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198 断罪は平和をもたらす
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「それにしてもカイルってば…」
「すみませんシャノン様。ですがスプーンは盲点でした…」
なんとなくシェイナとのやり取りでそうかな?とは思っていたが、案の定ジェロームはすでに自分の若返りに気が付いていた。せっかく紙吹雪持って「サプラーイズ!」ってやりたかったのに…
「あれはセバスの宝物だからねー…。そうだ!カイルは定年の時何が欲しい?何でもあげるよ?」
「私は何もいりません」
「カイル、遠慮h」
「私に定年はありませんから」
「カ、カイル…!」
「何でも…と仰るならずっとお傍に」
「カ、カイルー!」
「シャノン様ー!」
ヒシッ!
と言ったような小芝居は置いといて…
いやー、それにしても眼福。僕は以前からジェロームをアロマオイルのような人だと思っていたのだが…
爽やかなのにほんのり甘いシダーウッドアトラスみたいなジェロームも良かったけど、このフレッシュで清々しいパインニードルみたいなジェロームも…実にイイ!
ポコ「アイタ!」
「ノン、少し見過ぎ」
「シェイナの婚約者なのは分かってるけど…いいじゃん見るぐらい。減るもんじゃあるまいし…」
「ふぅ…そうじゃない。人を凝視するのは良くないよ」
「私など見ても面白くもないでしょうに…」
「いいえとても愉快です。と言うか有意義です」
「楽しそうだねノン」
「とっくに開きなおってるからね」
BLのパートナーが無理でも僕には腐男子モードがある。ジェロームは筆頭萌え要員ですからーーー!残念っ!
「それにしても、まさか再びこの歳になるとは…」
「襲爵した頃で間違いないですよね?」
「ええ」
「難しい部分は割愛しますが要点はジェロームの八歳分をシェイナに上乗せしたってとこです」
「…では皆さま方と変らぬ歳になったということですか…」
「だからってジェロームの立場は変わりませんから今まで通りお過ごしください。ちょっと特殊なアンチエイジングで見た目だけ若返った…とでも思ってもらえれば」
「ふふ、ご婦人方に羨ましがられてしまいますね」
軽口が出る程度には受け入れ完了のようだ。ジェロームのこの寛容さよ…
シェイナに至っては至福の時をお過ごしのようで…今なら「大事にしてたっていうブルートパーズも売っちゃった。テヘペロ」とゲロっても笑顔で許してくれそうだ。試しに今言って…いややめとこう。
とにかく、今後ジェロームはともかく、シェイナは公称十歳として生活することになるようだ。いやあ…この姿で二歳とか…違和感しかないからね。
どうせこの世界に戸籍制度はない。あるのは領民を管理する領ごとの教区帳だけだ。
けどジェロームもシェイナも管理する側だから台帳に記載はない。正式に年齢が記載されてるのなんて…領史や爵位証書くらいだが、これも何かに使う訳じゃないから別に関係無いって言えば関係ない。
この問題はせいぜい遠い未来で、「あれ?おじいちゃんとおばあちゃんの年齢…どうもいろいろ噛み合わないわね…?」と、子孫を混乱させる程度のことだ。
見た目が年齢。これは現代社会にも通じる美と健康へのモチベーション!みんながんばろう!
ってことで、屋敷から迎えのきたジェロームは厳戒態勢のなかエンブリー邸へと帰っていった。
実はエンブリー邸の執事は毎日当主の様子を見に来ていたのだ。当然若返りも都度みていたし、僕から執事、執事からエンブリー王都邸の使用人にも同じような説明がなされている。
若返ったとは言えジェロームは中身も周囲の認識も成人男性だ。保護者は必要ないし、そもそも身長も天井をむかえた十八歳と二十五歳なんて、二歳から十歳のシェイナに比べたらそれほど劇的な変化じゃない。
現に前世の従兄弟は十八にしてオッサンみたいだったし…
なのでジェロームの毎日はそれほど変わることなく領地の繁栄に邁進していくだろう。
…ちょっぴり見た目で舐められることは増えるだろうけど…そこはシェイナがブリザードアイで黙らせてくれるに違いない。
と言うわけで。今僕がすべきことは…
「シャノン様、デザイナーが参りました」
「琥珀の間にお通しして」
待ってました!
