断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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139 断罪へのプレリュード

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通されたのは謁見の間、ちぇっ!立ち仕事か…

真正面の玉座には王が腰掛け、その左右に王妃様と側妃様、王子たちが腰掛けている。そしてやっぱり、アレイスターと第三側妃は一歩下がった後ろ側だ。
でもって僕の右後ろにお父様とシェイナ、左後ろにアーロンが居る。

僕は今日という日のために、一番プラチナヘアーが映え神格が高ま(って見え)る、全身白のシルクのキトーンとヒマティオンを用意した。
これらは古代ギリシャ像がよく着ている例のヒラヒラした服である。あれは優雅に見えるが実は一枚布を合わせただけの衣装。僕でも縫える。意外な場所でコスプレ自作。

と言うことで今日の僕はまさに『神託』そのもの。その場の全員が息をのみ僕の美しさに圧倒されている。美しくってごめんね…って、シェイナだけが「うわ…」ってイヤそうな顔してるけど、そこは軽くスルーして、っと。

「まず王陛下、ここまで選定をお待たせしたこと申し訳ありません。でも色々とイレギュラーがあったので仕方なかったんですよ?」

「いれぎゅらとは何だ?」

「予測のつかない不確定要素のことです。その一つは陛下にも原因があるんですよ?」

「何だと!」
「あなた!ここにいるシャノンはいつものシャノンではありません。彼は『神託』としてここに居るのです。最後までお聞きになって」

「う。うむ…」

ナイスだ王妃様!
王妃様の援護を得て僕は水と餌を得た魚になった。つまり…絶好調!

「この間も言いましたね?アーロンは事実神子候補だったと。でもそれはフレッチャー候が己の利益のために彼を利用したことで揺らぎました。因みにフレッチャーをつけ上がらせたのは王様ですよ?反省してください」

「そのようなことを」
「あなた…」
「ぐ…」

「そして陛下がお疑いになっているシェイナです」

ピクリとするシェイナ。お父様からも緊張が伝わってくる。だが何も問題ない。僕はオタクの中のオタクだ。屁理屈にかけて右に出る者はいない!

「真実をお話しましょう。実のところ…本来神子だったのは…この僕です!」

「な、なんですって!」
「やはりそうか!だから言ったではないですか!」

お父様も王妃様もそれぞれ高位貴族にあるまじき声をあげるが…お父様、ドヤるのはやめましょうか?

「その僕が何故いま『神託』としてここにいるか…そのわけをお教えしましょう」

「ノン!」

微かに聞こえる焦ったようなシェイナの声。だから問題ないって。少しの真実とてんこ盛りの嘘八百。詐欺師の常とう手段だ!

「みなさん一昨年の夏何があったか覚えておいでですね?」

ザワリとする室内。あの夏の出来事を知らない者など、この場どころか社交界には一人もいない。

「あの日…大窓から転落し三途の川を渡りかけた僕は…、ふー…、残念ながら神子としての力を失いました…」

「「そ、そんな…」」

ハモったのは赤髪の親子。神子のストーカーと殺人未遂者だ。

「仕方ありません。僕は覚醒前でしたから…。ですがその時!僕から抜け出た神子の力の一部が…僕に似た気配に引き寄せられニコール夫人のお腹に宿っていた血縁シェイナの中に飛び込んだのです!」

「で、ではやはりシェイナ嬢が!」

「いいえ!受け継がれたのはほんの一部、子供らしからぬ思考力、それだけです。わかりますか?シェイナもまたアーロンと同じで完全なる神子ではないのです」

「で、ではアーロンとシェイナ嬢で神子の座を競うというのか?」

なんだってそんな、テコ入れされた少年マンガみたいなこと…、するわけないでしょうが!

