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高等部3学年
154 冬休みへと入る前に 12月
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久し振りのジローのお店。今日はアリエスにもアルタイルにも内緒で来たのだ。
…タウルスをお供の代わりにしてね。
タウルスとお出かけって滅多にないからちょっと新鮮。それに気が楽。
タウルスはマナーに厳しくないのだ。ニヤリ。
これは…食べ歩き、いや、歩き食べをするチャーンス!
「ごめんねタウルス、焼栗屋さんまで付き合わせちゃって。」
「いいさ。お前が居ると下町では何かとやり易い。お前と親しいって言うだけで、下町での評判が上がるんだよ。で、何でまた秘密なんだ」
「アリエスの怒りがまだおさまらなくて…」ポイ
「ああ、ジローが暴走したってやつか…しょうがない奴。」ひょいパク
「う~ん…」モグモグ
だけど今年はクリスマスも領地に行ってて来れないし、もしかしたら年末も来れないかも…。ラクシアン男爵、つまりおじいさんとこ行くらしいし。
だからどうしても会っておきたいのだ。
ジローにもマカにも、子供たちにも。
「あ、リヒャルト君。」
「お、なにやってんだ、あいつ」
「タウルスのこと探してるんだよ、きっと。ねぇ、気づいてないの?リヒャルト君の気持ち。」
「え?ああ、気づくも何も直接言われたな。」
「なんてっ⁉」
「ファンですってな」
「リ、リヒャルト君のヘタレっ!」
こ、告るならもっとちゃんと…もっと根性見せようよ。まったくもー!
「で、なんて返事したの?」
「ん?ああ、ありがとう、と。」
「も、もうっ、仕方ないなぁ。リヒャルトく~ん、お~い」
「あっ!テオ君、…と、タウルス様っ!」
「今からジローの商会に行く所だ。いっしょに行くか?」
「えっ、ぜひっ!」
チャンスしかあげられないからねっ!
「じろー…居る?」
「テオ、来てくれたのか。はぁぁぁぁ…もうダメかと思った…。もう来ないんじゃないかと…」
「来るよ。僕とじろーの仲じゃない。」
「…まぁな」
気を聞かせてくれたタウルスとリヒャルト君は、ショーケースの中の迷彩服を見ていた。「長くなるなよ」僕の背中にそう言って。
どうしよう…。少し気まずいな…。ジローの顔が真顔のままだ。
でもとりあえず、四角い箱に詰めた今朝焼いたお菓子の詰め合わせを…ススス…
「何だこれ」
「菓子折り…」
「ああ、いつもの12月の贈り物か。いつもありがとうな。」
しまった。それはお詫びの品だったのに…。
仕方ないから菓子折りの横に、正真正銘今年の贈り物を…。クッションを置いた。もちろん手編みだ。
「あの…これギルドで使ってね。それから…アリエスから聞いた?僕、やっぱり家は出られない…。やりたいことが出来たの…」
「やりたいこと?」
学術院で薬草学を、もっともっと極めたいこと、薬草園を今の倍になるまで拡張したいって事、そのためにまだ知らない薬草たくさん集めたいって事、その最終ゴールで薬膳のお店をオープンしたいって事、全部話して聞かせた。
ひょんなことからの思い付きだけど、あれからいっぱい考えて、ようやく形が見えてきたのだ。
「薬膳のお店では漢方とか、ハーブティーとか、アロマオイルとかも置いてね、」
「ああ」
「それで、お腹がすいて困った人は無料で食べられるようにしたいの…」
「無料…」
「ダメ?あっ、じゃぁ一日何食か決めてとか…」
「そうだな。同じ奴ばかりにならないようにしないと。スラムの奴らは、お前が思うよりもずっとずるくて卑しい。全員じゃないがな。」
「うぅ…」
「労働奉仕させたらどうだ。食事代の代わりに。楽して飯にありつきたいだけの奴ならそうまでして来ない。学校だってそうだったろ。読み書き習わされても飯が食いたい奴が来てた、ま、中には字覚えたい奴とかも…居たには居たがな。」
「それっ!」
久しぶりのこの遣り取り…なんだか楽しい。昔に戻ったみたい。
そういえばここのところはギルド長選挙やら、造船やら…大きな事が立て続けで、ささやかな話は出来てなかった。
こうして話してると学校行ってた時みたい。あーでもない、こーでもないって、冒険者になった時の話をして…。あの頃も楽しかったな。
ジローは、今よりもう少しだけとんがってた。優しくて頼りになるのは変わらないけど。
なんだかすっかり立派な商会主で…そのうえギルド長で…お兄様ほどじゃないけど大人の男だ。
「ジロー会頭、ギルドが今すぐ来てくれってさ。なんか急用だって」
「…マカ…、です。と、ます。はどうした。おまえがそんなんじゃ、ここを任せられないだろうが。」
「じゃぁじろーも気をつけなくちゃね」
ふっ、って笑ったジローが、とんでもなく色っぽい顔で…、ドキーッ!
「悪いが行かないと。領地に行くまでに屋敷に寄る。会ってくれるか?」
「いつ来るか教えてね。いいよ、待ってる。」
「テオ…。俺は考え方を変えるつもりだ。俺はお前を連れ出すことばかり考えてた。あそこはお前に似合わないってな。だけど状況は変わる。あの屋敷はお前を閉じ込める籠じゃなく…神域なんだな。それなら俺が変わらなくちゃ話にならない。待っててくれ…」
「神域?…ま、まぁ…そ、そう、かも?」
なんたってバスティト様の愛し子と神子がいる屋敷だしね…。あながち間違っては…いない…。
そして階下に降り、店内で見たタウルスとリヒャルト君。
そのリヒャルト君がとっても幸せそうだったから…ヘタレでも良いかって、そう思ったよ。
…タウルスをお供の代わりにしてね。
タウルスとお出かけって滅多にないからちょっと新鮮。それに気が楽。
タウルスはマナーに厳しくないのだ。ニヤリ。
これは…食べ歩き、いや、歩き食べをするチャーンス!
