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145 断罪と陞爵式
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ジェロームと結婚の口約束をしてからはや二週間。ついに陞爵式がやってきた。
謁見の間には両陛下と王子が三人。宰相様、他数人の大臣。中にはフレッチャーもいる。そして特等席に後見人のお父様と『神託』である僕。あー良かった『神託』で。
因みにコンラッドはきたる卒業後の旅に向け剣の鍛練に余念がない。ブラッドも手合わせの相手をつとめたりしているようだ。
げに美しきは男同士の友情…たとえこの二人でも。
おっといけないいけない。
「ジェローム・エンブリー男爵、前へ」
名前を呼ばれて王様の前へと進むジェローム。その姿は緊張しているように見える。
「ジェローム・エンブリー男爵には第二王子アレイスター、そして『神託』シャノン、また『神子』の尊き力を一部とはいえ授かりしシェイナ嬢を救った此度の功績によって伯爵位を授けることとする。またこれによって元ブラトワ領は正式にエンブリー伯爵領となる。所領する地をより良く治めこのルテティアへこれまで以上に貢献せよ」
「は!謹んでお受けいたします」
膝をつき両手で授かるのはジェロームの黒髪みたいなオニキスで掘られた印章の指輪。今回は陞爵のためジェロームにはエンブリー伯爵家のモチーフが新たに与えられた。
カラスの羽根から始まったモチーフ(ナニーの生家ね)は二羽のカラスへと進化し、ついにカラスはその羽を大きく広げた!カッコいい…
本来なら王様に与えられたモチーフを用いて当主が自ら印象を用意し持参するのだが…今回はなんと、感謝の意を示した第三側妃様がご用意してくださったのだ。
宰相様が第三側妃様に代わって説明を続ける。
オニキスを選んだのはエンブリーが代々黒髪だからじゃなかった。オニキスには悪意を撥ね退ける、という意味があるのだとか。きっとブラトワとの色々をアレイスターから聞いてオニキスを選ばれたんだろう。
その印象を使い、陞爵の書類にハンコを押したら儀式は終わり。晴れてジェロームは正式に伯爵となったわけだ。
「おめでとうエンブリー卿」
「これで君も高位貴族の仲間入りだ。これからは国から割り当てられるお役目もこなさねばならんな」
「何のお役目だろうと精一杯務めさせていただきます」
ルテティア国の高位貴族は国のいろんな公益事業?を少しずつ受け持つのが習わしだ。これは報酬の発生するお仕事ではなく(国からの割り当て予算は別だよ)、場合によっては持ち出しもあったりするのだからむしろボランティアに近い。
バーナード伯の下町管理とか、クーパー伯の河川管理とかね。
フレッチャーは欲をかいて準貴族街まで手に入れたけど、本来は南西側の軍事路管理を行っている。これは物資の供給につながる重要な役目。これがある限り王様とフレッチャーは離しきれない…。王妃様も頭の痛い事だろう。けどあれ以来宮廷からは大きく遠ざけることが出来たようだ。
「ジェローム、すぐ帰っちゃうんですか?」
「そろそろ新しい屋敷に戻らなければ…領民に忘れられてしまいますからね」
確かに…かれこれ三か月は王都に滞在していたジェロームだが、これから彼は東部の北(もとのエンブリー)から南までを一手に引き受けることになる。
アレイスターとシェイナが言うには、エンブリー伯爵領はこれから溶岩石の枯渇という問題に直面する。(だから王様が簡単にくれたんだね)
その問題は砂金事業によりプラマイゼロ…どころかプラスになる予定だが、その公表のタイミングはもう少し後だし、どちらにせよ荘園の管理は現在進行形であって、東部では今の時期からがもっとも大変だ。
「いっしょに行けたらいいのにな…」
「ふふ、『神託』としての大仕事、つつがなく済むよう祈っておりますよ」
「あの話…忘れないでくださいね」
「ええ。プリチャード侯からの見合い話はのらりくらりと躱しておきましょう」
優しく撫でられる頭。子供みたい。でも人目もあるし…今はこれが精いっぱい。
待ってろ断罪イベント!それさえ終われば僕には…バラ色の未来が待っている!
