4 / 247
推し活満喫編
神様ありがとうっ
しおりを挟む
進めば進むほどに森は暗く肌寒くなっていく。
この乗り心地最悪な馬車はそれでも嫁に出す息子への最後のはなむけとばかりにお父さんやお兄さんたちが目いっぱいの防御魔法をかけてくれたみたいだ。せめて道中安全なようにと。
辺境伯領、その名も魔獣の住まう地バーガンディ。この地の空気は年々瘴気の淀みが進行していて、昔はここまでひどい状態ではなかったのに今では魔力の弱いものは足を踏み入れることもできないらしい。
もともと領内に住んでいた先住民たちは少しずつの変化だったから適応していったみたいだけど外からの者はそうはいかない。
そういう意味でも魔力操作に長けたカマーフィールド家の血筋はこの地への適性が高い。なるほど、婚姻相手に選ばれるわけだ。そんなわけで旅の従者も伯爵家の使用人の中でも比較的魔力の多い者が厳選された。それでも長く留まるほどではないみたい。ギリ入ることは出来る程度ってところ。そのため僕を無事送り届けたら皆すぐ帰ってしまう。
とは言っても僕的にはこの人たちすら道中の2~3日分の面識しかないからそれほど寂しさは感じないんだ。心細さ?そんなのこの世界に来た時からずっと心細さは続いてる!
どうせ誰も頼れない。参ったな…。でも大丈夫。僕はアクティブなオタクだからね。考えるな感じろだよ。行動さえすれば道は開けるはず!
悶々としている間に領主邸に着いたようだ。何だか知らないけど正門をくぐった辺りから徐々に空が赤暗くなり厚い雲に覆われゴロゴロと雷鳴がなり始めた。…え~ここは魔王城かなんかなの?SEおかしくない?
正面のポーチに領主邸の使用人の方々が並んでくれている。その中一番前にひときわ背の高い人が。
あれがバーガンディ辺境伯グラナダ・リーガル様かな?顔は…暗くてよくみえないな。
緊張で心拍数がやばいことになっている。ひぃ~。
恐る恐る馬車から降り挨拶のために近づく。
「お出迎えありがとうございます辺境伯様。アデル・カマーフィールドと申します。一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」
貴族の口上なんてちっともわかんないから新しいバイト先で自己紹介するときの感覚であいさつして頭を下げた。すると頭上から声がした。
「…我が兄はこの強力な魔力の宿る血脈を何が何でも残したいらしい。仕方がない。断れば叛意ととられる。子を生す為の道具としてお前を迎えた。伯爵家へは十分な結納金を払ってある。夜伽以外でお前と関わるつもりはない。離宮をくれてやるから好きにせよ」
!!
びっくりした!声が!声が!大好きな大好きな坂下クンにそっくり!
驚いて顔を上げるとなんと!顔もそっくり~!こんなことってあってもいいの?
え~え~まじですか~語彙がっ語彙が無くなる~!え~僕坂下クンのお嫁さんになっちゃうの~?え~これなんてご褒美!異世界転移の特典ですかっ!
生きてて良かった!神様ありがとう!
表向き平静をよそおいながら心の中、超テンション爆上がりでだいぶん頭の悪いことばかり考えてたら正面玄関から真っすぐ抜けた中央の老木になんと雷が落ちた!
あまりの衝撃と雷鳴にびっくりして「ぎゃぁっ」と可愛くない悲鳴を上げながら、僕にはその落雷が運命の合図に思え(この人を推す!全力で推す!!)幸せな使命感に包まれながら気を失った。
この乗り心地最悪な馬車はそれでも嫁に出す息子への最後のはなむけとばかりにお父さんやお兄さんたちが目いっぱいの防御魔法をかけてくれたみたいだ。せめて道中安全なようにと。
辺境伯領、その名も魔獣の住まう地バーガンディ。この地の空気は年々瘴気の淀みが進行していて、昔はここまでひどい状態ではなかったのに今では魔力の弱いものは足を踏み入れることもできないらしい。
もともと領内に住んでいた先住民たちは少しずつの変化だったから適応していったみたいだけど外からの者はそうはいかない。
そういう意味でも魔力操作に長けたカマーフィールド家の血筋はこの地への適性が高い。なるほど、婚姻相手に選ばれるわけだ。そんなわけで旅の従者も伯爵家の使用人の中でも比較的魔力の多い者が厳選された。それでも長く留まるほどではないみたい。ギリ入ることは出来る程度ってところ。そのため僕を無事送り届けたら皆すぐ帰ってしまう。
とは言っても僕的にはこの人たちすら道中の2~3日分の面識しかないからそれほど寂しさは感じないんだ。心細さ?そんなのこの世界に来た時からずっと心細さは続いてる!
どうせ誰も頼れない。参ったな…。でも大丈夫。僕はアクティブなオタクだからね。考えるな感じろだよ。行動さえすれば道は開けるはず!
悶々としている間に領主邸に着いたようだ。何だか知らないけど正門をくぐった辺りから徐々に空が赤暗くなり厚い雲に覆われゴロゴロと雷鳴がなり始めた。…え~ここは魔王城かなんかなの?SEおかしくない?
正面のポーチに領主邸の使用人の方々が並んでくれている。その中一番前にひときわ背の高い人が。
あれがバーガンディ辺境伯グラナダ・リーガル様かな?顔は…暗くてよくみえないな。
緊張で心拍数がやばいことになっている。ひぃ~。
恐る恐る馬車から降り挨拶のために近づく。
「お出迎えありがとうございます辺境伯様。アデル・カマーフィールドと申します。一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」
貴族の口上なんてちっともわかんないから新しいバイト先で自己紹介するときの感覚であいさつして頭を下げた。すると頭上から声がした。
「…我が兄はこの強力な魔力の宿る血脈を何が何でも残したいらしい。仕方がない。断れば叛意ととられる。子を生す為の道具としてお前を迎えた。伯爵家へは十分な結納金を払ってある。夜伽以外でお前と関わるつもりはない。離宮をくれてやるから好きにせよ」
!!
びっくりした!声が!声が!大好きな大好きな坂下クンにそっくり!
驚いて顔を上げるとなんと!顔もそっくり~!こんなことってあってもいいの?
え~え~まじですか~語彙がっ語彙が無くなる~!え~僕坂下クンのお嫁さんになっちゃうの~?え~これなんてご褒美!異世界転移の特典ですかっ!
生きてて良かった!神様ありがとう!
表向き平静をよそおいながら心の中、超テンション爆上がりでだいぶん頭の悪いことばかり考えてたら正面玄関から真っすぐ抜けた中央の老木になんと雷が落ちた!
あまりの衝撃と雷鳴にびっくりして「ぎゃぁっ」と可愛くない悲鳴を上げながら、僕にはその落雷が運命の合図に思え(この人を推す!全力で推す!!)幸せな使命感に包まれながら気を失った。
393
お気に入りに追加
3,287
あなたにおすすめの小説
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ
秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ワタクシ、フラれてしまいました。
でも、これで良かったのです。
どのみち、結婚は無理でしたもの。
だってー。
実はワタクシ…男なんだわ。
だからオレは逃げ出した。
貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。
なのにー。
「ずっと、君の事が好きだったんだ」
数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?
この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。
幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる