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120 断罪と北の風
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あの有意義な話し合いから幾日たっただろうか?とうとう待ちに待ったその日がきた!
川沿いの隣の隣の領から屋形船の到着を告げる早馬が届いたのだ!
ジェロームの裁判準備もあり、クーパー伯は晴天続きの報を受け、一週間ほど前倒しして春の運行を始めたらしい。
「シェイナ、シェイナ、ジェロームが来るよ!」
「うあうあ?…」
「屋敷?もちろん用意してあるよ。船着き場に一番近い空き屋敷。お父様が便がいいだろうからここにしようって。家具も使用人も備え付けだよ」
シェイナの誕生日はちょうど明後日。それってつまり…
「サイコーの誕プレだね、シェイナ」
「あう」
明後日に満一歳を迎えるシェイナは少しづつバブバブ感が抜けてきたようだ。ちょっと残念…
というか、中身赤ちゃんじゃないのがバレないように、今まであえて大袈裟にバブってたらしい。なんたる小細工…
二日間なんてあっという間。その日プリチャード家は一家総出でジェロームを迎えに出ていた。ジェロームは愛息子と愛娘の恩人だよ?当然だよね。
「エンブリー卿。此度は伯爵位への陞爵おめでとう」
「プリチャード侯爵自ら出迎えていただけるとはなんと光栄な…この度は数々のご尽力感謝の念に堪えません」
「それはこちらの台詞だ」
うんうん。婿と舅の仲が良好なのはいいことだ。
「シャノン様。お変わりなくお過ごしでしょうか」
「それなりに。でもお父様にいっぱい叱られました」
チラッお父様を見るジェロームに肩を竦めるお父様。通じ合う夫と舅。あれ?分が悪い?…仲良すぎも問題だ。
「シェイナ嬢も元気そうで」
「シェイナは本日誕生日なのだよ。2週ほど後にささやかな会を催す予定だ。来てくれるね?」
「ええもちろん。喜んで」
ジェロームの優しい手でナデナデされてご満悦のシェイナ。僕もして欲しい…
ふと見ると、次から次へと船から下されるたくさんの木箱。アレは…もしやお土産!?
ワクワク「ジェローム、あの木箱はなんですか?」ワクワク
「ああ、あれはブラトワの屋敷にあった過去の書付け類ですよ」
ガックリ…「書付け類…」
「シャノンや。私が頼んだのだよ。お前に頼まれた例の件だ。ブラトワとフレッチャーの関係を明らかにするためにも全てこちらに運んで欲しいとね」
なんと!お父様は僕たちが帰宅した直後間髪入れず、冬のエンブリーへ早馬を出していたらしい。
「父の部屋に残されていた焼け残りの手紙や書斎にあった過去の書付けなど全て運んだのですよ。古い手紙類なので何か溶岩石に関する記載があるかもしれないと思いまして」
「気遣い痛み入る」
「なんと畏れ多い…、私こそ王都の屋敷をご用意いただきどれほど助かっているか…」
そういえば焼け残りの手紙って…、確かシェイナが暇つぶしに読んでたあの、初代の奥さんが友達とやり取りしてた手紙のことか…
ジェロームは「書き損じの古紙なども混ざっていてお恥ずかしいのですが」などと恐縮している。いやいや、物を大切にするのはエコだから。リサイクルは大切だから!
「お父様、ジェローム。それ僕も目を通していいですか?」
「構わんよ。お前が目を通すなら心強い」
…僕っていうか…シェイナがだけどね?
それらの木箱は全ていったんセキュリティ度の高いプリチャード邸に運び込まれるようだ。万に一つもこれらの動きがフレッチャーに知られてはいけないからだ。でなければ、どんな妨害をされるかわからない。これは僕もシェイナもお父様も、全員の総意だ。
「エンブリーの手紙類に関しては目を通した後返却しよう。それでいいかな」
「ええ。お任せします」
ジェロームの王都邸は、この王都貴族街の中にあってはかなり慎み深い屋敷だ。これはジェロームからの、アシュリーの屋敷みたいなのが良い、というリクエストにお応えしてのことだ。けっしてケチったんじゃないよ?
