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アノンのクリスマス
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友人たちと過ごした疑似クリスマスパーティーから数日。今日は二十四日である。なので今夜僕は…サンタになる予定だ。
可愛い可愛いアノンのために。
「ジョン、アノンの部屋に僕の編んだでっかいソックス下げておいてくれた?」
「さげた!」
「ジョン!「下げましたシャノン様」ですよ。やり直し!」
「う…、はい…。ごめんなさい、に、に…、にい…ん」
僕の背後で赤い服を着てプレゼントを運ぶのは言わずと知れた僕の従者カイルと、アノンの専用付き人候補、もと孤児院のスリっ子ジョンである。
彼は例の貯水槽事件での活躍と僕への献身をお父様に認められ、僕とブラッドの口添えもありアノンの従者となるべく、なんとこのプリチャード家で住み込みの行儀見習い兼武者修行を始めているのだ。現在はナニーの下で雑用をこなしている。でも主人に仕えるにはまだまだだね、…つまりお行儀が。
ジョンはすでにカイルの生家である子爵家の養子に入っている。つまり現在のジョンはカイルの義兄弟。
身なりも貴族仕様に整えられ容姿も磨き上げられたジョンは見た目だけなら底上げ完了している。ちょっとやんちゃ味のある、でも黙っていればなかなかのショタだ。まさかの逸材、灯台下暗し!
「カイル兄さま、と」
「に、…に…さん…」
「兄さま」
「…にいさん」
「…まあいいでしょう」
とまあ、こんなわけだ。
「それにしてもシャノン様、何故贈り物を靴下に?」
「様式美だから」
「それにこの赤い服と付け髭は一体…」
「今夜は特別だから」
「何か謂れがあるのですか?」
「そういうものだから」
赤い服の由来なんて…ゴリラにバナナぐらいそういうものだ、としか説明しようがない。
因みに何故プレゼントがアノンだけなのか…、それには理由がある。何故なら…
サンタさんはサンタを信じる良い子の元にしか来ないからだ。これ真理。
僕が二人に「良い子にしてたら二十四日にサンタが来るよ」と言ったらアノンは
「わぁい!ぼくいいこ?にいちゃま、アノはいいこ?ちゃんた…くる?」
とはしゃいで、シェイナは
「ふっ」
と鼻で笑ったからだ。…最近ちびっこコンラッドの気持ちが何となく…あ、イヤイヤイヤ。
キィィィ…
そっと開けられる子供部屋の扉。二歳児とはいえ日本と違い部屋に居るのは双子だけだ。ナニーは続き扉の隣室で眠っている。
手前のベッドがアノンで、その奥がシェイナだ。
特大サイズの靴下に入れるのは色んな形の積み木。これは庭師にお願いして作ってもらった疑似L●GOだ。ちゃんと組み合わせられるよう、凹凸がつけられている。
僕は知っている。知育玩具は右脳の発育にとてもイイのだ。だからこれはいずれ下町に店を出して売り出そうと考えている。
夢の彼方に消えた僕の第一希望下町エンド。その名残…として。成仏してね下町エンド…
コソッ「シャノン様、本当にシェイナ様には何も無いのですか?」
コソッ「…実はある」
僕はポケットからベビーソックスを出し、カイルと共にシェイナのベッドへ移動すると小さなシェイナの顔横にそっと置いた。
サイズが違いすぎる、不公平だって?いいやそんなことは無い。だってソックスの中身は小さなオニキス。王様がエンブリー伯爵家にくれたエンブリーを象徴する石だ。
シェイナの宝石はあの金平糖の箱に隠したルース以外、全部僕の物になっちゃったから…このオニキスをはじめとしてまた一から集めて欲しい、主にジェロームからのプレゼントとかプレゼントとかプレゼントとか。そんな想いを込めてね。
「わぁ!」
ドッキー!!!