…待ってる…よね?
謁見の間には両陛下と王子が三人。宰相様、他数人の大臣。中にはフレッチャーもいる。そして特等席に後見人のお父様と『神託』である僕。あー良かった『神託』で。
因みにコンラッドはきたる卒業後の旅に向け剣の鍛練に余念がない。ブラッドも手合わせの相手をつとめたりしているようだ。
げに美しきは男同士の友情…たとえこの二人でも。
おっといけないいけない。
「ジェローム・エンブリー男爵、前へ」
名前を呼ばれて王様の前へと進むジェローム。その姿は緊張しているように見える。
「ジェローム・エンブリー男爵には第二王子アレイスター、そして『神託』シャノン、また『神子』の尊き力を一部とはいえ授かりしシェイナ嬢を救った此度の功績によって伯爵位を授けることとする。またこれによって元ブラトワ領は正式にエンブリー伯爵領となる。所領する地をより良く治めこのルテティアへこれまで以上に貢献せよ」
「は!謹んでお受けいたします」
膝をつき両手で授かるのはジェロームの黒髪みたいなオニキスで掘られた印章の指輪。今回は陞爵のためジェロームにはエンブリー伯爵家のモチーフが新たに与えられた。
カラスの羽根から始まったモチーフ(ナニーの生家ね)は二羽のカラスへと進化し、ついにカラスはその羽を大きく広げた!カッコいい…
本来なら王様に与えられたモチーフを用いて当主が自ら印象を用意し持参するのだが…今回はなんと、感謝の意を示した第三側妃様がご用意してくださったのだ。
宰相様が第三側妃様に代わって説明を続ける。
オニキスを選んだのはエンブリーが代々黒髪だからじゃなかった。オニキスには悪意を撥ね退ける、という意味があるのだとか。きっとブラトワとの色々をアレイスターから聞いてオニキスを選ばれたんだろう。
その印象を使い、陞爵の書類にハンコを押したら儀式は終わり。晴れてジェロームは正式に伯爵となったわけだ。
「おめでとうエンブリー卿」
「これで君も高位貴族の仲間入りだ。これからは国から割り当てられるお役目もこなさねばならんな」
「何のお役目だろうと精一杯務めさせていただきます」
ルテティア国の高位貴族は国のいろんな公益事業?を少しずつ受け持つのが習わしだ。これは報酬の発生するお仕事ではなく(国からの割り当て予算は別だよ)、場合によっては持ち出しもあったりするのだからむしろボランティアに近い。
バーナード伯の下町管理とか、クーパー伯の河川管理とかね。
フレッチャーは欲をかいて準貴族街まで手に入れたけど、本来は南西側の軍事路管理を行っている。これは物資の供給につながる重要な役目。これがある限り王様とフレッチャーは離しきれない…。王妃様も頭の痛い事だろう。けどあれ以来宮廷からは大きく遠ざけることが出来たようだ。
「ジェローム、すぐ帰っちゃうんですか?」
「そろそろ新しい屋敷に戻らなければ…領民に忘れられてしまいますからね」
確かに…かれこれ三か月は王都に滞在していたジェロームだが、これから彼は東部の北(もとのエンブリー)から南までを一手に引き受けることになる。
アレイスターとシェイナが言うには、エンブリー伯爵領はこれから溶岩石の枯渇という問題に直面する。(だから王様が簡単にくれたんだね)
その問題は砂金事業によりプラマイゼロ…どころかプラスになる予定だが、その公表のタイミングはもう少し後だし、どちらにせよ荘園の管理は現在進行形であって、東部では今の時期からがもっとも大変だ。
「いっしょに行けたらいいのにな…」
「ふふ、『神託』としての大仕事、つつがなく済むよう祈っておりますよ」
「あの話…忘れないでくださいね」
「ええ。プリチャード侯からの見合い話はのらりくらりと躱しておきましょう」
優しく撫でられる頭。子供みたい。でも人目もあるし…今はこれが精いっぱい。
待ってろ断罪イベント!それさえ終われば僕には…バラ色の未来が待っている!
…待ってる…よね?
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