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108 断罪のコンテンツ
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とまあ、断罪後のプリチャード侯ってこんな感じだったのかな?と思わせるような、怒ってるのか困ってるのか呆れているのか分からないお父様からの長い長い説教タイムを終え、翌日僕は屍のような身体に鞭打ってさっそく王城に居る。
昨日の今日で?早くね?と思っていたら、先ずはブラトワに関する聴取の方だった。ちょうどいいので、もしタイミングが合えば王妃様にはお土産を持って行こうと思っている。
お父様と向かったのは王城内にある会議室。そこには法務大臣ポーレット侯爵が王都の主席治安判事と憲兵隊の一番偉い人を連れ立って待ち構えている。
治安判事とは罪を明らかにし罰を決める警察長官と裁判長を合わせたみたいな人だ。
地方に居る彼らは爵位持ちから選ばれる名前だけの判事だが、ここ王都の主席判事はそうではない。代々決まった名家から選ばれるのはもちろんのこと、その家のご当主は上級学校できちんと法学を修めている法律のプロだ。その下に一般治安判事、要するに前述した名前だけ判事が在籍しよくある裁判を執り行う。
そしてその前に罪人を捕まえ収監したり調書をとったりといった、市井のこまごました犯罪ふくめ、都市の治安を守るのが多くの憲兵を抱えた憲兵隊だ。
ついでだが、王城内のセキュリティ全てを担うのが近衛隊ね。
この国では、王城勤務の近衛隊と王城への出入りもある憲兵隊の役職者は貴族しか就けなかったりする。これもセキュリティ上仕方がないことだ。
話を戻して、容疑の一つに王族の殺害未遂があることから、今回早々たる正義のトップクラスが集まったわけだ。
「シャノン…、君は先日のバーグ男爵といい、相当災いの女神に好かれているらしい」
「ポーレット侯爵…それは少しも嬉しくないです」
「だが悪人を釣り上げるためにとは言え、お父上にも言わず船旅を強行するとは…なかなか豪傑なところがあるのだね」
そう言ったのは主席判事のボナパルト侯爵。代々主席判事を務める古参の貴族だ。
悪人を釣り上げるため…これはヘクターが僕の為に考え出した今回の言い訳である。
ヘクターが書き起こしたシナリオはこうだ。
この夏懇意になったアレイスターとエンブリー男爵。そのエンブリー男爵家に家令兼執事としてシャノンが雇い派遣したコナーから救援要請があった。
それは悪しき企みを持った隣領の当主、ブラトワ男爵からエンブリー男爵領を守って欲しいというもの。
彼はブラトワがエンブリー領を手に入れんと画策していることに気が付いていた。
とはいえハッキリした証拠が無いから公式に何処かへ訴え出ることはできない。
だが内なる『神託』が告げる。ブラトワが動きだした時には恐らく全てが終わってしまうだろう。
そこでシャノンは強引にアレイスターのエンブリー訪問に便乗した。まともに話しても父親の許可は得られないだろう、そう考えて。
「それにしても無謀な男だ。地方の一男爵でありながらよもや序列第二位プリチャード家のご子息ご息女、そしてあろうことかアレイスター第二王子殿下の命を狙うとはな」
あの…バーナード伯爵家のご子息も入れて…
「本人はアレイスター殿下の存在を知らなかったといっておったが…」
「知っておったかどうかは問題ではない!王子殿下を危険にさらすことが問題なのだ!」
「ましてや当家のシャノンは『神託』を冠す身!その身に危害あれば王陛下が決して許しはせぬ!」
そーだそーだ!
王様に言いたいことは二つも三つもあるが、それはさておき、あの神子への執着が半端ない王様にとって、神子を選定する『神託』も重要人物に違いない!
つまり必ず奴には下るはずだ!…極刑が…
ここで決定したのが諸々の罪状。
文書偽造、不法侵入に始まり、放火、暴行を経由し、殺人未遂、不敬罪、反逆罪と見事にランクアップしていく様は、全部をあげたらキリがない程の罪状オールスター。
多分領内での行いも叩けば埃が出そうだし、一族郎党…グッバイブラトワ、永遠に。
「あっ、そうだお父様。ついでに一つ」
「なんだねシャノン」
「ブラトワの主要事業である溶岩石の採掘ですが…」コソッ「どうもあの管理貴族はフレッチャーの遠縁みたいです」
難しい顔になるお父様。みなまで言わなくても何が言いたいかはきっとわかるはずだ。
「いいだろう。その件は私が調べよう」
隊長は労働過多って言われちゃったしね、シェイナに。ここはお父様で。
ポーレット侯爵とボナパルト侯爵いわく、ブラトワと家令は極刑、妻を含めた直系親族は爵位、領地、財産を没収の上投獄。傍系親族は財産没収のうえ平民落ちになるだろうとの話だった。
投獄は金銭を積み上げることで赦免が認められるが、一族揃って財産没収になるブラトワにその道はほぼないと言っていいだろう。ついでに獄中生活に関しても、金銭を積めばそれなりの待遇が受けられるがそうでないなら…まあ想像にお任せします。
ヘクターはアレイスターの代理で王妃様に、ブラトワ領をエンブリーに吸収してはどうかと進言するらしい。
僕からも念押ししておかなくっちゃ。
これにて…一件落着!
