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195 断罪で目覚めし力

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そして三日後…

「あれ…?シェイナまた伸びた?」
「そうなんですシャノン様。毎朝少しずつ大きくなられて…これでは三歳になった私の姪と変りませんわ。一体どうしたのでしょう…」

シェイナの姿を見つめるナニーの目はとても不安そうだ。

当然だろう。シェイナの成長速度はすでに気のせい…で済む範疇を軽く超えている。これはやっぱり異常事態…
こうなったら仕方ない。これをごまかすにはそれなりに説得力のある、奇想天外な理由が必要だ。となれば…あれだ、あれしかない。

「あー…、多分…眠ったままのシェイナが弱らないよう僕が毎日〝波動”を送ってるからかな…」
「ハドウ…ですか?」

「簡単に言うと目に見えない生体エネルギー」
「せ…、なんと言いました?」

「波動の強さは生命力の強さ、波動の高さは活性力の高さ!そして強く高い波動を持つのは魂の品格が高い存在、すなわち『神託』!全てが僕の救済措置…」

「よ、よく分かりませんがシャノン様が二人をお護りなのですね?」
「そう」
「…そういうことでしたら…」

人は脳のキャパを超えると、理解しよう…という気が失せるものだ。ナニーの思考は停止した。これで良し。


さて、全ては『神託』である僕のパワー!…という共通認識が屋敷内に蔓延した頃、見舞にやって来たのはいつもの友人たち。

「…シャノン様…これは本物のシェイナ様ですの…?」
「ミーガン様なにかおかしいですか?それは間違いなく本物のシェイナですよ?」
「で、ですがこれはどう見ても…」

ミーガン嬢が狼狽えるのも無理はない。シェイナはさらに成長を続け、すでにその背丈は1メートルに達している。
だがその疑問に答えたのは僕ではなくナニーだ。

「ミーガン様、それはシャノン様が毎日ハドウを送って下さっているからですわ」
「それはどういうことかしら?」
「シャノン様が神託としてのお力でシェイナ様とジェローム様を護っているのです」
「まあ素晴らしい!」

何の疑いも持たないピュアな視線がどうにも居心地悪い。なのにリアム君までもが僕にプレッシャーを上乗せする。

「ではエンブリー卿の頬がふっくらしているのもシャノン様のお力ですか?以前はもう少し骨ばっていたような気がするのですが…」

何!
シェイナに気を取られてあまりマジマジ見て無かったけど…言われてみれば…ああっ!頬骨が目立たなくなってる!顔の縦幅もちょっと縮んでる?

「む…むくみかな?ほら、ずっと寝てるから…」

成長するシェイナと若返るジェローム!? なんじゃこりゃぁ!何が起きてるのか誰か教えて!



そんな混乱状態で二人が精神と時の部屋に引きこもってから十日ほど過ぎただろうか。

「シャノン!今すぐハドウを送るのをやめなさい!」
「なんですかお父様いきなり…」

「お前が神託のハドウをやめないばかりにシェイナの成長が止まらないではないか!見て見なさいシェイナを!」
「今日も美しいですね」

「そうではない!これではすでに少女ではないか!」
「…止めていいなら止めますけど…、そうしたら健康の保証は出来ませんよ?」

「ううっ!」

なんてね。僕の意志で止められるものなら止めてる、っつーの。

あれから少し考えたのだが…、この状況を冷静に分析した僕はついに一つの結論を導き出した。

どう考えてもこれは、僕が『白銀』に移動した影響だろう。
大人の僕が『白銀』に固定されたことで、『光』の方のシャノンである幼児のシェイナを、本物の力が〝キャラ画”に寄せてきているんだろうと思う。

因みに〝キャラ画”ってとこがポイントね。つまり見た目の問題ってこと。シナリオの強制力だって大枠が合ってればOKだったんだから、キャラだって大体合ってればいけるはず。

そしてシェイナの成長を促す栄養源こそが…多分ジェローム…おいおい…

つまり二人の目覚めはシェイナの成長が止まった時であり、それはジェロームの子供化を意味する。
だってシェイナを仮に大窓から転落した15まで成長させたらジェロームは12、13になる。ピチピチの少年ジェロームも見たいといえば見たいが、というか、かなり見たい!
けど欲望に蓋をして、出来たら僕は二人を初めて出会った時、つまり王宮での邂逅時でストップしてあげたい。

あの時シェイナは十歳前後だったはず。そしてジェロームは十八になってすぐに爵位を継いだ。マイナスおよそ八歳とプラスおよそ八歳で…ドンピシャいい感じだ。
今の僕はそのタイミングをじぃぃぃっと待っているところだ。まるで熟練の釣り師のように。その機会を逃すことなくキャッチアンドリリース!

僕の予想ではさっきの推測も加味して、絵面がだいたいイラスト通りになれば点滴ジェロームは供給完了のはず。そして外国仕様の美形(受け)顔は十歳ともなれば実に大人っぽい。十歳も十五歳も、イラストにしたらほとんど誤差の範囲、見た目にそれほど違いはないはずだ。

身長から当てはめると現在およそ七歳ぐらいか…、ということはまであと少し。カウントダウンに入ったと言っていいだろう、つまりここからは一瞬たりとも目が離せない。



「ブラッド、今日からしばらく僕は子供部屋にお泊まりします。アノンのこと…お願いね、くっ!」

「願ってもないですが…、なにかあるのですか?」
「ええ多分…驚くべき神の奇蹟が」

ただならぬ僕の様子にお父様までもが固唾を飲む中、僕は座禅をくみながら(ポーズだけ)、二人の眠る子供部屋でその時をひたすら待った。

ミシリ…

成長音!伸びたか⁉ …いいやまだだ。まだ焦るんじゃない…見極めるんだ。シャノン・プリチャード、真実を見抜け!

心眼解放!ハァッ!!!
……
……
……
ここだー!!!

ガッ!

この時をどれくらい待っただろうか。けど僕の中に居る萌え神様が「今だ!」と叫んだ。なのにこの恋人つなぎになった指といったら固くて固くて…

「離しなさいシェイナ、離してってば。ジェロームが好きなのは分かったから、は・な・せ、はな…、グギィ…離せー!!!」
「にいちゃま!」

「アノン!どうしてここに!」
「にいちゃま、アノもてつだう!うーん!うーん!」

いきなりのアノン乱入!
嬉しいし可愛いけど、ブラッドは何をやってるんだ!あとで説教タイム決定!

「ねえちゃまおきて!アノちゃみちいよ!」

「ほらおねえちゃん!いい加減起きなさい!」
「もうおきてよ!おきないと…」

ここでおまけ情報!アノンはおしゃべりを始めた時からシェイナをお姉ちゃんと認識している。だってシェイナがあれだしね。…って、あああーーー!

うりゅ…「アノないちゃう…ないちゃだめなのに…」ポロリ…

んあー!か、かわ…

「泣いてはだめアノン。アノンは男の子でしょう?」

こ、このどことなく僕に似た、でも僕より少しソプラノ寄りの品の良いこの声は…

僕の目の前では目論見通り十歳ほどに成長を遂げたシェイナが…優雅に身を起こし優しくアノンの頭を撫でていた。

はっ!その時僕は天啓のようにルーシーの言葉を思い出していた。

『ニコール様が、アノン様とシェイナ様でシャノンになるようにお付けになられたのですって』

二人でシャノン…。そうか…!目覚めのための最後のピース、それはSを持たない…

〝アノン”





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