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高等部2学年
112 婚約疲労パーティー
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今日のアリエスは本気だ!神々しささえ感じる可憐さだ!
「か、かわ、可愛い…。アリエス可愛いよっ!」
「ふふ、ありがとうございます。」
頭に花を飾って…スチルで見たアリエスよりもずっと可愛い。
身長は現実のほうが高くなってるけど、それがまたより一層、アルタイルとのバランスを良くしている。
「アリエス様ってば、淡いピンクのシャツがよくお似合いだね。」
「リヒャルト君も、そのタータンチェックのジャケットよく似合ってるよ。」
「アルタイル様みたいに背が高いとなんでも似合っていいよね。僕は背が低いから嫌になっちゃうなぁ」
「僕の前でそれ言っちゃう?ルトガー君って無自覚スナイパーだよね」
アルタイルが僕の頭をポンポンしながら慰めの言葉をかけてくれる。
「テオは小さくても懐が深いからそれでいいんだ。俺やタウルス、多分ここにいるリヒャルトも、お前の器の大きさにどれほど救われたか」
「そっ、そうだよテオ君。お願いだからこれからも仲良くしてね。」
「う、うん。うん?」
懐が深い…誰のことだろう、それは…。どっちかというと僕は、みみっちさには自信があるのに。ポテチの袋の最後のカスまで流し込むタイプだよ、僕は。
どうでもいいその事実はこっそりと胸の内にしまっておいた。
お兄様もアリエスも、アルタイルまでもが来客をさばくのに大わらわだ。
邪魔にならないようお祝いの人波を避け、僕はリヒャルト君たちをこっそり温室に案内する。
僕自慢の薬草園は、7歳のころからコツコツと拡張し続け、今ではけっこうな広さになっている。
「わ、あ、…思ってたより…その、すっっっごく立派だね…。初めて見るよ…ガラスの建物…」
「薬草園…って、この規模は農場って言うんじゃないのかな?それからこれ、割れたりしないの?」
「ハインリヒお兄様が僕の為にって、裏の区画にあったどこかの伯爵家を買いあげて更地にしてくれて…。そこに温室作ったんだよ。そこまでしなくていいって言ったんだけど僕の研究のためだからって。てへ」
「「…ふ、ふーん…」」
おっと、二人が若干引いている…。そう、ホントに。レッドフォードはお母様のお腹の子が継ぐ生家の財も含めて、王家に次ぐ資産を持つのだ。怖っわぁ…
「あ、これうちの領地の臭い草じゃないか」
「そうだよ、ナスヴェッターから持ってきたどくだみ、ここに植え替えたの。ちゃんと根付いて良かったぁ~」
「へぇ、これがあのお茶のもとになった〝どくだみ”なのかい。母上があの化粧水をもう一つ欲しいと言っていたよ。肌荒れが治ったそうだ。」
「あ、レグルス」
「やぁテオドール、随分と立派な施設だね。」
「低層建築とは言えガラスだけでこのような…。さすがはレッドフォード…」
ふと後ろを振り返ると、そこにはレグルスがケフィウスさんとともに立っていた。そして前に向き直ると、二人は緊張の面持ちで頭を下げていた。
「かまわないから顔を上げてくれないか、テオドールの友人たち。ああ、覚えているよ。君は昨年のあの演習の時のリーダーだね?」
「はっ、はい…」
「悪いが同行してもいいだろうか。テオ、温室の案内をしてくれるのだろう?」
「レグルスに案内するとは言ってないんだけど…。アリエスのお祝いに来たんじゃないの?もう!しょうがないなぁ…」
せっかくの友達とのひと時を…おのれ王子め…
でも、温室の案内をするのは非常に楽しい…。コレクションを自慢しながらみせびらかすのはコレクターの性なのだ。
僕は集めに集めた壮観な薬草群を自慢したいのに、レグルスの興味はその建物へと向いたようだ。解せぬ。
「なるほど、とてもよく分かった。ならばこの温室を使えば気候の安定しない辺境や、寒い冬でも作物は収穫出来ると言う事だね。」
「でもこういう温室を作るのも維持するのにもお金がかかるよ。普通の農家さんは無理じゃないかなぁ。せめてビニールハウスにするとか…。」
「びにーる?」
「えと、僕のレインコートみたいな素材の…」
「れいんこーと?」
「ああ、テオ君が可愛かったあの水をはじく外套ね。」
「可愛かった?」
「リヒャルト君、そこに反応するんだ…。そう、すごく可愛かったよ。尻もちつくとこも含めて」
「「尻もち…?」」
「二人して反応するんだ…そう尻もち。ラバーケロッグでヌルヌルになりながら」
「「ヌルヌル…?」」
「あー、ごほん!殿下、脱線しています。それで?その素材をどうするのです?」
「え、えと、支柱をさして、上から被せて。薬草なら強いからそれで大丈夫だけど、お野菜とかなら室温と湿度もちょっと管理して…」
「どのように?」
「え、ええ?」
うぅ…ケフィウスさんの圧が強い。ぐいぐいくるな、この人。僕はファーマーじゃないっ!