昨日の今日で?早くね?と思っていたら、先ずはブラトワに関する聴取の方だった。ちょうどいいので、もしタイミングが合えば王妃様にはお土産を持って行こうと思っている。
お父様と向かったのは王城内にある会議室。そこには法務大臣ポーレット侯爵が王都の主席治安判事と憲兵隊の一番偉い人を連れ立って待ち構えている。
治安判事とは罪を明らかにし罰を決める警察長官と裁判長を合わせたみたいな人だ。
地方に居る彼らは爵位持ちから選ばれる名前だけの判事だが、ここ王都の主席判事はそうではない。代々決まった名家から選ばれるのはもちろんのこと、その家のご当主は上級学校できちんと法学を修めている法律のプロだ。その下に一般治安判事、要するに前述した名前だけ判事が在籍しよくある裁判を執り行う。
そしてその前に罪人を捕まえ収監したり調書をとったりといった、市井のこまごました犯罪ふくめ、都市の治安を守るのが多くの憲兵を抱えた憲兵隊だ。
ついでだが、王城内のセキュリティ全てを担うのが近衛隊ね。
この国では、王城勤務の近衛隊と王城への出入りもある憲兵隊の役職者は貴族しか就けなかったりする。これもセキュリティ上仕方がないことだ。
話を戻して、容疑の一つに王族の殺害未遂があることから、今回早々たる正義のトップクラスが集まったわけだ。
「シャノン…、君は先日のバーグ男爵といい、相当災いの女神に好かれているらしい」
「ポーレット侯爵…それは少しも嬉しくないです」
「だが悪人を釣り上げるためにとは言え、お父上にも言わず船旅を強行するとは…なかなか豪傑なところがあるのだね」
そう言ったのは主席判事のボナパルト侯爵。代々主席判事を務める古参の貴族だ。
悪人を釣り上げるため…これはヘクターが僕の為に考え出した今回の言い訳である。
ヘクターが書き起こしたシナリオはこうだ。
この夏懇意になったアレイスターとエンブリー男爵。そのエンブリー男爵家に家令兼執事としてシャノンが雇い派遣したコナーから救援要請があった。
それは悪しき企みを持った隣領の当主、ブラトワ男爵からエンブリー男爵領を守って欲しいというもの。
彼はブラトワがエンブリー領を手に入れんと画策していることに気が付いていた。
とはいえハッキリした証拠が無いから公式に何処かへ訴え出ることはできない。
だが内なる『神託』が告げる。ブラトワが動きだした時には恐らく全てが終わってしまうだろう。
そこでシャノンは強引にアレイスターのエンブリー訪問に便乗した。まともに話しても父親の許可は得られないだろう、そう考えて。
「それにしても無謀な男だ。地方の一男爵でありながらよもや序列第二位プリチャード家のご子息ご息女、そしてあろうことかアレイスター第二王子殿下の命を狙うとはな」
あの…バーナード伯爵家のご子息も入れて…
「本人はアレイスター殿下の存在を知らなかったといっておったが…」
「知っておったかどうかは問題ではない!王子殿下を危険にさらすことが問題なのだ!」
「ましてや当家のシャノンは『神託』を冠す身!その身に危害あれば王陛下が決して許しはせぬ!」
そーだそーだ!
王様に言いたいことは二つも三つもあるが、それはさておき、あの神子への執着が半端ない王様にとって、神子を選定する『神託』も重要人物に違いない!
つまり必ず奴には下るはずだ!…極刑が…
ここで決定したのが諸々の罪状。
文書偽造、不法侵入に始まり、放火、暴行を経由し、殺人未遂、不敬罪、反逆罪と見事にランクアップしていく様は、全部をあげたらキリがない程の罪状オールスター。
多分領内での行いも叩けば埃が出そうだし、一族郎党…グッバイブラトワ、永遠に。
「あっ、そうだお父様。ついでに一つ」
「なんだねシャノン」
「ブラトワの主要事業である溶岩石の採掘ですが…」コソッ「どうもあの管理貴族はフレッチャーの遠縁みたいです」
難しい顔になるお父様。みなまで言わなくても何が言いたいかはきっとわかるはずだ。
「いいだろう。その件は私が調べよう」
隊長は労働過多って言われちゃったしね、シェイナに。ここはお父様で。
ポーレット侯爵とボナパルト侯爵いわく、ブラトワと家令は極刑、妻を含めた直系親族は爵位、領地、財産を没収の上投獄。傍系親族は財産没収のうえ平民落ちになるだろうとの話だった。
投獄は金銭を積み上げることで赦免が認められるが、一族揃って財産没収になるブラトワにその道はほぼないと言っていいだろう。ついでに獄中生活に関しても、金銭を積めばそれなりの待遇が受けられるがそうでないなら…まあ想像にお任せします。
ヘクターはアレイスターの代理で王妃様に、ブラトワ領をエンブリーに吸収してはどうかと進言するらしい。
僕からも念押ししておかなくっちゃ。
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