シェイナにはシャノン時代の衣類があると言えばあるのだが…やっぱ新調したくなるのが兄心ってものだ。琥珀の間にはあっという間にところせましとデザイン画が広げられる。
「うーん…こっちも似合うしあっちも捨てがたい…、両方で」
「ノン…昔のもあるしそんなにいらないよ」
「いや要るから」
「シャノン様、こちらのジャケットでは?」
「うーん…、シェイナは目元がキツいからもう少しソフトに見えるものを」
「ではこちらなんかいかがでしょう」
「いいね、じゃそれで」
「ノン、お小遣い無くなっても知らないよ」
「これくらい全然余裕」
宝石収集が趣味だったシェイナと違って、普段の僕は買い食い以外ほとんどお金をつかわない。
コナーのお給料だって今では正式にお父様が出してくれているし、寄付や治療院の運営資金も正式に遺産の配当から持ち出せるようになっている。
だからこその爆買いだ。だって経済を回すのは高位貴族の大事な務めだからね(言い訳)。
そのうえここだけの話だが、実は僕には王宮から『神託』手当てが毎月支給されている。
なので『神託』の称号を手放すことは手当てを手放す事と連動するが、それでもメリットデメリットでいったらデメリットが多い。だから最後のミッションを終えた今、もういらないっていう判断だ。
あと、これは最近の話だが、婚約解消にあたり王家から僕には結構な額の賠償金が支払われている。けどお妃教育に費やした十二年を考えればこれでも足りないくらいだ。
なのでそのうち十年分はエンブリーへ行く時シェイナに持たせようと思っている。だって賠償されるべきはシェイナだからね。そして残った二年分は…思う存分シェイナとアノンに使おうと思っている。
「ねえちゃま!」ポスン
「アノン。どうしたの」
「アノともあちょんで?」
「いいよ。では後でご本を読んであげる」
「わぁ」
おお!
赤ちゃん時代から超絶クールだったシェイナが柔らかい。
そう思うとやっぱり心は大人身体は幼児な自分に納得いってなかったんだろう。シャノンのプライドを垣間見た気がする…
「ところでブラッド何しに来たの?」
「アノンがシェイナに遊んでもらうと言ってきかなくて…、すみません」
パリコレならぬシャノコレに飛び入りしたのは子供モデルのアノン君だ。マネージャーのブラッドを従えて、ランウェイでもウォーキングするつもりかな?
「全然いいけど…じゃあアノンにも何かオーダーしちゃおっか。そこの半パンとかどうかな?」
「このアイボリーのブリーチズですか?」
「うん。出来たらポッケに刺繍入れて。ウサギの」
「いいえそのままで。刺繍は僕が入れましょう」
「おや?シェイナは刺繍が出来るのかい?」
「ブラッド…兄様。ええ。ノンやお母様の刺繡をいつも見ていましたから」
「では僕もシャツを一枚いただこう。シェイナ、刺繍をお願いできるかい?」
「かまいません。…B・Pとお入れしましょうか」
「いや、花がいいな」
長い長い紆余曲折を経て兄妹四人で過す平和な時間。世は全てこともなし。
これでいいのだ。
「すみませんシャノン様。ですがスプーンは盲点でした…」
なんとなくシェイナとのやり取りでそうかな?とは思っていたが、案の定ジェロームはすでに自分の若返りに気が付いていた。せっかく紙吹雪持って「サプラーイズ!」ってやりたかったのに…
「あれはセバスの宝物だからねー…。そうだ!カイルは定年の時何が欲しい?何でもあげるよ?」
「私は何もいりません」
「カイル、遠慮h」
「私に定年はありませんから」
「カ、カイル…!」
「何でも…と仰るならずっとお傍に」
「カ、カイルー!」
「シャノン様ー!」
ヒシッ!
と言ったような小芝居は置いといて…
いやー、それにしても眼福。僕は以前からジェロームをアロマオイルのような人だと思っていたのだが…
爽やかなのにほんのり甘いシダーウッドアトラスみたいなジェロームも良かったけど、このフレッシュで清々しいパインニードルみたいなジェロームも…実にイイ!
ポコ「アイタ!」
「ノン、少し見過ぎ」
「シェイナの婚約者なのは分かってるけど…いいじゃん見るぐらい。減るもんじゃあるまいし…」
「ふぅ…そうじゃない。人を凝視するのは良くないよ」
「私など見ても面白くもないでしょうに…」
「いいえとても愉快です。と言うか有意義です」
「楽しそうだねノン」
「とっくに開きなおってるからね」
BLのパートナーが無理でも僕には腐男子モードがある。ジェロームは筆頭萌え要員ですからーーー!残念っ!
「それにしても、まさか再びこの歳になるとは…」
「襲爵した頃で間違いないですよね?」
「ええ」
「難しい部分は割愛しますが要点はジェロームの八歳分をシェイナに上乗せしたってとこです」
「…では皆さま方と変らぬ歳になったということですか…」
「だからってジェロームの立場は変わりませんから今まで通りお過ごしください。ちょっと特殊なアンチエイジングで見た目だけ若返った…とでも思ってもらえれば」
「ふふ、ご婦人方に羨ましがられてしまいますね」
軽口が出る程度には受け入れ完了のようだ。ジェロームのこの寛容さよ…
シェイナに至っては至福の時をお過ごしのようで…今なら「大事にしてたっていうブルートパーズも売っちゃった。テヘペロ」とゲロっても笑顔で許してくれそうだ。試しに今言って…いややめとこう。
とにかく、今後ジェロームはともかく、シェイナは公称十歳として生活することになるようだ。いやあ…この姿で二歳とか…違和感しかないからね。
どうせこの世界に戸籍制度はない。あるのは領民を管理する領ごとの教区帳だけだ。
けどジェロームもシェイナも管理する側だから台帳に記載はない。正式に年齢が記載されてるのなんて…領史や爵位証書くらいだが、これも何かに使う訳じゃないから別に関係無いって言えば関係ない。
この問題はせいぜい遠い未来で、「あれ?おじいちゃんとおばあちゃんの年齢…どうもいろいろ噛み合わないわね…?」と、子孫を混乱させる程度のことだ。
見た目が年齢。これは現代社会にも通じる美と健康へのモチベーション!みんながんばろう!