最低限の使用人と、執事はリアム君のご親戚から紹介いただいた信頼できる人だ。
彼らのお給料は当面プリチャード家から支払われる。が、砂金の件が公の事業になれば、その時は堂々とエンブリーでもつことになる。コナーも含めてね。
因みにコナーは自然豊かなエンブリーが気に入って、面倒な社交の多い王都に戻る…などといった考えは微塵も無いようだ。気が合うねコナー。僕も同感だよ。けどお父様曰く、近々もう一人執事を派遣する予定だとか。
そのエンブリー王都邸だが、華美じゃない品の良い調度品はニコールさんが選んだのだとか。
そういえばこの家の備品を整えていた最中、ニコールさんの元婚家の元亭主が営業に来たそうな。
よほど商売が苦しいのか、それともそろそろ時効とでも思ったのか、どっちにしても図々しい。
そりゃあプリチャード家と取引出来たら最高だろうが…ブラッドは一応血の繋がった実の父親だけど「どの面下げて…」と怒りに震えうんと高飛車に追い返したそうだ。
なので僕は久々にシャノンを降臨させ(というか、本人居るが)
「そういう時はにっこり笑顔でちょっとお高い品物二~三点買い上げてあげるんだよ。「ほんの施し程度ですが」ってそう言ってね」
と、高飛車の神髄を教えてあげた。苦笑するブラッドとシェイナ…まあ…おまけの話ね。
「ではシャノン様、しばらく忙しくしますのでお誘いできないのが心苦しいのですが…」
「分かってます。でも僕が下校途中、勝手に遊びに来るのはいいですよね?」
「もちろんですとも」
これで良し。入り浸り決定っと。
「シャノン様これを」
手渡されたのは一通の手紙。それもエンブリーでは見かけない、どこからどう見ても高級そうな…
「北部に居る殿下から預かってきました。あなたに渡してほしいと」
「ふーん?」
なんだろう。新刊情報かな?
川沿いの隣の隣の領から屋形船の到着を告げる早馬が届いたのだ!
ジェロームの裁判準備もあり、クーパー伯は晴天続きの報を受け、一週間ほど前倒しして春の運行を始めたらしい。
「シェイナ、シェイナ、ジェロームが来るよ!」
「うあうあ?…」
「屋敷?もちろん用意してあるよ。船着き場に一番近い空き屋敷。お父様が便がいいだろうからここにしようって。家具も使用人も備え付けだよ」
シェイナの誕生日はちょうど明後日。それってつまり…
「サイコーの誕プレだね、シェイナ」
「あう」
明後日に満一歳を迎えるシェイナは少しづつバブバブ感が抜けてきたようだ。ちょっと残念…
というか、中身赤ちゃんじゃないのがバレないように、今まであえて大袈裟にバブってたらしい。なんたる小細工…
二日間なんてあっという間。その日プリチャード家は一家総出でジェロームを迎えに出ていた。ジェロームは愛息子と愛娘の恩人だよ?当然だよね。
「エンブリー卿。此度は伯爵位への陞爵おめでとう」
「プリチャード侯爵自ら出迎えていただけるとはなんと光栄な…この度は数々のご尽力感謝の念に堪えません」
「それはこちらの台詞だ」
うんうん。婿と舅の仲が良好なのはいいことだ。
「シャノン様。お変わりなくお過ごしでしょうか」
「それなりに。でもお父様にいっぱい叱られました」
チラッお父様を見るジェロームに肩を竦めるお父様。通じ合う夫と舅。あれ?分が悪い?…仲良すぎも問題だ。
「シェイナ嬢も元気そうで」
「シェイナは本日誕生日なのだよ。2週ほど後にささやかな会を催す予定だ。来てくれるね?」
「ええもちろん。喜んで」
ジェロームの優しい手でナデナデされてご満悦のシェイナ。僕もして欲しい…
ふと見ると、次から次へと船から下されるたくさんの木箱。アレは…もしやお土産!?
