断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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160 断罪と乱入者

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王都の一部はロアン侯爵領だった?

「ならば全てに合点がいきますわ」
「何もかも王家が囲いこんだ。どこからも物証が出ないわけですね…」

僕は焦れていたのだ。
どれほど考察してもあるのは状況証拠だけ、この事件は古過ぎて直接証拠が何一つないと。それにしたってこう…何かあってもよさそうなものじゃないかって。

けどロアンの領地を王家が接収していたなら…もみ消すのだって簡単じゃないか。

「もしや…」
「なんだい?アリソン」
「セントローム川沿いの商業地区に建つ横長の白い建物、あれはもしやロアンの屋敷だったのだろうか?」
「はっ!そ、そうかも…」

川沿いの商業地区、あそこは貴族街ではないが王都第二の商業地区で、富裕層が舟遊びの際にショッピングを楽しめる、インスタ映えしそうなオサレ地区である。えーと、貴族街のお店が銀座の高級デパートならここは三〇アウトレットパーク…みたいな?

そのモールの店舗になっているのが横に長く伸びる長屋形式の建物で、白い壁とアクセントに木の柱が組まれたその建物は川沿いに植えられたポプラの緑にマッチして、舟客の目を楽しませている。

貴族街でも無いのに張り切ったな…とは思っていたが、既存の建物かい!

「ではロアンの当主は川の流れに移り変わる四季を楽しんでいたんですわね…」

しんみり…

だけど分かった!だからロアン嬢は王都に来たんだ!自分のルーツ、母や祖父祖母の生まれ育った土地に…
そして何故よりにもよって娼婦に身を落としたか、その答えも実のところ、僕はうっすらと気が付いている。けどとにかく今は…

「行きましょう!川沿いの商業地区へ!」

僕の大好きな爆買いをしに!

「その前にシャノン様これを…」

カクッ!

すごくカッコよく決めたところだったのに…アリソン君め。

「ま、まあいいです、なんですか?」
「こちらの古地図にも面白い発見が…」
「何の地図ですか?」
「同じく古いルテティア国領地分布図です」

当時はまだまだ鋭意拡大中。南東部はまだ無かったし家門の数(下位貴族)の数も違ったはずだ。
見れば当時のルテティアは王都の緯度を最南端にして西から北、そして東部へと、失敗した餃子みたいな形をしている。

僕でも知ってる歴史だが、肥沃の大地、南南東の領土はその後手に入れた国土だ。
そうして豊かな土地へ東部にいた新興貴族を移動させ、(川の西側にいた名門貴族は動きたがらなかったんだよ)統治者の居なくなった貧しい東部を更に下位の貴族へと分領していったのだが…

「面白いって…国の形がですか?」
「いえ、そうではなく…この王都から東部へ至る山の続く地帯ですが」

違ったか…

「スタンホープ領の向こう側…そういえばスタンホープの向こう側って山でしたね」

ジェローム両親が買い求めた木こり夫夫の家。あの裏手には山が続いている。
もちろん東部国境沿いに連なる山脈地帯ほど標高の高い険しい山ではないが、高尾山クラスの山が所々に盆地を挟みながらも延々続いている。

「私が知る東の修道院が大体この辺りです。そしてその手前、王都へ向かう方角にある山間の領、ご覧ください。ここにフレッチャー伯爵領、と」

「あ!そういえば当時はまだ伯爵位でしたね」
「私の記憶が確かなら…ここは現在デクスター領です。いえ、元デクスター領と言いましょうか」
「えっ?」
「冬の事件後、気になって確認したので間違いないかと」

「あ…じゃあ…」

貴族の屋敷とは、補修改修増設はあっても大体が残された器を使うものだ。たとえ小さな屋敷でも、前世の狭小住宅とは作りもデカさもレベルが違うのだよ。レベルが。

ってことはだよ?東には今シェイナが居る。

「ジェロームに一度見に行ってもらいましょうか。あそこは今お父様のご友人邸ですし」

何でってこともないけど…ま、念のためね。一応ね。


さて、これ以上書庫にいると腰と視力にとって非常に悪い。肩も凝ったし。そこで先ほどの宣言通りショッピングへと出かけることにした。

さぁ行くぞ!と勇んだ瞬間来客を告げたのはセバスだ。
ショッピングの神が僕を待ってるって言うのにさっきからどいつもこいつも…

「皆さんスミマセン、少しお待ちを。もう!誰でしょうね。こんな時に空気の読めない…」
「アレイスター第二王子殿下とトレヴァー第三王子殿下でございます」

「なっ!」

ど、どうしてアレイスターが…、と言うよりどうしてトレヴァー君が!

「やあシャノ」
「アレイスターちょっと!こっち!」

「シャノン様ったら。親しいのは結構ですが殿下にそのような…いけませんわ」

「いいのだよチャムリーの令嬢。どうもシャノンは私になら何をしても構わないと認識しているようでね、以前から殴ったり蹴ったり酷いものだよ」

「まあ!」

な!人聞きの悪い…事実だけど…

これ以上余計な事をベラベラ話されてはたまらない。僕はアレイスターの腕を掴んで隅の方へと引っ張っていくと、無意識のうちに逆壁ドンをかましていた。

「これどういうことですか?なんでトレヴァー殿下が…」
「陛下は婚約の勅命を取り下げられた。だからと言って第二側妃が諦めるかは別の話だ。年の頃も合わなくはないしね」

「だってアレイスター!」
「待つんだシャノン。だからこそ私が付き添いで来たんじゃないか」

「どういうこと?」

アレイスターが言うにはシェイナと交友を深めろと命を受けたトレヴァー君がフラ~っとアレイスターのところにお伺いに来たのだとか。本当に訪ねても良いものかどうか、と。

「以前も話したように思うがあの子は無意識に危険を避ける」

危険って…失礼な。まあ間違っちゃないけど。

「勘が良いのだろう。目端が利くというのか、とにかく真っ先に私のところへ来た。だがここにシェイナ嬢は居ない」
「うんうん」

「だから付き添ってきたのだよ。君は上手くやるだろうが念のために」

で、でかしたアレイスター!そうか…そういう事情か…。それなら仕方ない。トレヴァー君にも口うるさい母親を持つ息子…という立場があるだろうし。

「じゃあどうするの?」
「もう手は打ってある」
「手?」

「トレヴァーには先ほど執事からシェイナ嬢は風邪で寝込んでいると伝えられた。だがトレヴァーがすぐに戻れば第二側妃の機嫌を損なうだろう。そこでたった今ポーレット家の末娘を呼び立てたのだよ。侯爵夫人は末娘をシェイナ嬢の友人にとお考えのようだからね。寝込むシェイナ嬢の代わりにトレヴァーのお相手を務める程度のこと、喜んで娘を寄こすだろう」

「そ…」
「そ?」
「それは良いですね!」パァァァァ…

二兎を追うのは僕の得意技だ。そこで僕は参謀ミーガン嬢に一つの頼みごとをすることにした。

「あの…ミーガン様。大変申し訳ないけどショッピングにはアレイスターと出かけます。なので…」
ゴニョゴニョ…


「…分かりました。このわたくし、ミーガンにお任せ下さいまし。必ずや期待に応えその任務遂行いたしますわ」

た、頼もしーい!




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