
でも、本物のアデルがその時何を思って何を感じたかまではわからない…
う~ん、大人しい子だったんだよね。メイドさんたちも過保護だったし。き、貴族の息子のふるまいなんてできるかな?お上品にしておけばおk?
そうこうしてたら応接間に着いちゃった。
中から聞こえるお父様とグラナダ様が歓談する声。トマスさんが目を細めて感慨深げだ。
「旦那様がこのように穏やかに談笑なさるとは…」
ギギィ
開けられた扉に向けられる初めて見るお父様の瞳。アデルと同じアイスブルーの瞳。
「こちらへアデル。お義父上にもっとよく顔を見せてやりなさい」
「お、お父様、あ、あの」
「お、お…アデルや。音信なく心配しておったが元気そうで良かった。本当に良かった…」
ぎゅうって抱きしめられる僕。本当のお父さんじゃないはずのに、何故だか胸がつまって…
「う、うう…ぐす…あ、会いたかった…すごく、すごく会いたかった…うえぇ…」
なんだかほんとのお父さんがといるような気持ちになって…そうしたら急に泣けてきた。
おかしいな、お父さんとは全然似てないほっそりした柔和な男の人。でも、そこに居るのは息子を案じる父親で…大切そうに息子を抱きしめる父親で…きっとおんなじだって、お父さんもきっとおんなじだってそう思ったら…自然と涙がでてきた。
「アデル、アデル。このような遠く離れた見知らぬ土地にたった一人、見送ることしかできなかった父を許しておくれ。」
「ううんそんな。許すだなんて…」
「父が愚鈍なばかりに…」
「いいえ、お父様は純粋なだけです。僕はそんなお父様が大好きです……」
「そのように言ってくれるとは…純粋なのはお前のほうだアデルや。そんなお前が初めて家を出てどうしているかと気が気でなかった。だが辺境伯様は噂と違い随分愛情深いお方のようだ。それだけが救いであったよ」
「……」
「……」
「……」
涙が引っ込んだ。
お父様はお屋敷に3日ほど滞在されるそうだ。ついてきた従者の人たちは関所の手前、隣の領で待機してるらしい。お父様ってけっこう魔力強いんだね。聞いてはいたけどふわっとした姿になかなか想像が追い付かなくてやっと実感が伴った。
一緒に囲むダイニングテーブル。っていっても長すぎて囲めてないけど。
ここであったあんな事やこんな事は「お父様を心配させたくないっ」って言ってかなりアレンジしてもらったよ。
雨降って固まったんだからいいよね。だから王様と赤ちゃんのことだけはキチンとお知らせした。
「王がそのような…なるほど、あれほど執拗に婚姻を進められたのにはそのような魂胆があったのですな」
「すまない伯爵。私と兄の確執にアデルは、カマーフィールドは巻き込まれたようなものだ」
「いえ、私めの不徳の致すところでございます。領地の運営が思うに運ばす皆に迷惑をかけ通しで…息子たちにもなんと詫びればよいのか」
「ふむ…否定はせぬが、あれは宮廷のこ狡い貴族連中に手玉に取られておるとも言えるな。まったく…領地の財、そなたの才、好き勝手に搾取させてはならぬぞ」
「返す言葉もございませんな」
お父様、汗びっしょりだよ…僕と言えばうっかりボロが出ないようとっても静かにしているよ。グラナダ様にはお父様の前でネコ被ってるって思われてるみたい。お父様にはいつもの息子の姿に見えてるみたいだから丁度良かったね。
「とはいえ、アデルを娶れたことは私にとって僥倖であった。感謝するぞ伯爵」
「おお…息子をそのように…おそれおおいことにございます」
「そこでだ、妻をこれ以上悲しませぬよう此度の問題にはここでけりをつける。伯爵よ、其方にも力を貸してもらわねばならぬ」
「むむ、今度ばかりはそのようですな…。アデルにこれだけの苦労をかけたうえ、長兄トールキンにまで…負債ばかりを背負わせるわけにはいきませぬからな」
おお!お父様参戦!頼りに…なるのか?
