33 / 247
推し活満喫編
狂気の部屋② グラナダ視点
しおりを挟む
「ま”ああああああああああああ!」
絶叫とともにアデルが私の腕をふりほどき走り出す。早い!
奥の扉を開けようとしたグレゴリーからその取っ手を奪い返すと一人その部屋に滑り込み中から鍵をかけた。
また隠れようというのか!私を置いてどこへ行こうというのか!
「どけっグレゴリー!」
力任せに蝶番ごと扉を引きちぎると解放されたその部屋の真正面には…描きかけの…ヒュドラに対峙したあの日の私が居た。
「…やはりあれはお前だったのだな。…そうか、お前の目に私はこう映っているのか…」
人の皮を被った魔人と人々が恐れる私の力。だがそのキャンバスの中の私は、ヒュドラの背に乗り、勇敢で剛胆でそして堂々たる姿で描かれていた。
…いかん!顔がくずれる。部下の前だというのに。
アデルは……どっ、どうしたアデルッ!
五体投地の状態で頭を抱えている。
ん?正面の絵に気を取られていたがよく見渡してみればこの部屋は…
離宮でみたあの部屋をはるかに上回る勢いで私が装飾されている。私を模したなにがしかが壁という壁、机という机を埋め尽くしている。
アデルの私への底知れぬ狂気を感じる…そ、そうか…愛されているのだな私は…
「うぅ…ミナイデ…ミナイデ…」
呪文のようにアデルがうめいている。
ふむ、以前は炭で描かれていた肖像画も色をのせるとこうなるのか。しかしやや美しすぎるのではないか?まぁ、アデルの目にそう映るというのであれば仕方ないが。
「閣下顔がにやけてますよ」
「うるさいマカフィー」
マカフィーの奴め、最近態度がぞんざいだぞ。
ダイニングでは全ての椅子に私が座っている。夜着の私。訓練着の私。部屋着の私。ふふ、食事を共にしていたのだな。
風に揺れシャラシャラと音を立てるハンギングアミュレットは私の赤と濃紺で彩られている。これでは私がアデルを守っているも同然ではないか。可愛いまねを…どうしてくれようか…
「あーゴホン、閣下こちらを」
がばりと顔をあげアデルが復活する。
「それだけはダメーーーーーーーー!」
ベッドの上の長い枕を死守しようとしている。枕ごときに何を慌てているのやら。グレゴリーがあっけなくその枕を奪い取り私に放ってよこす。
「ほ、ほぅ…照れますな」
「これはこれは」
「なかなかの出来具合で」
「へー、上背もあってますね」
「……裸体を披露したことは無いのだがな…ふっ…」
上半身をさらけ出した私の姿を描いた等身大の枕であった。
「ふふ、アデルよ。して、この枕をどのように使っているのだ」
「ばっ!まっ、枕に枕以外の使い方なんてっ」
「そうか?」
「そうです!」
「気づかなかったが湯浴みでも覗いていたのか?んん?」
つい声が甘くなる。
「そんっ、まさかっ!…そ、想像して…ぁあっ!もう嫌だ!」
「ならばどうだ。本物の身体を見てみるか?」
人の顔がここまで赤くなるのかと面食らうくらい真っ赤になってアデルは意識を手放した。
ちょうどよい、このまま連れて帰ってしまおう。
「アデルの創作物はすべて邸に運び込め。丁寧に扱うのだぞ」
興味深げに部屋をみていた魔術士が口をあけて天井を凝視している。
そこにも大判の布地に描きあげられた私の顔があった。
ふむ、全方位完璧だな。
絶叫とともにアデルが私の腕をふりほどき走り出す。早い!
奥の扉を開けようとしたグレゴリーからその取っ手を奪い返すと一人その部屋に滑り込み中から鍵をかけた。
また隠れようというのか!私を置いてどこへ行こうというのか!
「どけっグレゴリー!」
力任せに蝶番ごと扉を引きちぎると解放されたその部屋の真正面には…描きかけの…ヒュドラに対峙したあの日の私が居た。
「…やはりあれはお前だったのだな。…そうか、お前の目に私はこう映っているのか…」
人の皮を被った魔人と人々が恐れる私の力。だがそのキャンバスの中の私は、ヒュドラの背に乗り、勇敢で剛胆でそして堂々たる姿で描かれていた。
…いかん!顔がくずれる。部下の前だというのに。
アデルは……どっ、どうしたアデルッ!
五体投地の状態で頭を抱えている。
ん?正面の絵に気を取られていたがよく見渡してみればこの部屋は…
離宮でみたあの部屋をはるかに上回る勢いで私が装飾されている。私を模したなにがしかが壁という壁、机という机を埋め尽くしている。
アデルの私への底知れぬ狂気を感じる…そ、そうか…愛されているのだな私は…
「うぅ…ミナイデ…ミナイデ…」
呪文のようにアデルがうめいている。
ふむ、以前は炭で描かれていた肖像画も色をのせるとこうなるのか。しかしやや美しすぎるのではないか?まぁ、アデルの目にそう映るというのであれば仕方ないが。
「閣下顔がにやけてますよ」
「うるさいマカフィー」
マカフィーの奴め、最近態度がぞんざいだぞ。
ダイニングでは全ての椅子に私が座っている。夜着の私。訓練着の私。部屋着の私。ふふ、食事を共にしていたのだな。
風に揺れシャラシャラと音を立てるハンギングアミュレットは私の赤と濃紺で彩られている。これでは私がアデルを守っているも同然ではないか。可愛いまねを…どうしてくれようか…
「あーゴホン、閣下こちらを」
がばりと顔をあげアデルが復活する。
「それだけはダメーーーーーーーー!」
ベッドの上の長い枕を死守しようとしている。枕ごときに何を慌てているのやら。グレゴリーがあっけなくその枕を奪い取り私に放ってよこす。
「ほ、ほぅ…照れますな」
「これはこれは」
「なかなかの出来具合で」
「へー、上背もあってますね」
「……裸体を披露したことは無いのだがな…ふっ…」
上半身をさらけ出した私の姿を描いた等身大の枕であった。
「ふふ、アデルよ。して、この枕をどのように使っているのだ」
「ばっ!まっ、枕に枕以外の使い方なんてっ」
「そうか?」
「そうです!」
「気づかなかったが湯浴みでも覗いていたのか?んん?」
つい声が甘くなる。
「そんっ、まさかっ!…そ、想像して…ぁあっ!もう嫌だ!」
「ならばどうだ。本物の身体を見てみるか?」
人の顔がここまで赤くなるのかと面食らうくらい真っ赤になってアデルは意識を手放した。
ちょうどよい、このまま連れて帰ってしまおう。
「アデルの創作物はすべて邸に運び込め。丁寧に扱うのだぞ」
興味深げに部屋をみていた魔術士が口をあけて天井を凝視している。
そこにも大判の布地に描きあげられた私の顔があった。
ふむ、全方位完璧だな。
628
お気に入りに追加
3,333
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」


田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる