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107 断罪と帰郷と雷と
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「シャノン!シェイナ!」
「お父様!」
品格を大切にするお父様は常日頃あまり感情をあらわにはしないのだが…僕はともかく小さなシェイナが巻き込まれた事件を知って、さすがに落ち着きを失くしている。
涙を流すニコールさんに僕はなんとも申し訳なさを感じるばかりで…
「本当にごめんなさい。シェイナを危険にさらしてしまって…」
「いえ、シャノン様のせいではございませんから…」
「いいや!反省しなさい!あの子はまだ一歳に満たないのだぞ!」
「返す言葉も無いです…」
「旦那様、今はそれくらいで。それよりご無事でようございました」
両親には従者リッチーより一足先に事のあらましを書いたヘクターからの報告書が届けられている。僕?僕が書くと墓穴を掘りそうで…ここはそういうのが上手そうなヘクターに丸投げで。
「シャノン、必要なことであったとはいえ…無茶をする。屋敷に戻り次第書斎に来なさい」
「はい…」
この瞬間、僕には巨大な大目玉が落ちることが確定した。
「シャノン様ー!」
「カイル!」
「もう!もう!こんな事二度とおよしくださいね!私がどれほど心配したと思ってるんですか!」
叫びながら駆け付けてきたのはカイル。いつもの彼からは考えられない勢いで怒られてしまったが、それでも彼の言葉は、「次からは私に相談下さい。必ずよきように取り計らいますから」そう続いた。ジーン…篤き忠心…
「ゴメンねカイル。次はそうする…」
「私がこう言ったとは誰にも秘密ですよ」
「うん…」
後からメイドのルーシーに聞いたのだが、彼女が言うにはカイルはまんまと騙されことでいろんな人からいっぱい叱責されたらしい。
…カイルに波及する影響がすっかり頭から抜け落ちていた…。実に申し訳ない…大きく反省。
僕がその日からどれほどカイルにゴマをすり続けたかは言うまでもない。
そうして屋敷に戻ると、なんとそこには知らせを聞いた取り巻きたちが集まっていた。
クーパー伯から到着予定を聞いたアリソン君は、ミーガン嬢リアム君を誘って屋敷のサロンで僕の帰りを待っていたのだ。当然そこにはブラッドもいる。
「た、ただいまー…、お土産もちゃんとあるからね…」
「兄さん、あなたって人は…」
呆れたようなブラッドの声色。同じようなセリフは過去にも何度か言われてきたが(ノベルゲーで)その意味は180度違うのだろう。気がつけば随分気安い中になったものだ。
「シャノン様のお気持ちわたくしたちも痛いほどわかりましたわ」
「今後どうなるか分かりませんが…それでも私たちは応援します」
ん?ジェロームとの仲…についてだろうか?
自分で言うのもなんだが、けっこういい感じだと自負している。僕はアロマエッセンスのようなジェロームが大好きだし、ジェロームの言う美辞麗句も、僕には貴族的なお世辞とはとても思えない。そこはかとなくあたたかい気持ちを感じるのだ。
ただ一つ問題があると言えば…
僕には依然として婚約者がいるという最も致命的な事実だ…
風前の灯みたいな婚約者という立場…それでも動かしようのない役職名。
今更もういいじゃん…と思わないでもないが、念のためシナリオを踏襲して断罪までは維持しておきたいこの立場。ああ歯痒い…
「ところで兄さん、ロ、親衛隊長からの報告が上がっています。これは少し重要かつ繊細な内容で…改めて話し合う時間を設けたいのですが」
「じゃあ休みの間に進めちゃおうか」
「それなのですが…」
「ん?」
ここで更なる訃報が僕を襲った。
ブラトワ、アーロンの件とか諸々含め、王都にお戻りの王様が僕を呼びつけているとかいないとか。いや呼ばれてるんだけど。
そのうえブラッドの口ぶりでは、王様はどうやら僕がアレイスターの後を追って行ったと思っているようだ。ならばその誤解は早々に解いておかなければならないだろう。
「はー…、じゃあカイル。王宮に手紙をお願いね。それからブラッド、話し合いの日程は任せるから決めといて」
「兄さんはどこへ?」
「お父様から呼び出しがあってね…はは…ごめんね、せっかく来てくれたのに…」
