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155 断罪と賢い人
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いつ帰るのかな~…などと思いながら、いまだ僕はロイドと差し向かいでティータイムだ。
「それより直に神子就任の儀ですね」
「ええ」
正確に言うと僕はコンラッドを『神子』とは名乗らせていない。あくまで彼は『闘神の使い』である。
けどわりと単純な王様はその微妙な違いなど気にとめてはいないようだ。むしろ闘神という響きを気に入っているため満足度は上がっている。
「就任の儀には私も同席します」
「あれは王族のみで行われる神聖な儀式じゃなかったですか?僕は『神託』だから強制参加ですけど…」
くっそメンドクサイ…。けど辺境伯…前王までもが出席の、ここ百年の中で最も尊い王家の儀式である。指名者として仮病欠席は許されない。
「コンラッドが呼んでくれたのですよ。子供の頃からの友人である私とブラッドには自分の新たな始まりを是非とも見守って欲しいと」
ま…あ…、来年から当分離ればなれだし?異例の旅に出るコンラッドの為に、王妃様あたりが特別許可をだしたのだろう。が、いくら彼が子供のころから鍛錬場を遊び場にした腕自慢だったとしても、まだ十代の彼を苦難の旅へと放り出すことに罪悪感が全く無いわけでもない。
僕だってそれぐらいの慈悲は持ち合わせている。いくら過去の恨み辛みが甚大だったとしてもだ。
そこで僕はちゃーんと、10の務めの中にブラッドが卒業後治めるボイル領近くの務めや、コンラッドにとってのおじいちゃんがいる辺境領近くの務めも混ぜておいた。
苦難の合間の休息に寄れるようにって思って。シェイナからは「甘い!」って言われたけどね。
あ、因みにロイドのお父さんである宰相補佐は領地を持たない宮廷貴族なんだよ。代々宮廷に仕えて年金をいただいてるんだって。だからロイドは領地持ち貴族にコンプレックスがあったんだね。これはゲームに出てこなかった裏情報だよ。
領地があればそこも務めに入れてあげたんだけどね。
脱線したが、これは恐らくゲームの強制力だ。
ノベルゲーではこの辺りからチームチャッカmanの断罪会議は熱を帯び、三人で集まるエピは格段に増える。リセット後である現在、彼らが何を話し合うかは不明だしそれは僕の知らないところで行われるだろうが、今回彼らが儀式に呼ばれたのもその流れだろう。
「父からの情報ですが旅に出る彼にフレッチャー候は援助を願い出ているようです」
ぎょぎょ!それは初耳…
「私は彼にフレッチャー候との関りを今後一切断つよう話すつもりです」
「え‼ そ、そうしてあげて。そうすべきです!」
「シャノン様は仰いましたね。アーロンはフレッチャーによって歪んだのだと。今さらですが、私の心が彼に救われたのは嘘じゃなかった…、彼は芯から優しい子だ。こう思うのです。フレッチャー候の関与が無ければ邪教のことでさえ、その是非はともかくもっと邪気の無い信仰だったかもしれない…と」
確かにノベルゲーの正ヒロインであるアーロンが根っから邪悪ならそもそもヒロインにはならないだろう。
アーロンは過去のいきさつを何一つ知らない…。だからといって後援者であるフレッチャーが親の仇であることを知ったら、自分のルーツにおきたあれやこれやを知ったら、彼はどれほど傷つき言いなりになった自分をどれほど責めるだろうか…
「フレッチャー候との関りは人を歪ませる。ローグ王…あれほど英雄の誉れ高い王が一方で放蕩者のそしりを受けるのはフレッチャー候がそこに関与するからだと私は考えています」
父親である宰相補佐が言うには、フレッチャーが王の歓心を買うのは王を諫めることがないからなのだとか。
王様は常勝の王、その強さは先々代のマーグ王を彷彿させると市井でもかなり人気が高い。その反面、英雄色を好むの言葉通り、彼は王都を離れるとやりたい放題の遊び人だ。幸いなのはその振る舞いが暴虐無人ではない事ぐらい。
それでも悪い噂がそれほどでないのは偏にフレッチャーの手配が上手いのだろう。
「それどころか王に余計な耳打ちをなさるのだとか。王たるものどんな欲望をも叶えられて然るべきだ、と」
それはね…、王様が品行方正になったら自分の出番が無くなって困るからだよ。フレッチャー一族はそうやって立場を維持してきたんだから。
「ですがそれはまさにアーロンがコンラッドに囁いた言葉と一致するのです」
なぬっ!?