ってことで、屋敷から迎えのきたジェロームは厳戒態勢のなかエンブリー邸へと帰っていった。
実はエンブリー邸の執事は毎日当主の様子を見に来ていたのだ。当然若返りも都度みていたし、僕から執事、執事からエンブリー王都邸の使用人にも同じような説明がなされている。
若返ったとは言えジェロームは中身も周囲の認識も成人男性だ。保護者は必要ないし、そもそも身長も天井をむかえた十八歳と二十五歳なんて、二歳から十歳のシェイナに比べたらそれほど劇的な変化じゃない。
現に前世の従兄弟は十八にしてオッサンみたいだったし…
なのでジェロームの毎日はそれほど変わることなく領地の繁栄に邁進していくだろう。
…ちょっぴり見た目で舐められることは増えるだろうけど…そこはシェイナがブリザードアイで黙らせてくれるに違いない。
と言うわけで。今僕がすべきことは…
「シャノン様、デザイナーが参りました」
「琥珀の間にお通しして」
待ってました!
シェイナにはシャノン時代の衣類があると言えばあるのだが…やっぱ新調したくなるのが兄心ってものだ。琥珀の間にはあっという間にところせましとデザイン画が広げられる。
「うーん…こっちも似合うしあっちも捨てがたい…、両方で」
「ノン…昔のもあるしそんなにいらないよ」
「いや要るから」
「シャノン様、こちらのジャケットでは?」
「うーん…、シェイナは目元がキツいからもう少しソフトに見えるものを」
「ではこちらなんかいかがでしょう」
「いいね、じゃそれで」
「ノン、お小遣い無くなっても知らないよ」
「これくらい全然余裕」
宝石収集が趣味だったシェイナと違って、普段の僕は買い食い以外ほとんどお金をつかわない。
コナーのお給料だって今では正式にお父様が出してくれているし、寄付や治療院の運営資金も正式に遺産の配当から持ち出せるようになっている。
だからこその爆買いだ。だって経済を回すのは高位貴族の大事な務めだからね(言い訳)。
そのうえここだけの話だが、実は僕には王宮から『神託』手当てが毎月支給されている。
なので『神託』の称号を手放すことは手当てを手放す事と連動するが、それでもメリットデメリットでいったらデメリットが多い。だから最後のミッションを終えた今、もういらないっていう判断だ。
あと、これは最近の話だが、婚約解消にあたり王家から僕には結構な額の賠償金が支払われている。けどお妃教育に費やした十二年を考えればこれでも足りないくらいだ。
なのでそのうち十年分はエンブリーへ行く時シェイナに持たせようと思っている。だって賠償されるべきはシェイナだからね。そして残った二年分は…思う存分シェイナとアノンに使おうと思っている。
「ねえちゃま!」ポスン
「アノン。どうしたの」
「アノともあちょんで?」
「いいよ。では後でご本を読んであげる」
「わぁ」
おお!
赤ちゃん時代から超絶クールだったシェイナが柔らかい。
そう思うとやっぱり心は大人身体は幼児な自分に納得いってなかったんだろう。シャノンのプライドを垣間見た気がする…
「ところでブラッド何しに来たの?」
「アノンがシェイナに遊んでもらうと言ってきかなくて…、すみません」
パリコレならぬシャノコレに飛び入りしたのは子供モデルのアノン君だ。マネージャーのブラッドを従えて、ランウェイでもウォーキングするつもりかな?
「全然いいけど…じゃあアノンにも何かオーダーしちゃおっか。そこの半パンとかどうかな?」
「このアイボリーのブリーチズですか?」
「うん。出来たらポッケに刺繍入れて。ウサギの」
「いいえそのままで。刺繍は僕が入れましょう」
「おや?シェイナは刺繍が出来るのかい?」
「ブラッド…兄様。ええ。ノンやお母様の刺繡をいつも見ていましたから」
「では僕もシャツを一枚いただこう。シェイナ、刺繍をお願いできるかい?」
「かまいません。…B・Pとお入れしましょうか」
「いや、花がいいな」
長い長い紆余曲折を経て兄妹四人で過す平和な時間。世は全てこともなし。
これでいいのだ。
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