悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド

kozzy

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13歳

33 モブは見た

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「やぁアリエス、今日も孤児院に寄るのかい?ならば私もご一緒しようじゃないか。」
「御冗談をレグルス殿下。そんな軽口叩いていると怖い顔したデルフィヌス様がどこからともなくやってきますよ。」
「ならば彼が来る前に、このまま二人で抜けがけしよう。なに、馬車は君のもので構わない。テオドールが用意した愛車なのだろう?」


いつものようににこやかに、レグルス殿下とアリエス様はバッタリ出会った玄関でたわいもない挨拶をかわされる。
ここのところアリエス様は授業が終わると週に何度か孤児院へ慰問に向かわれる。筆頭婚約者候補になった義兄の名誉回復の為なのか、あのテオドールの付き添いで。
それでもアリエス様は相も変わらずあのぼろぼろの馬車で通学されている。この馬車以外には乗らないと頑なに言い張られて。
だからといって、第一王子殿下をあの馬車にのせるなど出来る訳がないと言うものだ。



そう。昨年開催された王家主催のお茶会に、あのテオドールは招待された。
その場で何が起きたのか…噂程度は漏れ聞こえるが、殿下は件のテオドールを自ら婚約者にご指名された。


「ねぇ貴女ご覧になったかしら?、追いかけられるテオドールを。よりにもよって王宮主催のお茶会で癇癪を起し殿下の不興をかったのですって」
「まぁ!それでしたらわたくしも見ましたわ。なのに何故殿下はアレを婚約者になど」
「あらまぁ貴女ご存じないの?アレの発明品の数々を。防犯用のカラーボールに防犯スプレー、我が家にも既に備えてあるわ。あれらを生み出すその才知、殿下は国益を考えられたのよ」
「陛下に自ら懇願なされたそうね。テオドールを制御なさると。なんとおいたわしいことか」


あの日、嵐のように現れて嵐のように去っていった美貌の悪童テオドール。
殿下の婚約者候補になった事で以前の噂は影を潜めた。
だが今でも社交界では、テオドールは悪童のまま。
その地位、その才、その美貌に、構うことなく悪評は続く。





「やぁアルタイル。君も今帰りかい?君はアリエスとともに孤児院へは出向かないのかい?」
「殿下も大概お人が悪い…ご存じですよね殿下。俺があそこに顔をだせる訳がない。子供たちにとって俺は今でもテオをいじめる悪い奴ですよ。」
「「テオ!」」
「…アルタイル様?いつからお兄様をそのように?」
「そうとも、私でさえテオと呼ぶなと言われたのに…」
「ぷっ」
「あっ、いやその、救護院で…」
「「はぁ?」」
「何?君救護院に通っているのかい?よくも隠していたものだ」
「いえ、月に1~2度程度ですので言うほどのことでもないかと」
「1~2度も!初耳ですね。へぇ…?お兄様から詳しく聞かなくては…」

殿下とアリエス様からの追及を受け困った様子のアルタイル様。彼は最近アリエス様の取り巻きでいるのを止めたようだ。こうして軽い会話を楽しみ一人送迎の馬車へと乗り込む。
まとわれる雰囲気も落ち着かれて、いやもともと真面目な方ではあったが、一足先に大人になろうとしているようだ。


「それで?タウルスはどうしたんだい?」
「彼は最近授業が終わると一目散で騎士団の稽古場に向かっているようですよ。父親の騎士団長がいる第一ではなく、あえて平民街の警らを受け持つ第六騎士団にね。」
「デルフィヌス。やぁ遅かったね。君を待つ間アリエスに付き合ってもらっていたんだ。教授の用は済んだのかい?」
「ええまぁ」
「それでは殿下の手綱はお返ししますねデルフィヌス様。決して離されませんよう。ふふふ、このお悪い殿下はデルフィヌス様を出し抜いて孤児院行きを画策されていましたよ。」
「レグルス、無計画な外出は控えてくれないか。僕が護衛官に叱られる。あれの顔が見たいなら王宮に呼び出せばいいだろう?君は婚約者みたいなものじゃないか」


ため息をつくレグルス殿下とあきれたようなデルフィヌス様。
そんなお二人を横目に笑いながらアリエス様はいつものようにきれいな姿勢で正門へ向かっていく。愛らしさはそのままだが少々上背が伸びたようだ。
アリエス様とテオドール。血のつながりはない二人。美しいテオドールと可憐なアリエス様。タイプの違う魅力がそこにある。

しかしそれにしてもテオドール様か…噂以上の美貌だったな…神のギフトとは決して誇張ではなかったのか…
あの美貌の君と高等部からはこの学び舎で時間を共有できるのは悪くない……

私のような下位貴族に成り行きとは言え言葉をかけられた。

『あっ、ごめんね!今急いでるから許して!』


あの時聞いた、鈴を転がしたような声が耳にこびりついて離れない。2年後彼は一体どんな顔をしてこの学院へやって来るのか。
その時彼は私達下位の者に…一体どのような態度を示すのか。


殿下とデルフィヌス様は話しながら迎えの馬車へと乗り込んでいく。

殿下の筆頭婚約者候補…テオドール・レッドフォード。
私は何度も、その名前を口の中で転がした。



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