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推し活満喫編

愚かな私 グラナダ視点

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7日ほどの時間をかけて疑似スタンピードの後処理を終えるとようやく己に使える時間ができた。
これでやっと黒髪の少年を、私のアデルを迎えに行ける。

居場所はすでに特定がすんでいる。
村の入り口一番手前の小さな店。人通りの少ない辺鄙な場所だが森に向かう冒険者などは必ず通る道だ。
その小さな店の前には〈ポーションあります〉わかりやすい木彫りの看板が出ている。

あの後、森の中のいたるところでポーションの空き瓶を発見した。そして、その形状がアデルの置いて行ったポーションの容器と同じことも確認した。

黒髪の少年はアデルだ。
すでに疑惑は確信に変わっている。
容姿をどのようにして変えたのかはわからないが見た目などなんでもいい。私はあの私の後を(陰から)付いて回るアデルが好きなのだ。

自分でも現金なものだとは思うが…

思えば私は最初からカマーフィールド家からやってくる仮初の妻に先入観を持っていた。王命によって嫌々嫁ぐ哀れな伯爵子息。私のようなものと同衾せねばならない気の毒な子供。極力私と関わらせず離宮で静かに過ごさせてやれば十分だろう。そう思っていた、はずだった。
だが、積み重なる人間不信、食傷気味な王命、そして耳にしてしまったメイドの言葉で勝手に落胆し身勝手に怒り、逆恨みにも似た感情が暴走した。

私を見つめるアイスブルーの瞳。あの瞳に見つめられると心がざわついた。だが、アデルの本心を知った気になっていた私はその視線に苛立った。
私と直接話すとき、アデルの瞳には涙がにじむ。その感情を畏怖だと思い込んでいた私はますます腹をたてた。恐怖におびえながら何を探ろうというのか…懐くふりなど心にもない真似を。
だがバーガンディの星のない闇夜の中一人夜酒をたしなむ時、…気を抜くと…思ってしまう。
アデルのあの視線が真実私を想うものだったらどれだけ良かったか…
浅はかな考えを持ってしまう自分にうんざりし翌日にはますます苛立ちを募らせてしまう。そんな泥沼の日々だった…

だからこそあの日、アデルの心を知り、驚愕した、歓喜した、後悔した、そしてそこにアデルがいないことに絶望した。
なんと私は愚かだったのか…誰も信じないといいながら何故あのメイドたちの言葉だけは信じてしまったのか…
領地の皆は私をバーガンディの勇ましい辺境伯と頼ってくれるが…本当の私はアデルと向き合う小さな勇気さえ持てなかった臆病者だ。

あぁアデルお前はこんな私を許してくれるだろうか。


店の中に立ちすくむ少年。その顔を覗き込む。黒い瞳。アイスブルーのアデルの瞳とは正反対だが…
その瞳は私を見つめるアデルの、それと同じくどこまでも深い。

「…あぁ、私を見つめるその眼差し。…お前は、お前はやはりアデルなのだな。ぐっ、探したぞアデル。やっと見つけた…」
いかん、泣きそうだ。だが部下の前で情けない姿は見せられん!
アデルは人違いだと言いはるが…よく見るとアデルの全身を薄い魔力が包んでいる。見たこと無い魔法だ。だが…
「これはっ!メタモル魔法かっ!取得できるものはほとんど居ないと言われるあのっ!そうだったのか!魔術師団!総員で解除にかかれ!」

アデルの魔法の才に総毛だつ。お、おそるべしカマーフィールド。何故没落寸前なのだっ!
しかし、総員でかかってまだ解けぬのか。えぇい、これを使え!私の魔力を流し込むとついに魔法のベールが破られた!



アデル!やっと会えた!あぁ私のアイスブルー!




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