えぇっと…田舎のほうのおじいちゃんおばあちゃんがやってた畑は…、道を挟んだ正面と裏は普通の畑で、横の畑は一反分だけハウスになってた。それでそこには確か温水が流れてたりしてて…。
「中が空洞になってるパイプ…管を用意して中に温水を流したりとか…それで空調管理するんだよ。多分…」
「温水…湯を沸かして室内中に張り巡らせると言う事か…」
「っていうか、レグルス炎属性でしょ?それ魔石に直接付与とかできないの?そしたら簡単にお湯になって、冬場の温度管理なんか楽勝じゃん」
せっかく魔法があるんだから使えばいいのに。どうもこの世界の人たち、特に魔力の強い人達は魔法を戦いの道具と思いがちだ。魔力のちょっぴりしかない僕に言わせれば…贅沢だよ!贅沢!
「そうか…。いい話を聞かせてもらった。さすがは私のテオドールだ。ふむ…早急に検討することが出来た。名残惜しいが失礼することにしよう。」
「…アリエスたちにお祝いは…?」
何しに来たんだこの王子…。温室だけ見て帰るとか、レグルスいい加減にしろ!
「もちろん挨拶して帰るとも。さぁ行こう。そうだ、今度そのレインコートとやらを見せてくれるかい?出来たら君が着て見せてくれるととても嬉しい。」
「えぇ…」
温室を出る前に腕を引き寄せキスしてくる。あ、もちろん挨拶のキスだよ。それにしても…
やりたい放題だな!
「か、かわ、可愛い…。アリエス可愛いよっ!」
「ふふ、ありがとうございます。」
頭に花を飾って…スチルで見たアリエスよりもずっと可愛い。
身長は現実のほうが高くなってるけど、それがまたより一層、アルタイルとのバランスを良くしている。
「アリエス様ってば、淡いピンクのシャツがよくお似合いだね。」
「リヒャルト君も、そのタータンチェックのジャケットよく似合ってるよ。」
「アルタイル様みたいに背が高いとなんでも似合っていいよね。僕は背が低いから嫌になっちゃうなぁ」
「僕の前でそれ言っちゃう?ルトガー君って無自覚スナイパーだよね」
アルタイルが僕の頭をポンポンしながら慰めの言葉をかけてくれる。
「テオは小さくても懐が深いからそれでいいんだ。俺やタウルス、多分ここにいるリヒャルトも、お前の器の大きさにどれほど救われたか」
「そっ、そうだよテオ君。お願いだからこれからも仲良くしてね。」
「う、うん。うん?」
懐が深い…誰のことだろう、それは…。どっちかというと僕は、みみっちさには自信があるのに。ポテチの袋の最後のカスまで流し込むタイプだよ、僕は。
どうでもいいその事実はこっそりと胸の内にしまっておいた。
お兄様もアリエスも、アルタイルまでもが来客をさばくのに大わらわだ。
邪魔にならないようお祝いの人波を避け、僕はリヒャルト君たちをこっそり温室に案内する。
僕自慢の薬草園は、7歳のころからコツコツと拡張し続け、今ではけっこうな広さになっている。
「わ、あ、…思ってたより…その、すっっっごく立派だね…。初めて見るよ…ガラスの建物…」
「薬草園…って、この規模は農場って言うんじゃないのかな?それからこれ、割れたりしないの?」
「ハインリヒお兄様が僕の為にって、裏の区画にあったどこかの伯爵家を買いあげて更地にしてくれて…。そこに温室作ったんだよ。そこまでしなくていいって言ったんだけど僕の研究のためだからって。てへ」
「「…ふ、ふーん…」」
おっと、二人が若干引いている…。そう、ホントに。レッドフォードはお母様のお腹の子が継ぐ生家の財も含めて、王家に次ぐ資産を持つのだ。怖っわぁ…
「あ、これうちの領地の臭い草じゃないか」
「そうだよ、ナスヴェッターから持ってきたどくだみ、ここに植え替えたの。ちゃんと根付いて良かったぁ~」
