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13歳
41 異世界の飲酒は合法です
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中等部第2学年最後の試験。今日も今日とて僕は教授と差し向かい。
当然試験の出来は…以下略。
それよりも、教授と示し合わせていた王子によってあっという間に連行される僕。行き先は王子の専用個室だ。
王子の婚約者(仮)とは言え、王子は僕を王宮へはあまり呼びたがらない。それに僕も行きたくないからちょうどいい。婚約が仮で良かった。そうじゃなきゃ婚約内定の瞬間からお妃教育が始まるんだ。ゲームのアリエスは難なくこなしてみんなから絶賛されてたけど、あんな暗黒の受験前みたいな日々、僕は二度とごめんだよ。
「やぁテオドール、ひと月ぶりだね。君とはここか君の屋敷でしか会えないからね。君の屋敷はハインツが居合わせればすぐに邪魔に来るし…ハインツが居ないなら居ないでアリエスが邪魔しに来るし…まったくテオと二人きりで会う事がこうも難しいとは。早く高等部へ行きたいよ。そうしたらここで毎日顔を合わせられる。そうだ、いっそのこと入寮しようか?そして同室になるのはどうだい?一足先に朝から晩まで。いい考えだと思わないかい?」
「全然思わない。ありえない。それより他の人は?」
僕と王子の仮婚約はあくまで形だけの事なんだからたいして気にすることはないのに、こういうところがマメと言うか、事あるごとに会う機会を作ろうとする。
「ああ、みなまだ試験中だよ。君は特別室だし、私も今回は君の真似をして教授と個別に済ませておいた。こうして君との時間を作るためにね。」
職権乱用を高々と宣言しながらロイヤルウインクが飛んできた。い、イケメンめ…。こんなこと本気でする人存在したんだ。スチルでも見なかった表情だ。これがゲームの最中なら、きっと飛び上がって喜んだのに。
「私の可愛い婚約者には…邪魔者が多すぎてね…やれやれ。」
「邪魔者?それより!今度の夜会…ぼっ、僕行かないんだからっ!あんな衣装送ってきて…金と青しか入ってない…こ、これみよがしな衣装…」
王子の送ってよこした衣装。その金色は僕の髪に似た少し暗めのキャラメルブロンドなんかじゃなく、透明感のあるいかにも高級そうなプラチナブロンド。キャラデザした作家さんは、とことん鉄板にしたかったようだ。
「これ見よがしで何が悪いの?君は私の婚約者じゃないか。私の衣装は君の金と淡い茶のとても上品な仕上がりだよ。これでどこからどう見てもただの候補で済むとは思われないだろうね。」
「仮!仮だから!仮で良いって言った!それに王宮には呼びたくないってそれも言ってたのに。」
「そうは言っても次の夜会は大切な君のお披露目の機会だからね。仮とは言え王太子の婚約者である以上、君を知るものがここまで少ないというのはあまりにも異様すぎる。少しの時間だよ。あきらめて出てもらおうか。」
ぐぬぬ…正論過ぎて反論が出来ない…屁理屈は僕の専売特許なのに。
「ダンスも踊らなければいけないね。ほらおいで、練習してみよう。」
スロースロークイッククイック、スロースロークイッククイック…ううう…足の長さに付いて行けない…
そうこうしてたら僕の手を取りくるくると回しだす。ちょっとやめてよ、目が回る。
「うぷ…、酔った…」
「ああ悪いっ!ほらこれを飲んで。気付けだよ。」
手渡されたお猪口を一気に飲み干す。それを呆れた顔で見ている王子。
「…警戒心が無さすぎる…変なものが入っていたらどうするんだい?まったく。」
「王子はそんなもの入れないもん…」
「…ずいぶん信用してくれているんだね。嫌われているのかと思っていたのに…」
「嫌いじゃない…」「へぇ?」
ゲームの王子は何を考えてるのか分かりにくかったけど、それでも公正明大な人だった。断罪寸前のテオドールの言葉にさえ耳を傾けてくれたんだ。そんな王子だったからテオドールはどんどん好きになって…まぁ、話を聞いたうえで断罪されたんだけど…テオドールが哀れだ…
と言うか…なんかポカポカしてきた?顔が…カッカしてる…。
「熱い…」
「ああ、気付けにお酒を少し…テオ?」
「熱い…うう~ん、暑いよぅ…」
「テオ!ちょっと待って!」
目の前にいたはずの王子がどこかに行っちゃった。そして僕はふわふわと雲の上に居て…太陽が近いせいか妙に暑くて…なんか寄りかかるのにちょうど良いガジュマルの木があったから…身体を預けて眠りについた…。
「レグルス!いったいこれは…」
「ち、違うんだよデルフィ。これはテオが酔って、その」
「酔って?テオに酒を飲ませたのか⁉いったい何をしようとした!とにかく離れろ!上着まで脱がせて…こんな子供に、見損なったぞ!」
「そうじゃない、ダンスの真似事をだね、その」
「ダンスが何故こうなる!おかしいだろう!」
「ううん…やめてよ…もうヤダ…ムニュ…」