聞こえてきたのはアノンの叫び。叫びと言っても歓喜のほうだ。
「ちゃんた!ちゃんたなの?きてくれたの?わぁい」
ぐっはぁ…何この可愛いの…
サンタ…の存在を少しも知らないアノンは、僕が絵に書いて教えてあげた赤い服をみてジョンをサンタと思ったようだ。だけどちょっと興奮気味なのだろう。その手はジョンの腕をがっちり掴んで離さない。いやいや、、身バレする前にここを出たい…
「どいてノン。隠れてて」
「あ、シェイナ…」
いつの間に起きていたんだろう。シェイナはベッドを降りるとアノンに近づき、「サンタは忙しい」的なことを何やら言ってアノンを寝かしなだめると「もうねなちゃい」とお姉さんぶっている。そして後ろ手で「早くいけ」と合図を出す。さすがだ…
「まって。ちゃんた、これあげる」
ジョンに手渡されたのは一枚の絵。赤い服を着たサンタ(想像)の絵だ。
「あ…ありがとう…」
「またきてね。おやちゅみなちゃい」
「お…おやすみ…」
四つん這いになった僕とカイルは、ぼーっと突っ立ったジョンのズボンのすそを引っ張りなんとか室外へ出る。ふーやれやれ。これにて任務完了っと。明日シェイナにお礼言わなくっちゃ。
「…なんだか疲れました。シャノン様もそろそろお休みください」
「うん。ありがとうカイル手伝ってくれて。あ、カイルにもこれ」
「これは…マフラーですか?」
「一年のお礼。ね」
「シャノン様…、は、早く部屋へ!部屋へお戻りください!」
照れ隠しだろうか…?ものすごい勢いでせっつかれ、なんだか赤い顔の二人と別れ室内に戻るとそこには…
ベッドの上いっぱいの靴下に一枚ずつクッキーが入ってて…そばには「使用人一同より」と書かれたメモが置かれていた。
ジーン…か…、感動の嵐…
今まで生きてきた中で一二を争う嬉しいクリスマスだ。靴下とクッキーを机に移動させパジャマに着替え、ほっこりした気持ちでボスンっとベッドにダイビングしてふと気づく。
私がサンタです、みたいな顔でアノンから絵を受け取っていたジョンだが、アノンのお礼の絵…
あれをもらうべきなのは僕なんじゃないだろうか…、…別にいいけど…
可愛い可愛いアノンのために。
「ジョン、アノンの部屋に僕の編んだでっかいソックス下げておいてくれた?」
「さげた!」
「ジョン!「下げましたシャノン様」ですよ。やり直し!」
「う…、はい…。ごめんなさい、に、に…、にい…ん」
僕の背後で赤い服を着てプレゼントを運ぶのは言わずと知れた僕の従者カイルと、アノンの専用付き人候補、もと孤児院のスリっ子ジョンである。
彼は例の貯水槽事件での活躍と僕への献身をお父様に認められ、僕とブラッドの口添えもありアノンの従者となるべく、なんとこのプリチャード家で住み込みの行儀見習い兼武者修行を始めているのだ。現在はナニーの下で雑用をこなしている。でも主人に仕えるにはまだまだだね、…つまりお行儀が。
ジョンはすでにカイルの生家である子爵家の養子に入っている。つまり現在のジョンはカイルの義兄弟。
身なりも貴族仕様に整えられ容姿も磨き上げられたジョンは見た目だけなら底上げ完了している。ちょっとやんちゃ味のある、でも黙っていればなかなかのショタだ。まさかの逸材、灯台下暗し!