「へぇ、これがあのお茶のもとになった〝どくだみ”なのかい。母上があの化粧水をもう一つ欲しいと言っていたよ。肌荒れが治ったそうだ。」
「あ、レグルス」
「やぁテオドール、随分と立派な施設だね。」
「低層建築とは言えガラスだけでこのような…。さすがはレッドフォード…」
ふと後ろを振り返ると、そこにはレグルスがケフィウスさんとともに立っていた。そして前に向き直ると、二人は緊張の面持ちで頭を下げていた。
「かまわないから顔を上げてくれないか、テオドールの友人たち。ああ、覚えているよ。君は昨年のあの演習の時のリーダーだね?」
「はっ、はい…」
「悪いが同行してもいいだろうか。テオ、温室の案内をしてくれるのだろう?」
「レグルスに案内するとは言ってないんだけど…。アリエスのお祝いに来たんじゃないの?もう!しょうがないなぁ…」
せっかくの友達とのひと時を…おのれ王子め…
でも、温室の案内をするのは非常に楽しい…。コレクションを自慢しながらみせびらかすのはコレクターの性なのだ。
僕は集めに集めた壮観な薬草群を自慢したいのに、レグルスの興味はその建物へと向いたようだ。解せぬ。
「なるほど、とてもよく分かった。ならばこの温室を使えば気候の安定しない辺境や、寒い冬でも作物は収穫出来ると言う事だね。」
「でもこういう温室を作るのも維持するのにもお金がかかるよ。普通の農家さんは無理じゃないかなぁ。せめてビニールハウスにするとか…。」
「びにーる?」
「えと、僕のレインコートみたいな素材の…」
「れいんこーと?」
「ああ、テオ君が可愛かったあの水をはじく外套ね。」
「可愛かった?」
「リヒャルト君、そこに反応するんだ…。そう、すごく可愛かったよ。尻もちつくとこも含めて」
「「尻もち…?」」
「二人して反応するんだ…そう尻もち。ラバーケロッグでヌルヌルになりながら」
「「ヌルヌル…?」」
「あー、ごほん!殿下、脱線しています。それで?その素材をどうするのです?」
「え、えと、支柱をさして、上から被せて。薬草なら強いからそれで大丈夫だけど、お野菜とかなら室温と湿度もちょっと管理して…」
「どのように?」
「え、ええ?」
うぅ…ケフィウスさんの圧が強い。ぐいぐいくるな、この人。僕はファーマーじゃないっ!
えぇっと…田舎のほうのおじいちゃんおばあちゃんがやってた畑は…、道を挟んだ正面と裏は普通の畑で、横の畑は一反分だけハウスになってた。それでそこには確か温水が流れてたりしてて…。
「中が空洞になってるパイプ…管を用意して中に温水を流したりとか…それで空調管理するんだよ。多分…」
「温水…湯を沸かして室内中に張り巡らせると言う事か…」
「っていうか、レグルス炎属性でしょ?それ魔石に直接付与とかできないの?そしたら簡単にお湯になって、冬場の温度管理なんか楽勝じゃん」
せっかく魔法があるんだから使えばいいのに。どうもこの世界の人たち、特に魔力の強い人達は魔法を戦いの道具と思いがちだ。魔力のちょっぴりしかない僕に言わせれば…贅沢だよ!贅沢!
「そうか…。いい話を聞かせてもらった。さすがは私のテオドールだ。ふむ…早急に検討することが出来た。名残惜しいが失礼することにしよう。」
「…アリエスたちにお祝いは…?」
何しに来たんだこの王子…。温室だけ見て帰るとか、レグルスいい加減にしろ!
「もちろん挨拶して帰るとも。さぁ行こう。そうだ、今度そのレインコートとやらを見せてくれるかい?出来たら君が着て見せてくれるととても嬉しい。」
「えぇ…」
温室を出る前に腕を引き寄せキスしてくる。あ、もちろん挨拶のキスだよ。それにしても…
やりたい放題だな!
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