「‼」「⁉」
目が覚めた僕は王子に懇願され、デルフィの誤解を解くまで帰してもらえなかった。
当然試験の出来は…以下略。
それよりも、教授と示し合わせていた王子によってあっという間に連行される僕。行き先は王子の専用個室だ。
王子の婚約者(仮)とは言え、王子は僕を王宮へはあまり呼びたがらない。それに僕も行きたくないからちょうどいい。婚約が仮で良かった。そうじゃなきゃ婚約内定の瞬間からお妃教育が始まるんだ。ゲームのアリエスは難なくこなしてみんなから絶賛されてたけど、あんな暗黒の受験前みたいな日々、僕は二度とごめんだよ。
「やぁテオドール、ひと月ぶりだね。君とはここか君の屋敷でしか会えないからね。君の屋敷はハインツが居合わせればすぐに邪魔に来るし…ハインツが居ないなら居ないでアリエスが邪魔しに来るし…まったくテオと二人きりで会う事がこうも難しいとは。早く高等部へ行きたいよ。そうしたらここで毎日顔を合わせられる。そうだ、いっそのこと入寮しようか?そして同室になるのはどうだい?一足先に朝から晩まで。いい考えだと思わないかい?」
「全然思わない。ありえない。それより他の人は?」
僕と王子の仮婚約はあくまで形だけの事なんだからたいして気にすることはないのに、こういうところがマメと言うか、事あるごとに会う機会を作ろうとする。
「ああ、みなまだ試験中だよ。君は特別室だし、私も今回は君の真似をして教授と個別に済ませておいた。こうして君との時間を作るためにね。」
職権乱用を高々と宣言しながらロイヤルウインクが飛んできた。い、イケメンめ…。こんなこと本気でする人存在したんだ。スチルでも見なかった表情だ。これがゲームの最中なら、きっと飛び上がって喜んだのに。
「私の可愛い婚約者には…邪魔者が多すぎてね…やれやれ。」
「邪魔者?それより!今度の夜会…ぼっ、僕行かないんだからっ!あんな衣装送ってきて…金と青しか入ってない…こ、これみよがしな衣装…」
王子の送ってよこした衣装。その金色は僕の髪に似た少し暗めのキャラメルブロンドなんかじゃなく、透明感のあるいかにも高級そうなプラチナブロンド。キャラデザした作家さんは、とことん鉄板にしたかったようだ。
「これ見よがしで何が悪いの?君は私の婚約者じゃないか。私の衣装は君の金と淡い茶のとても上品な仕上がりだよ。これでどこからどう見てもただの候補で済むとは思われないだろうね。」
「仮!仮だから!仮で良いって言った!それに王宮には呼びたくないってそれも言ってたのに。」
「そうは言っても次の夜会は大切な君のお披露目の機会だからね。仮とは言え王太子の婚約者である以上、君を知るものがここまで少ないというのはあまりにも異様すぎる。少しの時間だよ。あきらめて出てもらおうか。」
ぐぬぬ…正論過ぎて反論が出来ない…屁理屈は僕の専売特許なのに。
「ダンスも踊らなければいけないね。ほらおいで、練習してみよう。」
スロースロークイッククイック、スロースロークイッククイック…ううう…足の長さに付いて行けない…
そうこうしてたら僕の手を取りくるくると回しだす。ちょっとやめてよ、目が回る。
「うぷ…、酔った…」
「ああ悪いっ!ほらこれを飲んで。気付けだよ。」
手渡されたお猪口を一気に飲み干す。それを呆れた顔で見ている王子。
「…警戒心が無さすぎる…変なものが入っていたらどうするんだい?まったく。」
「王子はそんなもの入れないもん…」
「…ずいぶん信用してくれているんだね。嫌われているのかと思っていたのに…」
「嫌いじゃない…」「へぇ?」
ゲームの王子は何を考えてるのか分かりにくかったけど、それでも公正明大な人だった。断罪寸前のテオドールの言葉にさえ耳を傾けてくれたんだ。そんな王子だったからテオドールはどんどん好きになって…まぁ、話を聞いたうえで断罪されたんだけど…テオドールが哀れだ…
と言うか…なんかポカポカしてきた?顔が…カッカしてる…。
「熱い…」
「ああ、気付けにお酒を少し…テオ?」
「熱い…うう~ん、暑いよぅ…」
「テオ!ちょっと待って!」
目の前にいたはずの王子がどこかに行っちゃった。そして僕はふわふわと雲の上に居て…太陽が近いせいか妙に暑くて…なんか寄りかかるのにちょうど良いガジュマルの木があったから…身体を預けて眠りについた…。
「レグルス!いったいこれは…」
「ち、違うんだよデルフィ。これはテオが酔って、その」
「酔って?テオに酒を飲ませたのか⁉いったい何をしようとした!とにかく離れろ!上着まで脱がせて…こんな子供に、見損なったぞ!」
「そうじゃない、ダンスの真似事をだね、その」
「ダンスが何故こうなる!おかしいだろう!」
「ううん…やめてよ…もうヤダ…ムニュ…」
「‼」「⁉」
目が覚めた僕は王子に懇願され、デルフィの誤解を解くまで帰してもらえなかった。
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