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131 断罪は頭痛の種
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あの後合流した騎士Aは吉報…?なのかどうかわからないけど、思った通りの結果を持ち帰った。
思いがけない収穫物をもって無事帰宅したのはそれから五日後。
1日も早くみんなを集めて情報共有、意見交換会!と焦る僕を迎えたのは浮かない顔のお父様。 ええい!次から次へと…いい加減キャパオーバーだって!
「シャノン、ふたりで話がある。こちらへ来なさい」
エンブリーから戻った時もこんな感じだったような…?だけどエンブリーの時と違ってこれは許可ありきの公式家族旅行だし…トラブルはなにも起こしていないはず…なのになんだろう。この緊迫感は。
恐る恐る書斎の扉を開ける。人払いの済んだそこにはセバスすらいない。
少しの沈黙の後、意を決したようにお父様が口を開いた。
「シャノン…、王家から正式に通達があった。コンラッド殿下の王族離脱、婚約解消を認めてもよいと」
「ホントですか!?」
ぐぅ…、喜ぶべきか次期早々というべきか…わからん!
「王がそう申されたのだ。間違いない。だがそれには条件がいくつかある」
「条件…?」
「お前とコンラッド殿下の婚約を解消し殿下を王籍から外すのであれば、王太子となるトレヴァー殿下にシェイナを寄越せと、そう仰られているのだよ。シャノン、お前の代わりに」
「はぁ?ダメですよ?」
まったくもって論外!
だってシャノンはあんなに辛い前世の中で頑張ってようやく僕に交代したんだから!普通のシェイナとしてジェロームの推し活しながら楽しく暮らすに決まってるじゃないか!
許すまじ王様の暴挙、お天道様が許したってこの僕が許さない!
「お父様!まさかと思いますけど嬉々としてオーケーしたりしてないですよね!」
「シャノン…私は後悔しているのだよ。お前が大窓から転落したあの夏の日から一日たりとも欠かすことなく…今でさえ」
「後悔…ですか?」
「そうだ。その私がシェイナまで王家に差し出すと思っているのかい」
「お父様…」
「大人たちの思惑、その全てがお前の幼少期を台無しにした」
正妃に据えるのは国政のための優秀な妻。そして愛は愛人と育む、そんなことはこのルテティアではいたって普通。王族でなくとも貴族であれば政略結婚なんて当たり前だ。そんな価値観の中で両親がシャノンを王家に嫁がせようとしたこと、それを責めようなんて思わない。だって…
「私はカサンドラがおばあさまとの約束だと言ってお前とコンラッド殿下の婚約を決めた時、それが間違っているとは思わなかったし、むしろカサンドラの子であるお前であれば立派な王妃になるだろう、そう信じ後押しをした」
「…なったでしょうね」
そうシャノンなら。きっと誰よりも立派な王妃になっただろう。コンラッドが愛の戦士にさえならなければ…
「だが、それがあれほどお前を苦しめるのなら…お前を殿下の婚約者になどしなければよかった。楽し気に暮らす今のお前を見ておればつくづくそう思う。そうとも、どれほど思い返しても、無邪気に笑うお前の顔を私は思いだせないのだ…」
「でも…お母様がシャ、僕の幸せを願っていなかったとは思ってません…」
「カサンドラ、いや貴族の子女にとって゛王妃”とは最高の栄誉。もちろん母はお前の為と信じていたとも」
…せめてあんなに焦って婚約をまとめなければ何か違ったのかも…タラレバだけど。
「でも何だって王はシェイナに?歳の近い高位貴族の娘なら他にもいるでしょう?」
「王はシェイナを…、全く、何故あのようなことを、…神子ではないかとお疑いだ」
「はぁっ?」
王様ってば、まだ神子とか言ってんの?し、しつこい…。言っとくけど元神子だから!今のシェイナは神子の抜け殻だから!あーもうっ!
「どうしていきなりそんなことを!」
「シェイナの行動が幼子には思えぬと」
どの部分が!あんな幼子の中の幼子、クイーンオブ幼子になんてことを!
「だがこれは北部の分割統治、アレイスター殿下にも影響する話だ。そのままには出来ぬ」
「え?それどういう意味…」
「北部に対する南部の優位性を明確にする。その一つを『神子』とお考えなのだろう」
バンッ!「神子は勲章じゃありませんよ!何言ってるんですか!」
「なんにせよ王がお前との会談を所望だ。お前が話を付けなさい。王は臣下である私の意向など気にも留めないだろう。だが、『神託』であるお前の言葉には耳を傾けよう」
「…ぐ、分かりました」
熱狂的な神子信者である王様は神子とニコイチである『神託』にも敬意をしめす。これは僕にとってせめてもの慰めだ。つまり王様の決定を覆せる可能性があるとしたら、それは唯一『神託』のみ…
この件が僕自身に委ねられたのは不幸中の幸い。僕はこの件をニコールさんにも言わないよう口止めした。
一息ついてふと目をやればデスクの上に積み上げられた書類のタワー。
「ところでお父様。また社畜に逆戻りですか?なんですその書類?」
「お前の誕生日に招待する客のリストだよ」
「お父様がされるんですか?そういうのってセバスかニコールさんが…」
「色々と考える事があるのだよ。こちらの事はお父様に任せてお前はシェイナの件に専念しなさい」
「はい」
ああ…今夜は眠れそうにない…
思いがけない収穫物をもって無事帰宅したのはそれから五日後。
1日も早くみんなを集めて情報共有、意見交換会!と焦る僕を迎えたのは浮かない顔のお父様。 ええい!次から次へと…いい加減キャパオーバーだって!
