断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

文字の大きさ
上 下
250 / 308

175 断罪スタンバイ! 

しおりを挟む
「…せっかくだから一曲ぐらい踊りますか?」
「良いのですか!」

号泣したロイドから、それでも卒業後の去就に承諾を貰いちょっと一安心。せっかくなのでお祝いに一曲ぐらいは踊っておこうかと誘ってみたのだが…

「イタ!」
「す、すみません…」

「アウチ!」
「も、申し訳ない…」

「何で離れるんですか!男はリードでしょうが!」
「いやその…恐れ多くて」
「こうですよ、こう!」グイッ!
ボスッ!「あsdfghjkj」

「ぎゃー!鼻血!」

暗転

「…マイナス三十点」
「精進します…」

全くもうっ!…けどロイドには何となくオタ芸を教えたい衝動にかられる…、いや、教えないけど。

「ああっ!な、何なんですかこの行列…」

「僕たちもシャノン様と踊りたくて…」
「一曲よろしいですか?」

「ええい!シャノン様は病み上がりだ!散れ!」

「うるさいぞロイド!シャノン様を独り占めするな!」
「そーだそーだ!」

「黙れ‼ 」
「あーもう、いいです。…三人までですよ?」

大乱闘。

とまあこんな感じでヒラメ筋がコンクリートになるまでダンスを満喫したのだが、遊びの時間はそろそろ終わり。
ノベルゲーでいったら王様と王妃様を従えたコンラッドが僕を正面へと呼びつける頃だ。

パーティーが進むにつれ各ボックスには、保護者達がお迎えと品位が保たれているかの監督を兼ねて姿を現し始めている。人口密度は三割増しだ。
当然プリチャード家も一家総出でボックス席にやって来た。そしてお父様から、コソッと「首尾は上々」と報告がある。やっぱりね、思った通り。奴ならきっとそうするって思ったよ。

さあ、段取りは済んだ。ってことでシナリオの強制力よ、どう出る?
が、残念なことにコンラッドが僕を呼びつけることはもうあるまい。何故ならコンラッドに自由への切符を手渡してやった恩人がまさにこの僕だからだ。

因みに僕はこのプロムで、コンラッドとアーロンのカップル参加を推奨しておいた。
というのもブラッドから、コンラッドもアーロンもカップル参加を躊躇っている、と聞いたからだ。
そこで表向きは「どうせ当分離れ離れなんだし学生生活の集大成として思い出くらいはあっても良いんじゃない?」と親切面で、本音は「極力ノベルゲーと同じ状況は作っておきたい」という思惑ありきで。

僕の言葉とブラッド、ロイドの応援に背中を押され今夜のコンラッドは心置きなくアーロンを連れまわしている。はいはい、お熱いことで。
そのコンラッドが正面に立ち扉に視線を向けるとようやく王様と王妃様の到着が告げられる。

着席した二人の横にサっと立つコンラッド。この構図はまさにいつか見た画だ。
ひとつ違うのは…アーロンがコンラッドの隣じゃなく、マリエッタ嬢から離れたブラッドと僕から離れたロイドの真ん中に居ること。ロイド、いつの間に…。

けどこの動きは想定内。シナリオに沿ってるといえなくもない。

「このルテティアの未来を担う若樹たちよ。ここで得た時間、友との絆を生涯の宝とし其方たちがいずれ大樹となる日を楽しみにしておる。そしてそれが大地に雄々しく根を張った時、それは私の至宝となるだろう」

王様から卒業する学生たちに祝福の言葉(添削by王妃様)が掛けられる。

「シャノンプリチャード、これへ!」

へっ?ど、どういうこと?
僕に断罪のネタはもう無くなったはずだよね?

はっ!もしかして調子にのって言いまくった暴言の数々を、コンラッドも王様も実は根に持ってたとか?
アレくらいで不敬罪とか…、ちっちゃい男どもだな!

…いやいやいや、さすがにそれはないわ。…けど強制力によってもしかしたら、断罪の代わりにお叱りぐらいはあるのかもしれない…

……

仕方ない…素直に叱られるか。こういうものはごねると長引くって相場が決まっている。経験者が言うんだから間違いない。

「はー…」

神妙な顔で僕を見守るシェイナ。これ以上シェイナに心配かけてもいけないし…諦め気分で渋々前に立つと王様は事も無げに話し始めた。

「シャノンよ、先だっての事件については聞き及んでおる。大事ないか」

なんだ、その話か。

「おかげさまで。もうすっかり」
「ふむ、どういった経緯いきさつであったか申すがよい」

「経緯もなにも…、先祖の犯した大罪を隠したいどこかの貴族が藪をつついた僕を消そうとしただけですよ」
「藪と申すか。その藪とは何だ。言って見せよ」

えっ⁉ そ、そんな…
こんな衆人環視の前で王家の恥部を明らかにしろと?それも英雄と称えられたマーグ王をケチョンケチョンにこき下ろすような恥部を?それこそ不敬罪で断罪まっしぐらじゃん…それも蟄居ですまないやつ…、はっ!まさか!

こ、これがシナリオの強制力…⁉



しおりを挟む
感想 865

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

黄金 
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。 恋も恋愛もどうでもいい。 そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。 二万字程度の短い話です。 6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...