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シャノンとアレイスター

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『愛は白銀の向こう側』…これが『愛は光の向こう側』から派生したアレイスターが主人公のスピンオフ作品…
そしてこれがアレイスターの描かれた開発画面…だと?そんなの…そんなの…

うひょー!テンションあがるわ~!どれどれ…?

〝後継争いに破れ、実り無き極寒の北部へ送られたルテティア国第二王子アレイスター。彼はそこで運命の相手であるヒロインと結ばれるため数々の恋敵を蹴散らしていく”

うん?このフォルダは…あ!キャラデザの原案稿だ!アレイスターの髪色が、濃いグレー薄いグレー艶のあるグレーと三つもある。えーっと…、艶のあるグレー一択で。残りは…ええい!削除しちゃえ。

ん?…やだなあもう、この黒髪ってばジェロームみたい。あれ?こっちのブラウンは…ロイドの上位互換?前作からキャラデザ使いまわしとか…手抜き過ぎでしょ。ジワる…

なるほど。アレイスターとヒロインと当て馬二人…ベースは本家と同じ感じで…運命の相手の名前とキャラデザが無い…ってことはまだ決定稿あがってないのか…

そう…か…、スピンオフの主人公がアレイスター…、つまりアレイスターが『愛は光の向こう側』で活躍すること自体がすでにバグだったってわけか…

…このバグの発生原ってもしかして…僕?……、…何の話かな?

でもこれで確信した。少なくともアレイスターは消えたりなんかしない、居るべき場所に戻るだけだって。消えるどころかむしろ、次作の主人公であるアレイスターのファイルにはプロテクトがかかっている!そして…そのアレイスターが戻る次作のデータフォルダにも…完全防御のロックがかかってる!

……待てよ…?

あ…あれ?もしかしてその中ってば一番安全なセーフティーゾーンだったりする?結界…みたいな?

そうか!『愛は光の向こう側』にシャノンが二人いるのがバグだって言うなら…、その修正が神様うんえいの決定によりこれ以上止められないなら…一人移動すればいいんだ!二人いるシャノンのどっちかを…『愛は白銀の向こう側』に!

ふっ!幸いなことに居るじゃないの。空白のキャラが。
そうだよ。キャラ未定のヒロインをシャノンにすればいいんだよ!そうしたらシャノンもプロテクトファイルの仲間入り。

え?どっちのシャノンかって?ヒロインはアレイスターの運命の相手。ならそこに移動するシャノンは…決まってる。
…自惚れじゃ…ないよね?



カタカタカタ…

「いやぁぁぁぁ!!!キーボードが勝手に動いたぁ!うーん」バタッ
「しっかりしろ佐藤!おい山田、どこへ行く!山田ー!」

「お、俺も失礼します!」
「わ、私も!」

「待て!俺を置いてくなーーー!」

ドカッ!ガシャン!バタバタバタバタバタ…

シィーン…ー…そして誰もいなくなった…



これでよし!無人になったところで気兼ねなく…それっ!
ヒロインの名前にシャノンって書き加えて、そしたら次はこっちの画像をコピってこっちのキャラフォルダに突っ込ん…その前にちょっとだけヒロインっぽく修正しとくか。
グラフィックソフト立ち上げて…口角をちょっと上げて、目元をほんのすこーし下げて…と。目の縦幅も0.1ミリ広げて…うん、これで今の僕そっくり。

よく考えたらシャノンには北部の修道院エンドがあるんだから…スピンオフに出て来てもおかしくないよね?

よし!あとはこのシャノンの存在を僕で固定するだけだけど…

見えない身体の見えない首には指輪がかけられているのが何故だか分かる。アレイスターがくれたグレーサファイヤ…吉報と呼ばれる石。

勝手に立ち上がったスピンオフの開発画面。…分ってるよアレイスター。これは僕を助けに来たっていう合図でしょ?準備は出来たよ。幸運の吉報グレーサファイヤ、さぁ僕を連れて行って!

わ…!

キラキラした光の粒子が一瞬で僕を包み込む。…その向こうでは画面の中のアレイスターが

「ま・た・せ・た・ね」

グレーの髪をなびかせながら…そう言った気がした。
そして伸ばされた(ように見える)イラストの手に触れると、僕は淡く輝くプラチナの矢になって、アレイスターのいる画面の中に吸い込まれた…




-----------------------



手が足が…光の粒から元の形状を取り戻していく。

見渡す限りの雪景色。真っ白に染まった、ここは…冬の森林か。

シェイナが分け待つシャノンの力。『神託』ゆえか『元神子』ゆえか。いずれにしても、その力に導かれたのならこの雪原のどこかに必ずシャノンは居る。

葉を落とし冬の寒さに凍える群生林の中、膝まで降り積もった雪の中では一歩進むのも困難を極める。
それでもただひたすら、雪を掻き分け重いその足を動かし続ける。

どれほど進んだだろうか?ふと気付けば目の前には木漏れ日が差し込む一本の獣道。その雪道はプラチナに輝き、不思議とこの道の先にシャノンが居るのではないか、そう私に感じさせた。

急がなくては。

もしもシャノンを救えたとして、シェイナ、エンブリー卿の身に何かがあればシャノンは自身を責めるだろう。なんとしてもそうなる前に彼を見つけ出し連れ帰らねば。

風が出てきたな…

無事ここからシャノンと手を取り戻ることが出来たら…、物わかりの良い小利口な王子で居るのはもう止めよう。
灰色の日々を灰色のままで過ごすのかプラチナに変えるのか、それは全て私次第なのだから。

失ってから後悔してももう遅い。それを今日どれほど思い知ったか。

常に意識から消えることのなかった父の意向、王妃への配慮、トレヴァーの立場。そして私を支援する重鎮たちからの値踏み。全て雪の中に捨ててしまおう。

誰にも阿ることも無い未来の中で、私は今度こそ私の人生の主役になるのだ。

シャノンと共に!





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