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王位交代開始編

昼下がりのメンズ・コレクション グラナダ視点

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あれから10日ほどの日が過ぎ、着々と事は進んでいる。
秘密裏に王宮内で動き、信頼できそうな中庸貴族、また、確固たる根拠を持って私を推挙していた王弟派の中の一部の貴族と渡りをつけた。
この私が一部とはいえ王弟派と手を結ぶ日が来るとはな…

私にとっては全ての王弟派はみな同様に煩わしい存在であった。聞く耳さえ持っていれば至極肝要な話も聞けたものを…だが今更なことだ。なんとしてもここから構築し直すしかない。


それにそろそろカマーフィールド卿が到着する頃だろう。急ぎ来訪を促す手紙は最速の伝書鷲に送らせた。折り返し届けられた返信によれば数日後には領地を出発しているはずだ。

事が動き出す…




しかし…、これでもう何着目なのか…

「グラナダ様こっちこっち、こっちの衣装も着て見せて~♡」
「う、うむ」
パシャリ
「んはぁ~イイ~♡ま、窓辺に、窓辺にそう、あー!いい感じー!足かけて、そうっ、それー!」
パシャリ パシャリ


疲れた顔をした服飾職人がそれでもなにやら満足そうだ。
「なるほど、飾らない美学…理解しましたよ。ええ、実に!」

アデルはなにやら謎の魔道具で肖像を羊皮紙に写していく。どういった仕組みなのか。
術師のオットーまでもが魔道具の起動に興奮しておるようだ。
「寝る間も惜しんで試行錯誤を繰り返したかいがありました~実に、実に!…感激です…」
「それもこれもオットーさんが頑張ってくれたおかげだよ、ホントありがとう。ううっ…あっグラナダ様視線下さい~」
パシャリ


アデルにやった離宮の中にこのような衣裳部屋が出来ていたとは…
木彫りでできた胴体が一定の間隔で部屋を囲んでいる。その中の2体がどこかで見た衣装を着ている。

「これは…私の服ではないのか?」
「旦那様がアデル様をお迎えなされた時の衣服にございます。アデル様にお願いされまして。」
「衣裳部屋になど入らぬから気付かなんだわ。ぬ、これはもしや…疑似スタンピードの時の!」
「それもアデル様がどうしても欲しいとおっしゃられ」
「むむむ…なんという…アデルは私を愛でる才に突き抜けておるな」
「まことにそのようでございます」
「私もアデルの胴を…そういえば…」

肖像の写しに夢中になっているアデルに問いかける。

「私がお前に送った服は着ぬのか?」
「えっ、あ~あれは~ちょっとビラビラしてて実用的じゃないな、と。」
「お前の髪色に似あうペールグレーのほうは如何した?」
「刺繡はキレイだけどひっかけたら破りそうで着れないデス」
「ではいつ着るのだ!」
だからいつものシャツなのか…これが似合わぬ訳ではないが私もアデルを飾り立てたいのだ!


「よかろう、ならばお前にもこれくしょんとやらをやってもらおうか。今夜、二人きりでな」
「え、あ、はい…嫌な予感しかしない…」




今夜アデルをどのように愛でようか算段をたてながら私は6着目の衣装に手をかけた。






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