「つまりフレッチャーはアーロンを使って間接的にコンラッドを誘導しようとしてたってこと?」
「アーロンが分かっていたとは思いませんが、影響は受けたのだろうと考えます。ローグ王…、アーロン…、フレッチャー候と深くかかわったものは皆歪みます。コンラッドもここで関りを完全に絶たねば…、…いずれまた歪むでしょう」
おおっ!さすがだロイド。ついにウィルスとバグの関係に自力で辿り着いた!
ロイドの良いところは勉強が出来る、というだけでなく洞察力等々が優れているところにある。そこが試験の点だけ良いコンラッドとの大きな違いだ。
彼は本来僕の側だし深く何かを考えるのは得意だろう。(だから勝手に落ち込むときもあるのだが)
なんにしてもノベルゲーでコンラッドのガバガバな計画がトントン拍子に進んだのは、知将ロイドが居たからじゃないかと最近では思っている。
「それにしても…フレッチャーは先代のケイレブ王にはすり寄らなかったのかな?」
「それも今お話しようと思っていたのですが…、宰相閣下から伺った話だとどうもケイレブ王は先々代のマーグ王と折り合いが悪かったようですね。なにしろマーグ王の最愛の王妃はケイレブ様の出産時に命を落としていますから」
「…それに赤い髪も持ち合わせていませんしね」
「それも関係あるのかもしれませんね。赤は王家の色ですから。とにかく潔癖なケイレブ様と豪傑なマーグ王は常に諍いが絶えなかったようです」
ケイレブ王は王家を嫌っていたのだろうか?だから王様にだけ伝わる公式インフォメーションにかこつけてさっさと退位したのだろうか…?いずれにしても自ら王族爵位の公爵位でなく辺境伯位を望み辺境に引き込んだのが答えな気がする。
「ですので得にはならぬと早々に見切りをつけてローグ王に取り入ったのでしょう。ローグ王はマーグ王に瓜二つですから」
辺境伯に会ったら言ってやりたい。その決断は…ケイレブ王の人生で最も賢い決断だったと。
「それより直に神子就任の儀ですね」
「ええ」
正確に言うと僕はコンラッドを『神子』とは名乗らせていない。あくまで彼は『闘神の使い』である。
けどわりと単純な王様はその微妙な違いなど気にとめてはいないようだ。むしろ闘神という響きを気に入っているため満足度は上がっている。
「就任の儀には私も同席します」
「あれは王族のみで行われる神聖な儀式じゃなかったですか?僕は『神託』だから強制参加ですけど…」
くっそメンドクサイ…。けど辺境伯…前王までもが出席の、ここ百年の中で最も尊い王家の儀式である。指名者として仮病欠席は許されない。
「コンラッドが呼んでくれたのですよ。子供の頃からの友人である私とブラッドには自分の新たな始まりを是非とも見守って欲しいと」
ま…あ…、来年から当分離ればなれだし?異例の旅に出るコンラッドの為に、王妃様あたりが特別許可をだしたのだろう。が、いくら彼が子供のころから鍛錬場を遊び場にした腕自慢だったとしても、まだ十代の彼を苦難の旅へと放り出すことに罪悪感が全く無いわけでもない。
僕だってそれぐらいの慈悲は持ち合わせている。いくら過去の恨み辛みが甚大だったとしてもだ。
そこで僕はちゃーんと、10の務めの中にブラッドが卒業後治めるボイル領近くの務めや、コンラッドにとってのおじいちゃんがいる辺境領近くの務めも混ぜておいた。
苦難の合間の休息に寄れるようにって思って。シェイナからは「甘い!」って言われたけどね。
あ、因みにロイドのお父さんである宰相補佐は領地を持たない宮廷貴族なんだよ。代々宮廷に仕えて年金をいただいてるんだって。だからロイドは領地持ち貴族にコンプレックスがあったんだね。これはゲームに出てこなかった裏情報だよ。
領地があればそこも務めに入れてあげたんだけどね。
脱線したが、これは恐らくゲームの強制力だ。
ノベルゲーではこの辺りからチームチャッカmanの断罪会議は熱を帯び、三人で集まるエピは格段に増える。リセット後である現在、彼らが何を話し合うかは不明だしそれは僕の知らないところで行われるだろうが、今回彼らが儀式に呼ばれたのもその流れだろう。