心の中で半パニック起こしながらもトマスさんに続いて歩く。アデルの脳内記憶で顔や出来事なら多少はわかる。
でも、本物のアデルがその時何を思って何を感じたかまではわからない…
う~ん、大人しい子だったんだよね。メイドさんたちも過保護だったし。き、貴族の息子のふるまいなんてできるかな?お上品にしておけばおk?
そうこうしてたら応接間に着いちゃった。
中から聞こえるお父様とグラナダ様が歓談する声。トマスさんが目を細めて感慨深げだ。
「旦那様がこのように穏やかに談笑なさるとは…」
ギギィ
開けられた扉に向けられる初めて見るお父様の瞳。アデルと同じアイスブルーの瞳。
「こちらへアデル。お義父上にもっとよく顔を見せてやりなさい」
「お、お父様、あ、あの」
「お、お…アデルや。音信なく心配しておったが元気そうで良かった。本当に良かった…」
ぎゅうって抱きしめられる僕。本当のお父さんじゃないはずのに、何故だか胸がつまって…
「う、うう…ぐす…あ、会いたかった…すごく、すごく会いたかった…うえぇ…」
なんだかほんとのお父さんがといるような気持ちになって…そうしたら急に泣けてきた。
おかしいな、お父さんとは全然似てないほっそりした柔和な男の人。でも、そこに居るのは息子を案じる父親で…大切そうに息子を抱きしめる父親で…きっとおんなじだって、お父さんもきっとおんなじだってそう思ったら…自然と涙がでてきた。
「アデル、アデル。このような遠く離れた見知らぬ土地にたった一人、見送ることしかできなかった父を許しておくれ。」
「ううんそんな。許すだなんて…」
「父が愚鈍なばかりに…」
「いいえ、お父様は純粋なだけです。僕はそんなお父様が大好きです……」
「そのように言ってくれるとは…純粋なのはお前のほうだアデルや。そんなお前が初めて家を出てどうしているかと気が気でなかった。だが辺境伯様は噂と違い随分愛情深いお方のようだ。それだけが救いであったよ」
「……」
「……」
「……」
涙が引っ込んだ。
お父様はお屋敷に3日ほど滞在されるそうだ。ついてきた従者の人たちは関所の手前、隣の領で待機してるらしい。お父様ってけっこう魔力強いんだね。聞いてはいたけどふわっとした姿になかなか想像が追い付かなくてやっと実感が伴った。
一緒に囲むダイニングテーブル。っていっても長すぎて囲めてないけど。
ここであったあんな事やこんな事は「お父様を心配させたくないっ」って言ってかなりアレンジしてもらったよ。
雨降って固まったんだからいいよね。だから王様と赤ちゃんのことだけはキチンとお知らせした。
「王がそのような…なるほど、あれほど執拗に婚姻を進められたのにはそのような魂胆があったのですな」
「すまない伯爵。私と兄の確執にアデルは、カマーフィールドは巻き込まれたようなものだ」
「いえ、私めの不徳の致すところでございます。領地の運営が思うに運ばす皆に迷惑をかけ通しで…息子たちにもなんと詫びればよいのか」
「ふむ…否定はせぬが、あれは宮廷のこ狡い貴族連中に手玉に取られておるとも言えるな。まったく…領地の財、そなたの才、好き勝手に搾取させてはならぬぞ」
「返す言葉もございませんな」
お父様、汗びっしょりだよ…僕と言えばうっかりボロが出ないようとっても静かにしているよ。グラナダ様にはお父様の前でネコ被ってるって思われてるみたい。お父様にはいつもの息子の姿に見えてるみたいだから丁度良かったね。
「とはいえ、アデルを娶れたことは私にとって僥倖であった。感謝するぞ伯爵」
「おお…息子をそのように…おそれおおいことにございます」
「そこでだ、妻をこれ以上悲しませぬよう此度の問題にはここでけりをつける。伯爵よ、其方にも力を貸してもらわねばならぬ」
「むむ、今度ばかりはそのようですな…。アデルにこれだけの苦労をかけたうえ、長兄トールキンにまで…負債ばかりを背負わせるわけにはいきませぬからな」
おお!お父様参戦!頼りに…なるのか?
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