全てを察し憐れむような八つの瞳。みんな…最後に会えて嬉しかったよ…
「お父様!」
品格を大切にするお父様は常日頃あまり感情をあらわにはしないのだが…僕はともかく小さなシェイナが巻き込まれた事件を知って、さすがに落ち着きを失くしている。
涙を流すニコールさんに僕はなんとも申し訳なさを感じるばかりで…
「本当にごめんなさい。シェイナを危険にさらしてしまって…」
「いえ、シャノン様のせいではございませんから…」
「いいや!反省しなさい!あの子はまだ一歳に満たないのだぞ!」
「返す言葉も無いです…」
「旦那様、今はそれくらいで。それよりご無事でようございました」
両親には従者リッチーより一足先に事のあらましを書いたヘクターからの報告書が届けられている。僕?僕が書くと墓穴を掘りそうで…ここはそういうのが上手そうなヘクターに丸投げで。
「シャノン、必要なことであったとはいえ…無茶をする。屋敷に戻り次第書斎に来なさい」
「はい…」
この瞬間、僕には巨大な大目玉が落ちることが確定した。
「シャノン様ー!」
「カイル!」
「もう!もう!こんな事二度とおよしくださいね!私がどれほど心配したと思ってるんですか!」
叫びながら駆け付けてきたのはカイル。いつもの彼からは考えられない勢いで怒られてしまったが、それでも彼の言葉は、「次からは私に相談下さい。必ずよきように取り計らいますから」そう続いた。ジーン…篤き忠心…
「ゴメンねカイル。次はそうする…」
「私がこう言ったとは誰にも秘密ですよ」
「うん…」
後からメイドのルーシーに聞いたのだが、彼女が言うにはカイルはまんまと騙されことでいろんな人からいっぱい叱責されたらしい。
…カイルに波及する影響がすっかり頭から抜け落ちていた…。実に申し訳ない…大きく反省。
僕がその日からどれほどカイルにゴマをすり続けたかは言うまでもない。
そうして屋敷に戻ると、なんとそこには知らせを聞いた取り巻きたちが集まっていた。
クーパー伯から到着予定を聞いたアリソン君は、ミーガン嬢リアム君を誘って屋敷のサロンで僕の帰りを待っていたのだ。当然そこにはブラッドもいる。
「た、ただいまー…、お土産もちゃんとあるからね…」
「兄さん、あなたって人は…」
呆れたようなブラッドの声色。同じようなセリフは過去にも何度か言われてきたが(ノベルゲーで)その意味は180度違うのだろう。気がつけば随分気安い中になったものだ。
「シャノン様のお気持ちわたくしたちも痛いほどわかりましたわ」
「今後どうなるか分かりませんが…それでも私たちは応援します」
ん?ジェロームとの仲…についてだろうか?
自分で言うのもなんだが、けっこういい感じだと自負している。僕はアロマエッセンスのようなジェロームが大好きだし、ジェロームの言う美辞麗句も、僕には貴族的なお世辞とはとても思えない。そこはかとなくあたたかい気持ちを感じるのだ。
ただ一つ問題があると言えば…
僕には依然として婚約者がいるという最も致命的な事実だ…
風前の灯みたいな婚約者という立場…それでも動かしようのない役職名。
今更もういいじゃん…と思わないでもないが、念のためシナリオを踏襲して断罪までは維持しておきたいこの立場。ああ歯痒い…
「ところで兄さん、ロ、親衛隊長からの報告が上がっています。これは少し重要かつ繊細な内容で…改めて話し合う時間を設けたいのですが」
「じゃあ休みの間に進めちゃおうか」
「それなのですが…」
「ん?」
ここで更なる訃報が僕を襲った。
ブラトワ、アーロンの件とか諸々含め、王都にお戻りの王様が僕を呼びつけているとかいないとか。いや呼ばれてるんだけど。
そのうえブラッドの口ぶりでは、王様はどうやら僕がアレイスターの後を追って行ったと思っているようだ。ならばその誤解は早々に解いておかなければならないだろう。
「はー…、じゃあカイル。王宮に手紙をお願いね。それからブラッド、話し合いの日程は任せるから決めといて」
「兄さんはどこへ?」
「お父様から呼び出しがあってね…はは…ごめんね、せっかく来てくれたのに…」
全てを察し憐れむような八つの瞳。みんな…最後に会えて嬉しかったよ…
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