「カイル兄さま、と」
「に、…に…さん…」
「兄さま」
「…にいさん」
「…まあいいでしょう」
とまあ、こんなわけだ。
「それにしてもシャノン様、何故贈り物を靴下に?」
「様式美だから」
「それにこの赤い服と付け髭は一体…」
「今夜は特別だから」
「何か謂れがあるのですか?」
「そういうものだから」
赤い服の由来なんて…ゴリラにバナナぐらいそういうものだ、としか説明しようがない。
因みに何故プレゼントがアノンだけなのか…、それには理由がある。何故なら…
サンタさんはサンタを信じる良い子の元にしか来ないからだ。これ真理。
僕が二人に「良い子にしてたら二十四日にサンタが来るよ」と言ったらアノンは
「わぁい!ぼくいいこ?にいちゃま、アノはいいこ?ちゃんた…くる?」
とはしゃいで、シェイナは
「ふっ」
と鼻で笑ったからだ。…最近ちびっこコンラッドの気持ちが何となく…あ、イヤイヤイヤ。
キィィィ…
そっと開けられる子供部屋の扉。二歳児とはいえ日本と違い部屋に居るのは双子だけだ。ナニーは続き扉の隣室で眠っている。
手前のベッドがアノンで、その奥がシェイナだ。
特大サイズの靴下に入れるのは色んな形の積み木。これは庭師にお願いして作ってもらった疑似L●GOだ。ちゃんと組み合わせられるよう、凹凸がつけられている。
僕は知っている。知育玩具は右脳の発育にとてもイイのだ。だからこれはいずれ下町に店を出して売り出そうと考えている。
夢の彼方に消えた僕の第一希望下町エンド。その名残…として。成仏してね下町エンド…
コソッ「シャノン様、本当にシェイナ様には何も無いのですか?」
コソッ「…実はある」
僕はポケットからベビーソックスを出し、カイルと共にシェイナのベッドへ移動すると小さなシェイナの顔横にそっと置いた。
サイズが違いすぎる、不公平だって?いいやそんなことは無い。だってソックスの中身は小さなオニキス。王様がエンブリー伯爵家にくれたエンブリーを象徴する石だ。
シェイナの宝石はあの金平糖の箱に隠したルース以外、全部僕の物になっちゃったから…このオニキスをはじめとしてまた一から集めて欲しい、主にジェロームからのプレゼントとかプレゼントとかプレゼントとか。そんな想いを込めてね。
「わぁ!」
ドッキー!!!
聞こえてきたのはアノンの叫び。叫びと言っても歓喜のほうだ。
「ちゃんた!ちゃんたなの?きてくれたの?わぁい」
ぐっはぁ…何この可愛いの…
サンタ…の存在を少しも知らないアノンは、僕が絵に書いて教えてあげた赤い服をみてジョンをサンタと思ったようだ。だけどちょっと興奮気味なのだろう。その手はジョンの腕をがっちり掴んで離さない。いやいや、、身バレする前にここを出たい…
「どいてノン。隠れてて」
「あ、シェイナ…」
いつの間に起きていたんだろう。シェイナはベッドを降りるとアノンに近づき、「サンタは忙しい」的なことを何やら言ってアノンを寝かしなだめると「もうねなちゃい」とお姉さんぶっている。そして後ろ手で「早くいけ」と合図を出す。さすがだ…
「まって。ちゃんた、これあげる」
ジョンに手渡されたのは一枚の絵。赤い服を着たサンタ(想像)の絵だ。
「あ…ありがとう…」
「またきてね。おやちゅみなちゃい」
「お…おやすみ…」
四つん這いになった僕とカイルは、ぼーっと突っ立ったジョンのズボンのすそを引っ張りなんとか室外へ出る。ふーやれやれ。これにて任務完了っと。明日シェイナにお礼言わなくっちゃ。
「…なんだか疲れました。シャノン様もそろそろお休みください」
「うん。ありがとうカイル手伝ってくれて。あ、カイルにもこれ」
「これは…マフラーですか?」
「一年のお礼。ね」
「シャノン様…、は、早く部屋へ!部屋へお戻りください!」
照れ隠しだろうか…?ものすごい勢いでせっつかれ、なんだか赤い顔の二人と別れ室内に戻るとそこには…
ベッドの上いっぱいの靴下に一枚ずつクッキーが入ってて…そばには「使用人一同より」と書かれたメモが置かれていた。
ジーン…か…、感動の嵐…
今まで生きてきた中で一二を争う嬉しいクリスマスだ。靴下とクッキーを机に移動させパジャマに着替え、ほっこりした気持ちでボスンっとベッドにダイビングしてふと気づく。
私がサンタです、みたいな顔でアノンから絵を受け取っていたジョンだが、アノンのお礼の絵…
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