「シャノン、ふたりで話がある。こちらへ来なさい」
エンブリーから戻った時もこんな感じだったような…?だけどエンブリーの時と違ってこれは許可ありきの公式家族旅行だし…トラブルはなにも起こしていないはず…なのになんだろう。この緊迫感は。
恐る恐る書斎の扉を開ける。人払いの済んだそこにはセバスすらいない。
少しの沈黙の後、意を決したようにお父様が口を開いた。
「シャノン…、王家から正式に通達があった。コンラッド殿下の王族離脱、婚約解消を認めてもよいと」
「ホントですか!?」
ぐぅ…、喜ぶべきか次期早々というべきか…わからん!
「王がそう申されたのだ。間違いない。だがそれには条件がいくつかある」
「条件…?」
「お前とコンラッド殿下の婚約を解消し殿下を王籍から外すのであれば、王太子となるトレヴァー殿下にシェイナを寄越せと、そう仰られているのだよ。シャノン、お前の代わりに」
「はぁ?ダメですよ?」
まったくもって論外!
だってシャノンはあんなに辛い前世の中で頑張ってようやく僕に交代したんだから!普通のシェイナとしてジェロームの推し活しながら楽しく暮らすに決まってるじゃないか!
許すまじ王様の暴挙、お天道様が許したってこの僕が許さない!
「お父様!まさかと思いますけど嬉々としてオーケーしたりしてないですよね!」
「シャノン…私は後悔しているのだよ。お前が大窓から転落したあの夏の日から一日たりとも欠かすことなく…今でさえ」
「後悔…ですか?」
「そうだ。その私がシェイナまで王家に差し出すと思っているのかい」
「お父様…」
「大人たちの思惑、その全てがお前の幼少期を台無しにした」
正妃に据えるのは国政のための優秀な妻。そして愛は愛人と育む、そんなことはこのルテティアではいたって普通。王族でなくとも貴族であれば政略結婚なんて当たり前だ。そんな価値観の中で両親がシャノンを王家に嫁がせようとしたこと、それを責めようなんて思わない。だって…
「私はカサンドラがおばあさまとの約束だと言ってお前とコンラッド殿下の婚約を決めた時、それが間違っているとは思わなかったし、むしろカサンドラの子であるお前であれば立派な王妃になるだろう、そう信じ後押しをした」
「…なったでしょうね」
そうシャノンなら。きっと誰よりも立派な王妃になっただろう。コンラッドが愛の戦士にさえならなければ…
「だが、それがあれほどお前を苦しめるのなら…お前を殿下の婚約者になどしなければよかった。楽し気に暮らす今のお前を見ておればつくづくそう思う。そうとも、どれほど思い返しても、無邪気に笑うお前の顔を私は思いだせないのだ…」
「でも…お母様がシャ、僕の幸せを願っていなかったとは思ってません…」
「カサンドラ、いや貴族の子女にとって゛王妃”とは最高の栄誉。もちろん母はお前の為と信じていたとも」
…せめてあんなに焦って婚約をまとめなければ何か違ったのかも…タラレバだけど。
「でも何だって王はシェイナに?歳の近い高位貴族の娘なら他にもいるでしょう?」
「王はシェイナを…、全く、何故あのようなことを、…神子ではないかとお疑いだ」
「はぁっ?」
王様ってば、まだ神子とか言ってんの?し、しつこい…。言っとくけど元神子だから!今のシェイナは神子の抜け殻だから!あーもうっ!
「どうしていきなりそんなことを!」
「シェイナの行動が幼子には思えぬと」
どの部分が!あんな幼子の中の幼子、クイーンオブ幼子になんてことを!
「だがこれは北部の分割統治、アレイスター殿下にも影響する話だ。そのままには出来ぬ」
「え?それどういう意味…」
「北部に対する南部の優位性を明確にする。その一つを『神子』とお考えなのだろう」
バンッ!「神子は勲章じゃありませんよ!何言ってるんですか!」
「なんにせよ王がお前との会談を所望だ。お前が話を付けなさい。王は臣下である私の意向など気にも留めないだろう。だが、『神託』であるお前の言葉には耳を傾けよう」
「…ぐ、分かりました」
熱狂的な神子信者である王様は神子とニコイチである『神託』にも敬意をしめす。これは僕にとってせめてもの慰めだ。つまり王様の決定を覆せる可能性があるとしたら、それは唯一『神託』のみ…
この件が僕自身に委ねられたのは不幸中の幸い。僕はこの件をニコールさんにも言わないよう口止めした。
一息ついてふと目をやればデスクの上に積み上げられた書類のタワー。
「ところでお父様。また社畜に逆戻りですか?なんですその書類?」
「お前の誕生日に招待する客のリストだよ」
「お父様がされるんですか?そういうのってセバスかニコールさんが…」
「色々と考える事があるのだよ。こちらの事はお父様に任せてお前はシェイナの件に専念しなさい」
「はい」
ああ…今夜は眠れそうにない…
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