「違います。いいですか?僕は神子の力を失うとともに神から代わりのお役目を科せられました。それが『神託』、神子の選定です。神子とは代々、前神子が神託となって選定するのです」

知らんけど。

「そうであったか…」
「あなた。百年以上もの長きにわたり神子は現世に顕現なさっては下さいませんでした。それ故『神託』もまた混迷したのでしょう」

ほんっと王妃様、いい仕事するわー。

「僕が適性を見極め選んだものが神子となる…。ところが現世は不完全な神子候補ばかり…。と、ここで僕は気が付きました。おや?ここにはもう一人不完全な神子候補がいる、と…」

「だ、誰だそれは!」
「何を隠そうそれは…」

ダララララララ、ここでドラムロールだ!

「王陛下!あなたのご子息である第一王子殿下コンラッド様です!!!」

はい全員拍手!

慌てふためく両陛下。当のコンラッドも狼狽えまくってさっきから目が泳ぎっぱなしだ。プッ!と聞こえたのはシェイナの笑いか。いや至って大真面目だからね?

「そこで僕は三日三晩不眠の祈りを捧げ(オールで北部のBL本読むのに忙しくてね)神に助言を賜りました。するとどうでしょう?コンラッド殿下の神様だけ、少し違ったのです」

「違う…とは?」

さーて、ここからが正念場だ。王様をその気にさせるご馳走を僕はセッティングできるだろうか。けど大事なのは自分から選ばせること。差し出すだけではダメなのだ!…とはシェイナの助言。えへ☆

僕は説明した。僕が仕える神は慈悲の神。博愛と解放を以て人々を護る柔の神。けれどコンラッドの後ろに居るのは闘神。戦いを司る剛の神だと。

「闘神は陛下の戦いぶりに満足しておいででした。そこで陛下に軍神の称号を与えても良いと仰られたのです」

「ま、誠であるか!」

「もちろん。この僕が出まかせを言うとでも?」

そこ笑わない!シェイナ!気配で分かるから!

「ですが神の称号…簡単に、と言う訳にはいきませんよ?」
「な、なにをすればよい?南西に進軍すれば良いのか?」

「陛下。伝承はあなたに何を伝えましたか?神子があなたに勝利と栄光を約束する、要約するとそう言う事でしょう?」

ざーーーーっくりした要約だけど。

「で、では…」

「ええ。闘神の使いコンラッドが神の定めし10の務めを果たし終えた時…陛下は戦いの神であり戦場の王である”軍神元帥”ローグとなりこの国に栄光をもたらすでしょう」

「お、おお…」
「コンラッドが…」

「さあ陛下。あなたがお選びください。慈悲の神…戦の神…、三人の神子候補の中から一人を。それがあなたの望む未来を決定する」

「考えるまでもない!コンラッド!我が息子だ!」

ニヤリ…、こう言えば王様は絶対闘神の神子を、それも王族であるコンラッドを選ぶと分かってたっての!

「シャノン…その10の務め…危険は無いのですか?」

ここで王妃様の母心。王妃様の母性はいろいろ斜め上だが無いわけではないのだ。

「危険が無いといったらウソになります。そこでアーロン!」
「は、はい!」

「慈悲の神に一度は認められし元神子候補として…アーロンにはコンラッドが無事に務めをやり遂げられるよう聖地巡礼に出てもらいます」

あ、あれ?違う意味に聞こえるのはなんでだろ?

「聖地巡礼…」

「ゴホン!慈悲の神はこういいました。国内にある全ての聖地に祈りを捧げ終えた時その願いは必ず叶えられると。アーロンは誰より信心深い。アーロン、引き受けてくれる?コンラッドのために…」

「シャノン様が僕でいいと仰るのなら…。必ずややり遂げて見せます。お選びくださって、あ、ありがとうございます…」

涙ぐむアーロン、それを見つめるコンラッド。なんていう愛と感動の展開。



…それが喜劇のように見えてたとしたら、きっとその人物は心が汚れている…

誰だ!僕を指さしたのは!





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