「ごめんねタウルス、焼栗屋さんまで付き合わせちゃって。」
「いいさ。お前が居ると下町では何かとやり易い。お前と親しいって言うだけで、下町での評判が上がるんだよ。で、何でまた秘密なんだ」
「アリエスの怒りがまだおさまらなくて…」ポイ
「ああ、ジローが暴走したってやつか…しょうがない奴。」ひょいパク
「う~ん…」モグモグ
だけど今年はクリスマスも領地に行ってて来れないし、もしかしたら年末も来れないかも…。ラクシアン男爵、つまりおじいさんとこ行くらしいし。
だからどうしても会っておきたいのだ。
ジローにもマカにも、子供たちにも。
「あ、リヒャルト君。」
「お、なにやってんだ、あいつ」
「タウルスのこと探してるんだよ、きっと。ねぇ、気づいてないの?リヒャルト君の気持ち。」
「え?ああ、気づくも何も直接言われたな。」
「なんてっ⁉」
「ファンですってな」
「リ、リヒャルト君のヘタレっ!」
こ、告るならもっとちゃんと…もっと根性見せようよ。まったくもー!
「で、なんて返事したの?」
「ん?ああ、ありがとう、と。」
「も、もうっ、仕方ないなぁ。リヒャルトく~ん、お~い」
「あっ!テオ君、…と、タウルス様っ!」
「今からジローの商会に行く所だ。いっしょに行くか?」
「えっ、ぜひっ!」
チャンスしかあげられないからねっ!
「じろー…居る?」
「テオ、来てくれたのか。はぁぁぁぁ…もうダメかと思った…。もう来ないんじゃないかと…」
「来るよ。僕とじろーの仲じゃない。」
「…まぁな」
気を聞かせてくれたタウルスとリヒャルト君は、ショーケースの中の迷彩服を見ていた。「長くなるなよ」僕の背中にそう言って。
どうしよう…。少し気まずいな…。ジローの顔が真顔のままだ。
でもとりあえず、四角い箱に詰めた今朝焼いたお菓子の詰め合わせを…ススス…
「何だこれ」
「菓子折り…」
「ああ、いつもの12月の贈り物か。いつもありがとうな。」
しまった。それはお詫びの品だったのに…。
仕方ないから菓子折りの横に、正真正銘今年の贈り物を…。クッションを置いた。もちろん手編みだ。
「あの…これギルドで使ってね。それから…アリエスから聞いた?僕、やっぱり家は出られない…。やりたいことが出来たの…」
「やりたいこと?」
学術院で薬草学を、もっともっと極めたいこと、薬草園を今の倍になるまで拡張したいって事、そのためにまだ知らない薬草たくさん集めたいって事、その最終ゴールで薬膳のお店をオープンしたいって事、全部話して聞かせた。
ひょんなことからの思い付きだけど、あれからいっぱい考えて、ようやく形が見えてきたのだ。
「薬膳のお店では漢方とか、ハーブティーとか、アロマオイルとかも置いてね、」
「ああ」
「それで、お腹がすいて困った人は無料で食べられるようにしたいの…」
「無料…」
「ダメ?あっ、じゃぁ一日何食か決めてとか…」
「そうだな。同じ奴ばかりにならないようにしないと。スラムの奴らは、お前が思うよりもずっとずるくて卑しい。全員じゃないがな。」
「うぅ…」
「労働奉仕させたらどうだ。食事代の代わりに。楽して飯にありつきたいだけの奴ならそうまでして来ない。学校だってそうだったろ。読み書き習わされても飯が食いたい奴が来てた、ま、中には字覚えたい奴とかも…居たには居たがな。」
「それっ!」
久しぶりのこの遣り取り…なんだか楽しい。昔に戻ったみたい。
そういえばここのところはギルド長選挙やら、造船やら…大きな事が立て続けで、ささやかな話は出来てなかった。
こうして話してると学校行ってた時みたい。あーでもない、こーでもないって、冒険者になった時の話をして…。あの頃も楽しかったな。
ジローは、今よりもう少しだけとんがってた。優しくて頼りになるのは変わらないけど。
なんだかすっかり立派な商会主で…そのうえギルド長で…お兄様ほどじゃないけど大人の男だ。
「ジロー会頭、ギルドが今すぐ来てくれってさ。なんか急用だって」
「…マカ…、です。と、ます。はどうした。おまえがそんなんじゃ、ここを任せられないだろうが。」
「じゃぁじろーも気をつけなくちゃね」
ふっ、って笑ったジローが、とんでもなく色っぽい顔で…、ドキーッ!
「悪いが行かないと。領地に行くまでに屋敷に寄る。会ってくれるか?」
「いつ来るか教えてね。いいよ、待ってる。」
「テオ…。俺は考え方を変えるつもりだ。俺はお前を連れ出すことばかり考えてた。あそこはお前に似合わないってな。だけど状況は変わる。あの屋敷はお前を閉じ込める籠じゃなく…神域なんだな。それなら俺が変わらなくちゃ話にならない。待っててくれ…」
「神域?…ま、まぁ…そ、そう、かも?」
なんたってバスティト様の愛し子と神子がいる屋敷だしね…。あながち間違っては…いない…。
そして階下に降り、店内で見たタウルスとリヒャルト君。
そのリヒャルト君がとっても幸せそうだったから…ヘタレでも良いかって、そう思ったよ。
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