ワクワク「ジェローム、あの木箱はなんですか?」ワクワク
「ああ、あれはブラトワの屋敷にあった過去の書付け類ですよ」
ガックリ…「書付け類…」
「シャノンや。私が頼んだのだよ。お前に頼まれた例の件だ。ブラトワとフレッチャーの関係を明らかにするためにも全てこちらに運んで欲しいとね」
なんと!お父様は僕たちが帰宅した直後間髪入れず、冬のエンブリーへ早馬を出していたらしい。
「父の部屋に残されていた焼け残りの手紙や書斎にあった過去の書付けなど全て運んだのですよ。古い手紙類なので何か溶岩石に関する記載があるかもしれないと思いまして」
「気遣い痛み入る」
「なんと畏れ多い…、私こそ王都の屋敷をご用意いただきどれほど助かっているか…」
そういえば焼け残りの手紙って…、確かシェイナが暇つぶしに読んでたあの、初代の奥さんが友達とやり取りしてた手紙のことか…
ジェロームは「書き損じの古紙なども混ざっていてお恥ずかしいのですが」などと恐縮している。いやいや、物を大切にするのはエコだから。リサイクルは大切だから!
「お父様、ジェローム。それ僕も目を通していいですか?」
「構わんよ。お前が目を通すなら心強い」
…僕っていうか…シェイナがだけどね?
それらの木箱は全ていったんセキュリティ度の高いプリチャード邸に運び込まれるようだ。万に一つもこれらの動きがフレッチャーに知られてはいけないからだ。でなければ、どんな妨害をされるかわからない。これは僕もシェイナもお父様も、全員の総意だ。
「エンブリーの手紙類に関しては目を通した後返却しよう。それでいいかな」
「ええ。お任せします」
ジェロームの王都邸は、この王都貴族街の中にあってはかなり慎み深い屋敷だ。これはジェロームからの、アシュリーの屋敷みたいなのが良い、というリクエストにお応えしてのことだ。けっしてケチったんじゃないよ?
最低限の使用人と、執事はリアム君のご親戚から紹介いただいた信頼できる人だ。
彼らのお給料は当面プリチャード家から支払われる。が、砂金の件が公の事業になれば、その時は堂々とエンブリーでもつことになる。コナーも含めてね。
因みにコナーは自然豊かなエンブリーが気に入って、面倒な社交の多い王都に戻る…などといった考えは微塵も無いようだ。気が合うねコナー。僕も同感だよ。けどお父様曰く、近々もう一人執事を派遣する予定だとか。
そのエンブリー王都邸だが、華美じゃない品の良い調度品はニコールさんが選んだのだとか。
そういえばこの家の備品を整えていた最中、ニコールさんの元婚家の元亭主が営業に来たそうな。
よほど商売が苦しいのか、それともそろそろ時効とでも思ったのか、どっちにしても図々しい。
そりゃあプリチャード家と取引出来たら最高だろうが…ブラッドは一応血の繋がった実の父親だけど「どの面下げて…」と怒りに震えうんと高飛車に追い返したそうだ。
なので僕は久々にシャノンを降臨させ(というか、本人居るが)
「そういう時はにっこり笑顔でちょっとお高い品物二~三点買い上げてあげるんだよ。「ほんの施し程度ですが」ってそう言ってね」
と、高飛車の神髄を教えてあげた。苦笑するブラッドとシェイナ…まあ…おまけの話ね。
「ではシャノン様、しばらく忙しくしますのでお誘いできないのが心苦しいのですが…」
「分かってます。でも僕が下校途中、勝手に遊びに来るのはいいですよね?」
「もちろんですとも」
これで良し。入り浸り決定っと。
「シャノン様これを」
手渡されたのは一通の手紙。それもエンブリーでは見かけない、どこからどう見ても高級そうな…
「北部に居る殿下から預かってきました。あなたに渡してほしいと」
「ふーん?」
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