「父からの情報ですが旅に出る彼にフレッチャー候は援助を願い出ているようです」
ぎょぎょ!それは初耳…
「私は彼にフレッチャー候との関りを今後一切断つよう話すつもりです」
「え‼ そ、そうしてあげて。そうすべきです!」
「シャノン様は仰いましたね。アーロンはフレッチャーによって歪んだのだと。今さらですが、私の心が彼に救われたのは嘘じゃなかった…、彼は芯から優しい子だ。こう思うのです。フレッチャー候の関与が無ければ邪教のことでさえ、その是非はともかくもっと邪気の無い信仰だったかもしれない…と」
確かにノベルゲーの正ヒロインであるアーロンが根っから邪悪ならそもそもヒロインにはならないだろう。
アーロンは過去のいきさつを何一つ知らない…。だからといって後援者であるフレッチャーが親の仇であることを知ったら、自分のルーツにおきたあれやこれやを知ったら、彼はどれほど傷つき言いなりになった自分をどれほど責めるだろうか…
「フレッチャー候との関りは人を歪ませる。ローグ王…あれほど英雄の誉れ高い王が一方で放蕩者のそしりを受けるのはフレッチャー候がそこに関与するからだと私は考えています」
父親である宰相補佐が言うには、フレッチャーが王の歓心を買うのは王を諫めることがないからなのだとか。
王様は常勝の王、その強さは先々代のマーグ王を彷彿させると市井でもかなり人気が高い。その反面、英雄色を好むの言葉通り、彼は王都を離れるとやりたい放題の遊び人だ。幸いなのはその振る舞いが暴虐無人ではない事ぐらい。
それでも悪い噂がそれほどでないのは偏にフレッチャーの手配が上手いのだろう。
「それどころか王に余計な耳打ちをなさるのだとか。王たるものどんな欲望をも叶えられて然るべきだ、と」
それはね…、王様が品行方正になったら自分の出番が無くなって困るからだよ。フレッチャー一族はそうやって立場を維持してきたんだから。
「ですがそれはまさにアーロンがコンラッドに囁いた言葉と一致するのです」
なぬっ!?
「つまりフレッチャーはアーロンを使って間接的にコンラッドを誘導しようとしてたってこと?」
「アーロンが分かっていたとは思いませんが、影響は受けたのだろうと考えます。ローグ王…、アーロン…、フレッチャー候と深くかかわったものは皆歪みます。コンラッドもここで関りを完全に絶たねば…、…いずれまた歪むでしょう」
おおっ!さすがだロイド。ついにウィルスとバグの関係に自力で辿り着いた!
ロイドの良いところは勉強が出来る、というだけでなく洞察力等々が優れているところにある。そこが試験の点だけ良いコンラッドとの大きな違いだ。
彼は本来僕の側だし深く何かを考えるのは得意だろう。(だから勝手に落ち込むときもあるのだが)
なんにしてもノベルゲーでコンラッドのガバガバな計画がトントン拍子に進んだのは、知将ロイドが居たからじゃないかと最近では思っている。
「それにしても…フレッチャーは先代のケイレブ王にはすり寄らなかったのかな?」
「それも今お話しようと思っていたのですが…、宰相閣下から伺った話だとどうもケイレブ王は先々代のマーグ王と折り合いが悪かったようですね。なにしろマーグ王の最愛の王妃はケイレブ様の出産時に命を落としていますから」
「…それに赤い髪も持ち合わせていませんしね」
「それも関係あるのかもしれませんね。赤は王家の色ですから。とにかく潔癖なケイレブ様と豪傑なマーグ王は常に諍いが絶えなかったようです」
ケイレブ王は王家を嫌っていたのだろうか?だから王様にだけ伝わる公式インフォメーションにかこつけてさっさと退位したのだろうか…?いずれにしても自ら王族爵位の公爵位でなく辺境伯位を望み辺境に引き込んだのが答えな気がする。
「ですので得にはならぬと早々に見切りをつけてローグ王に取り入ったのでしょう。ローグ王はマーグ王に瓜二つですから」
辺境伯に会ったら言ってやりたい。その決断は…ケイレブ王の人生で最も賢い決断だったと。
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